北海道新聞 06/08 05:00
【白老】新型コロナウイルスの感染拡大に伴うアイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」の開業が2度延期され、地元の胆振管内白老町や町内の事業者が打撃を受けている。観光客増を見込み、町の補助金を活用して創業したカフェや宿泊施設は延期で売り上げが激減。町が企画した開業PRイベントも見送られたままだ。関係者からは早くも「国が目標とする来場者年100万人達成は不可能」との声が上がっている。
「2月以降の予約はほとんどない。需要回復にどれだけ時間がかかるかわからない」。町中心部でホステル「haku(ハク)」を経営する菊地辰徳さん(43)は険しい表情を見せる。
町は空き店舗の改修や新規開業の経費を最大100万円助成する創業支援事業を2015年度から開始。飲食店など15軒が開業した。
「haku」は廃業した旅館を改装して昨年4月オープン。順調に予約は増えていたが、新型コロナと2度の開業延期に足をすくわれた。町独自の給付金20万円を申請し、当座をしのぐ考えだ。ウポポイは4月24日の開業予定が5月29日に延期され、さらに当面延期となっている。
白老町商工会の熊谷威二会長は「新規出店した事業者は若者が多く、体力は乏しい。現状が続けば開業までもたないところも出てくる」と危機感を募らせる。
町が準備してきたイベントや事業も宙に浮いたままだ。ウポポイや町中心部の商店街などを結ぶ「町交流促進バス」は、開業日だった4月24日からの運行予定が見送りに。JR白老駅北側の観光商業ゾーンのPRイベントも、コロナの影響で開催時期や飲食などの内容の見直しを迫られている。
白老町の戸田安彦町長は「新型コロナで町全体が影響を受ける中、ウポポイ関係に絞った支援は線引きが難しい」とした上で「少しずつイベントを開き、なんとか盛り返したい」と頭を悩ませる。町内には約700の事業者があり、このうち飲食店が約100軒、宿泊施設が約60軒を占める。
コロナ禍は開業後にも影響を及ぼす。ウポポイを管理するアイヌ民族文化財団(札幌)によると、修学旅行の見学予約は500校近くあったが、5月26日時点で78校がキャンセル。このほか210校は修学旅行を延期した。財団からは「100万人は現実的ではなくなった」との声も漏れる。
赤羽一嘉国土交通相は6月2日の会見で、9日から6日間、町民を対象にした内覧会を開催する意向を示した。開業については「改めて検討する」と述べるにとどめた。財団にウポポイの運営を委託している国土交通省北海道局は「内覧会で地元の意向を確認しながら機運を高め、PRをしていきたい」と巻き返しを図りたい考え。沈滞ムードを払拭(ふっしょく)するには時間がかかりそうだ。(斎藤佑樹)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/428392
【白老】新型コロナウイルスの感染拡大に伴うアイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」の開業が2度延期され、地元の胆振管内白老町や町内の事業者が打撃を受けている。観光客増を見込み、町の補助金を活用して創業したカフェや宿泊施設は延期で売り上げが激減。町が企画した開業PRイベントも見送られたままだ。関係者からは早くも「国が目標とする来場者年100万人達成は不可能」との声が上がっている。
「2月以降の予約はほとんどない。需要回復にどれだけ時間がかかるかわからない」。町中心部でホステル「haku(ハク)」を経営する菊地辰徳さん(43)は険しい表情を見せる。
町は空き店舗の改修や新規開業の経費を最大100万円助成する創業支援事業を2015年度から開始。飲食店など15軒が開業した。
「haku」は廃業した旅館を改装して昨年4月オープン。順調に予約は増えていたが、新型コロナと2度の開業延期に足をすくわれた。町独自の給付金20万円を申請し、当座をしのぐ考えだ。ウポポイは4月24日の開業予定が5月29日に延期され、さらに当面延期となっている。
白老町商工会の熊谷威二会長は「新規出店した事業者は若者が多く、体力は乏しい。現状が続けば開業までもたないところも出てくる」と危機感を募らせる。
町が準備してきたイベントや事業も宙に浮いたままだ。ウポポイや町中心部の商店街などを結ぶ「町交流促進バス」は、開業日だった4月24日からの運行予定が見送りに。JR白老駅北側の観光商業ゾーンのPRイベントも、コロナの影響で開催時期や飲食などの内容の見直しを迫られている。
白老町の戸田安彦町長は「新型コロナで町全体が影響を受ける中、ウポポイ関係に絞った支援は線引きが難しい」とした上で「少しずつイベントを開き、なんとか盛り返したい」と頭を悩ませる。町内には約700の事業者があり、このうち飲食店が約100軒、宿泊施設が約60軒を占める。
コロナ禍は開業後にも影響を及ぼす。ウポポイを管理するアイヌ民族文化財団(札幌)によると、修学旅行の見学予約は500校近くあったが、5月26日時点で78校がキャンセル。このほか210校は修学旅行を延期した。財団からは「100万人は現実的ではなくなった」との声も漏れる。
赤羽一嘉国土交通相は6月2日の会見で、9日から6日間、町民を対象にした内覧会を開催する意向を示した。開業については「改めて検討する」と述べるにとどめた。財団にウポポイの運営を委託している国土交通省北海道局は「内覧会で地元の意向を確認しながら機運を高め、PRをしていきたい」と巻き返しを図りたい考え。沈滞ムードを払拭(ふっしょく)するには時間がかかりそうだ。(斎藤佑樹)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/428392