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鉱物の部屋へのいざない

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真球

2014-05-30 15:22:33 | 日記・エッセイ・コラム

今日は「真球」です。このブログでは「真球」という言葉は過去3回登場しておりましたが、タイトルとしては初めてです。

「真球」とは完全な球体の事で、そのようなものはイデアの世界でしか存在しないもので、現実には存在しません。ただし、そのような事は分かり切っている事で、それで思考停止してしまっては話は進みません。「真球」は存在しないと分かっていながら、それでも限りなく「真球」に近い「真球」を求め続けるのが人間です。むしろ、果てしなく追及し続ける事自体が人間を人間たらしめているのだと思います。

この世界には「真球」は存在しませんが、自然界には丸い球状の形態は充ち溢れています。宇宙を見れば球状星団があり恒星や惑星も球状ですし、多くの衛星もおおむね球状です。人間的なサイズの世界でも例を挙げるまでもなく球状のものは充ち溢れています。もちろん、石の世界でも球状の形態はそれほど珍しいものではありません。

ただ、球状の形態には美しさがともなっていると思いますので、美しい完全な球状の形態には無条件に反応してしまいます。それは珍しいという価値観よりも「真球」が持つ完全性の美によるのだろうと思います。

そのような「真球」に、ものづくりという分野で挑んでいる技術者のTV番組を見ました。

それは、昨日、NHK総合で放送していた「超絶 凄ワザ!」という番組「究極の“真球”を目指せ(追撃編)」です。その番組では人工股関節の球体部分を造る広島のメーカーのふたりの技術者が真球をつくり、全長20m、幅7,5cmの限りなく水平な台で落ちずに球がどこまで転がるかという勝負に臨んでいました。結果は見事に20mを達成し、翌週放送予定の重機の精密部品を造る大阪の町工場の職人の挑戦を待つ、という内容でした。この勝負は日本の技術力を極限まで高めていくという面白さとロマンがあると思います。また、その勝負にはその舞台の土台となる水平な台をつくる技術力も問われてくると思います。限りない技術力の挑戦というテーマは名古屋放送局らしいテーマの番組だと思いました。今後も楽しみです。

技術者にとって「真球」づくりというテーマはやりがいのある仕事だと思います。また、そこで極められた「真球」も実に美しいと思いました。その「真球」という形と共に鏡面のように磨かれた球面も非常に美しいと思います。どこかで読んだことのある「真球の表面に比べれば宝石の表面はキズだらけだ!」という言葉を思い出してしまいます。「真球」には形状づくりと共に表面磨きのレベルが問われるようです。そこには技術を高める行為がそのまま美を追求する行為に繋がっています。どうも究極の技術は美しいのです。何でもそうだとは思いますが、どのような事でもそれを極める事は美しい事なのです。そこには独自の美学があると思います。

丸石好きが「真球」に美を見出してしまいました。

コメント
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