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鉱物の部屋へのいざない

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石が石を呼ぶ

2012-10-14 12:17:31 | 日記・エッセイ・コラム

今日は「石が石を呼ぶ」です。

前に「石が人を選ぶ」、「石が人を呼ぶ」のタイトルで書いた事がありましたが、今日はお店で経験した「石が石を呼ぶ」現象の事を書きます。

「石が石を呼ぶ」、文字通りの解釈ではありえない事です。磁鉄鉱の事なら磁力の事を書けば良いのでしょうが、今日の話題はそのような物理的現象の事ではありません。

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スペイン ナバフン鉱山 産 黄鉄鉱(Pyrite)

この写真は私が17年前に新宿ショーで購入した黄鉄鉱です。私が鉱物趣味にのめり込んだきっかけになったものです。現在の姿は上の写真の状態です。それぞれキューブ状になった二つに分かれています。

実はその二つはくっついていて下の写真のような状態でした。ある時、知人にそれを見せた時に、その知人はその二つをねじって分離させてしまったのです。私は正直ショックでしたが、平静を装いました。その二つの黄鉄鉱は今でも別れたまま二つおそろいで残っております。

先日、この黄鉄鉱とよく似た、それもそれよりもかなり大きい一辺5、6cm位の美しい黄鉄鉱の結晶が売れました。その黄鉄鉱も元々二つがくっついていたものだったのですが、自らの重みでとれてしまいました。とれてしまったものなので、元値の半額以下の値段にしてそれぞれを別の標本として並べていました。それぞれは状態も良いキューブ状の結晶だったので先日その片割れが売れてしまいました。

その時、私はそのお客さんに、購入されたものは、もうひとつの黄鉄鉱と元々ひとつのものだったと説明しました。そのお客さんはその事を理解しつつも、二つの内の少し大きい方の片割れを購入されていきました。

そして数日後の事でした。そのお客さんが再度お店にいらっしゃいました。そして、先日の黄鉄鉱の片割れを購入したいとおっしゃいました。どうも片割れの黄鉄鉱を購入してから、もう一つの事が気になってしかたがなかったそうです。そのお客さんは「まだ残っていて良かった!」とおっしゃって、もうひとつの片割れを購入して下さいました。

「石が石を呼ぶ」という言葉を想起しました。まるで片割れの黄鉄鉱がもうひとつの片割れの黄鉄鉱を呼んでいたかのような現象でした。そのお客さんは「二つ揃えられて良かった!」と非常に喜んでいらっしゃいました。

同じような現象は他にもありました。

メノウ化した珪化木の場合にも同じような現象が起きました。その時は、一つの珪化木を二つに切って切断面を磨いてあった二つの標本でした。その時も片割れを購入したお客さんは翌日再度来店し、そのもうひとつの片割れを再度購入されていきました。

どうも元々同じひとつのものであった石は、分かれてしまうと、もう一つの片割れを呼んでしまうようです。石が持っている未知の磁力のような現象、それらはあたかも磁石のS極とN極のようにお互いに引き付けあっているようです。そして分かれても「石が石を呼ぶ」というような現象を引き起こします。

もしかすると、このような現象は気が付かないまま、日常的によく起きている事なのかも知れません。

店には仕入れがまったく別のところから来ているのになぜか似ている標本があります。それらの標本は同じ産地のものである事が多いです。それは元々同じ岩体にあったものかも知れません。

それらの石は標本として地球から分離されたものなのですが、未知の引力のような現象により、お互いに引き合っているのかも知れません。

「石が石を呼ぶ」、不思議な現象は現実に起きているようです。

ひとつの和歌を思い出してしまいました。

「瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢わむとぞ思ふ」

コメント
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