アイルランド生活ブログ - 生活・料理・留学の情報満載 -

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松井ゆみ子のアイルランド・キッチン・ダイアリー「生牡蠣のシーズン始まる」

2006-09-25 03:53:59 | 松井ゆみ子のキッチン・ダイアリー
 まもなく西部ゴールウェイでオイスターフェスティバルが開催されます。
 毎年9月の最終週末におこなわれるイベントで、今年は28日(木)から10月1日(日)まで。実は私はまだ行ったことがなくて、テレビで見ただけなのですが、生牡蠣の殻の早あけ競争が有名です。各国代表の料理人たちが、手を傷だらけにしながら殻をこじあけていくサベージ(savage)な競争ですが、テレビで見ている限りではちょっとコミカル。マーキーでは、ギネス片手に生牡蠣をすする人であふれかえります。

スライゴーで食べた天然ものの生牡蠣。
 拙著「ケルトの国のごちそうめぐり」でもふれましたが、アイルランドの人たちは牡蠣を食べる人とまったく食べない人とに、ぱっくり分かれる印象です。

 ダブリンの町中にあるフードホールにオイスター・バーができて、いつか行ってみようと思ううち、この間行ってみたらフィッシュ&チップスの有名店に変わっちゃっていました。

 ここの牡蠣は、なんといっても西部アトランティック側が本場。
 新鮮なものを食べるのなら、やはりゴールウェイやクレアなどに行きたいところです。この前スライゴーの知人の家で、近くの海でとってきたという天然ものを初めて食べました。シーズンでもなんでもない5月のことです。

 アイルランドでは、「アールのつく月に食べるもの」という定説は、あまり関係ないようです。「ケルトの国のごちそうめぐり」でも紹介した、ダブリンのテンプルバーで開催される土曜日のファーマーズ・マーケットに出店しているオイスターの屋台でも「今朝とってきたばかり!」と言ってもらいたいところなのに、「おとといとったものだから新鮮だよ」と言われて、ちょっと驚いたのですが、味に遜色はありませんでした。

 天然ものは身の部分が意外に平べったく、一見貧弱ですが、口にふくむとぱあーっと磯の香りが広がります。なんと贅沢なたべものかしら。

 生で食べるのが、いちばんだな!と思いつつ、アイルランド人にカキフライを食べさせたい気持ちもつのります。揚げ物大好きな彼らですからね、今ここでも大流行りなお寿司よりも人気が出る気がするんだけどなぁ。


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松井ゆみ子のアイルランド・キッチン・ダイアリー「スペルト・フラワー」

2006-09-18 01:29:42 | 松井ゆみ子のキッチン・ダイアリー
 アイルランドの健康食ブームで注目されているのが、スペルト・フラワーです。
 耳なじまない名前で、なんのこっちゃ? と思われる方もいらっしゃるでしょう。

スペルト・フラワーでつくったパンケーキ。全粒粉をまぜたので色黒です。もちもちっとしてて、おいしい。
 何千年も前につくられていた、小麦の原種のひとつで、それが今新たに評価されているのです。ちょうど日本で、古代米などが身体にいいといわれるような感じでしょうか。スペルトを使ったパンは、テスコなどの大手スーパーマーケットでも売られるようになり、だいぶポピュラーになってきています。

 アイルランドの伝統的なパン、ブラウンブレッドは小麦の全粒粉でつくられ、腹持ちがいいし、繊維質もたっぷりで元気の素ですが、これをスペルト小麦粉でつくると、さらにヘルシー。通常の小麦粉よりも、消化がラクな上に、滋養が多いというすぐれもの。

 今、大量生産されている小麦粉は、短時間にすごい勢いで挽いてしまうため、栄養分がすっ飛んでしまうのだそうです。知り合いの健康食材屋の主が「スーパーで売ってる小麦粉には、なんの栄養も残ってないよ」ときっぱり言いきります。「ええーっ!でも全粒粉なら大丈夫なのでしょう?」と聞くと、あっさりノー! だって。

 そこで彼が勧めてくれたのがスペルト小麦です。ふつうの小麦粉と同じように、ブラウン(全粒粉)とホワイト(外皮を除いて挽いた白い小麦粉)があります。

 さっそくホワイト・スペルト・フラワーでスコーンをつくってみたのですが、これは大成功。マークに試食させると「なんでこんなに上達したの?」と驚いているので、腕じゃないのよ、材料を変えてみただけと白状すると、さらに驚いています。

 スペルト・フラワーでつくったスコーンは、小麦粉と同じ分量でつくっても、適度な重量感がつくのです。重い、というとちょっと語弊がありますが、小麦本来の質感が残っているといったらいいのかしら。

 なのでパンの方は、スペルト小麦の全粒粉をつかったブラウンブレッドは、いい具合にいきますが、イーストをつかったホワイト・ブレッドは、ふくらませるのがむずかしい。そのかわり、パンケーキなどの、もっちり系をつくるには最適です。


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松井ゆみ子のアイルランド・キッチン・ダイアリー「本邦初公開、私の台所」

2006-09-11 20:42:44 | 松井ゆみ子のキッチン・ダイアリー
 今住んでいるニューブリッジの家は、引っ越してきて早6年。マークが実家を売り払わなきゃならず、あわてて借りた仮住まいのはずが、すっかり居着いています。セミ・デタッチドといって、ふたつの家がドッキングした形。壁1枚でつながったとなりには、偶然マークの古い知人が住んでることが、貸借契約を終えた時点で判明し、世の中狭いよねーと大笑いでした。私たちの方の大家さんは、すごくいい人で、長居をしている理由のひとつ。毎年クリスマスには、ワインを持ってきてくれます。ふつうは店子が大家さんに、ご進物するんじゃないの? と思っていたのですが。

初公開。うちの台所です。黒っぽいところがオーブンで、料理中は足元があったかです。
 去年のクリスマス時期、私は東京に帰ってきていました。その後、春近くにニューブリッジに戻ると、マークが「大家さんのトニーから、ゆみこにプレゼントがきてるよ」といいます。それは、季節はずれのクリスマス用パッケージに包まれたワインでした。「この前のは、きっともうマークが飲んじゃっただろうから」と、あらためて持ってきてくれたクリスマス・ギフトだったのです。やさしいでしょう?

 2階建てで、階下にはキッチン&ダイニングルームと、暖炉(ガスですが)つきの居間。2階にはベッドルームが3つ。小さいながら、バドミントンができるくらいの庭もあるので、ふたり暮しには充分なスペースです。掃除はちょっとたいへん。

 台所で面白いのは、東京に帰ってきたときに初めて気づいたのですが、調理台の高さ。私には、ちょっと高くて、大きな鍋の中をかきまぜるときに、背伸びをしてしまいます。東京の実家に帰ってきたとき、今度は調理台が低く感じてびっくりしました。あ、トイレもよ。アイルランドから帰ってきてすぐは、腰掛けようとして、あやうく尻もちをつきそうになる感じ。私は身長160センチで、大きくはないけども小さいってほどでもありません。アイルランド人だって、北欧系の人たちに比べたら、それほど大きいってわけではないけれど、それでもアジア人にとっては、なにもかもが、ちょっとずつ大きいのよね。

 台所も、最初はスペースがいっぱいあって大喜びしたのですが、スペースに合わせてモノが散らかるってことに気づきました。ほら、大きなバッグを使うと荷物も増えちゃう、みたいな。

 気に入っているのは、台所の正面に大きな窓があること。以前住んでいたマークの実家も同じでした。食べ物は、自然光がいちばん、おいしそうに見せてくれるので、大事な光源です。私は写真を撮るときも、食べ物は自然光以外では撮りません。

 日照時間の長い夏場は、なるべく太陽が沈まないうちに夕食をとります。
 冬場は、キャンドルをたくさん灯した食卓で食事をします。やわらかい光は、料理をおいしく見せる大切な演出をしてくれますから。


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松井ゆみ子のアイルランド・キッチン・ダイアリー「アイスクリーム」

2006-09-04 00:25:20 | 松井ゆみ子のキッチン・ダイアリー
 日本に持ち帰れなくて残念! と思うもののひとつが、アイルランドのアイスクリーム。もう、めちゃめちゃ、おいしい!

ブレイの海岸沿いで思わず買っちゃったカワイイデコレーションのアイスクリーム。
 こっくりした牛乳の甘さは、濃厚なのにくどくなく、誰もをしあわせな気分にしてくれます。初夏になれば、まだどんなに肌寒くても、ソフトクリームの看板があちこちに登場し、ちょっと日差しが強くなると、待ってましたとばかり、大人もこどももソフトクリームを手にします。

 ソフトクリームタイプは、たいていバニラ一色。これにフレークスというほろほろとデリケートな歯ざわりのチョコレートをぷすっとさした、99(ナインティナイン)がポピュラー。ベリー系のシロップをかけてくれることも多いです。

 家の近所にも、アイスクリーム売りの車がやってきます。
 ポパイのテーマを鳴らしながら。こどもたちにまざって、小銭を握りしめて買いに走ります。自分ちの庭でソフトクリームをなめるのは、なんだか贅沢な気分。

 酪農のさかんなアイルランドは、ヨーロッパのなかでも牛乳の品質がバツグンです。EUが始まる当初、寄り集まる農業国には一種の危機感がありました。いずれEU内での競争が高まり、品質のいいものしか残れなくなる。たとえば、チーズならフランス、チョコレートならベルギーといったように、共同体の中で産物のすみわけが進むのでは、といった危機感です。

 確かに、ある意味正しく、農業ではありませんが、航空会社が限りなくEU内一本化に向かっているような図式が、見られるようになりました。

 アイルランドは早くから「わが国で死守すべきは乳製品!」と、特に流通しやすいバターを筆頭にしてきました。酪農王国としての誇りが、あらわれてれています。

 EU圏で、酪農のさかんな国はたくさんありますが、フランスなど大きな国では北と南でばらつきがありますし、アイルランドのように全土にわたって品質のいい牛乳がとれる国は、少ないでしょう。

 国自体が、ちょうど冷蔵庫くらいの気温で、必要以上に殺菌にめくじらたてずにすむことや、牧草に恵まれて丈夫な牛が育つことなど、理由はたくさんありますし。

 テレビのCMで、乳牛をいかに大事に育てているかをとりあげたものがありました。牛舎でもゆったりしたクラシック音楽が流れ、牛たちが気持ちよさそうに乳搾りをしてもらっています。でね、ひとりのファーマーの合図で、牧場のスタッフが一斉に手で牛の目をかくすの。そうすると、牧場の外の道を肉屋の自動車が通りすぎるっていう、ちょっとシュールなものなのですが。

 そんなふうにして育てられた牛たちからうまれるアイスクリームが、おいしいのは当然なのです。

 そろそろ秋風も冷たくなる季節ですが、10月くらいまでソフトクリームの販売は続けられます。冬もののコートが目立つ、シーズン終わり頃のカラ競馬場にもまだ、アイスクリーム屋さんのヴァンが来ていて驚いたことがありました。

 さらに驚いたのは、帽子も飛んでいきそうな寒風のなかでも、ソフトクリームを買う人たちが列をつくっていたこと!
 アイルランド人のアイスクリーム好きは、寒い季節にこそ証明されるのです。


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