いぬぶし秀一の激辛活動日誌

おかしな議員[わんちゃん]の激辛日誌です。日々感じたこと、活動報告、行政への提言など、本音で書き込む人気ブログです。

「大田区長の任期に関する条例を廃止する条例」に反対討論!

2018-12-07 | Weblog
 たちあがれ・維新・無印の会はただ今上程されました第108号議案「大田区長の在任期間に関する条例を廃止する条例」につき、大反対の立場から討論いたします。先ほど、区長室のボイラーの熱気により火災報知機が作動し、区議会が止まり、一時は避難する騒ぎになりました。区長の任期を3期とした条例を廃止する条例の討論開始と同時に「騒ぎ」は、あまりにもタイミングがよすぎます。

さて、平成19年9月26日大田区議会第3回定例会において、大田区長の在任期間に関する条例が上程され可決されました。その日、私はつぎのように反対討論を行ったのです。

 松原忠義区長は、区長選挙を通じ、区民有権者に対し多選の弊害を訴え、みずから3期で出馬しないことをマニフェストに掲げられ、民意の信託を得て当選をかち取られました。これは、西野大田区政、石原東京都政というそれぞれ強力なリーダーシップを持った首長のもと、区議会議員、都議会議員としてかかわった松原区長の深い憂慮と高い識見の結果であろうと大いに評価するものであります。

 地方分権の今日、首長の権限、責任が増大し、多くの弊害が指摘されております。1人の者が長期にわたり首長の座につくことにより、一つ、政治が独裁化する、二つ、人事が偏向、側近政治化する、三つ、利益団体等との癒着が始まる。それらの結果、行政が停滞する、職員の士気が低下する、イエスマンが台頭するなどであります。そこで、埼玉県や川崎市、杉並区などが県知事あるいは市区長の多選自粛条例を既に制定しているところであります。しかしながら、いずれも憲法の職業選択の自由、法のもとの平等、公職選挙法への抵触を避けるため、自粛努力に限定している点が特徴でもあります。

 憲法第94条並びに地方自治法第14条において、地方自治体は条例制定権について保障されており、地方自治体の義務や制限などは条例の定めるところによらなくてはならないとされております。しかるに、いかなる条例も日本国憲法またはそのもとに公布された法律との整合性が求められるのは言うまでもありません。総務省の首長の多選問題に関する調査研究会は、首長の多選禁止については憲法に抵触するものではないとの報告書を本年5月に発表し、国会レベルでの多選禁止に合憲とのお墨つきを与えましたが、いまだ識者の間では合憲、違憲双方の議論がなされていることも現実であります。

 さて、そこで本条例の条文を精査してみますと、付則に「本条例は平成19年10月1日現在区長の職にある者」との文言がございます。当初提出された条例案には、この付則、文言がなかったのでありますが、当初案を撤回され、再提出された案文につけ加えられたものであります。よく解釈すれば、松原区長が後任の区長の任期につき牽制するのは僭越であると熟慮された結果とも思えますが、反面、選挙向けのパフォーマンス、一部会派へのリップサービスという見方もできるものであります。実際に、そのような疑義から過去、神奈川県議会において松沢知事に限るという多選自粛条例が自由民主党、公明党の反対により否決されているのです。

 そもそも、我が国の憲法及び地方自治法、判例などは、一個人を特定しての法律、条例の制定を想定してはおりません。例えば、大田区民犬伏秀一は終生離婚しないように努めろというような条例が果たしてあり得るでありましょうか。他自治体の例を見てみますと、杉並区は対象を現区長に特定してはおりませんし、また、お隣川崎市については条例を期限つきとし、平成25年11月18日限りとしておりますが、この日まで現川崎市長が市長であり続ける保障はありませんので、特定の個人を対象としていないと言えるでしょう。ところが、本日上程された条例案では、その対象を松原現区長に限定しているのであります。この付則をつけたことにより、本条例案は、評価すべきものから、極めて個人的パフォーマンス、選挙用といった色彩の濃い、さらには法令に抵触する可能性すらあるものへと崩れ去ったのであります。

 松原区長が本気で区政改革に立ち向かわれ、3期お務めになった結果、多くの区民から再登板の要請があったとしたらどうされるのでしょうか。反面、次回選挙において残念ながら敗れた場合は、この条例はその存在意味を失います。であるとすれば、ご本人が機会あるごとに多選自粛を訴えられ、冒頭申し上げたような多選の弊害を常々念頭に置きながら、みずからを律する姿勢こそ望まれる大田区長の姿であろうと思います。

 つけ加えて申し上げるならば、総務財政委員会においての大田区議会民主党の討論は、ほとんどが本条例案に反対する内容でありました。しかしながら、区長与党という名のもと賛成に回られた心情は、察するに余りあるのであります。このこと、すなわち強大な権限のある首長の与党でいることに価値を見出すことが、結果として首長の多選の弊害を助長していると申し上げたら言い過ぎでありましょうか。

 以上、申し述べた理由から、松原忠義氏個人に限定するという我が国憲政史上稀有な条例案には到底賛成することができないのであります。既に賛成の意思表明をされている同僚議員各位におかれましては、良識にお訴え申し上げ、私の反対討論といたします。

 と反対をいたしました。

 まさに、この時私が懸念したとおりの事態がいま起こっているのであります。
では、ここにいらっしゃる当時の交渉会派はどう判断したか。
 
民主党は

提案された条例案において、その効力を施行当日に在任する区長に限るとした点については、多選禁止の恒久化を目指す民主党としては、これは100点満点と言うことはできません。しかし、現状大田区長の在任期間に関して特段の定めがないこと、これは問題であると、そのように考えています。また、条例として形を残すことにより、ころころと変わるのが人の心の常でありますから、これを抑制する効果を期待する、大田区における多選禁止に向けて一歩前進であると、そのように考え、本議案について賛成をいたします。

「ころころと変わるのが人の心の常であり」と、公約として三選と訴えても心変わりするといけないから条例化した、だから賛成だと極めて正しい討論でありました。その心配が本日明らかになってしまいました。

反対された日本共産党は

大田区長の在任期間に関する条例は、わざわざ現区長に限りその任期を3期12年に縛るものですが、これは区民の選挙権、選択権の侵害になるものであり、その宣言実行には、みずからがその考えに基づいて行えばいいことです。わざわざ条例化する必要がなく、反対いたします。

と、条例化などせずに「みずからが行えばいい」と断じており、これも正しい討論でした。

最大会派であり、松原区長が長く公認候補として活躍された自由民主党大田区議団は

松原区長が選挙の際に区民の皆様にそのようにしたいとの考えを表明したものであります。区民の皆様に具体的な形として明らかに示したいとのことであり、条例の趣旨の方向性については全面的に賛意を表明するものであります。大田区民の中で様々な議論がなされ、国民的にも成熟した議論がなされた一定の方向性が導き出されているとは言えない状況の中で本条例を提出されたことは、区長の見識の高さを示すものであり、大いに評価するものであります。また、その考え方を訴えの中に入れて、区民の方々に審判を受け、負託を受けたことも確かであり、その事実をどのように考えるかということは一つの判断材料であります。

 本条例案は自粛条例案ではありますが、実質的には多選制限と同様の効果を及ぼすと考えます。区長は付則の中でみずからにその自粛の効力を限定し、提案されましたことは、現況の中でのご判断としては大変すばらしいものであり、その見識に深く敬意を表するものであります。

と、松原区長が選挙の際に訴えた「多選自粛」を条例化したもので全面的に賛意を示す、自粛条例ではあるが、多選制限と同様の効果があり、自分自身にのみ適用する等、すばらしい、その見識に深く敬意を表する、と最大級のほめ言葉で賛成をされています。
 
 さてそこで、今回の自ら制定した多選自粛条例を自ら廃止するという、大演劇を披露されることになったのでありますが、その心中は「熟慮に熟慮を重ねた」とだけ吐露されたのであります。ご本人が11年前に危惧された「多選の弊害排除」については、ついにご説明いただくことはありませんでした。

 その結果伝わってきたことは「熟慮に熟慮を重ねた結果、少しばかりの批判はあっても多選自粛条例を廃止しても区長であり続けたい」との松原区長の熱い想いであります。

 今回の条例廃止は、自民党、公明党、国民民主党の賛成多数で可決され、松原忠義区長の11年前「3期で辞める」との区民とのお約束を破るお墨付きを区議会が与えることになります。はたして、平成19年9月26日のあの議論はなんだったのでありましょうか。区長の演劇に我々がお付き合いして、本日、その幕引きにも加担するという、区議会形骸化甚だしい、このことが正に多選の弊害なのではないでしょうか。

 強大な権限を持つ首長に寄り添う首長与党の存在と、多選の首長、これこそが11年前、都議、区議を務めつつ、前政権の20年間を見てこられた松原忠義区長のご見識であったと自民党、民主党の諸君が討論で絶賛したのであります。

 本日現在、来年の区長選挙に松原区長に対抗しうる有力な候補者の出馬の動きは聞いておりません。結果として、松原区長が四選を果たし16年間の長期政権が誕生することになるでしょう。松原区長自身が批判した前政権の20年間に迫る長期政権になります。

 現在でも、取り巻きの管理職の多くは「イエスマン」で固められている、と庁内で職員が囁いています。反面、過去にはその強大な権力を利用しようとする輩がナンバー2としてやりたい放題やっていた時期もありました。

 松原区長、私はあなたの人格、識見、能力には常に尊敬と親愛の念をもって接しております。しかし、この条例廃止にはどうしても賛成することができないのであります。

 どうか、平成19年9月26日に条例に賛成された会派の議員の皆さんにおかれましては、論理的矛盾を起こすことなく皆さんが「絶賛された多選自粛条例」を廃止する本条例案に大反対をし、大田区議会の見識を区民に示そうではありませんか。

 また、松原区長におかれましては、11年の長きにおける区長というお立場が、ご本人も気づかぬうちに「お役人の掌」で動かされていることに気づいていただきたいと強く、強くお願いし大田区議会の良識、たちあがれ・維新・無印の会の、そして、松原区長と極めてフレンドリーな犬伏秀一の友情溢れる反対討論といたします。




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