西村一朗の地域居住談義

住居・住環境の工夫や課題そして興味あることの談義

安藤忠雄建築研究所についての感想

2006-10-06 | 住まい・建築と庭
『日経』夕刊「こころの玉手箱」の今週最後は、安藤忠雄さん自身の「安藤忠雄建築研究所」の話だ。経緯は省略するが、現状は地下2階、地上5階の鉄筋コンクリート造、吹き抜け、エレベーターなし、である。安藤さんは1階に陣取って近くに外部と連絡用の電話がある。所内では私的メールは禁止、ファックスも余り使わないと言う。現在、アメリカ、イタリア、スイス、中国、韓国、台湾等で18ヶ所同時進行で仕事をしているらしい。だから安藤さんは毎日朝から晩まで研究所にはいないだろう。せいぜい週一でいるかどうか、だ。でもいわば「不便な一室空間」で皆働いていたら、様子がすぐ分かる。外部からの仕事の電話のやりとりを聞いていれば、進捗状況や問題点もすぐ分かる。クライアント(施主)は大抵、ここにやってくるから、実物を見れば「ほー」となる。社長などだったら、経営効率(というか労務管理)の優れた空間と思い「イチコロ」だろうな。安藤さんは「不便でも心に響くものを!」と言っている。そういえば「住吉の長屋」もそうだな。http://blog.goo.ne.jp/in0626/e/e21bf52c64232f7af3892e8054c7919a
前に司馬遼太郎記念館訪問記を書いて天井までの書架は、ロンドンの大英博物館がモデルでは、と言ったが、実はこの5階まで壁一面書架の自分の事務所がモデルだったのだな、と思う。http://blog.goo.ne.jp/in0626/e/a08cee021e8bdf9efc14e01a6dd5531f
ここで安藤さんがいらいらしたら「こらコルビュジェ!」と愛犬に当り散らしているのだろうな。(写真は、安藤研究所の内部)

奈良女子大学記念館と上野邦一さん『描いて学ぶ』

2006-10-06 | 奈良・精華町の思い出(教授時代)関連続き
第58回の正倉院展にあわせて10月24日から11月12日まで明治の木造建築で重要文化財である奈良女子大学記念館が一般公開され、中で上野邦一さんの『描いて学ぶ』特別展示がある。「記念館」はパリのノートルダム大聖堂と比較するのは一寸おこがましいかもしれないが、同じくフロントシャン、サイドシャン、バックシャンそしてインナーシャンであることは間違いない。「シャン」とは昔の学生用語、ドイツ語の「schon(oはoウムラウト)」のなまりで「美人」ということだ。一度ご覧あれ!
上野邦一さんは現在、生活環境学部長・教授で来年3月に定年退職、その記念に建物のスケッチ集『描いて学ぶ』を発刊、その原画などが展示されるのだろう。私は昨日、上野研究室で一冊買った。上野さんとは、名古屋時代(彼が名古屋大院生、私が豊田高専助手・講師)から一寸知っているが、上野さんが奈良文化財研究所に来たころから本格的に知り合った。建築史家である。その後、奈良女子大学に来ていただいた。上野さんのスケッチは、主に日本建築であるが、ラフなところと細かいところがあり、彼の注意点は、柱と屋根組の境あたり、「ときょう」、垂木、軒裏のあたりだと思う。その辺りが細かく描写されている。これも一度ご覧あれ!だ。

正倉院展と町の活性化

2006-10-06 | 地域居住学
第58回正倉院展が10月24日から11月12日で、奈良国立博物館で行われる。私は、毎回とは言わないが何度も行って、「宝物」が良くぞ残ってきてくれたものだ、と思う。ところで、「国立博物館」は独立法人化して観客増に力を入れ、努力が実って実際に増えている。ところが、収入が増えた分、より内容を充実させるのに使うのではなく、黒字だからと政府予算が減らされる、という馬鹿げたことが起こっている。そのために入館料を上げざるをえない、とのこと。ロンドンの博物館、美術館のように「入場無料」に、とまでここで言わないが、日本の文化・学術政策はどうなっているのだろう、と憤りを感じる今日この頃、皆さん如何お過ごしですか。
さて、昨日、奈良女子大に行った時、「現代GP」の部屋で「はじまりは正倉院展」というパンフレットを貰った。今度の正倉院展にあわせて、やってくる観客に、すぐ帰るのではなく奈良の他の場所、商店街等にも足を運んでもらい、駅と博物館の線部分だけでなく、町全体を面的ににぎやかにしていこうという企画である。「はじまりは正倉院展」で「途中は奈良の町々」そして「おわりは帰宅満足感」であろうか。いずれも奈良国立博物館をスタートとし、1時間から半日コースまで多様なモデルコースが設定してあり、お帰りは近鉄奈良、JR奈良となっている。スタンプラリーもある。特製の「正倉院文様のふろしき」が貰えるかも・・。混むのでマイカーはやめて公共交通手段で来て下さい、ということだ。パンフレットは奈良国立博物館を出るときに貰えるのでお忘れなく。こういう企画は商店街を含め町の活性化の一助であろう。それを調査研究している大学も協力している訳だ。
(写真は57回展示の平螺鈿八角鏡)