西村一朗の地域居住談義

住居・住環境の工夫や課題そして興味あることの談義

『進化する都市』(パトリック・ゲデス著 西村一朗他訳 鹿島出版会刊)の研究ー4 社会学との関係

2014-06-26 | 地域居住学
『進化する都市』(パトリック・ゲデス著 西村一朗他訳 鹿島出版会刊)の研究ー4 社会学との関係について述べたい。

日本の都市社会学は奥井復太郎さん、磯村英一さんに始まっているが、彼らはアメリカのシカゴ大学社会学部の研究を「都市社会学」の始まり(1920年代)とみなしている。が、イギリスのゲデスは1既に915年に『進化する都市』を発刊していたが、奥井さん等は、ゲデスには全く注目していなかった、と慶応大学の藤田弘夫さんは言っている。(論文「P.ゲデスと齢社会学の展開」による)

「ゲデスの都市研究は、都市計画学や地理学の分野では再発見であっても、(日本)社会学では発見であって、再発見ではない。都市社会学には、奥井復太郎以来、ゲデスの影はなかったといっても過言ではない。そしてこれに異をとなえる社会学者はいなかった。」(同上論文P.21参照)


で、僕に『進化する都市』を読んでみたら、と示唆した、故・絹谷祐規(きぬたにすけのり)先生(1964年当時、京大工学部助教授、修士論文の指導者)は、自らの学位論文で住宅供給をキチンとやるには家族の型を明らかにすべし、と考えていたので、社会学、家族社会学に注目し、蔵書にも社会学関係も多かったと言える。

でも社会学とりわけ都市社会学分野ではゲデスは殆ど取り上げられなかったのだ。今後、遅くないからゲデスをきちんと位置付けてほしいと思う。


『進化する都市』(パトリック・ゲデス著 西村一朗他訳 鹿島出版会刊)の研究ー3

2014-06-25 | 地域居住学
パトリック・ゲデスは、教育としては「進化生物学」を専攻した。そして19世紀から20世紀にかけて活躍した。生物学も新しい段階に入りつつあったが、都市計画(学)も新しい局面に入りつつあり、ゲデスも「異分野」からそこに関わらざるをえなくなった。

ゲデスは、多方面に目配りし、色々な分野で新しい局面を切り開いたと評価されている。

例えば、教育学、<環境と開発>の教育学でも足跡を残している。

私達が『進化する都市』を翻訳して少しして一橋大学の大学院生・安藤聡彦さんから問い合わせがあって、以後「細々と」付き合いが続いていると私は認識している。安藤さんの指導教官は、藤岡貞彦先生で、1935年のお生まれ、僕より6年年上にあたる。

安藤さんは、その後、「環境教育とゲデス」で学位論文を書き、今は埼玉大学の教授ではないか、と思っている。安藤さんから、藤岡貞彦編の『<環境と開発>の教育学』(同時代社)を頂いた。中に「環境教育学者」でイギリス人のキース・ウィーラーさんが共著者で含まれており、ゲデスのエジンバラの「アウトルック・タワー」の実践も紹介されている。

ゲデスの業績を『進化する都市』発刊100周年にも因んで、色々な面から評価していきたい。関連ある方々からの評価をお聞きしたい。

『進化する都市』(パトリック・ゲデス著 西村一朗他訳 鹿島出版会刊)の研究

2014-06-23 | 地域居住学
『進化する都市(Cities in Evolution)』は原版1915年に発行で、来年が発行100年となる。 僕たちの日本語訳本(1982年)発行からは来年で33年となる。復刻改訂版を出すいい節目と言えよう。

で、ぼちぼち「改訂」部を考えているのだが、今回、本の表題、特に副題については、付け加えておきたい。その方が、本の目的、性格が、より明白に分かると思うからだ。

副題としては、都市計画運動と市政学研究への入門、となっており、そのまま増補副題に採用したい。

第一に、都市計画を、市民や専門家の「運動」としてとらえており、かつ第二に、それを支え前進させるためにソフトな「市政学」という総合的学問を提起していることである。

「進化する都市」という中心軸を設定したうえで、新しい「運動と研究」をも設定していると言えよう。

三村浩史先生に聞いた話(聞き書きメモ)より

2014-06-22 | 京都の思い出(学生時代)
昨日、NPO法人西山夘三記念すまい・まちづくり文庫の総会・同懇親会で久しぶりに三村浩史先生(京大名誉教授、僕の京大建築学科7年先輩)とお話しした。たまたま、西山夘三先生は自伝で「建築家=三男説」にふれている話に及んだ。西山夘三先生も三男である。他に丹下健三、坂倉準三さん等がすぐ思い浮かぶ。で、やはり京大建築大先輩の東畑謙三さん(故人、東畑建築事務所創立者)から三村先生が聞いた話をしていただき「へー」と思った。東畑先輩は東畑兄弟の一員、長男の東畑精一さんは、日本農業経済学の泰斗で東大教授を歴任した。

東畑謙三さんは京都帝大・建築学科を大正15年(1925年)卒業、西山夘三先生は東畑さんの後輩の昭和8年(1933年)卒だ。東畑さんは三村浩史先生らに(昭和30年代以降と思うが)西山夘三批評をして「西山君は、庶民住宅の研究で研究の道に入って成功したと言えるが、もし設計事務所など建築家の道に入っても大成しただろう」と言われたと言う。


まあ東畑謙三さんは、京大建築学科卒の建築家の「走り」とも言えるので、西山先生がそうなったかもしれないが、わからない。西山先生自身は、「建築家」と称することもあった。西山先生の四部作の一つに確かに『建築論』(勁草書房)がある。もう一回見直してみたい。

東畑さんの作品として思い起こすのは、京大人文科学研究所で武田五一先生(京大建築学科初代教授)との共同設計ということになっているようだ。

東畑謙三さんについては僕の親戚筋とも「知り合い」だったことが最近分かった。

「建築計画学」「都市計画学」を生き生きと捉えるため先輩たちに対して「聞き書き」が必要と思うが、どうでしょうか。

『進化する都市』(パトリック・ゲデス著 西村一朗他訳 鹿島出版会刊)の復刻へ・・・

2014-06-17 | 地域居住学
数日前、鹿島出版会のW.さんからメイルがあり、1982年(昭和57年)10月12日に鹿島出版会から発刊された『進化する都市』(パトリック・ゲデス著 西村一朗他訳)の復刻をしたいが、どうですか、と問い合わせがあった。一寸考えて、同意することにし今日の朝「その旨」電話した。 今後、この仕事と高校卒(1960年、昭和35年3月)までの『自分史』のまとめが「大きな仕事」となるだろう。

『進化する都市』(パトリック・ゲデス著)を翻訳発刊した1982年(昭和57年)度は、又、「居住地管理に関する」学位論文を京大(工学部)に提出し、(1983年3月)に学位(京都大学工学博士)を授与された年度である。更に『進化する都市』(翻訳、編訳)を出してすぐ10か月間の文部省在外研究員でイギリス・ロンドンに出かけた年でもある。

私は『進化する都市』(パトリック・ゲデス著 西村一朗他訳)を数冊携えてイギリスに出かけた。家族3人(私、妻、娘〔中2~中3〕)で出かけ経験した生活は、帰国してから別に『いい家みつけた』として晶文社から発行した。

イギリスに出かけて、LSE(ロンドン大学)の森嶋通夫さん(故人、経済学者、当時LSE教授)とノッティンガム大学のヘレン・メラー(Helen Meller)さん(女史、ゲデス研究者)に『進化する都市』(パトリック・ゲデス著 西村一朗他訳)を献呈した。ヘレンさんの研究室の書棚には、各国語訳の『進化する都市』が置かれていたが、今はどうなっているだろうか。

当時、私は41~42歳、丁度人生の折り返し点ではなかっただろうか。今後、先に述べた二つの仕事をしっかりやっていきたい。


作品論、作家論から読者論へ・・・対象に対して観衆、聴衆、そして五感衆

2014-06-11 | 色々な仮説や疑問
最近、外山滋比古さん(お茶の水女子大名誉教授)の『乱読のセレンディピティ』(扶桑社)を「乱読」した。なかなか面白かった。90歳を過ぎても意気盛んで良い。

外山さんの別の本で、英文学者さらにいうと文学者として、今までのように作品論、作家論をやっていればいいかと言うと、そうではなく読者論が必要ではないか、それを加えてこそ普遍的な事として(世界に通用する)文学論が成り立つのでは、と論じている。そうだな、と思う。

まあ芸術やスポーツ、学術といった対象に対して、「作品」と「作家」の他に「観衆」「聴衆」などがいる。未だ練れていない言葉だが、「味衆」「嗅衆」「触衆」などがいて、それぞれに「論」が成り立つかもしれない。それらの「衆」をまとめて言えば「五感衆」となるであろうか。

バス通り裏 歌詞

2014-06-10 | 金沢の思い出
バス通り裏

中原美紗緒・ダーク・ダックス
作詞:筒井敬介
作曲:服部正

小さな庭をまんなかに
おとなりの窓 うちの窓
いっしょに開く窓ならば
ヤー こんにちはと手を振って
こんなせまいバス通り裏にも
ぼくらの心が かよいあう

小さな花をまんなかに
おとなりの窓 うちの窓
むこうがとじた窓ならば
なぜだろうかと ふりかえる
こんなせまいバス通り裏にも
目にしむけむりが 流れくる

軍事より平和外交を、内部留保の活用をー安倍政権と共産党ー

2014-06-09 | 時論、雑感
今日(2014年6月9日(月)、参議院決算委員会の質疑を一部をテレビでたまたま見た。夕方で終わりの方、共産党の井上哲士議員が質問していた。消費税8%で「庶民」が苦しんでいる問題から入って、最後は集団自衛権の問題だった。聞いていて、案外「接点」があるのではないか、と思った。勿論、正反対の政策が多いのだが・・・。

日本共産党は、前々から庶民の消費を温めるのが、内需を高めて経済(資本主義)も好循環にする、と主張しているが、安倍さんも大企業に対して「出来れば(内部留保をくずしてでも)賃上げしてください」と言っていて、今日、自分のこの要請を「自由主義経済では異例なのだが・・・」と言い、今度、一部賃上げやボーナスアップが実現したのは「ひょっとして共産党の内部留保を1%でも取りくずせ、と言っていたのも効いたのでは・・・」とも言っている。

また集団自衛権問題で、機雷を掃海するのは武力行使で認められない、とする井上議員に対して、実は(イランの)ホルムズ海峡封鎖を想定して「事例研究」で検討していると安倍さんは言う。外務大臣も、イランとは前々から友好関係を維持し、アメリカが国交断絶しているのとは、違うことを答弁していた。この平和外交が続けば石油シーレーンで機雷掃海と言う想定は不必要ではないか、と井上議員が言っていた。大臣席は苦笑だったが・・・。

経済のベースは庶民の懐を温めること、尖閣列島問題でも竹島問題でも北朝鮮拉致問題解決でも平和外交で解決を、というのは、自民党安倍政権と日本共産党は一部「接点」があるかもしれない、と思った。共産党が今少し成長するにつれどうなるか、見守っていきたい。