生き生き箕面通信

大阪の箕面から政治、経済、環境など「慎ましやかな地球の暮らし」をテーマに、なんとかしましょうと、発信しています。

記事のタイトルを入力してください(必須)

2010-12-05 07:37:17 | 日記
おはようございます。「かじりつく石を探している総理」「問責もどこ吹く風の面構え」(今朝のよみうり時事川柳より)
生き生き箕面通信729(101205)をお届けします。

・衝撃の白リン弾訓練――「安保50年」

 NHKのスペシャル番組「安保50年」は、1回目の昨夜が「隠された米軍」。ショックを受けたのは、白リン弾を使用する訓練風景です。「いまだに、白リン弾!」。ヘリコプターから投げ網のように白い煙を行く筋も引いて地上を覆う白リン弾。場所は、日本が誇る名峰富士の山麓です。白リン弾が投下されると、緑豊かな樹海が焼かれていました。焼かれる木々の姿が、罪のない子どもたちの姿とダブりました。

 白リン弾は、5000度(2500度の説も)という高熱であらゆるものを焼き尽くし、猛毒ガスを発生すると糾弾されている「非人道的兵器」です。白リンの粉は兵士がかぶっている防御マスクにくっつくとゴムを通過して顔まで届く「骨まで焼き尽くす」と恐れられています。

 アメリカ軍がイラク攻撃をした際、イラク中西部での武装勢力掃討作戦で用いられました。なかでも04年のファルージャ攻撃では、大量のロケット砲弾を撃ち込み、女性や子供を含む一般の市民を虐殺、その虐殺事態にも国際的に非難が巻き起こりましたが、なかでも非人道的とされたのが白リン弾でした。いまでもネット上では、白リン弾で大やけどさせられた子どもの写真が掲載されています。

 白リン弾による無差別攻撃は、ジュネーブ条約違反です。同条約の追加議定書で対人使用は非合法とされました(煙幕や照明としての使用は合法という抜け道はある)。アメリカは白リン弾の項目を批准していませんが、兵士には「対人使用は違反」と教えているので、ジュネーブ条約違反の兵器であることは認識しているのです。しかし、同時に上官が「照明として使ったといえばいいのだ」と、「現場適用の基準」を教えてもいます。

 そんな非人道兵器の訓練を、現在も行っている。それも「わが富士山」のふもとで、豊かな緑を平気で踏みにじりながら行っている。日本の自衛隊との共同訓練という形で米軍の存在を、日本国民の目から隠しながら行っている。

 太平洋戦争後、日本を占領した米軍は、神風特攻隊や玉砕に現れた日本人の「狂気」を恐れ、米軍基地を日本列島全体に展開しました。その米軍の訓練や、米兵の傍若無人の振る舞いが嫌われ、「ヤンキー・ゴー・ホーム」を叫ぶ反基地闘争に押し出される形で、基地は沖縄に集中する結果になりました。

 沖縄への基地集中を本土人は見て見ぬふりをして、米軍基地の本土からの追い出しを果たしました。それだけ米軍基地が集中した沖縄は、冷戦下ではアメリカにとって最重要戦略拠点と位置付けられ、日本独立の際も本土から切り離されてアメリカの統治下に取り残されたのは、歴史が示す通りです。普天間米軍飛行場問題の淵源はそこにあります。

 そして、沖縄での訓練がやりにくくなると、今度は「自衛隊との共同訓練」という形をとり、アメリカ軍はその陰に隠された形で違法兵器の訓練を行う。

 日本で白リン弾訓練をすませて、扱い方に習熟した兵士がイラクへ送り込まれているのです。

 その実態を、日本のメディアは、朝日も読売の記者も取材もしようとしなければ、記事にしようともしません。朝日や読売にも、安全保障問題を担当する専門の記者はいるのです。しかし、仮に問題意識のある記者が取材して原稿にしても、編集トップが「ボツ」にしてしまいます。結局、いつの間にか、「米軍にヤバいネタ」は取材もしない自己規制状態になってしまいました。

 今回、NHKの姿勢は、白リン弾の映像に関する限り「大スクープ」と評価できます。欠けていたのは、白リン弾が何を意味し、現在どういう位置づけになっているかという解説です。イラク・ファルージャと結びつけたら、多分、上層部から「待った」がかかったでしょう。あれが放送できる限界だったかもしれません。