事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「作家の値段」 出久根達郎著 講談社刊

2008-11-27 | 事務職員部報

51bar8h0ywl  新刊書が売れないなかで、新古書店とよばれる業種だけは絶好調である。代表格ブックオフの値付けのシステムはすこぶる単純で「特A」(発行から三ヶ月以内の新刊→定価の10%)「A」(発行日から一年以内のもの→6%)「B」(本をきれいにする作業が必要な本→4%)「C」(汚れや紙焼けがある本→1%)「D」(廃棄処分)これだけ。

しかし、旧来からの古書店は違う。あの頑固な古本屋の親父たちの値付けこそ、作家・作品への第二の評価なのだ。後世に残すべき作品にはしかるべき値を付け、資料として用をなさない本には捨て値を付けてみせる。それが商売として成立している(悪書には悪書で希少価値を見つけて)現状はやはり豊かだといえるだろう。

古書店を営んでいた出久根は、そのあたりの事情を近代作家のてんこ盛りのエピソードとともに語ってみせる。吉屋信子の父親は足尾銅山の鉱毒問題のときに強制執行を行った郡長であり、田中正造が少女時代の吉屋のおかっぱ頭をなでたことがあるとか、極貧に沈んだ樋口一葉が、意外にはすっぱな女性であったこともこの書で知ることができる。

わたしが好きなのは「銭形平次」を著した野村胡堂の挿話。学費にこまって大学を中退した胡堂は、晩年に財団をつくり、苦学生を助けた。その財団の基金は、胡堂の奥さんの同僚教師の息子、井深大という若者がおこした東京通信工業の窮状を、胡堂が出資して助けたことによって得たもの。その会社こそ、今のソニーなのである。

07年9月28日付事務職員部報「日当③」より。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

過去の人

2008-11-27 | 事務職員部報

Abeshinzo01 2007年9月21日付事務職員部報「日当②」より。

この部報が職場に届いているときは、前首相のことなどすっかり忘れ去られているかもしれません。でも、「」は政治家として一種の典型でしたから、考察しておくのも必要な作業でしょう。
 いったい、彼に何が足りなかったのか。

「効率化を徹底し、メリハリをつけ、真に必要な教育予算は財源を確保したい」

「学校の事務処理の外部委託やボランティア活用も考えたい」

「優秀な教員を必要数確保するのは重要だ。一方で、行政改革推進も必要だ」

いずれも五月の彼の発言。首相の座をおりた人間の、過去の答弁として読むと、実は何も言っていないに等しいのがよくわかります。彼の答弁はまことに流暢でした。それは認めます。でも、それがこちらに響いてこないのは、それこそ壮絶に空虚だった前任者以上に内実がともなっていなかったからかも。

 今日(九月十八日)現在、次の首相が誰になるかは決定していませんが(まあ、福田なのでしょう)、広告代理店がしかけたに違いない街頭演説の様子などをみると、あの党に内実を求めること自体がむなしいことなのかと暗澹たる気持ちになります。有権者であるわたしたちの方に求められているのは、冷静に事態を見極める、それこそ選挙民としての内実ではないかと思います。逃げ出した彼を批判し、すっきりして済む話ではないのですから。

……まさか後任の福田まで一年で総理の座をほっぽり出すとは予想もしなかった07年の秋。いやはや。08年冬がこんな具合だと、いまの人の行く末にもどうやら暗雲が……

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする