事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「誰か Somebody」宮部みゆき

2008-05-05 | ミステリ

Somebody 上昇志向皆無。家族と静かな毎日を過ごしたいとだけ思っている男。ただ、愛しあった女が財閥の娘だったため、結果的に逆タマにのることになる。そんな彼に義父から密かに小さな依頼が……

ミステリとしては圧倒的に弱いが、この主人公の醒めぐあいはいい。神経がささくれだっているときに読んだせいでわかるのだが、宮部みゆきが造形したキャラのなかでも出色の“気づかいの人”である。この主人公、シリーズ化してくれないかなあ。

……こんなリクエストに「名もなき毒」で応えてもらえるとは。しかもどう考えても第三作がありそうだ。うれしい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「出口のない海」「震度0」横山秀夫著

2008-05-05 | ミステリ

0 一時期の“月刊横山秀夫”と呼びたくなる新刊ラッシュはさすがに終結。しかしこれだけ出ているとやはり出来不出来はでてくる。大戦時の特攻兵器、人間魚雷回天をとりあげた「出口の~」は、横山がこのネタをやるからにはさぞかしねちっこく迫るのであろうと思ったら意外にあっさり。なんかもったいない。

逆に「震度0」はお得意の警察内部のキャリアとノンキャリ、そして準キャリア(あるんですねそういう立場)の、“男の嫉妬”全開の情報戦。人間、そこまでいつも腹黒くはないぞ、と思いつつもやはり面白い。でも、オチがなあ……。いずれにしても、やっぱり書きすぎだ横山!

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「忍 SHINOBI」('05 松竹)

2008-05-05 | 邦画

Shinobi 悪評サクサクである。曰く

・軽すぎる
・エピソード集にすぎず、ストーリーとして機能していない。
・画面は確かにきれい。でもそれだけ。

……当たっているさ。でもホリ家が出した結論は

・それのどこが悪いんだ

である。なにしろ山田風太郎の原作『甲賀忍法帖』自体がトリッキーな忍法のお披露目合戦なんだし。ちなみにストーリーは……

ときは徳川家康が天下を統一した後の1614年。伊賀と甲賀の二大忍者勢力は、互いの交流を断ち、争うことも禁じられていた。ところが両陣営の跡取りである朧(仲間由紀恵)と弦之介(オダギリジョー)は、それぞれの身分を知らぬまま偶然に出会い、恋に落ちる。さらに、家康からの非情な命令「両陣営から精鋭5名ずつが戦い、勝者により次期将軍が決せられる」が下され、二人はその、互いの存亡を賭けた殺し合いに参加を余儀なくされてしまう。

……むちゃでしょ(笑)。強引すぎるロミオとジュリエット。しかしなによりも当代きっての美男美女である仲間由紀恵とオダギリジョーがひたすら美しく撮れているのだから文句はない。スター映画として、立派に機能している。

 CGの多用にも批判はあるようだが、作家のイマジネーションを安価に画面に定着できるツールと考えれば、マーケットの小さい日本映画にとって必要不可欠なものではないだろうか。ばかばかしい(ほめてるんです)忍術の連続はもちろん、昔はウジャウジャいたらしいトキの群舞など、映画ならではの興奮にCGは大きく寄与している。

 ま、そんな小細工よりも、仲間由紀恵、黒谷友香、沢尻(パッチギ!のあの娘だよ)エリカという文句なしの美女をたっぷりと楽しむことができて、余はしごく満足。意表をついたラストに娘が感涙していたように、観客がそれぞれに楽しむポイントを持っているということだけでも、こりゃー合格点ではないですか。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

JR 5両目~付和雷同

2008-05-05 | ニュース

4両目からのつづきです。

わたしが目にしたかぎりでは、今回の脱線事故については以下のように報じられた。

第1報:脱線→死傷者の数の速報
第2報:原因探し→JR西日本が、意図的になのか置き石にミスリードしようとした時点でこの会社の隠蔽体質は露わになっていたわけだ。
第3報:事故のあった夜に、社員たちがいたるところで宴会をやっていたことの糾弾。
第4報:事故当時車両にいた社員が、負傷者を助けることもせずに出勤したことの糾弾。
第5報:被害者たちがなぜその車両に乗ることになったかの追跡。および激高する遺族を含めた葬儀の映像を繰り返しオンエア。
第6報:高見運転士の行状と日勤教育の影響の検証。
第7報:過密なダイヤグラムがなぜ組まれたかを経営的視点で追う。

そして一ヶ月がすぎ、例によって忘却が始まろうとしている。
わたしがつくづく情けないと思うのは、これらがとにかく“一斉に”行われたことだ。宴会の糾弾に顕著だが、糾弾が始まった途端、その会合の意義や事情も忖度せず(旅客を引率していた事例すらあるというのに)、宴席は徹底的にほじくり返され、広報担当者は内心はどうあれ何度も何度も謝罪する。こんなことで事故の原因がわかるわけでもなく、体質の改善につながるかは甚だ心許なく、そして遺族の心が慰撫されるかは疑問だというのに。それでも報道各社は宴会の糾弾に血眼になり、もう誰にも止められなくなっている。記者会見における読売のヒゲ記者の横柄な態度が問題になったりしたのは、視聴者もそんなマスコミの姿勢に辟易していたからではないのか。

“付和雷同”“極端から極端へ”“みんないっしょに行動する”……日本人の特性だとよく言われる。でもその習性は、マスコミの姿勢が加速させていると考えられないか。記者クラブなどという存在にいまだにあぐらをかいている彼らは、特ダネをねらうより先に、特オチを恐れている。どの新聞も主張はともかく内容に差がないのはそのせいだ。

足を引っ張り合い、突出を認めず、既得権にしがみつく……一種の特権意識を武器に、彼らは今日も心ない報道を続けている。わたしたちはそんな紙面や映像に踊らされることなく、実は多くのJR社員が献身的に救助活動や遺族への対応を行っている事実を知るべきだし、遺族の怒りがマスコミにも向かっていることを感じるべきだ。多くの市民がそんなメディアリテラシーを獲得した瞬間こそ、マスコミも覚醒せざるをえず、日本人が一律一斉主義から脱却できるときでもあるだろう。わたしが生きている間に、そんな瞬間はとても訪れてくれそうもないが。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

JR 4両目~尻馬にのって。

2008-05-05 | ニュース

3両目からのつづきです。

職員らに嫌がらせ計184件…女性運転士ら軽傷
 JR福知山線の脱線事故後、JR西日本の運転士らが乗客から暴行されたり、「人殺し」などと暴言を浴びせられる嫌がらせが多発している。西日本旅客鉄道労組(JR西労組)など関連3労組の発表によれば、7日までに社員への暴行が6件、暴言が160件あり、線路内への自転車の放置やレール上の置き石も計18件で、総数は184件にもなるという。
 具体的には、事故後にボウリング大会を開いていたことが発覚した6日午前には、大阪駅のホームにいた20代の女性運転士が、背後から足首を蹴られて軽傷を負ったほか、別の女性運転士は乗務室の窓に「命」と書かれた紙を逆さまに張られ、別の乗客グループから「JRは人殺しだ」などと繰り返しなじられた結果、精神的苦痛で勤務ができなくなり4日間の休暇を取った。復帰後も電車への乗務ができずに内勤をしている。
 このほか、駅員や車掌らが平手打ちされたり、空き缶やペットボトルを投げつけられるといった嫌がらせが続発。組合側は「度を越した批判はかえって安全運転のさまたげになる。やめてほしい」と呼びかけている。
ZAKZAK 2005/05/11

Mail01b さて、JR西の話では、毎日新聞の5月9日(月)号に、山田孝男さんという記者が「尻馬に乗るな」という意見を載せていました。「『汝らのうち罪なき者、石を擲て』という旧約聖書の一節を思う人もいるだろう」と紹介しながら。マスコミ報道の病理!

今回の事故については、日勤教育に代表されるJR西日本の体質そのものに問題があるんだと冒頭でふれた。過密なダイヤを組んでおいて、遅れが出るたびに草むしりや居残り学習を課す“懲罰主義”は、国鉄が民営化された当時、国労の組合員を虐めぬいた悪癖がいまだに生き残っていることを示すものだ。そのすべてを象徴するとされる某相談役こそ、民営化三羽烏と称された男たちの一人であることは、この事故の遠因がどこにあるのかを如実に示すものだろう。

しかしそのことよりも、この事件がわたしを憂鬱にさせたのはまたしても報道の姿勢だ。マスコミは今回こんなパターンで報じている。あ、これは次号で。

5両目につづきます。
画像は、列車といえば思い出す「北国の帝王」。男くさ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

JR 3両目~でんしゃでGo!

2008-05-05 | ニュース

PART2からつづいています。

……今度は県内の鉄っちゃんから。

Mail02a しかし夫婦で笑ったのは、JR西日本の例の宴会や旅行の件で、とめようとした人が8人、酒を飲まなかったのは8人とのことだが、一体どうやって数えたんだ?!この会社はあまりにも身内をさらしものにしていませんか?(関係者~どんな関係者かはすみません、マル秘でして~の話を総合すると、本州のJR3社の中で西日本がいちばんそうした傾向は強いらしいと前から言われているよう)

 なお、これは余談ですが(てっちゃん、と馬鹿にしないでね)運転時間に余裕がある、つまり数分遅れてもわりとあっさり定刻にもどることが可能なのはどうやらJR東日本らしい。西日本のほうが、特に近畿圏で私鉄各社との激しい競争に何十年もさらされているせいか、めいっぱいギリギリとばさないと定刻運転にならないダイヤ設定のようである(実際、京都~大阪間の新快速で運転台のすぐ後ろに乗っていたことがあるが、スピードメーターを見ていたら本当に130キロで飛ばしていた。おそろしいくらい。それでも1分ぐらいの遅れは回復しなかった)。JR東日本の場合、ある程度余裕があるので、新幹線も含め、定刻より早く到着することは多いようである(某運転士に言わせると、早くつくのは乗客へのサービス、とのこと)。ただし、仙台~山形間の仙山線はめいっぱい飛ばさないとダイヤどおりになりにくい。あそこは急勾配&急カーブが多く、仙山線を運転するのはいやだ、という運転手はけっこう多いらしい。落ち葉のシーズンは坂を電車が登れずにしょっちゅう運休になるし。

……本人は否定しているが明らかにマニアに走っておる。いますね、運転席の後ろにかじりつくように立っている鉄道オタク=てっちゃんたち。「鉄道ファン」を愛読し、子どもの頃の夢が「でんしゃのうんてんしゅさんになる!」あるいは「でんしゃになる!」(笑)な人種。今回の高見運転士も、おそらくはそんな夢をいだいてJR西日本に入社したのだろうが……

PART4につづきます。
画像は「交渉人 真下正義」のお手本になった「サブウェイ・パニック」。英語に堪能な人なら、ラストのやりとりにうなったはず。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする