事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「ボビーZの気怠く優雅な人生」THE DEATH AND LIFE OF BOBBY Z

2007-12-02 | ミステリ

Bobbyz ドン・ウィンズロウ 角川文庫

 ウィンズロウはもっともっと評判になってもいいと思うんだけどなあ。「ストリート・キッズ」(創元推理文庫)に始まるニール・ケアリー・シリーズ(大傑作。早く続編の邦訳を出さんか創元!)にしても、父親と息子の関係を描かせたら天下一品。

この新作も、子どもの命を救うために「その子は、おれの息子じゃない」と主張する主人公に(これは事実なのだが)、子どもが「息子だよ!」と叫ぶシーンなど、病気で気が弱っていたせいもあって本気で泣いてしまいました。能天気なハッピーエンドも笑えるし、東江一紀の訳も相変わらず快調。キッチュすぎるカバーデザインにめげないで買ってみてください。

4488288014 ……2007年現在、なんとポール・ウォーカー主演で映画化され、なんと日本公開もされ、そして予想どおり山形では公開されないのでした(T_T)
ニール・ケアリーものはめでたく完結しております。

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「レボリューション№3」REVOLUTION No.3

2007-12-02 | 本と雑誌

Revolution1 金城一紀著 講談社

 「GO」でホームランをかっとばし、直木賞もゲットした金城の受賞第1作。彼の小説がウケるのは、近頃珍しいまっとうな青春小説だからだろう。「高二時代」あたりに掲載されてもおかしくない展開。体育教師はひたすら憎たらしくアタマ筋肉で、ものわかりのいい年寄りの生物教師もいる……まっとうでしょ?

メインのストーリーは、偏差値の低い男子校の悪ガキたちが、いかに近所の女子高の文化祭に突入するか。病気の友人を救うために医学を志したり、陳腐と言えば陳腐。でも旺文社の学習雑誌なら大喜びだろう、もう無いらしいけど(笑)。『大人にとってこうであってほしい十代像』(適当に不良、元気いっぱい、過激な読書)から逸脱できないあたりが金城の教養主義的限界であり、読後感の爽やかさの所以でもある。でも、今は誰もこんなものを書いてはくれないんだから、金城はやはり貴重な存在だ。おすすめざんす。

Yoko_maki ……そして2007年現在、金城は岡田准一、堤真一主演ドラマ「SP」で大ヒットをかっとばしている。こちらもまた、まっとうなドラマなのだ。真木よう子がとてつもなく美しい裸体の持ち主なのをみんながこの番組で気づいてしまったあたりがちょっと残念(^o^)

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深夜の人たち~林美雄 第二夜

2007-12-02 | 芸能ネタ

Harada1 第一夜からの続きです。

林美雄のパックで、どうしても忘れられない回があった。

 その日の林は、いつもと調子が違い、トーンが暗く(まあ、初手から明るい人ではなかったが)、内省的なつぶやきが多かった。
「女房と知り合ってね、デートしたんですよ、プールで。でプールサイドに上がった彼女の胸を見て、『くそ、この胸ほかの男に渡してたまるか』って思って、それでプロポーズしたんだよね……」
……まあ、男の本音はこのあたりにあるとしても(あるよね)、それは言わない約束でしょ、というパターンだろう。

 エンディング近く、トーンが違った理由が明かされる。
「ディレクターに『美雄ちゃん今日放送できる?』ってきかれたんですけど、ちょっと申し訳ない放送になったかな。」

Fujitatsuya  前日に、お父さんが亡くなっていたのである。だけどプロならしっかりやれよ、という演歌歌手的理屈もあるだろう。しかしその日、ほとんど涙声の彼の最後の言葉は、どんなプロらしさよりも私の心を動かした。

「親父についてはね、ものすごく言ってやりたかったことがひとつあって…………あんたのションベンは臭かったなーって……」
深夜放送という媒体以外に、果たしてどんな場がこんな発言を許すだろう。「深夜の解放区」という言葉はあまりに決まりすぎていて好きではないけれど、確かに、そうとしか形容できない空間だった気がする。

 そしてその林も、あれから二十数年たって、一人の父親として逝ってしまった。喪主は、奥さんがつとめたようだ。
 お別れの会に、あの頃のメンツが勢揃いしたら素敵なのに。
鈴木清順は例によって飄々と焼香でもするのだろう。
中川梨絵は酔っ払っていないといいけど。
原田芳雄は「りんご追分」を歌ってくれないだろうか。
藤竜也も「花一輪」を歌ってくれると嬉しいのに。

そして、久米や小島の弔辞があるとすれば、あの空間への、文字どおり弔いになるのかもしれない……。

Photo_3 ※深夜放送豆知識。
パック・イン・ミュージックの“パック”が、シェイクスピアの「真夏の夜の夢」(だっけか)に出てくる妖精のことだって知ってました?

もう止まらない。「深夜の人たち」はシリーズ化します。

次回はこちら

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深夜の人たち~林美雄 第一夜

2007-12-02 | 芸能ネタ

Photo 林美雄アナウンサーは、(2002年)7月13日 午前5時10分頃、肝不全のため入院先の病院で亡くなりました。58歳でした。
 林アナウンサーの経歴や業績については既に各紙面でも報道されていますが、私共アナウンサー仲間にとっては、良き同僚であり、先輩であり、先生でもありました。
 4年半前に胃ガンが見つかって以降は入退院を繰り返しつつも、昨年のアナウンサーイベント「アナフェスタ2001」には元気に出演するまで回復し、またあの美声と名調子を聴けるチャンスも増えるのでは、という期待と願いも虚しく逝ってしまったことは本当に残念でなりません。
 ここに、心からご冥福をお祈りいたします。
 なお、葬儀は親族のみの密葬で行われますが、8月25日にTBS有志でお別れの会を開く予定です。
TBSメール「アナウンサー通信」より

……それぞれの世代によるのだろうが、私が最も深夜放送にはまっていたのは1970年代。まるまる、私の十代にあたる。
 数多くのDJ(まだパーソナリティという呼称は一般的ではなかった)のなかで、もっとも70年代的なものを体現していたのは、意外なことにTBS“社員”林美雄だった。

Kojima_ikkei  この人が純朴な山形の少年に与えた影響は計り知れない。深夜1時からのパック・イン・ミュージックにおいて彼が放つ日本映画やロック業界話こそ、その道(笑)に私を走らせた元凶だ。日活ロマンポルノや東映やくざ映画のディープな世界を紹介し、桃井かおりや酔っ払った中川梨絵(「竜馬暗殺」「○秘女郎責め地獄」)をゲストに呼び(勝手に乱入され)、『ユア・ヒットしないパレード』(文化放送の「ユア・ヒット・パレード」のパロディ)のコーナーでほとんど無名だった荒井由美佐野元春を徹底的にプッシュした慧眼の人。「アンジェリーナ」なんか何週間1位にランキングされただろう。

 彼のほとんど同期に小島一慶久米宏がいたわけだが、一番放埒に見えた林が会社に残り、どの程度のランクなのかは判然としないが次長級にまでのぼった経過はよくわからない。最もフリー向きと思われた小島がスキャンダル(金髪買春、だったか)でつぶれ、久米がご存知の活躍をしていることに、彼がどんな思いでいたのかも。

Photo_2 話はちょっとそれるけれど、伝説の名放送として名高く、後に何度も再放送されたのが「墓地を歩きながら実況する(何を?)小島一慶を、陰に隠れながら小声で『バカだねーあいつ』とか揶揄し続ける久米宏」という、こう書くとわけわかんないのだが当時の深夜放送の何でもあり状況がよくわかる小島一慶パックもあったっけなー。

以下第二夜へ。

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