事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

ワイルダーならどうする? その3

2007-12-04 | 本と雑誌

Marylinmonroe その2はこちら

マリリン・モンローその1)
BW(ビリー・ワイルダー):「お熱いのがお好き」の初日のラッシュを見たモンローが言った。「がっかりだわ。カラーの映画だとばかり思ってた。私はカラーの方がよく映えるのに」そこで彼女に言ってやった。「いや、カラーも試しているんだ。テストもした。」これは嘘。「いいかい、男に女の扮装をさせるときは、白粉もあつくメイクも濃くしてひげ剃りあとの目立つ男の肌を隠さないといけない。だから白黒で撮ってみたんだ」

CC(キャメロン・クロウ):それを彼女は鵜呑みにした?

BW:そう、鵜呑みにした(笑)。

Raymondchandlerレイモンド・チャンドラーとアガサ・クリスティ)
BW:レイモンド・チャンドラーからは、まずいちばん最初に、真のセリフとはどういうものかを学んだ。彼に書けるのはそれだけだったから。それと独特の叙述。「男の耳からのびた毛は蛾をとらえるほど長かった」とか、他にも私の好きな、例えば「水の入っていないプールほど空虚なものはない」といったものをね。でも彼には構築する力はまるでなかった。一緒に仕事をした頃(「深夜の告白」)、チャン ドラーは六十才くらい。彼にはどこか片手間仕事の意識があったようだ。チャンドラーはアガサ・クリスティも嫌いだった。でもあの二人は互いの欠けたところをもちあっている。クリスティは構築することを知っている。ストーリーの細部はときにあまりに月並みだったけれど、構成力はあった。詩心にも欠けていたがね。

(スターとの関係)
Marlenedietrich CC:レンズを通して見たとき、ある意味で、ディートリッヒに心を奪われないでいるのはむずかしいと思いますが?

BW:私は惚れなかったよ。スターとは寝ないんだ。私の大原則だ。映画作りに忙しくてそれどころじゃない。もしもそっちの方向に気持ちがうずいてしょうがないとしたら……そのときはスタンドインと寝るね。遊ぶ楽しさは女優とかわらず、そしてそれ以上だ。女優ならあとで髪を整えないといけない。その分撮影によけい時間がかかる(笑)。

この大嘘つきが

その4につづく

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ワイルダーならどうする? その2

2007-12-04 | 本と雑誌

Audrey_hepburn その1はこちら

ハンフリー・ボガートとの確執をきかれて)
「カメラマンが耳打ちした。『照明を何とかしなくちゃ。ボガートが喋るとつばが飛ぶんですよ。だから逆光のライトは当てられない。バックライトは致命的だ。』私はオードリー・ヘップバーンについている衣装係の女性に、常時タオルを用意しておくよう注意を促しただけ。ただしはたから気づかれないように。」

スタンリー・キューブリックについて)
「すばらしい監督だと思う。でもときどき……どうにも理解しがたいのだが……『バリー・リンドン』だが、人工照明でなく、ろうそくの火で人物を撮るにはどうしたらいいかで六ヶ月も頭をしぼる。ろうそくの火だろうが何だろうが誰も気にかけやしないじゃないか。」

オードリー・ヘップバーンその1)
「ひとを魅了せずにおかない人間でも、カメラにおさめると魅力がどこかにけし飛んでしまう。ヘップバーンにはカメラも奪えぬ何かがあった。そしてそれはふたつとないものだ。彼女は彼女の時代に永遠に存在する。スクリーンの彼女は実際の彼女とはまた全然別物だった。気品が欠落するのじゃない。気品はそのまま。そこに何か新しいもの、何か貴族的なものが加わる。最高にすばらしい。」

Barrylindon (オードリー・ヘップバーンその2)
「撮影所に顔を出したときには一頁半のシナリオしかなかった。それで丸一日の撮影に当てなければいけない。時間稼ぎをするしか手はない。そこでヘップバーンのところへ行き、打ち明けた。『セリフをとちってほしい。間違えてほしい。頼む。何とか助けてほしい。一頁半しか撮影するところがないんだ。』彼女は言った。『やってみるわ』そして、事実彼女はやってくれた。こう彼女は訴えた。『頭ががんがんするわ。すこし休ませて』そして15分、一時間と彼女は横になってくれて、おかげで一頁半のシナリオで6時まで何とかもたせることができた。あのとき、気むずかし屋と観られたかもしれないし、頭に穴があいていると噂をたてられても困っただろう。ところが、何も気にかけなかった。平気で私の願いを聞いてくれた。」

わたしはオードリー・ヘップバーンは知性と理性の人だと思っているけれど、それ以上に情の人だったのね。その3につづく

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ワイルダーならどうする? その1

2007-12-04 | 本と雑誌

Photo 『ワイルダーならどうする?』
ビリー・ワイルダーとキャメロン・クロウの対話
キャメロン・クロウ著 宮本高晴訳 キネマ旬報社

 ビリー・ワイルダー……と聞いてどんな印象をお持ちだろう。シニカルなセリフと端正な映像?ハリウッド最高の職人監督?いずれも正しいけれど、それ以前に新人監督キャメロン・クロウ(「ザ・エージェント」「あの頃、ペニーレインと」「バニラ・スカイ」)に彼が授ける映画の魔法の数々は、フランソワ・トリュフォーにヒッチコックが語った(「映画術」)あざといまでのトリッキーな映像づくりよりも、わたしには大きな示唆に富むように思えた。偉大な老教師、が第一の印象だろうか。

 ワイルダーの主なフィルモグラフィは以下のとおり。

「失われた週末」The Lost Weekend(主演レイ・ミランド) ‘45

サンセット大通り」Sunset Boulevard(グロリア・スワンソン) ‘50

「第十七捕虜収容所」Stalag 17(ウィリアム・ホールデン) ‘53

麗しのサブリナ」Sabrina(ハンフリー・ボガート、オードリー・ヘップバーン)’54

「七年目の浮気」The Seven Year Itch(マリリン・モンロー) ‘55

「翼よ!あれが巴里の灯だ」The Spirit of St.Louis(ジェイムズ・スチュワート)’57

「昼下がりの情事」Love in the Afternoon(オードリー・ヘップバーン) ‘57

情婦」Witness for the Prosecution(マレーネ・ディートリッヒ) ‘58

「お熱いのがお好き」Some Like It Hot(トニー・カーティス) ‘59

「アパートの鍵貸します」The Apartment(ジャック・レモン) ‘60

「あなただけ今晩は」Irma la Douce(シャーリー・マクレーン) ‘63

「恋人よ帰れ!わが胸に」The Fortune Cookie(ウォルター・マッソー) ‘66

「お熱い夜をあなたに」Avanti!(ジャック・レモン) ‘72

「フロント・ページ」The Front Page(ジャック・レモン、ウォルター・マッソー)’74

「悲愁」Fedora(ウィリアム・ホールデン、マルト・ケラー) ‘79

Billywildertheatermosaic ……凄すぎるラインナップ。当初は英語がしゃべれず、生涯ドイツ訛りが抜けなかったこの移民の、クールな言語感覚をその原題からも感じてほしい。

そして’81の「バディ・バディ」(日本ではビデオ発売のみ)以来、彼は1本も撮れなかった。2002年3月、享年95歳で亡くなるまで、彼はビリー・ワイルダーという偉大な存在ではあったけれど、現役の映画監督ではなかったのである。

 新聞記者を皮切りに数々の職業を転々としたワイルダーは、ナチスの台頭のためにヨーロッパを離れ(母親はその後強制収容所で亡くなった……彼が「シンドラーのリスト」の映画化権をスピルバーグに取られ、穏やかな口調ながらも悔しがっていたことが読み取れる)、アメリカに渡る。脚本家としてハリウッドでのキャリアをスタートさせたワイルダーは、「ニノチカ」で知られるエルンスト・ルビッチ監督の下で多くのものを得る。

彼のアパートの壁に「ルビッチならどうする?」というフレーズが掛けられていたことは良く知られていて、この対談集のタイトルはそこから来ている。

  狷介な性格で多くの敵をつくり、“客の笑いの時間を考えて役者のセリフの間隔を自在にコントロールした”ほどのコメディの天才であるが故に、彼の発言はひたすらひねくれていて、なおかつひたすら笑える。スペースの許す限り、紹介していCameroncroweこう。

その2はこちら

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

スピッツ

2007-12-04 | 音楽

Spitz ※今回は2002年の夏ネタ。

CDが売れない。それはもう呆れるほど売れない。オリコンのヒットチャートを見ても(四十過ぎて毎週水曜日にオリコンのサイトをのぞく私もいかがなものかと思うが)、昔ならトップ10にも入らないような枚数で1位をゲットしたりしている。リップスライム、お前のことだ。今年の上半期の売り上げでは、トップの元ちとせですらミリオンの大台にのっていない。あれほど話題になり、しかも文句なくいい曲なのに。

 こんな音楽不況下、スピッツの新譜が出る(2002年8月)。マキシシングル2枚先行発売。向いてないのにテレビ出ほうだい。きっとFMでもヘビーローテで流れているのだろう。たいへんな営業努力である。

 思えばスピッツは、ここ数年スランプだったのだろう。ギターの三輪はほとんど弾けないくらいに落ち込んだらしいし、草野の曲もイマイチだった。去年「今ならBump of Chickenの方がいいんじゃない?」とスピッツのファンに言ったら「同じレベルだとでも思ってるんですか!」と怒られてしまいましたが。

Spitzj2  どっこい今度のシングルは2枚とも最高。「SUGINAMI MELODY」は「ハネモノ」のカップリングの曲だが、「杉並」「三日月」「風車」「青い」など、まるでセルフパロディかと思うぐらいスピッツ節全開である。これで売れないようなら……不況はかなり深刻、ということなんだろうな。ま、結局はレンタルして(あるいは友だちから借りて)CDに焼いてる連中が多すぎるってことなんだろうが。私もTSUTAYA酒田北店から借りといてエライことは言えないけど。(一緒に借りたLOVE PSYCHEDELICOの『裸の王様』がまた最高)

……2007年現在、今に至るもスピッツのベストトラックは「ハネモノ」だと思っとります。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする