事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

椿三十郎(森田版)

2007-12-11 | 邦画

Tubaki099 【シーン108 街道】
三十郎と室戸、街道へ出て対峙する。
これからの二人の決闘は、とても
筆では書けない
長い恐ろしい間があって、勝負はギラッと刀が一ぺん光っただけできまる。

オリジナルもリメイクもまったく同じシナリオを使っている。でも森田が「演出はまったく違うものにしようと思っている」と意図したように、ラストの決闘シーンはかなりひねってある。ネタバレになるので詳しくは書けないけれど……

・あれだけの至近距離で向き合えば、両者の力が拮抗しているかぎりあんなやり取りになる可能性は確かに大きい。

・「いい刀は鞘におさまっているべき」というテーマにそった殺陣になっている。

くわしくは作品を観て。でも、「たそがれ清兵衛」における田中泯と真田広之の決闘が“リプレイが見たくなるほど”凄絶だったのにくらべ、まさかホントにリプレイをやるとは(T_T)。

 さて、キャスト。織田裕二は演技ができない人だし(それでも一枚看板で作品をささえているのだから皮肉抜きで立派なものだ)、豊川悦司の室戸は予想がつく。藤田まことと中村玉緒は単なるイメージキャストに終わり、オリジナルの入江たか子と伊藤雄之助の偉大さが身にしみる。「間宮兄弟」で笑わせた佐々木蔵之介は健闘したが、小林桂樹のおとぼけぶりにはやはりかなわない(押し入れ侍であれほど観客をわかせた小林は、なぜかその後一本も黒澤作品に出ていない。なにがあったんだ?)唯一の不確定要素は松山ケンイチ。彼のはたらきで作品が化けるかと期待したけれど、そこまでは無理だった様子。興行も惨敗である。織田作品はイマイチの成績が続いたので、むしろ「踊る大捜査線3」の製作が早まると東宝は喜んでいるかも。

20071114tsubaki_bamen ※若侍のなかに絶対にスターになるイケメンがいて(オリジナルで平田昭彦が演じた役)、なかなか楽しみだ。お嬢様を演じた鈴木杏は、もうけ役とはいえキュート。藤原釜足が演じた用人を、なんと風間杜夫がやっているんだけど、めちゃめちゃはまっていたのには泣いた。彼のファンの本音を聞いてみたいところだ。加えて、大島ミチルの音楽こそ、誰よりもクロサワしていた。

 それでは今回の再映画化は無駄だったのだろうか。わたしはそうは思わない。黒澤映画に挑もうとした心意気は、本物の時代劇を継承するために絶対に必要なものだったはず。なにより、「椿三十郎」という娯楽映画の最高峰と、三船敏郎という偉大な役者が存在することを現代人に知らしめた功績は大きいではないか。あ、これも皮肉じゃなくって。ホントよ。

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椿三十郎(黒澤明版)

2007-12-11 | 邦画

Sanjuro リメイク発表時にわたしはこう考えていた。

黒澤明名作リメイク:「新・三十郎」で豊川悦司が敵役

 黒澤明監督、三船敏郎主演の傑作時代劇映画を45年ぶりにリメイクする「椿三十郎」の製作報告会見が12日、東京・成城の東宝スタジオで行われ、主要キャストが顔をそろえた。織田裕二(38)が演じる主人公の宿敵・室戸半兵衛には、豊川悦司(44)が起用された。オリジナル版では仲代達矢(73)が演じた役どころで、豊川は「仲代さんとは違う半兵衛にしたい」と闘志を燃やした。

 凄腕の浪人・三十郎が、上役の汚職を暴こうと立ち上がった9人の若い侍たちに助太刀するアクション。演出で手を加える場面はあるが、オリジナルのシナリオに忠実に描く。主演の織田は「45年前の台本だけど、(本質は)連日のように報道されているいじめや汚職の内容とまったく同じ。今、三十郎のような、困っている人や弱い人を放っておけない男と出会えてよかった。今だからこそリメイクする意味がある」と強調した。

 三十郎と半兵衛が一騎打ちに臨み、血しぶきを上げるクライマックスシーンは現在でも語り継がれる名場面。森田監督は「演出はまったく違うものにしようと思っている」と明かした。ほかに松山ケンイチ(21)らが出演する。来年12月公開。                                     スポーツニッポン 2006年11月13日

なんという無謀な企画。こんなバカを仕掛けたのは業界の暴れん坊角川春樹。オリジナルは日本娯楽映画の最高峰だとわたしは信じているので(「七人の侍」は大作であって娯楽作とはちょっと意味合いが違う)、それを森田芳光がどう料理するか。どうころんでも批判を浴びることは確実。しかし、だからこそ応援しよう。木っ端微塵になったところで、オリジナルの素晴らしさをみんなが再認識するだけでも意義はある。

Kurosawatubaki3  モノクロのくせに、椿の色をストーリーの核にすえたものだからカラー映画のようにいつも誤解できる周到な脚本。三船敏郎が“世界のミフネ”であることが納得できる立ち姿のみごとさ。最後の最後に出てくる城代家老の“あの人”(リメイク版は藤田まこと……納得のキャスティング。顔が長くないといけないから)に代表される、余裕すら感じられるユーモアの質。黒澤映画のすべてをわたしは支持するわけではないけれど、彼のこの映画を超える作品は、あと百年は生まれないと思う。少なくとも松山ケンイチだけでもオリジナルの加山雄三を超えてくれないか、ちょっと期待しているけどね。

                                   これが満点でなくてなにが五つ星か☆☆☆☆☆

次回はリメイク版を特集。

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