カノウおにいさんの気象・地震再発見

気象や地震についての目からうろこが出る話全集です。
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東北地方太平洋沖地震 被害痕跡や震度分布より解ったこと。

2011-05-23 01:10:04 | インポート

今まで現地調査とか、気象庁や各自治体等の震度情報のデータを下に、今回の東北地方太平洋沖地震の被害痕跡の特徴を自分なりにまとめて見ました。

これによりますと

Ⅰ:地震の揺れは、単に地盤の硬軟ばかりでなく、地震波が進んでくる方向によっても左右されたのでは?

・・・・・これは、東京都内北区と足立区境周辺や、千葉県佐倉市、茨城県龍ヶ崎市、取手市等に現れておりましたが、当該、東北地方太平洋沖地震の震源域に向かって開いた地形で揺れが揺れが大きかったと見受けられたこと。・・・・・当該地域では、地盤の硬軟のコントラストが大きいと考えられる箇所でもあり、伝播する地震波が屈折などして、揺れを増幅したと考えます。

Ⅱ:計測震度でみると、台地上でも、わずかな高低差(5m~10m程度でしょうか)で、揺れが増幅していること

・・・・・東京都内山手地区の高台と呼ばれる地域上に位置する、中野区中野や千代田区大手町(皇居書陵部付近)でも、今回、震度5強(計測震度5・0以上)を観測しているの対し、台地上の東京大学地震研究所内では震度5弱(計測震度4・82)※東京大学地震研究所HPより でしたし、下町の江東区内の一部や足立区内の一部地域では、震度5弱(計測震度4・5以上5・0未満)と観測されています。中野区中野や千代田区大手町台地の高台上でも、南側や北側が5~10m高くなっている地域でもあります。

ちなみに、地震波は、地盤が堅いほど、そこを伝播する地震波の速度は速くなり、反対に、地盤が軟らかいほど底を伝播する地震波の速度はおそくなりますが、震波の伝播方向に対して、地盤の硬軟が不均等な地域では、地震波同士が屈折し、地震波が屈せ一する場合、当該地震波の加速度は大きくなるものの、地震波の周期は短くなる特性があります。(筆者調べ)

おそらく、当該、微妙な地形の高低差でも、地震波同士、屈折などして増幅したと考えています。ただ、比較的地盤の堅い山手地区高台ゆえ、増幅の度合いも、比較的短時間で済んだのではないでしょうか?

計測震度は、地震波の加速度の部分で、0・3秒以上の間計測されている部分を満たす地震波の部分の3成分(南北、東西、上下)の合成値を関係式に当てはめて算出している値ゆえ、きめ細かい地震の揺れの様子も解ってきた感じですよね。

Ⅲ:同一市町村内でも、震度で2階級差があること。

・・・・・以前本ブログ記事で紹介しましたように、栃木県宇都宮市内など、気象庁発表震度が5強から6強まで、2階級ほどの差があります。地盤の硬軟や局地的に地震波同士が屈折などして増幅した賜物か考えますが、計測震度に換算して、およそ0・7~0.8の差があることは珍しくは無いようです。


東北地方太平洋沖地震 東京23区内の揺れはどうたっだ?

2011-05-17 13:01:54 | インポート

私地震、去る3月11日14時46分に発生した東北地方太平洋沖地震発生後、一介の防災・局地気象アドバイザーとして、東京都内(23区)や茨城県や千葉県、神奈川県の一部地域の被害痕跡を視察してきました。

引用図は、それら被害状況を参考に、フリーソフト「白地図専門店」の上に、気象庁や、東京大学地震研究所の震度データを基ずき、気象庁震度各自治体等の取材と、私自身が23区内を地震発生後巡回して現認した各地域の被害痕跡を参考にして、各区単位での、震度を推計して当該白地図上に記入した画像です。ご覧ください。(気象庁地震観測課了承いただいております。)

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◇地図内表記方法ですが、
たとえば
① 震度5強~震度5弱・・・・・おおむね当該区内では震度5強か震度5弱と推定され、震度5強が観測されたと推定される地域の割合が多いものと推定される場合。

② 震度5強~震度5弱
     ~震度6弱・・・・・おおむね当該区内では震度5強か震度5弱または震度6弱と推定され、震度5強が観測されたと推定される地域の割合が一番多いものと推定される場合。

② 震度5弱~震度5強・・・・・おおむね当該区内では震度5弱か震度5強と推定され、震度5弱が観測されたと推定される地域の割合が多いものと推定される場合。

と致します。

ですから、当該割合は、区によって幅があるものとご認識ください。

ただ、ご注意いただきたいのは、気象庁発表の震度は、震度計で計測した計測震度に基ずいて発表するもので、当該地震の被害痕跡から割り出すと言うものではありません。引用図は、あくまでも、気象庁公式発表の震度観測地点の計測震度と周辺の被害痕跡とをマッチングし、推定基準とさせた上で、補足的に被害痕跡より震度を推定したものです

震度計観測による震度というもの、誤解を承知で言うなら、同一震度でも、強い揺れの継続時間がより長かったり、地震波の周期が建造物の固有周期に近かったりして共振現象を引き起こしたりすれば、建造物被害はより大きくなるわけですね 一般的に、続に、都内では、台地上に位置する山手地区が比較的地盤が良く、地震の被害は少ないと言われて、反対に下町地区が地盤が弱く地震時の被害は大きくなると言われていましたが、今回の東北地方太平洋沖地震では、23区内では、城北地区などと呼ばれる、北区周辺で被害が大きかったといえそうです。

この北区周辺の局地的な強い揺れ、単に地盤の硬軟ばかりでなく、地震波の伝播してきた方向により、地下の構造の特性で地震波が局地的に屈折などして、地震波が増幅したとも私は考えています。 

ちなみに、北区内や足立区内の隅田川と荒川に接する地域の被害痕跡を見る限り、千葉県内や茨城県内で震度6弱と発表された観測地点周辺の被害痕跡と、ほぼ同様な状態でした。


上空寒気伴なった気圧の谷が接近 全国的に急な強い雨や雷 雹などにご用心!!

2011-05-17 10:54:25 | インポート

①5月17日6時の天気図 気象庁HPより引用

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②5月17日6時の日本付近雲画像図 気象庁HPより引用・加工

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上空に強い寒気(上空5400m付近で-27℃以下)を伴なった気圧の谷が、本州付近へ接近してきました。

引用図①より、地上天気図上には、気圧の谷らしき痕跡は見られませんが、当該、上空寒気をともなった気圧の谷の場合、地上天気図上に痕跡が明確に現れなくても、雲画像上(水蒸気画像が一番有効かと思います。)には、当該気圧の谷が、螺旋状の渦巻きのような形態で表現されます。特に、螺旋状に白く輝く部分は、上空3000m付近の上昇流域に対応するもので、いわば、雲が発生・発達しやすい場と言えますね。

前記した、螺旋状に白く輝く部分(上空3000m付近の上昇流域)と、下層での鉛直シアーが大きくなっている部分と合致した箇所で雨雲が発達しやすく、強い降水や雷、竜巻や突風、雹といった激しい気象現象を引き起こしますから、油断なりません!


西日本や北陸中心に大雨 暖湿流は出所が複数あるんです!!

2011-05-11 13:37:42 | インポート

①5月11日9時の天気図 気象庁HPより引用

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②5月11日9時の日本付近雲画像図(赤外画像で拡大版) 気象庁HPより引用・加工

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昨日5月10日より、日本海から前線が本州に南下してきて、前線に向かって暖湿流が大量に流れ込み、北陸地方や西日本のあちこちで大雨となりました。

特に、山口県東部の山間部に位置する、周南市鹿野では、11日12時までの24時間に230㎜を超す降水量を観測しました。

この大雨は、引用図①より、南西諸島の南海上にある台風1号も、おおいに関与しているといえますが、大雨の基となる暖湿流、その出所は複数あるのです。

暖湿流の出所は

Ⅰ:南海上に台風があれば、台風の外縁を廻るようにして集まり、当該台風の進行方向前側に吹き込むもの(引用図③では赤字A表示の部分)

Ⅱ:南海上に勢力を広げる高気圧の外縁を廻るようにして流れ込んでくるもの(引用図③では赤字B表示の部分)

Ⅲ:気圧の谷(500hpaの谷や顕著な正渦の進行方向南側~南西側に位置する下層から流れ込んでくるもの(引用図③では赤字C表示の部分)

以上3つに分けられます。

よく本州付近に前線が停滞し、南海上に台風が進んでくる場合、水蒸気雲画像では、暖湿流同士、あたかも前記Ⅰ:Ⅱが同一に見えることも多いですが、実は、前記Ⅰ、Ⅱが単に重なり合ったり、隣接している状態だけなのです。

また前記Ⅲに区分される暖湿流ですが、500hpaの谷や顕著な正渦の進行方向前面は、上空3000mの顕著な上昇流域にあたります。この顕著な上昇流域に引っ張られるような形で、暖湿流が500hpaの谷や顕著な正渦の進行方向南側~南西側に流れ込んでくるわけです。

以前、本ブログでも紹介しましたが、暖湿流の動向は、水蒸気雲画像上で、白く輝いた区域や白くぼやけた区域(当該暖湿流がより高温で湿っているほど、水蒸気雲画像上では、より白く輝く画像となります。)に注目しましょう。水蒸気雲画像上で、とりわけ白く輝いている区域や、暖湿流同士が合流している箇所に注意!!、当該箇所では、大雨の危険性が特に高い区域でもあります。

引用図③より、前記ⅠとⅢが東シナ海東部~対馬海峡付近で合流し、ひときわ白く輝く画像となっていますね。


全壊 半壊ってどう決めるの?災害時被害認定の基準について(きみひろさんからのご質問のついての返答)

2011-05-07 20:48:21 | インポート

きみひろさんから、本日、コメントいただきました内容について返答させていただきます。きみひろさん、コメント投稿有り難うございます。

災害時の被害認定の基準については、内閣府ホームページ内 http://www.bousai.go.jp/hou/pdf/030110.pdfにて、被害認定の基準についての詳細が記載されております。

これによりますと、

被害認定は、市町村(東京23区内では各区)が行い、

Ⅰ:住家・・・・・現実に居住のために使用している建物をいい、社会通念上の住家であるかどうかは問わない。

Ⅱ:非住家・・・・・前記Ⅰに該当しない建築物とをいう。学校や公共施設、神社などが挙げられますね。

に分けて、一般的に、全壊、半壊、一部損壊と認定するのは、前記Ⅰ、住家に該当する建築物を対象とします。

①全壊とは

◆住家の居住のための機能を失ってしまった状態。修繕によっても当該機能を回復できない状態。

◆具体的には、住家の損壊、流失した部分が当該住家の延べ床面積の70%以上、または、住家の主要な構成要素の損害割合がその住家(全体の時価)の50%以上に及んだ場合。

をいい

②大規模半壊とは(被災者生活再建支援法による区分)

◇具体的には、住家の損壊、流失した部分が当該住家の延べ床面積の50%以上70%未満、または、住家の主要な構成要素の損害割合がその住家(全体の時価)の40%以上50%未満に及んだ場合。

③半壊とは、

◇具体的には、住家の損壊、流失した部分が当該住家の延べ床面積の20%以上50%未満、または、住家の主要な構成要素の損害割合がその住家(全体の時価)の20%以上40%未満に及んだ場合。

※前記②③を合算して、半壊 とカウントする場合も多いようですね。

③一部損壊とは

◇全壊、半壊双方にも該当しない程度の損壊を言います。※窓ガラスがほんの一部割れた程度では一部損壊としない とのこと。

さらに、被害認定は、1回のみで終わることはありえず、災害発生後、複数回(2回程度)行うとのことで、これに基ずく被害戸数も、後になって増加することも充分にありえます。

ただ、被害認定は、市町村(23区では区)が行いますが、前記したように、住家ごとの正確な損害割合など、当該住家の住人のみ知りえるもの。ですから、罹災時は、かならず、住家内の被害部分を写真など取ったり、建築家などの専門家に見てもらい、市町村等の認定に不満あれば、積極的に異議を申し立てることも重要かと、私は感じますね。でないと、被災者生活再建支援法が適用される要件を満たしている罹災世帯の場合、給付額に差が出てしまいますからね。