カノウおにいさんの気象・地震再発見

気象や地震についての目からうろこが出る話全集です。
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伊勢湾台風襲来より50年 未曾有の大被害は台風の移動速度も一要因か?

2009-09-26 00:45:31 | インポート

①伊勢湾台風中京地区へまさに襲来の、昭和34年9月26日21時の天気図 名古屋地方気象台HPより引用

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②昭和34年9月26日紀伊半島へ上陸後の伊勢湾台風の進路図 名古屋地方気象台HPより引用

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※この他、台風災害を防ごう(日本気象協会) を参考文献としました。

50年前の今日 昭和34926日午後6時過ぎに、非常に強い大型の勢力である台風15号は、和歌山県潮岬の西約16㎞に紀伊半島へ上陸しました。台風15号の上陸時の最低気圧は9295ミリバール(現在ですと9295ヘクトパスカルとなりますが)と、当時でも歴代3位の最低気圧を観測しています。

この台風こそ、東海地方を中心に、死者行方不明者5041人、全壊流失家屋4万棟余、他浸水家屋36万余と言う未曾有の大被害をもたらした、伊勢湾台風です。

この伊勢湾台風は、伊勢湾岸を中心に甚大な高潮被害をもらたらしましたが、東北から中国、四国地方の広範囲にわたって、あちこちで最大瞬間風速が30m毎秒を超えて、10分間の最大風速でも、30m毎秒となった気象官署が全国で8箇所と、典型的な風台風でした。

この伊勢湾台風の特徴は、紀伊半島へ上陸後、移動速度を時速60㎞~70㎞と高速で伊勢湾岸西方を通過しましたが、このことが、台風の進路の右側に入った東海地方では、記録的な暴風を引き起こし、名古屋で10分間の最大風速が毎秒37m(最大瞬間風速が457m)を観測したほか、小牧航空測候所や岡崎平野矢作川河口、それに、三重県大王埼灯台では、最大瞬間風速が毎秒60m以上を観測しました。

この記録的な暴風と海岸部の満潮(大潮でした)とも重なって、前述の甚大な被害をもたらしたと言えそうです。

引用図①より、台風の進行方向右前方に前線があり、台風の進行方向前側から右側で高気圧の張り出しか強まって等圧線が広範囲で混んでいる場合、台風を押し流す上空の風速(一般流と呼ばれます)は例外なく強まっており、、台風は速度を速めて移動するようになります。このような台風は、特に台風の進行方向右側で広範囲に暴風が吹き荒れます。これは、本ブログの平成189月の台風13号の記事で申し上げましたように、台風自体の渦巻きの風速に、当該台風の移動速度が加わるためと、高気圧の張り出しのため広範囲で等圧線が混んでいる(等圧線の幅が狭まる)ためです。

このため、伊勢湾台風の進行方向右側に入った、甲信越地方や関東地方などでも、猛烈な風が吹き荒れて、甲府で10分間の最大風速が毎秒298m(最大瞬間風速が372m) 台風の中心からおよそ320㎞離れた東京でも、10分間の最大風速が毎秒27m(最大瞬間風速が37m)を観測しています。

さらに、高潮ですが、海岸部の潮位もさることながら、海岸から約10キロ上流に入った河川沿いのほうが高い水位を観測(海岸と比較すると30cm40cmも高くなっていました)し、当該最高水位発生時刻は、海岸とほぼ同時刻~15分ほど早まっていた事も特筆するべき点ですね。これは、河川沿いは上流部に降った降水が下流部へ流れ込んでくるところへ、海岸の水位が上昇して、海水が河川へ逆流するためですが、高潮災害を論じる際に、ややもしますと、この、海水の河川への逆流の部分が軽視されているようにも思われますね。この点、防災上看過するべきではないと思いますね。