①9月9日3時の天気図 気象庁HPより引用
令和元年房総半島台風(台風15号)※本文では台風15号と表記します。千葉県に上陸から1年経過しました。
令和元年9月9日5時ごろ、千葉県千葉市付近へ上陸した台風15号、気象庁よりもたらされた被害の甚大さを鑑みて、令和元年房総半島台風と命名されました。
台風15号は、上陸時は戦後関東に上陸した台風の中ではトップクラスの勢力であったため、千葉県や神奈川県など、関東地方南部地域中心に記録的な暴風が吹き荒れて、
◇全壊家屋 391棟 半壊家屋 4204棟 一部損壊家屋 72279棟 床上浸水 121棟 床下浸水 109棟
と、浸水家屋数より、損壊家屋数が圧倒的に多く、
最も被害が酷かった千葉県内でも
◇全壊家屋 363棟 半壊家屋 3929棟 一部損壊家屋 62986棟 床上浸水 34棟 床下浸水 57棟
損壊家屋数は推家屋数と比較して桁違いに多く、暴風に起因する被害が圧倒的に多く生じていると推測され、典型的な風台風 であったといえます。
この台風15号ですが、9日未明に三浦半島通過時、台風の中心がいったん北東方向へ変形して、北東側に中心が飛ぶような形になり分裂しました。台風の中心の、北東方向に分裂したこと、台風前側に分布する強風域をさらに強めてしまい、今回の記録的暴風を引き起こしたといえそうですね。
その様子を、9日2時、3時、4時と時系列で紹介していきましょう
⓶9月9日2時、3時、4時、5時の、レーダーエコー図(国土交通省川の防災情報HPより引用)と関東周辺アメダス風向風速分布図(気象庁HPより引用)
ⅰ 9日2時
9日2時現在、台風は、伊豆大島のすぐ北にあり(中心Aと表示)北上中。台風を取り巻く螺旋状雨雲が、関東地方南部で、幾重に重なり合いように分布していて、房総半島の南西からは、別の螺旋状雨雲が移動中で、千葉県南部地域の螺旋状雨雲と合流しかかっております。
台風を取り巻く螺旋状雨は、気圧傾度の大きい箇所で幾重にも連なる特性があり、螺線上雨雲の外縁部では強風を伴い、螺旋状雨雲同士が合流する箇所付近では、雨雲自体発達して、
その外縁部では強風は一層顕著となります。(筆者確認)
このため、9日2時現在、東京都羽田付近や千葉県安房地区で20㍍毎秒を超えており、館山で2時14分に最大風速28・4㍍毎秒(南風)2時31分に最大瞬間風速48・8㍍毎秒(南南西風)を観測しております。
ⅱ 9日3時
9日3時現在、台風15号の中心Aですが、移動速度から推測すると、神奈川県浦賀付近にあると推定されますが、その形はぼやけ始め、かわって、北東側の千葉県木更津付近に、B で表示する渦が顕著となってきました。この B 発生のため、中心北側の気圧傾度をさらに増大させたと考えられ、北側の螺旋状雨雲は一層発達しています。
このため、千葉県京葉地区や東京23区沿岸部で風が一層強くなり、羽田では30㍍毎秒もの東寄りの猛烈な風を観測!千葉県木更津では、前記時刻に近い 9日2時48分に最大瞬間風速49・0㍍毎秒(東南東風で、観測開始以来最高)2時53分に最大風速23・2㍍毎秒(南東風)を観測しました。
ⅲ 9日4時
9日4時現在、新たに発生した渦 B は千葉市の南西まで移動、中心のすぐ外縁の発達した螺旋状雨雲が千葉県から東京23区の東京湾岸地域にかかり始めてまいりました。千葉県から東京23区までの東京湾岸地域では、おおむね20㍍毎秒を超す北北東から東南東風となっており、千葉で29㍍毎秒(東南東風)東京羽田で25㍍毎秒(北北東風)といった暴風を観測しています。
一方、B の 西側に当たる東京湾上の 海ほたる では 3時25分に南東風23㍍毎秒だったのが、3時55分に風向が西南西風に変化して、風速は9㍍毎秒と一時的に弱まり、B が台風の新たな中心として形成されたといえます。
ⅳ 9日5時
台風15号は、9日5時ごろ、千葉県千葉市付近へ上陸確認されて、上陸後は千葉県北部を北東に移動していきました。
千葉県千葉市では、9日4時28分に 最大風速35・9㍍毎秒(南東風)最大瞬間風速57・5㍍毎秒と、最大風速、最大瞬間風速共に観測開始以来最高の猛烈な暴風を観測しております。さらに、およそ36分後、南西方向と南東方向との螺旋状雨雲が交わる千葉県成田では、最大風速29・6㍍毎秒 最大瞬間風速45・8㍍毎秒と、これまた、最大風速,最大瞬間風速ともに観測開始以来最大の暴風を観測しました。
台風を取り巻く螺旋状雨雲というもの、ご覧のように、一様に螺旋状に分布するものではなく、地形的特性をうけて、その発達具合や、雲の集団の走向具合にコントラストが生じて、台風の中心が分裂することはよくあることです。
なので、当該、台風を取り巻く螺旋状雨雲の分布状況から、台風のとりわけ強風となりやすいエリアを的確に見極めることが重要ですね。
◆台風15号、激烈暴風は内房の一部地域では瞬間70㍍毎秒以上と推測!!
①台風15号が、千葉県に接近・上陸した時刻頃の
ⅰ9日2時 ⅱ9日3時 ⅲ9日4時 ⅳ9日5時 の関東周辺レーダーエコー図 国土交通省川の防災情報HPより引用
ⅰ:
ⅱ:
ⅲ:
ⅳ:
とりわけ、千葉県内房地域では、被害が甚大な様子ですが、この内房地域では、筆者自身の推定で、およそ瞬間で70㍍毎秒を超える、激烈な暴風がふいたものと思われます。
②ⅰ千葉県の地形図 ⅱ千葉県内房地域の地形図 国土地理院HPより引用
ⅰ:
ⅱ:
③9月9日2時の千葉県内房地域周辺主な観測地点の最大風速 海上保安庁HPや白地図ソフトから筆者引用作成
まず、内房地域の暴風を語るうえで、基準となる、地形的特性を受けない海上にある観測地点 浦賀水道航路中央第一号AIS信号所のデータを基準として、洲埼灯台、剣埼灯台の
風向風速データ最大値と観測時刻を記しました。
これら地点とも、引用図①ⅰでも、台風15号の中心 A を取り巻く螺旋状降水域の外縁部に差し掛かった時刻で最大風速が観測されていると推定されて、浦賀水道航路の風速値より、剣埼ではおよそ1.31倍、洲埼では、およそ1・5倍増となっておりますが、剣埼、洲埼とも、地形的には、緩やかではあるか斜面沿いに位置しているため、地形的特性による風速の増大がみられることを確認されております。
引用図②ⅱより、千葉県内房地域、海岸線に山地が迫り地形的には比較的急峻で、浦賀水道に向かって西~南西方向の鞍部が幾重にもみられます。
今回の台風15号接近の際には、引用図②ⅰで示すように、台風の中心取り巻く螺旋状降水域の外縁部東側にかかり、浦賀水道から陸地方向への暴風が吹きつけたと推定されますが、同様な風向の際に、内房地域で、どれほどの地形的特性での風速の増大がみられるか?
この事例を示すものとして、④1979年(昭和54年)10月19日台風20号の際の、千葉県富津市明鐘岬と、富津岬での風向風速観測値をご覧ください(日本風工学会誌第15号、昭和58年2月 相馬清二先生投稿記事より引用)
④
この引用原稿では、地形的特性を受けない海上風として、砂丘突端に位置する富津岬の風速データが引用されており、明鐘岬と富津岬ともに、最大風速値と明鐘岬では最大瞬間風速値とも列記しております。
引用図③ⅱで、明鐘岬の地形的特性を勘案して風向風速データを見ると、海上風とみられる富津岬の風速データのおよそ1・67倍の風速を明鐘岬で観測しています。明鐘岬の地形的特性で、海上風速より1・67倍増幅されるわけですが、この風速から、さらに最大瞬間風速は、およそ1.38倍の風速となっています。
引用図③ⅱより、明鐘岬周辺と酷似している地形は、内房地域に随所でみられ、こういった地域では、浦賀水道から吹き付ける風の場合、明鐘岬周辺と同様な海上風からの風速の増大が見られれるものと推定されます。
よって、引用図③④より、浦賀水道の海上風速は32㍍より、内房地域では、地形的特性のより風速増大受けて、平均風速の最大で53㍍毎秒程度、最大瞬間風速で73㍍毎秒程度の激烈暴風を観測している地域があると推定されるわけですね。
令和元年房総半島台風(台風15号)※本文では台風15号と表記します。千葉県に上陸から1年経過しました。
令和元年9月9日5時ごろ、千葉県千葉市付近へ上陸した台風15号、気象庁よりもたらされた被害の甚大さを鑑みて、令和元年房総半島台風と命名されました。
台風15号は、上陸時は戦後関東に上陸した台風の中ではトップクラスの勢力であったため、千葉県や神奈川県など、関東地方南部地域中心に記録的な暴風が吹き荒れて、
◇全壊家屋 391棟 半壊家屋 4204棟 一部損壊家屋 72279棟 床上浸水 121棟 床下浸水 109棟
と、浸水家屋数より、損壊家屋数が圧倒的に多く、
最も被害が酷かった千葉県内でも
◇全壊家屋 363棟 半壊家屋 3929棟 一部損壊家屋 62986棟 床上浸水 34棟 床下浸水 57棟
損壊家屋数は推家屋数と比較して桁違いに多く、暴風に起因する被害が圧倒的に多く生じていると推測され、典型的な風台風 であったといえます。
この台風15号ですが、9日未明に三浦半島通過時、台風の中心がいったん北東方向へ変形して、北東側に中心が飛ぶような形になり分裂しました。台風の中心の、北東方向に分裂したこと、台風前側に分布する強風域をさらに強めてしまい、今回の記録的暴風を引き起こしたといえそうですね。
その様子を、9日2時、3時、4時と時系列で紹介していきましょう
⓶9月9日2時、3時、4時、5時の、レーダーエコー図(国土交通省川の防災情報HPより引用)と関東周辺アメダス風向風速分布図(気象庁HPより引用)
ⅰ 9日2時
9日2時現在、台風は、伊豆大島のすぐ北にあり(中心Aと表示)北上中。台風を取り巻く螺旋状雨雲が、関東地方南部で、幾重に重なり合いように分布していて、房総半島の南西からは、別の螺旋状雨雲が移動中で、千葉県南部地域の螺旋状雨雲と合流しかかっております。
台風を取り巻く螺旋状雨は、気圧傾度の大きい箇所で幾重にも連なる特性があり、螺線上雨雲の外縁部では強風を伴い、螺旋状雨雲同士が合流する箇所付近では、雨雲自体発達して、
その外縁部では強風は一層顕著となります。(筆者確認)
このため、9日2時現在、東京都羽田付近や千葉県安房地区で20㍍毎秒を超えており、館山で2時14分に最大風速28・4㍍毎秒(南風)2時31分に最大瞬間風速48・8㍍毎秒(南南西風)を観測しております。
ⅱ 9日3時
9日3時現在、台風15号の中心Aですが、移動速度から推測すると、神奈川県浦賀付近にあると推定されますが、その形はぼやけ始め、かわって、北東側の千葉県木更津付近に、B で表示する渦が顕著となってきました。この B 発生のため、中心北側の気圧傾度をさらに増大させたと考えられ、北側の螺旋状雨雲は一層発達しています。
このため、千葉県京葉地区や東京23区沿岸部で風が一層強くなり、羽田では30㍍毎秒もの東寄りの猛烈な風を観測!千葉県木更津では、前記時刻に近い 9日2時48分に最大瞬間風速49・0㍍毎秒(東南東風で、観測開始以来最高)2時53分に最大風速23・2㍍毎秒(南東風)を観測しました。
ⅲ 9日4時
9日4時現在、新たに発生した渦 B は千葉市の南西まで移動、中心のすぐ外縁の発達した螺旋状雨雲が千葉県から東京23区の東京湾岸地域にかかり始めてまいりました。千葉県から東京23区までの東京湾岸地域では、おおむね20㍍毎秒を超す北北東から東南東風となっており、千葉で29㍍毎秒(東南東風)東京羽田で25㍍毎秒(北北東風)といった暴風を観測しています。
一方、B の 西側に当たる東京湾上の 海ほたる では 3時25分に南東風23㍍毎秒だったのが、3時55分に風向が西南西風に変化して、風速は9㍍毎秒と一時的に弱まり、B が台風の新たな中心として形成されたといえます。
ⅳ 9日5時
台風15号は、9日5時ごろ、千葉県千葉市付近へ上陸確認されて、上陸後は千葉県北部を北東に移動していきました。
千葉県千葉市では、9日4時28分に 最大風速35・9㍍毎秒(南東風)最大瞬間風速57・5㍍毎秒と、最大風速、最大瞬間風速共に観測開始以来最高の猛烈な暴風を観測しております。さらに、およそ36分後、南西方向と南東方向との螺旋状雨雲が交わる千葉県成田では、最大風速29・6㍍毎秒 最大瞬間風速45・8㍍毎秒と、これまた、最大風速,最大瞬間風速ともに観測開始以来最大の暴風を観測しました。
台風を取り巻く螺旋状雨雲というもの、ご覧のように、一様に螺旋状に分布するものではなく、地形的特性をうけて、その発達具合や、雲の集団の走向具合にコントラストが生じて、台風の中心が分裂することはよくあることです。
なので、当該、台風を取り巻く螺旋状雨雲の分布状況から、台風のとりわけ強風となりやすいエリアを的確に見極めることが重要ですね。
◆台風15号、激烈暴風は内房の一部地域では瞬間70㍍毎秒以上と推測!!
①台風15号が、千葉県に接近・上陸した時刻頃の
ⅰ9日2時 ⅱ9日3時 ⅲ9日4時 ⅳ9日5時 の関東周辺レーダーエコー図 国土交通省川の防災情報HPより引用
ⅰ:
ⅱ:
ⅲ:
ⅳ:
とりわけ、千葉県内房地域では、被害が甚大な様子ですが、この内房地域では、筆者自身の推定で、およそ瞬間で70㍍毎秒を超える、激烈な暴風がふいたものと思われます。
②ⅰ千葉県の地形図 ⅱ千葉県内房地域の地形図 国土地理院HPより引用
ⅰ:
ⅱ:
③9月9日2時の千葉県内房地域周辺主な観測地点の最大風速 海上保安庁HPや白地図ソフトから筆者引用作成
まず、内房地域の暴風を語るうえで、基準となる、地形的特性を受けない海上にある観測地点 浦賀水道航路中央第一号AIS信号所のデータを基準として、洲埼灯台、剣埼灯台の
風向風速データ最大値と観測時刻を記しました。
これら地点とも、引用図①ⅰでも、台風15号の中心 A を取り巻く螺旋状降水域の外縁部に差し掛かった時刻で最大風速が観測されていると推定されて、浦賀水道航路の風速値より、剣埼ではおよそ1.31倍、洲埼では、およそ1・5倍増となっておりますが、剣埼、洲埼とも、地形的には、緩やかではあるか斜面沿いに位置しているため、地形的特性による風速の増大がみられることを確認されております。
引用図②ⅱより、千葉県内房地域、海岸線に山地が迫り地形的には比較的急峻で、浦賀水道に向かって西~南西方向の鞍部が幾重にもみられます。
今回の台風15号接近の際には、引用図②ⅰで示すように、台風の中心取り巻く螺旋状降水域の外縁部東側にかかり、浦賀水道から陸地方向への暴風が吹きつけたと推定されますが、同様な風向の際に、内房地域で、どれほどの地形的特性での風速の増大がみられるか?
この事例を示すものとして、④1979年(昭和54年)10月19日台風20号の際の、千葉県富津市明鐘岬と、富津岬での風向風速観測値をご覧ください(日本風工学会誌第15号、昭和58年2月 相馬清二先生投稿記事より引用)
④
この引用原稿では、地形的特性を受けない海上風として、砂丘突端に位置する富津岬の風速データが引用されており、明鐘岬と富津岬ともに、最大風速値と明鐘岬では最大瞬間風速値とも列記しております。
引用図③ⅱで、明鐘岬の地形的特性を勘案して風向風速データを見ると、海上風とみられる富津岬の風速データのおよそ1・67倍の風速を明鐘岬で観測しています。明鐘岬の地形的特性で、海上風速より1・67倍増幅されるわけですが、この風速から、さらに最大瞬間風速は、およそ1.38倍の風速となっています。
引用図③ⅱより、明鐘岬周辺と酷似している地形は、内房地域に随所でみられ、こういった地域では、浦賀水道から吹き付ける風の場合、明鐘岬周辺と同様な海上風からの風速の増大が見られれるものと推定されます。
よって、引用図③④より、浦賀水道の海上風速は32㍍より、内房地域では、地形的特性のより風速増大受けて、平均風速の最大で53㍍毎秒程度、最大瞬間風速で73㍍毎秒程度の激烈暴風を観測している地域があると推定されるわけですね。