今日、母の手術があった。
左足くるぶしの骨折。骨がずれており、元に戻してボルトで固定するという、専門医によればいたってシンプルなオペだそうだ。
オペに要した時間は2時間ちょっとだった。
朝から点滴を打ち、オペに備えていた。
下半身だけの麻酔で済むのだが、「脊髄麻酔が嫌なんだよねぇ」となんども苦笑いを浮かべながら言っていた。
「なに言ってるの。麻酔しなかったらもっと痛いんだから。」と言い返す自分。
やがて予定の時刻が近づき、手術着に着替えた。
ベッドからストレッチャーに乗り移り、エレベーターで移動。
オペ室前の廊下で一端止まる。家族が一緒に着き添えられるのはここまでだ。
「じゃおふくろ、頑張って! ここで待ってるから。」
そう言い、おふくろを見送ろうとしたのだが、実は迷っていることがあった。
オペ室に入る前に、おふくろの手を握ろうかどうかを迷っていたのだ。
たかが簡単なオペなのに、大袈裟なことはしたくはなかった。それに正直に言えば、この歳になっても照れがあった。
「じゃおふくろ、頑張って! ここで待ってるから。」
ストレッチャーに乗ったおふくろの後ろから声を掛け、右手を握った。
後ろから手を伸ばしたから顔は見えなかった。ほんの2~3秒だったが、しっかりと握った。
か細い手だった。温かい手だった。
オペ室のドアが開き、姿が見えなくなる直前に看護師さんの声が聞こえた。
「大丈夫ですよ。泣かなくてもいいんですよ。」
そっか、おふくろは泣いていたのか・・・。
たかがボルトで固定する簡単な手術なのに、オペ室のドアが閉まると同時に両手を合わせて何かに拝んでいた。
無意識だった。
執刀する医師。おふくろ。そして何故か死んだおやじの顔までもが頭をよぎった。
部屋へ戻りさっきのことを思い出した。
おふくろの手をあんなにしっかりと握ったのは何年ぶり、いや、何十年ぶりだろうか。
照れなどなかった。
握ってよかったと思った。
左足くるぶしの骨折。骨がずれており、元に戻してボルトで固定するという、専門医によればいたってシンプルなオペだそうだ。
オペに要した時間は2時間ちょっとだった。
朝から点滴を打ち、オペに備えていた。
下半身だけの麻酔で済むのだが、「脊髄麻酔が嫌なんだよねぇ」となんども苦笑いを浮かべながら言っていた。
「なに言ってるの。麻酔しなかったらもっと痛いんだから。」と言い返す自分。
やがて予定の時刻が近づき、手術着に着替えた。
ベッドからストレッチャーに乗り移り、エレベーターで移動。
オペ室前の廊下で一端止まる。家族が一緒に着き添えられるのはここまでだ。
「じゃおふくろ、頑張って! ここで待ってるから。」
そう言い、おふくろを見送ろうとしたのだが、実は迷っていることがあった。
オペ室に入る前に、おふくろの手を握ろうかどうかを迷っていたのだ。
たかが簡単なオペなのに、大袈裟なことはしたくはなかった。それに正直に言えば、この歳になっても照れがあった。
「じゃおふくろ、頑張って! ここで待ってるから。」
ストレッチャーに乗ったおふくろの後ろから声を掛け、右手を握った。
後ろから手を伸ばしたから顔は見えなかった。ほんの2~3秒だったが、しっかりと握った。
か細い手だった。温かい手だった。
オペ室のドアが開き、姿が見えなくなる直前に看護師さんの声が聞こえた。
「大丈夫ですよ。泣かなくてもいいんですよ。」
そっか、おふくろは泣いていたのか・・・。
たかがボルトで固定する簡単な手術なのに、オペ室のドアが閉まると同時に両手を合わせて何かに拝んでいた。
無意識だった。
執刀する医師。おふくろ。そして何故か死んだおやじの顔までもが頭をよぎった。
部屋へ戻りさっきのことを思い出した。
おふくろの手をあんなにしっかりと握ったのは何年ぶり、いや、何十年ぶりだろうか。
照れなどなかった。
握ってよかったと思った。