今年の夏、鹿児島へ行った。
懐かしい人との再会、偶然の出会い。
全てが感謝のひとり旅だった。
最終日のこと、目的の一つだった「西大山駅」へ行った。
鉄道における日本最南端の駅。しかも無人駅。
ホームがあり、ベンチがあり、一本のレールが伸びているだけ。
しかし駅からは、開聞岳が雄々しい姿を見せていた。
昨日見学した「特攻平和会館」の語り部の方の話を思い出した。
駅には誰もいないと思いきや、夫婦らしき方が簡易テーブルを広げ自分を見ていた。
「麦茶が冷えてますよ~。どうぞ飲んでいってください」と。
(「いったい誰なんだろう? こんな真夏の炎天下で何をやっているんだろう」)
冷えた麦茶を頂きながら会話をした。
その方たちは、仕事を退職すると同時に、横浜から夫婦でここへ(指宿)引っ越してきたという「K夫妻」だった。
「この駅はなかなか人気があってねぇ。鉄道マニアやアマチュア写真家がよく来るんですよ。せっかく来てくれるんだから、何かもてなしができないものかと思って始めたんですよ」
なんて素敵な夫婦なんだろう。第二の人生にこの土地を選び、そして見知らぬ人たちへの気配り、というか完全ボランティア。
こんな人生もあるんだなぁと、しみじみ感じた。
鹿児島へ来た理由を話すと、「それだったら開聞岳の麓にある『花瀬望比公園(はなせぼうひこうえん)』へ行った方がいいですよ。案内しますよ。」とあまりにも気さくな一言。
初めて会った自分に何故こんなにまで親切にしてくれるのだろう。不思議だった。
「花瀬望比公園」。そこは遙か太平洋を望む薩摩半島の南端。開聞岳の麓だった。
太平洋戦争におけるフィリピン戦線で、戦死した方々の御霊を弔う意味で建てられたらしい。
慰霊碑、古びた鉄兜、機関銃、兵士の像、平和と鎮魂を願う鐘、そして生きて日本へ帰って来ることを願い、海を見つめている母と子の像があった。
西大山駅には、写真を撮るためだけに来たはず。
K夫妻との出会いと花瀬望比公園を知ったことは全くの偶然に過ぎない。
なんとも嬉しい素敵な誤算だった。