知人のアメリカ人男性は、エコでロハスで自然体のベジタリアンである。来日してまだ3年ほどだが、養護学校でアートを教えている。そんな、「気は優しくて力持ち」を激怒させた事件があった。その名も"Ring the Bell!!"事件。
東京は歩道がせまい街である。もともとせまい歩道に、山のように自転車や原付が駐輪され、通りに面したお店が看板やらハタやらいろいろ並べ立てて、ほとんど足の踏み場もない。そこを、歩行者が歩く。さらにスキマを縫うように自転車が走る。
じーさんばーさんのよろよろ自転車もあれば、
目にも留まらぬ速さで走り抜けるスポーツサイクリストあり、
やみくもに突っ切ろうとするガキンチョ自転車あり、
前に子ども後ろに大荷物のがに股ママチャリあり、、、。
そのほとんどが夜も平気で無灯火だったりする。最近はチェーンが外れかけたような自転車に乗ってる人もいないからすぅーっと音もなく、殺気を感じてふと振り向くとかまいたちのごとく自転車がすり抜けていくこともたびたび。
「気は優しくて力持ち」の彼も、どうやらそんな目に遭ったらしい。むかついた彼はとっさにチャリンコ暴走男に追いつき、前に回りこみ、敵のハンドルを両手でガッシと押さえこんで大声で連呼した。
「Ring the Bell!Ring the Bell!」
さらに紛れもなくハンドルに鎮座ましましているベルを力いっぱい指さして、
「Ring、the
、Bell
!!」
犯人のおっさん、突然目の前に身長が2メートル近いガイジンが現れて自分の自転車をグワシとつかんだうえにえらい勢いで何やら怒鳴ってきてる、ということがよほど怖かったらしい。縮み上がって、
「えっ、あっ、はい、はいっ! ごめんなさい! アイムソーリー!」
と謝って、あたふた去っていったそうな。
いまどきここまでして公共のマナーを教えてくれる他人なんてなかなかいない。おっさん、感謝しないといかんよ!それにしても、確かに近頃の自転車には無法者が多すぎるね。
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