毎日のほとんどを家で過ごす生活になってしばらくしたころ、
ときおり視界の隅を、ひょいと横切る小さな黒い影が見えるように。
体力・精神力・免疫力が急激に落ちたことで、
ここぞとばかり、目にも老化の波が一気に押し寄せたかと思い、
すくなからずショックを受けていたのだが。
ある日、テーブルに肘をついてちょっとぼんやりしていたとき。
小さな黒い影が視界を横切るのに合わせて、手の甲にこそばゆい感覚が。
目を落とせば、野を越え山を越え、てな調子で、
卓上に無造作に組んだ両手のうえを、
ちっちゃなクモ君がてけてけ~♪と歩いていくではないか。
こらこら。
身体に虫がたかるほど死にかかってるのか、
それとも何かよっぽど美味しそうな匂いがしたのか?
後者であることを願いつつも、
人が活動している時間帯に平気で虫たちがうろちょろできるくらい、
生きものにとって自然な環境がこの部屋に戻ってきたのかと思うと、
ちょっと嬉しい気もする。
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