アキノエノコログサは,その名のとおり,秋にお似合いの姿をしています。充実した種子を付けて頭を垂れ,じつにのんびり,ゆったり,といった感じから季節の匂いが伝わってくるのです。夕暮れ時,そのかたちがシルエットになって浮き上がると,「ああ,秋の夕暮れが」と感じ入ります。穂にとまって虫が鳴いてでもいたら,と想像するだけで,「秋はいいなあ」と思うのです。
からだからすると,穂は重いでしょう。結果,茎が斜めになって,よく見ると緩やかな弧を描いきながら揃って同じ向きを向いています。風などの自然現象に災いされない,最低限度のしくみを備えていることが理解できます。細いながら,じゅうぶんにしなやかで,からだをしっかり支えている茎!
茎内部は中空ですが,途中に節を付けて,簡単にはおれない茎,できるだけ高い背丈を実現しようとした戦略が見えます。「種子を遠くにばらまかなくちゃ」「細長い葉をできるだけ伸ばして,光を受けなきゃ」というわけです。イネ科植物一般の特徴が,アキノエノコログサには典型的に現れているのです。
もちろん,これからは上質の紙料が得られるでしょう。
さっそく紙づくりに着手。煮ること3時間。
ミキサーで叩解すると,細かな繊維が取り出せました。
それを紙料にして,漉いて,水切り。そのまま乾燥させます。
乾けば,アキノエノコログサの完成!
黄色みが際立つ野草紙,という感じが漂ってきます。 秋の代表的な野草紙だと,わたしは思っています。