自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

タケ紙!(続)

2015-11-04 | 野草紙

6時間かけて煮熟すると,あれだけしっかりしていた繊維が柔らか味を帯びてきます。手触りがはっきりちがってくるのがふしぎなほどです。繊維が丈夫だということは,それだけ手強くって,魅力を秘めた対象物だということです。


これを打解・叩解するのは,手作業でも,ミキサー使用でもよいでしょう。木槌で叩けば,根気がいりますが,長めの繊維が得られます。それから漉いた紙は魅力に富んでいます。手作業,ミキサー使用で得られた紙料を混ぜて使うのも名案です。きめ細かな繊維のなかに,長めの繊維が入って,これもまた独特の表情を見せてくれます。混ぜ具合によってもまた,味わいが異なってきます。

今回は,「草花の細密画が描けるタケ紙を」という求めに応じて,ミキサーを使いました。ただ,細密画が描ける紙質という点では,タケ紙にはすこしハードルが高いかなと印象です。実験的な意味合いなら大丈夫でしょう。


サイズは葉書大,A4判,色紙。乾燥なのですが,秋の今頃でも,晴れた日が続けば一日か二日で乾きます。


乾燥後はドウサ引きをします。これは,ドウサ液と呼ばれる液を薄めて表面に塗布するのです。この液はニカワ液にミョウバンを溶かしてつくられていて,市販されています。ドウサ引きは西洋紙製造工程におけるサイジングにあたります。用紙の滲み防止策として書道家が使う,ふつうの方法です。

こうしてできた紙を見ると,自分でいうのも変ですが,なかなか味わい深い色合いをしています。指先で弾くと,ぱんぱんと心地よい音がします。


さて,細密画用紙として及第点が得られるでしょうか。依頼者に満足していただけるでしょうか。