自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

秋の“虫の目”写真(6)

2015-11-16 | 随想

11月15日(日)。

虫とそのくらしを,それが生きている環境のなかでとらえ直して考えてみるという視点は,殊のほか大事に思えます。わたしたちはえてして,自分の内なる目で虫という対象を眺めようとします。結果,単に環境を構成する一要素と受けとめるにとどまることが多いように思います。自分の目を虫の位置において,虫自身になった気持ちであれこれ想像できるのが人ならではの想像力というものなのですが,そういうことはまずしようとしません。できないというのが正直なところです。もちろん,わたしもです。

虫の目レンズは,こうした従来の目線を完全に覆してくれます。虫の目線に立って思い,考えることを助けてくれる強力な助っ人です。誰がこれを手にしても,予想外の世界が拡がり,驚異の世界に誘われるのではないでしょうか。

一昨日・昨日と二日続きの雨模様でした。雨が上がった今朝,ホトトギスの葉にルリタテハがぶら下がっていました。「早く羽化したい」と,うずうずしていたのかもしれません。

 


虫の目写真に残しておこうと思い,アゲハの庭園の遠景を入れて撮りました。タテハはなにを見ているのかわかりませんが,わたしを警戒している動きは見せません。落ち着いた感じです。翅が伸びているのは,羽化後,かなり時間が経っているからです。いつ舞い上がってもおかしくない様子です。

 
それから2時間後。まだ,そこにいました。ただ,前と向きが変わっていました。「これはいよいよ舞い上がる前だな」と直感。それで,虫の目レンズで狙うことに。すると歩いて茎を登り,上端に移動しました。


「さあ,舞い上がるよ」とでもいっているように思われました。翅を大きくふわふわっと広げて閉じて,そして広げた瞬間,すっと舞い上がりました。「さようなら」とでもいい残したかったのでしょうか,わたしの頭上を一回りして,そうしてゆっくり消えていきました。

この個体は,このまま冬を迎え,春を待ちます。アゲハの庭園で生まれたルリタテハには,元気に生き延びてほしいものです。