らんかみち

童話から老話まで

近未来都市も高齢化には勝てなかったか

2013年03月30日 | 暮らしの落とし穴
 長く通ったカルチャースクールが閉鎖になるって聞いて、一つの時代が終わったような気持ちになる。そこは大阪万博のころに開発されたニュータウンの中心に位置する駅前の施設にあり、スポーツジムも併設されていたので童話講座と共に籍を置いていた。今日たまたまファイルの整理をしていたらジムに入会したときのフィジカルデータと写真が出てきて、オレってこんなに痩せていたんだ、と今のお腹をさすりながら諸行無常を思う。一つの時代が終わったんだ、みたいな~。

 あのニュータウンは拡大を続けていて、堺市から独立を果たそうか、というほどの勢いがあった時代もある。なのに居住者が高齢化すると、エレベーターが無く風呂も後付けという団地からは急激に人がいなくなり、軍艦島を彷彿させるような廃墟然とした佇まいに様変わりした地域もある。当地のような田舎から人がいなくなるのと違って、圧倒的な虚無、拠ん所ない恐怖に支配されてしまう。

 スポーツジムは残ると聞いたけど、ますます会員が増えてカルチャーのフロアまで浸食するかも知れない。健康志向の強い高齢者が多いからね。ぼくがいたときも、他の地域のジムに比べて平均年齢が高かった気がした。
 日本全体が高齢化に向かって突き進んでいるから、てか、中国ですら高齢化の懸念が取り沙汰されているんだから、あそこのカルチャースクールが閉鎖されるのも無理からぬこと。

 高齢者に対して訴求力を持つカルチャー講座って無いもんかね。日本一ともいわれる土地転がし会社が経営していたから、と揶揄するつもりは毛頭無いけど、閉鎖の憂き目になったのは、年寄りが魅力を感じるような講座を開発できなかったから、てことはないだろうか。

 ぼくがあの街に初めて足を踏み入れたとき、マンガに登場するような近未来都市に来たのかと胸が高鳴った。効率的に整備された道路網や、無意味に壮麗なオブジェや建築物に隣接して適度に保全された森がある。開発と自然保護の絶妙なバランスの上に成立する駅前に立つと、未来はぼくのためにある、なんて錯覚させてくれる街だった。
 あの頃の輝きを取り戻すことは難しいだろうけど、高齢者に「先は長いぞ!」と、そこはかとない、根拠の無い希望を抱けるような仕掛けは無いもんかね、いやきっとあるって信じたい。