らんかみち

童話から老話まで

広島は気位の高い町

2013年03月23日 | 暮らしの落とし穴


 広島に行くなら絶対にゲットしなくては、と執念を燃やしていたのが、菱正宗という日本酒。安佐北区という山手にある蔵で、広島以外では販売していない(ネットは別にして)らしい。というか、広島でもこの酒の認知度は高くないと見え、「菊正宗の間違いでは?」と、広島の酒屋さんがおっしゃるほどだ。

 広島市の中心街にあるデパートなら置いてあるけど、むしろ隣の山口県の獺祭(だっさい)の方が多かったりする。菱正宗はいわゆる入手困難な酒ではあるけど、新幹線の名店街に直営店があることは調査済み。
 デパートを見て回った末に直営店に行ってみたところ、よその蔵の酒も置いているしウイスキーやワインも用意されていた。もちろん菱正宗は全ての種類が最新の状態で置かれていた。

 スーツケースを用意しておけば良かったと悔いても後の祭り。一升瓶が入らないキャリングバッグに詰め込めるのは4合瓶とお土産用の2合瓶が数本。何やってんだか、と自責しつつレジに持って行ったら、「私は店番でして、店員さんは間もなく帰ってきますので」と、カウンターで飲んでいたお爺ちゃんがおっしゃる。角打ちができる店とは聞いていたけど、まさか酔客が店番とは思いもよらなかった。
 
 お爺ちゃんと一緒に飲みたいとは思ったけど、夜の宴会を控えてたので断念し、待つこと10分あまり。ようやく店員さんが戻ってきて包装してもらったんだが、2合瓶は箱に入れてくれたばかりか、ギフト用のラッピングまでしてくれた。それをさらに手提げ袋に入れてくれたのみならず、2合瓶用にレジ袋までつけてくれた。

 広島という町の気質は東京や静岡と似ているかもしれない。美意識が高いといえばそうで、大阪のように美の前に質だろう、とはならないようだ。美味しかったら猫飯にでも金は払うが、不味いと思ったらとことん値切る大阪流は通用しないらしい。
 その夜の宴会場は広島名物の穴子を食わせる店で、ガスコンロが出てきたかと思うと、お洒落な七輪が登場したりしてディスプレイには飽きなかったけど、いささか量が少なかった。前から感じていたけど、これが広島流なんだね。愛媛県とはお隣なんだけど、いやなんとも気位の高い町だこと。