らんかみち

童話から老話まで

ロマネスコ畑の悲哀

2013年03月07日 | 暮らしの落とし穴


 ロマネスコの栽培現場を発見してみれば、なぁんだ、おっちゃんが奥さんの名前で出品してたのか、灯台下暗しだね。産直市あたりでは女性名の方が信頼性が高いのかどうか知らないけど、奥さんの名前とか母親の名前で出品しているケースがままある。旦那は日頃あちらこちらで悪さをしているってこともないんだろうけど、同じ商品が同額で「黒腹欲男」と「吉永小百合」という生産者の名前で並んでいたら、どちらを買うかは自明。

 それにしても写真のロマネスコは葉っぱがちぎれて見るも無惨な姿だけど、なぜと聞いたら、「ヒヨドリが大群で押し寄せてあっという間にこの有様よ」という信じられない答えが返ってきた。
 ヒヨドリがキャベツを食い荒らすとは聞いていたけど、ロマネスコもキャベツの変種なので同じように被害を受けるらしい。出荷するのは花蕾なのでかまわないといやそうなのだけど、「おつりを払って帰るのが困る」らしい。見ると、いくつかの美しいロマネスコの上にやつらの糞がポテリ。
 ついこの前まで猪被害に泣かされていたけど、まさかヒヨドリに泣かされるとは思いも寄らなかった。タヌキは蜜柑の木によじ登って収穫するし、ヒヨドリは中身だけを食べてしまう。ヒヨドリが獰猛な小鳥だとは聞いていたけど、野菜の天敵だったとは!

「木守り(きまもり)」という言葉がある。晩秋の里山とかで、収穫の済んだ柿の木に一つ二つ取り忘れたように実が残っていたりするあれのこと。雪でも降ったりすると白をバックに柿色が映えて絵になるね。
 まるで葉の落ちた自分自身の木を見守っているかのように見えるところからその名で呼ばれるが、あれは鳥たちへのお裾分けなんだろう。柿の種は大きいから、小鳥が食べて遠くに運ばれ、糞として排泄されたところに柿の木が芽吹くという実質的な効果はないと思う。

 収穫は天の恵み、その喜びを鳥たちと分かち合い神に感謝しよう、という八百万の神、自然信仰の具体が木守りなのだろうか。ではあっても、ここまでヒヨドリにやられたらそんな悠長なこと言ってられん。
 猪の場合は狩猟期間プラス駆除の申請を延長していけば、ほぼ通年で狩猟できてジビエとして認知されるようになってきたけど、ヒヨドリはどうなんだろう。狩猟可能という話も聞くけど、じゃあ焼き鳥の町、今治の名物にって言うと引かれてしまうんだろうか……。