らんかみち

童話から老話まで

愛媛ラーメンを知ってるかい?

2007年04月12日 | 酒、食
 昨日のつづき

 いや~驚きました。N食品製の名古屋とんこつラーメンの味は、あのS屋製ラーメンにそっくりでした。包装のデザインもさることながら、あっさりしたコクの無いとんこつスープ、露骨な着香が施されたような鯖節のだしふりかけ、そこまでするか! といいたくなるほどそっくりなのです。
 
 N食品にはプライドっちゅうもんが無いんかい。売れたら何やってもかめへんってかぁ? それやったらうちの田舎の「万長ラーメン」も作ってくれへんけ。
 
 万長ラーメンというのは、確か新浜市にある「安葉製粉」さんの製造で、ぼくは小学校のころ当工場を見学に行き、お土産に新発売の「松茸うどん」をもらった記憶があります。それは現在は見つけることはできませんが、万長ラーメンは田舎のスーパーなら大抵どこでも置いてます。
 
 肝心の味ですが、決して美味しいとお勧めできるものではありません。とんこつベースのようでもありますが、どことなく人工的なうまみを感じますし、だからといって個性を主張していないところが奥ゆかしくはあれど、早い話が凡庸な味なのです。
 
 ですがこの味は愛媛びとにとってみたら、名古屋びとにとってのS屋のとんこつラーメンなのです。これがオラが町のラーメンだと誇示できるほどではないにしろ、たまに田舎に帰ったときにはスーパーに立ち寄って「ああ、良かったまだ売ってた」と、一安心して買い込むのです。
 
 買い込んだからといってすぐに食べるわけではありません。しばらく置いて眺めて郷愁に浸るのです。子どもの頃の節目節目と、万長ラーメンの存在をこじつけては昔を懐かしむのです。ですが一旦食べてしまったらどうしても味を評価したくなっていけません。添付のコショーを全部入れるのもいけません。妙に辛く、舌がしびれてスープの味が分からなくなるのです。
 
 このところうちの田舎では西瀬戸大橋の観光客を当て込んで、町おこしに「伯方の塩ラーメン」なるものを販売し始めたのですが、はっきりいってサッポロ一番塩ラーメンの方に軍配が上がります。
 ご当地ラーメンブームに触発された浅知恵の急ごしらえが根付くはずもありません。そんなことしなくても万長ラーメンという立派なご当地ラーメンがあるじゃないですか。
 
「新しい皮袋には新しいワインを入れよ」
 この聖書の言葉に間違いはありません。新しい時代には新しい味のものが求められるでしょう。ですが、「だれでも古いワインの方が良いというだろう」とあるように、まずさをかこちつつも、古いものはときおり懐古趣味を満足させるためにだけ残しておきたいと願うのは、きっと身勝手な考えなのでしょう。