北海道美術ネット別館

アート、写真、書など展覧会の情報や紹介、批評、日記etc。毎日更新しています

■第44回 北海道教職員美術展(2014年1月11~15日、札幌/1月25~29日、士別)

2014年01月12日 14時23分28秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
 公立学校共済組合北海道支部などが主催し毎年1月に開いている総合展覧会。
 道内の公立小中高の教員(道教委にまわっている人も含む)が対象なので、私立や、大学の先生たちは出品していない。

 以前(少なくても2010年まで)は、絵画、彫刻、工芸、書道、写真の5部構成だったが、彫刻の出品者がほとんどいなくなってしまったためであろう、彫刻と工芸が合体して「立体」の部となり、現在は4部になっている。

 一般の特選・奨励賞・入選の数は全体的に減る傾向にあり、筆者のような一般の観覧者にとっては、道展や全道展会員クラスが多い「招待出品」を見るのが楽しみになっている面があるのは否めない。
 正確な数はわからないが、手許にある「作品評」(レイアウトが道展の作品評そっくり)から拾うと、入選・入賞の数は次のとおり。
 いずれも、1人1点である。

絵画 特選3、奨励賞4、入選15
立体 入選1
書道 特選2、奨励賞5、入選58
写真 特選3、奨励賞7、写真29

 ご覧のとおり、書道が圧倒的に多く、次いで写真が多い。
 立体は、一般は陶芸が1点あるのみで、招待出品が5点(陶芸2、彫刻3)と、寂しい状態になっている。

 絵画は、特選3点の作家は、いずれも他の展覧会でもおなじみの実力者で、見ごたえがあった。
 伊藤貴美子(網走)「MOKU-光2013」は、ドリッピング技法を生かした抽象画だが、点の跳ね飛ばし方がだんだん習熟してきたようで、構図がまとまりをみせている。
 手塚昌広(江別)「grid」は、絵の具を盛り上げたグリッドが規則的に画面に施されており、絵画空間とは何かを考えさせる意欲的な抽象作品。グリッドが画面全体に緊張感を与えている結果、少ない要素で画面が構成できている。
 宮崎亨(札幌)「バトンタッチ」は、人間の頭部から小さい人間がもがきながら脱出しようと(あるいは、生まれようと)している、この人ならではの力みなぎる作。小さい人間の右足が、下の人の右目部分から突き出ている。怖いけど「生みの苦しみ」のような力強さがある。

 招待作品も興味深い。

 坂東宏哉「TAIDOU #1、#2、#3」。群青を基調に、赤や緑が塗りこめられた抽象画。扇を重ねたような曲線に沿って絵の具が盛り上げられ、エネルギーの胎動を感じさせる大作。
 山形弘枝「HELP ~いちご~」も、2枚のキャンバスからなる大作。イチゴの白い断面がどーんと描かれ、周囲に、木組みのような大小の棒が何本も走っている。背景は濃い水色の空。画面にアクセントを与えているのは飛びまわる11匹のテントウムシと、飛び散る種。不思議な光景が描かれている。
 板谷諭使「Beauty Room」は楽しいなあ。舞台は、おもちゃのようにも見える美容室。パーマネントをかけるためのいすに坐った女の子と、丸いテーブルに腰掛けためがねの女性。室内は、バラ模様のセピア色の壁紙で統一され、おしゃれ。不思議なのは、空中を4匹の金魚がふわふわと泳いでいること。女の子の背後にある鏡に、犬かオオカミか猫かわからないが、けものの巨大な目がのぞいているのが怖い。あいかわらず不思議な板谷ワールドである。
 梅原賢伸「別れ」。生き生きとした人物を描いたら、昔から手堅い人だけど、今回は手前にリュックを背負って目に手を当てている人物を、遠景に草原と馬を描き、この題が人と馬の別れであることを示唆する。人物の表情は見えないが、天気雨が降っているところをみると、泣いているのだろうか。

 ほかに、山崎亮「senkaku」、竹津昇「馬小屋の窓」。林正重「つながり」、山田光「石炭から原子力へ」、福原幸喜「しるべ」、工藤千波「朝気あさぎ」、八重樫眞一「彼方の空より」、細川亜矢子「風景―冬―」、西村徳清「現に存在していた」。

 立体の部の招待作品は、園田陽子「水の記憶~すくう~」、丸山恭子「絶対幸福感」、上縄手淳「少女」の彫刻3点と、宮前和希「豊穣」、佐野悦子「窯変 花入れ」の陶芸2点。

 書道は、全体を通して、墨象・前衛がごく少なく、かなも数えるほど。篆刻・刻字は1点も見なかった。
 一方で、近代詩文書が半数以上を占めているのがおもしろい。
 漢字も、一般的な行草書は少なく、少字数書が半数以上だ。
 道展も毎日展もすごいボリュームでじっくり見ると疲れるので、これぐらいの数が、ふつうに鑑賞するにはちょうどいいかもしれない。
 特選は、横山晃秀(根室)「銀の雨」、高橋竜平(稚内)「無空」だった。

 例年書いているが、号ではなく本名での出品なので、誰が誰やらわからないことが多い。

 写真は、風景や身近な人のスナップをとらえたカラーが大半。
 招待出品には銀塩モノクロもあったようだ。


□公立学校共済組合のページ http://www.kouritu.go.jp/hokkaido/kousei/sonota/taiiku/zyusyosaku/index.html
 
2014年1月11日(土)~15日(水)午前10時~午後5時(最終日~午後3時)
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)



・地下鉄東西線「バスセンター前」駅10番出口から約200メートル、徒歩3分
・ジェイアール北海道バス、中央バス「サッポロファクトリー前」から約540メートル、徒歩7分
※札幌駅、都心から、現金に限り100円

・中央バス「豊平橋」から約820メートル、徒歩11分


1月25日(土)~29日(水)午前9時~午後10時(最終日~午後3時)
士別市生涯学習センター(士別市西1の8)



・JR士別駅から約200メートル、徒歩3分


 過去の展覧会へのリンク
第40回記念北海道教職員美術展
第39回 ■続き
第38回北海道教職員美術展
第36回北海道教職員美術展


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。