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■第57回日本水彩画会 北海道支部展(2016年7月12~17日、札幌)

2016年07月21日 17時14分22秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
承前

 2016年7月17日の続き。

 1913年(大正2年)に発足した、国内では最古の団体公募展の一つである日本水彩画会の道支部展。
 道支部の歩みについては50周年記念展のときに略述したのでそちらをぜひ読んでいただきたいが、道内水彩画家の草分けである繁野三郎さん(故人)を支部長として1953年に承認を受け、60年から毎年支部展を開いている。こちらも、春陽や自由美術とならんで、北海道支部展としては最も長い歴史を誇っている。

 水彩画では、道内には「道彩展」という団体公募展があり、フォービスム的な絵が多い。
 全国の団体公募展の支部では、日本水彩画会が穏当な写実が中心で、水彩連盟が心象的な絵など写実を離れた画風の描き手が多いというおおまかな傾向があるが、それほど明確なものではない。
 日本水彩画会自体がけっして写実オンリーではないのだが、道支部で写実的傾向の絵が過半を占めるのは、繁野さんの影響がいまにつづいているのかもしれない。
 ついでにいえば、日本水彩画会、水彩連盟とも、道展との掛け持ち組が多い(水彩連盟は新道展との掛け持ちも)。これは全道展が独立した水彩部門を有していないことも関係しているのだろう。

 写実の中でも驚くべき冴えを毎年見せているのが宮川美樹「刻」。
 波打ち際の貝殻や海水の泡などを上から緻密に描写しているのは毎年変わっておらず、哲学的な無常観さえ漂わせている。貝殻などのモチーフ自体の数はいつもより多いように感じる。

 柴垣誠「杜の小道」。
 緑の中に見えているのは、石狩市厚田の森の中にあるギャラリー喫茶「チニタ」の屋根だと思う。
 そこに続く木道を、縦位置でとらえた作。

 北野清子「水宴」。
 北野さんといえば、ポプラ並木が印象深いが、今作は湿原を描いている。茫漠として距離感、スケール感のつかみづらい題材にあえて挑んでいる。

 桂島和香子「Wreath作り」。
 ドライフラワーがたくさんある一角。手前と奥の明暗の差が、絵に奥行きとダイナミズムを与えている。

 森井光恵「調べ」。
 室内で古楽器を手にしたお嬢さんの立ち姿。髪に当たる光の具合などが美しい。

 最後に寺井宣子「人影・冬」。非常に細かな模様で画面全体を覆うのが寺井さんの特徴だったが、近年はそれがやや後退し、今作では、白や青の混ざり合う中に人間の上半身のシルエットが浮かび上がるような絵柄になっている。


2016年7月12日(火)~17日(日)午前10時~午後5時(初日正午~)
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)

□日本水彩画会 http://www.nihonsuisai.or.jp/

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第49回日本水彩画会北海道支部展(2008年)
第48回(以下、画像なし)
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2003年(7月19日の項)
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