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■日本水彩画会北海道支部50周年記念展 (7月19日まで)

2009年07月18日 21時01分28秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 全国規模の美術公募団体展はおびただしい数があり、札幌・北海道でひらかれている支部展も相当な数にのぼるが、歴史の古さでは「日水」こと日本水彩画会がいちばんではないだろうか。
 会場で配布されていたリーフレットに載っている「支部小史」によれば、道内水彩画壇の草分けである故繁野三郎を初代支部長として1953年に承認を受け、1960年から毎年支部展を開催しているという。
 1986年に繁野支部長が物故し、その後、森田正世史、白江正夫、武田貢と引き継ぎ、1999年からは宮川美樹が支部長を務め現在に至っている。
 おなじリーフレットに寄せた宮川支部長のあいさつがすばらしい。
 以下、一部を引用する。

 しかし、本来は表現用材で括って群れを成すことに大きな意味はない。何をどうとらえ、どう表現するかが命題であって、誰かが描いたようなものを誰かが用いたような技法で再現しているだけの絵はつまらない。作者の存在が稀薄だからである。様々な試みの中から新たな発見をしていこうという姿勢のない制作に人の心は寄り添ってはこない。何を用いて描こうが、本道をはずしてはならない。本会も源泉をそこに置き、周りを潤しながら大海へと流れ続ける水脈でありたい。


 50年を記念してか、ほぼ全員が2点出品。古参会員のなかには旧作を出品した人もいる。
 波打ち際の細密な描写で無常観を漂わせる「刻」シリーズで知られる宮川美樹は、1965年の「ナルシス」。うずくまる人物を描き、いまとはまったく画風が違う。
 志賀迪は、第67回光風会展出品作「冬の川辺」(1981年)。
 武田貢「漁船」(1968年)は、昨今よりもかなり塗りが厚い。
 寺井宣子は「ひとかげ・秋」が平成15年、「ひとかげ・冬」が同16年。レース編みのような細かいタッチが圧巻である。

 栗山巽はすこし系統の異なる2点。いずれも、宇宙の深奥さを感じさせる。
 抽象では佐藤京子も健闘している。

 昨年に続き柴垣誠に注目した。リアルな筆致であり、すこし明暗を強調しているので、写真的な画面になっている。コンクリートの水門という、ふつうなら絵の題材にしないモティーフとじっくり向き合っているのも印象深い。

 中井戸紀子は、(たぶん)段ボールを紙に押しつけたり、重厚な画面づくりにさまざまな工夫をこらしている。

 竹山幹子「ターシャを偲び」は、アジサイの鉢や、雑誌を積んだ上にのせられたラベンダーの切り花など、穏やかな静物画だが、飲みさしの紅茶が描かれることで、或る特定の一瞬であることを強調する結果となった。
 舎川栄子は、藍染のテーブルクロスや古いたんすなどを描き続けている。「藍染と枯花」は、手前のいすの上に岩波文庫が1冊置かれている。

 三留市子は、ショーウインドーのある都市などを題材にしてきたが、今回は2点とも海外(欧洲?)の風景。港の海面の描写が、真に迫っている。

 ベテラン会員はいずれも手堅い。


 出品作は次の通り。
青田淑子  海への追想(60号) 洋上にて(20号)
及川幸子  鮭干し(60号) 廃屋(40号)
尾川和彦  新雪のファクトリー(60号) ミハス遠望(40号)
桂島和香子 春を待つ(40号) アジサイの詩(40号)
金子恵子  もやい網(40号) 漁港の一隅(20号)
河合幹夫  北の大地 I(40号) 北の大地II(40号)
川端良子  立ち話(40号) 語らい(40号)
北野清子  ほおずき(20号) 夕映(60号)
倉本英子  画室にて(40号) 北・想(40号)
栗山 巽  宙-星座(60号) 宙-星流(60号)
近藤武義  北国の紅葉(60号) 古城(40号)
近藤幸子  路地の陽だまり(南仏)(40号) 花咲く路地(南仏)(40号)
齋藤由美子 石道家の庭 II(30号) 散歩道(20号)
斉藤洋子  木立のむこう(40号) 赤い花(20号)
笹川誠吉  風の盆(60号) 時を越えて(60号)
佐々木和雄 冬の紋別港(40号) 秋の川(40号)
佐藤京子  作品 I(20号) 作品 II(20号)
佐藤富子  早春の湿原(50号)
佐藤信子  陽光(40号) 秋風(20号)
佐藤祐子  豆の木ジャック(40号) 静物(20号)
志賀 迪  秋(モデルバーン)(60号) 冬の川辺(40号)
柴垣 誠  早春の水門(40号) 儚景(20号)
舎川栄子  藍染とほおずき(40号) 藍染と枯花(40号)
大藤淳子  待春の森(60号) 冬の情景(40号)
武田 貢  老舗(60号) 漁船(40号)
竹山幹子  ターシャを偲び(40号) 五月(20号)
田中町子  くつろぎの刻(とき)(40号)
谷  勲  昼さがりの浜(40号) 繋船(20号)
寺井宣子  ひとかげ・秋(60号) ひとかげ・冬(60号)
寺西冴子  野の詩(40号) 作品(20号)
中井戸紀子 記憶の中(40号) 記憶の中の情景(60号)
中西京子  知床に抱かれて(40号) 初雪の頃(40号)
成田一男  北大農場の春(40号) 早春(北大農場)(60号)
西江恭子  花の使者.北へ(40号) 花の宙(みち)(40号)
富士田夏子 峠の春(60号) 秋のキャンプ場(60号)
松本佳子  時・あそぶ(30号) 時・あそぶ(40号)
三留市子  黄昏れて(A)(60号) 黄昏れて(B)(60号)
三井幸子  冬の窓辺(60号) 静物(20号)
宮川美樹  刻(50号) ナルシス(40号)
森井光恵  スプリング ソナタ(40号) 夏のハーモニー(20号)

2009年7月14日(火)-19日(日)10:00-17:00(初日13:00-、最終日-17:00)
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)


□日本水彩画会 http://www.nihonsuisai.or.jp/

第49回日本水彩画会北海道支部展(2008年)
第48回(以下、画像なし)
第46回
2003年(7月19日の項)
01年(21日の項)



・地下鉄東西線「バスセンター前」10番出口から徒歩3分、同「菊水」駅1番出口から徒歩8分
・ジェイアール北海道バス、中央バス、夕鉄バス「サッポロファクトリー前」から徒歩7分(ファクトリー線は徒歩9分)
・中央バス「豊平橋」から徒歩11分


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