歴史の古い公募展の北海道支部が毎年この時期にひらいている展覧会。写実的な画風のものが多いが、抽象的な作風、粗いタッチのものなど、幅広い。道展の会員・会友・出品者とかなり重複しているが、道展には出していない人もけっこういる。
やはり目を引くのは宮川美樹さんの作品。
ことしも砂浜の波打ち際を、きわめてリアルな筆つかいで描いている。毎年、会場で「これは写真ではないか」と顔を作品に近づけるおじさん、おばさんが必ずいるほどのリアルさだ。
今回の「刻」(毎年おなじ題だが)は、ごく小さな貝殻、鳥の足跡といったおなじみのモティーフのほかに、アゲハの死骸(しがい?)が身を横たえているのが目を引く。これも毎度書いていることだけど、宮川さんの絵がすごいのは、単にリアルだというだけではなく、命のはかなさと尊さを見る者に省察させる何かが絵にあることだ。
大藤淳子さんは、雪解けの季節(あるいは初冬)の林がモティーフ。
昨年の道展入選作品に比べ、水が沼のようにたまっている情景を手前にもってきており、これが成功していると思う。
というのは、この水が、ほんとうに冷たそうなのだ。凍りかかっている水の、暗い色をした重々しさが、よく描かれている。
こんなに水がうまく表現できるのだから、木々の描写にももうすこし気合いをいれれば、もっと全体がよくなるのに、と思う。
北野清子さんはここ数年、いろいろなモティーフの風景画にとりくんできたが、今回は、以前よく対象にしていたポプラ並木の絵だ。しかも、鉛筆デッサンなのだ。着彩はほんの少しなされているだけ。しかし、鉛筆画でも、太い幹の存在感はたっぷりだ。
富士田夏子さんは、以前よく花の群落をとりあげていたが、近年は夕焼け時の針葉樹林をとりあげており、個人的にはこちらのほうが断然好みだ。
西の山に日が沈んだ直後の、あのほのかな辺りの明るみが、とても情感ゆたかに表現されている。といって、夕暮れのロマンティックさを過剰にうたい上げているわけではない。しみじみとした雰囲気が、いいなあと思うのだ。
佐藤信子さん「秋風」は、ちょっと離れたところから見ると、ひとつひとつのモティーフがとてもリアルに、存在感をたたえているのにおどろく。
題材自体は、いつもとあまり変わらない。板敷きの床の上に布を敷き、白い靴、麦わら帽子、落ち葉などが配された静物画だ。
桂島和香子さんの絵も、とりたてて奇抜なところはない室内画だが、いすと、その上のひざ掛け、卓上にならぶポットや緑のカップ、若草色のカーペット、サイドボードとその上に載せられたランプなど、さまざまなモティーフに、右の窓からの柔らかな光が当たることで、統一感を出している。
以上、ふだんあまり目に留まらない人を中心に書いてみた。
栗山巽さんは、2枚をほぼ左右対称に描いてさらなる広がりを出しているし、寺井宣子さんの細かな装飾性にはあいかわらず脱帽させられる。三留市子さんの、海外の街角の描写も手慣れている。
近藤武義さん、斎藤由美子さんといった綿々も、安心してみることができた。
出品作は次のとおり。
伊藤俊輔「公館前庭」(60号)
及川幸子「鮭干し」(同)
尾川和彦「窓(晩秋)」(50号)「樹影」(40号)
桂島和香子「春を待つ」(同)
金子恵子「もやい綱」(同)「朽ちて」(20号)
北野清子「静かな並木」(60号)
倉本英子「画室にて(夏)」(40号)「エスニック賛歌」(同)
近藤武義「公園の秋」(60号)
近藤幸子「おもいで(ブダペスト)」(40号)
斎藤由美子「フサスグリ」(20号)「陽だまり」(同)
佐藤京子「森の中」(40号)「婦人」(20号)
佐藤富子「北に咲いて」(50号)
佐藤信子「秋風」(40号)「ほおずき」(20号)
志賀迪「すぎゆく時(オンネトー)」(60号)「早春」(20号)
柴垣誠「刻」(20号)「冬光」(P20号)
大藤淳子「融ける」(60号)
武田貢「山頂」(40号)「台風・富良野」(20号)
谷勲「運河繋船」(40号)
寺井宣子「月影」(50号)「灯影」(同)
寺西冴子「野の詩」(40号)「野の詩」(40号)
成田一男「霧の洞爺湖」(20号)「洞爺湖・有珠山」(同)
中井戸紀子「記憶」(40号)
西江恭子「花の使者・北へ’07」(40号)「作品“花”」(同)
富士田夏子「夕映 I」(60号)「夕映 II」(同)
三井幸子「窓辺の静物」(40号)「夏の終りに」(同)
森井光恵「私の音色」(同)
=以上札幌
栗山巽「宙-’07(A)」(60号)「宙-’07(B)」(60号)
中西京子「千古園」(40号)「石林(中国)」(20号)
=以上江別
河合幹夫「早春の丘」(50号)
川端良子「初めてのモデル C」(40号)
笹川誠吉「ドウガの神殿(チュニジア)」(60号)
舎川栄子「藍染め」(40号)
三留市子「黄昏れて」(60号)
=以上小樽
宮川美樹「刻」(50号)
=岩見沢
竹山幹子「誇らしく」(40号)
=室蘭
斎藤洋子「馬たちよ」(同)
=浦河
07年7月17日(火)-22日(日) 10:00-18:00(初日13:00-、最終日-17:00)
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6 地図G)
■第46回(以下、画像なし)
■2003年(7月19日の項)
■01年(21日の項)
やはり目を引くのは宮川美樹さんの作品。
ことしも砂浜の波打ち際を、きわめてリアルな筆つかいで描いている。毎年、会場で「これは写真ではないか」と顔を作品に近づけるおじさん、おばさんが必ずいるほどのリアルさだ。
今回の「刻」(毎年おなじ題だが)は、ごく小さな貝殻、鳥の足跡といったおなじみのモティーフのほかに、アゲハの死骸(しがい?)が身を横たえているのが目を引く。これも毎度書いていることだけど、宮川さんの絵がすごいのは、単にリアルだというだけではなく、命のはかなさと尊さを見る者に省察させる何かが絵にあることだ。
大藤淳子さんは、雪解けの季節(あるいは初冬)の林がモティーフ。
昨年の道展入選作品に比べ、水が沼のようにたまっている情景を手前にもってきており、これが成功していると思う。
というのは、この水が、ほんとうに冷たそうなのだ。凍りかかっている水の、暗い色をした重々しさが、よく描かれている。
こんなに水がうまく表現できるのだから、木々の描写にももうすこし気合いをいれれば、もっと全体がよくなるのに、と思う。
北野清子さんはここ数年、いろいろなモティーフの風景画にとりくんできたが、今回は、以前よく対象にしていたポプラ並木の絵だ。しかも、鉛筆デッサンなのだ。着彩はほんの少しなされているだけ。しかし、鉛筆画でも、太い幹の存在感はたっぷりだ。
富士田夏子さんは、以前よく花の群落をとりあげていたが、近年は夕焼け時の針葉樹林をとりあげており、個人的にはこちらのほうが断然好みだ。
西の山に日が沈んだ直後の、あのほのかな辺りの明るみが、とても情感ゆたかに表現されている。といって、夕暮れのロマンティックさを過剰にうたい上げているわけではない。しみじみとした雰囲気が、いいなあと思うのだ。
佐藤信子さん「秋風」は、ちょっと離れたところから見ると、ひとつひとつのモティーフがとてもリアルに、存在感をたたえているのにおどろく。
題材自体は、いつもとあまり変わらない。板敷きの床の上に布を敷き、白い靴、麦わら帽子、落ち葉などが配された静物画だ。
桂島和香子さんの絵も、とりたてて奇抜なところはない室内画だが、いすと、その上のひざ掛け、卓上にならぶポットや緑のカップ、若草色のカーペット、サイドボードとその上に載せられたランプなど、さまざまなモティーフに、右の窓からの柔らかな光が当たることで、統一感を出している。
以上、ふだんあまり目に留まらない人を中心に書いてみた。
栗山巽さんは、2枚をほぼ左右対称に描いてさらなる広がりを出しているし、寺井宣子さんの細かな装飾性にはあいかわらず脱帽させられる。三留市子さんの、海外の街角の描写も手慣れている。
近藤武義さん、斎藤由美子さんといった綿々も、安心してみることができた。
出品作は次のとおり。
伊藤俊輔「公館前庭」(60号)
及川幸子「鮭干し」(同)
尾川和彦「窓(晩秋)」(50号)「樹影」(40号)
桂島和香子「春を待つ」(同)
金子恵子「もやい綱」(同)「朽ちて」(20号)
北野清子「静かな並木」(60号)
倉本英子「画室にて(夏)」(40号)「エスニック賛歌」(同)
近藤武義「公園の秋」(60号)
近藤幸子「おもいで(ブダペスト)」(40号)
斎藤由美子「フサスグリ」(20号)「陽だまり」(同)
佐藤京子「森の中」(40号)「婦人」(20号)
佐藤富子「北に咲いて」(50号)
佐藤信子「秋風」(40号)「ほおずき」(20号)
志賀迪「すぎゆく時(オンネトー)」(60号)「早春」(20号)
柴垣誠「刻」(20号)「冬光」(P20号)
大藤淳子「融ける」(60号)
武田貢「山頂」(40号)「台風・富良野」(20号)
谷勲「運河繋船」(40号)
寺井宣子「月影」(50号)「灯影」(同)
寺西冴子「野の詩」(40号)「野の詩」(40号)
成田一男「霧の洞爺湖」(20号)「洞爺湖・有珠山」(同)
中井戸紀子「記憶」(40号)
西江恭子「花の使者・北へ’07」(40号)「作品“花”」(同)
富士田夏子「夕映 I」(60号)「夕映 II」(同)
三井幸子「窓辺の静物」(40号)「夏の終りに」(同)
森井光恵「私の音色」(同)
=以上札幌
栗山巽「宙-’07(A)」(60号)「宙-’07(B)」(60号)
中西京子「千古園」(40号)「石林(中国)」(20号)
=以上江別
河合幹夫「早春の丘」(50号)
川端良子「初めてのモデル C」(40号)
笹川誠吉「ドウガの神殿(チュニジア)」(60号)
舎川栄子「藍染め」(40号)
三留市子「黄昏れて」(60号)
=以上小樽
宮川美樹「刻」(50号)
=岩見沢
竹山幹子「誇らしく」(40号)
=室蘭
斎藤洋子「馬たちよ」(同)
=浦河
07年7月17日(火)-22日(日) 10:00-18:00(初日13:00-、最終日-17:00)
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6 地図G)
■第46回(以下、画像なし)
■2003年(7月19日の項)
■01年(21日の項)
また、北野さんの鉛筆のポプラにびっくりしました。
みなさん、いろいろに切磋琢磨されているんですねえ。。
あれは、ウエット状態のときに、食塩を
まぶすんだと思いました。
富士田さんの絵は、しみじみくるんだけど、夕焼けだからと言って
「さあ、どうだ、感動的だろう!」
という押し付けがましいところはないのが気に入っています。
大藤さんの水は食塩をまぜるんですか?
冷たそうですよねえ。