北海道美術ネット別館

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■友田コレクション 西洋版画の名品 (2019年11月19日~20年3月15日、札幌)―2020年2月6~8日は13カ所(6)

2020年02月17日 08時51分24秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
(承前)

 札幌に住む人と札幌へ行く人は見たほうが良い。
 むずかしい展覧会ではぜんぜんない。
 版画とはいえ、ルオー、ピカソ、マティス、デュフィ、ダリ、ミロなど、20世紀の巨匠がずらっと並んでいるのは壮観というしかない。

 冒頭とつぎの画像は、ジョルジュ・ルオー「ミセレーレ」。
 58点組みを、およそ半数ずつ、前期と後期で入れ替えて展示している。
「母親に忌み嫌われる戦争」「われらが癒やされたるは、彼の受けた傷によりてなり」といった題がついている。それぞれの題は、会場で配られている作品一覧にも掲載されていない。 

 ルオーはほかに「『悪の華』のために版刷された14図」「ユビュおやじの転生」(22枚組み)もある。
 イエスの顔を正面から描いた作品など、油彩と共通する主題の、キリスト教的なものも多い。

 これらはすべて、サラリーマンとして働きながら詩人・児童文学者としても活動していた友田多喜雄さんがコレクションしたものだというから驚かされる。
 その数2千点を超え、いままでは空知管内栗山町の小さなギャラリーなどで公開されてきた。先年、道立近代美術館に寄贈され、今回はそのうち450点ほどを選んで公開している。

 北海道の地方に住んでいる、資産家でも経営者でもない人が、これほどのコレクションを築き上げたという事実に、ものすごく勇気づけられる。
 もちろん、個人がこれだけの油彩のコレクションを集めるのは絶対に不可能だ。しかし、版画なら、コツコツお金をためていけば、手が届くものもあるのだろう。



 これも感動した。
 フェルナン・レジェの石版画「イリュミナシオン」15点組み。
 フランスの伝説的詩人アルチュール・ランボーの詩集に絵をつけたもの。
 筆者はフランス語は分からないが、「おお季節よ、城よ」という有名な詩句は読み取れる。


 マルク・シャガールが自作の詩に絵を付した「ポエム」24点組み。多色刷り木版画。


 ベン・シャーン「リルケ『マルテの手記』より 一行の詩のためには」。

 ベン・シャーンは、近年でこそあまり名を聞かなくなってきているが、戦後の日本にも多くのファンがいた米国の社会派画家である。

 ほかにもノルデ、ブラック、ダリ、クラーヴェ、藤田嗣治、清水敦の作品があった。
 ダリの作品は、以前釧路などで見た、あからさまな手抜きの版画よりも、しっかり描かれていたと思う。


前期(2019年11月19日~’20年1月19日)、後期(1月21日~3月15日)
午前9時半~午後5時。月曜日(1月13日、2月24日をのぞく)、年末年始(12月29日~1月3日)、1月14日(火)、2月25日(火)休み
道立近代美術館(札幌市中央区北1西17)


・中央バス、ジェイアール北海道バス「道立近代美術館」から約150~200メートル、徒歩2~3分
(札幌駅前、北1条西4丁目から、手稲、小樽方面行きの全便が止まります。高速おたる号など都市間高速バスも停車し、SAPICA使用可。本数も多く、おすすめ)

・地下鉄東西線「西18丁目駅」4番出口から約340メートル、徒歩5分

・市電「西15丁目」電停から約830メートル、徒歩11分

・ジェイアール北海道バス「桑11 桑園円山線」(桑園駅―円山公園駅―啓明ターミナル)の「大通西15丁目」から約440メートル、徒歩6分
・ジェイアール北海道バス「54 北5条線」(札幌駅前―西28丁目駅)「58 北5条線」(札幌駅前―琴似営業所)の「北5条西17丁目」から約520メートル、徒歩7分



※駐車場は北1西15の「ビッグシャイン北1条」です




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2 コメント

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Unknown (shirousa4494)
2020-02-17 22:37:41
お疲れさまです。
多忙なので、ひとまずのコメントです。

近美の友田コレクション、まだ観に行けてないのですが、詩人の友田さんは、高校の友達のお父さんなんです。そのお家で、伊藤倭子さんの桜桃を見た記憶が今でも深いアートの心にあります。他にもたくさんあるんだーと聞いてました。
その友達兄弟がモデルの詩も、たくさんあって面白かったです。昔は、多寄で農民連盟とか所属されて社会運動的な話もされてました。
そして、ウワサの道新保健室の本田さんも同じく開成で同級生でした。
自分たちも学生紛争に紛れて、ロックや制服自由化運動の片鱗をそんな大人たちから影響された時代でした。

まだまだ寒い日もあるので、お身体を大事にしてくださいね〜
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shirousaさん、こんにちは (ねむいヤナイ@北海道美術ネット別館)
2020-02-18 09:57:20
コメントありがとうございます。
世の中狭いシリーズですね(笑)。
文学者なのに、サラリーを本ではなく、美術に注ぎ込むというところがおもしろいお父さんですね。
農民連盟の専属職員だということは、美術館の中の説明にもありました。

発表が続いてしろうささんもお忙しいことと思います。どうかご自愛くださいね。ブログはちょうどよい頃合いで更新されていて、いつも楽しく拝見してます。
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