池尻エリクソン先生による4コマ漫画作品です。
「まんがくらぶ」「まんがライフ」で連載中!
・ livedoor デイリー4コマ 池尻エリクソン先生の作品ページ
【あらすじ】
田中さんちの白米ちゃんは、あきたこまち。
「お米」である白米ちゃんをはじめ、相棒のみそ汁ちゃん他、
さまざまな食材たちがくり広げる擬人化コメディ4コマ漫画です。
「今日もおいしくたけますた」
料理好きの田中さんにたかれて喜ぶ白米ちゃん。
相棒・みそ汁ちゃんといっしょに、田中さんの食卓をいろどるメインとして活躍します。
田中さんには、白米ちゃんたちが見えておらず、
逆に白米ちゃんたち食材は、田中さんを見ているという一方通行。
その食材と人とのコミュニケーションの不在が、食材たちのすごす空間を際立たせ、
独特の世界観を形成して、読者を楽しませてくれる作品に仕上げています。
【感想】
この作品は、
・ 食材擬人化の見事さ。
・ 擬人化された食材たちの愛らしさやコミカルさ。
・ その愛らしさに、過酷なまでの4コマ・オチをつけられる面白さ。
・ 時に感じる長閑さや、しみじみ感。
などに良さがあると感じます。
・擬人化された食材たち
左は、トマトちゃんとの女子トークに花を咲かせる白米ちゃんたち。
右は、白米ちゃんが苦手とする食材・納豆たちです。
このように、いろんな食材が擬人化されて登場し、
白米ちゃんたちと交流したり騒いだりと、愉快な空間を創り出しています。
トマトちゃんの好きな“野菜”であるピーマンくんなどは、
男らしいけれども「中身スカスカ」というピーマンらしい擬人化のされ方をしていて、
そんなところにも思わず納得してしまうというか、「ウマい」と思わされる絶妙さがあったりと、
食材それぞれの特徴をつかんだ擬人化の見事さに、うならされることしばしばなのです。
この他にも、魅力的で面白い擬人化された食材たちがわんさと登場しますよ。
・愛らしさ ⇒ 過酷なオチ
「2人セットで主役」「和食の黄金コンビ」と喜ぶ白米ちゃん&みそ汁ちゃん。
なんとも愛らしく、けなげな2人の様子が微笑ましい・・・
と、そこへ田中さんが持ってきたメインはハンバーグ!
白米ちゃんたちの素朴さに比べると、なんとも垢抜けたムチムチプリプリっぷりで、
完全に「主役」の立場を奪われるというオチがつき、その落差に笑いを誘われるネタと
なっています。
こんな風に、単に愛らしいだけではない可笑しみを含んだ4コマ・ネタが満載の作品。
それが『田中さんちの白米ちゃん』なのです。
・あくまで主役は食材。
本作品の主役は食材であることを、的確に表現しているのが「人間」の描き方です。
白米ちゃんたちのご主人様である田中さんたち「人間」は、白米ちゃんたちが視えません。
そのことを象徴するかのように、田中さんはじめ、彼の同僚・木下さんなど、
登場する「人間」たちには目が描かれていないのです。
これは単にそうした象徴的意味のほかに、目を描かないことによって
存在感の希薄化を促し、あくまで主役は白米ちゃんをはじめとする食材たちなのだと、
読者の意識を誘導する効果を発揮していると考えられます。
が、だからといって彼らが無個性かと言うとそうでもなく、
料理好きでしっかり者・だけどモテない田中さんや、
美人で活動的・だけど料理下手な木下さんといったように
キャラクターはきちんと練られていて、読者を楽しませてくれる存在になっています。
ただし、あくまで「わき役」として・・・ですが。
・食材たちへの感謝の念を・・・
基本コミカルな4コマ作品ではありますが、時には胸にしっとりくるような感覚も。
「お米の1粒1粒に感謝しながら残さず食べなさい」
その1粒1粒に神様がいる・・・といったようなことを聞かされて、
子供時代を過ごされた方もおられるやもしれません。
そこには汎神論的な考え方とでもいうのでしょうか、日本的な情緒を感じてしまうのですが、
こうした情感を具現化したものこそが、この白米ちゃんたち擬人化された食材たち・・・
なのかもしれません。(ゆえに人には視えない)
結局は食べられてしまう食材たち。
でも彼らは、食べられることこそを自分たちの在り方として自覚し、
そのために精一杯「生きて」いる姿を見せてくれています。
だからこそ、食材1つ1つに対する愛着も増そうというものですし、
食べ物を粗末にできない、大切にしたいという想いも生まれるというもの。
そんな気持ちにさせてくれる本作品。
読み終わった後には、「ごちそうさま」の一言を添えてやってみてください。
4コマ漫画としての面白さもかなりのもの、きっと満足できる“食卓”になることでしょう!
(追記)
よつぎりポテトさん記事の「おとなり感想」に取り上げていただいたようです。
ありがとうございます!
『田中さんちの白米ちゃん』、おもしろいですよね。
もっと多くの方に読まれてほしい作品です。