『蒼き鋼のアルペジオ』5巻 (Ark Performance 先生)
近未来・海洋SF戦記の第5巻!
表紙がピンクで蒔絵サマがメインとか、なんとなく買いづらい人も多そうな気が・・・?
ヤングキングアワーズにて連載中。 毎月読んで楽しんでいる作品です。
以下、ネタばれあります。 (未読の方はご注意ください)
【メンタルモデルに芽生える“心”】
・ハルナの蒔絵への友情
この5巻では4巻に引き続き、刑部邸での陸軍vsハルナの攻防が描かれています。
そのあたりのことは連載中に感想書いてしまっているので、そちらをご参照いただくとして、
ここで語りたいのは、メンタルモデルに芽生えつつある心のようなものについてです。
「霧の艦隊」の一員、すなわち人にあらざるメンタルモデルであるハルナ。
彼女は1人の少女・蒔絵と出逢い、その交流の中で少しずつ変化を見せ始めました。
端的に言えば、蒔絵との関係に友情を感じることになり、
そこから人のような感情を持つまでに至ったということです。
・メンタルモデルという存在
メンタルモデルは、コアと呼ばれる物体が創り出す存在にすぎません。
ハルナもまた、コアが本体。
そのコアを中心に、ナノマテリアルという物質によって“身体”が構成され、
人をかたどりしメンタルモデルが誕生していると考えられます。
さらに言えば、ハルナのもう1つの身体は、巨大な艦艇(大戦艦ハルナ)でもありますね。
このコア。
超絶すぐれた演算能力をもとに、「霧」の不思議な力を発生させていようで、
つまり人類の科学力をはるかに超えた何らかの技術が関与していると思われるんですね。
人のようにふるまえるのも、この高度な演算能力があるため。
すなわちメンタルモデルは、超高性能コンピュータを積み込んだ
アンドロイドのようなもの・・・ のはずでした。
しかし、人の形をとったメンタルモデルは
人のようにふるまううちに、人間がもつ感情をも宿し始めることに。
高度な演算能力のなせるわざなのか、それとも別の要因があるのか・・・
これによって彼女たちは、人ではないが人のような存在となりつつあります。
・死を特別とみなすようになったハルナ
それを顕著に示したのが、このシーン。
ある人物の死を目の当たりにして、己の感情をおさえきれなかったハルナ。
彼女はその衝動がおさまった後、死去した人物の持ち物であったメガネを手に取ります。
そして、それをじっと見つめ、おそらくは持ち去ったはず。
この行動は単純に考えますと、とても非合理なもの。
死んだ人間がたとえ大切だったとしても、その人間の持ち物には何の意味もない。
それは、ただの「物」なのです。
しかしハルナは、その「物」に意味を見出している。
もういない人間の持っていたというだけの、しかし自分にとっては大切な「物」。
そう、それは形見なんですね。
大切な人間を思い出すための、特別な「物」。
かつての大戦で数えきれない人間を殺戮してきたハルナ。
そのときの彼女には、命や死は特別なものではありませんでした。
しかし、蒔絵との出逢いを経て、ハルナはそれらを特別なものとみなすようになったのです。
人ならざる者が持ち始めた人の心。
これは、本作品における重要なテーマなのかもしれません。
ヤングキングアワーズ2012年3月号 74ページより
じつは、ここのメガネを拾い上げるシーン、連載時にはこれだけのものでした。
ところがコミックスでは、拾い上げてからじっと見つめるシーンで1ページ。
この場から去るシーンで1ページと、大幅に追加・拡大されているのです。
それだけ重要な一幕だということなのでしょうね。
いや、もしかすると単純に、追加のページどうしよっか? これでいーんじゃね?
くらいのやりとりで出来上がったシーンなのかもしれませんけど(^^;
【その他・連載時感想】
・ちょっとした訂正?
ほんの些細なことですが、このシーン。
群像が読んでいる本、ちょっと見えづらいのですけども「伊達政宗」とタイトルにあります。
じつは連載時には、ここが「伊達正宗」となっていました。
私はてっきり、何か意味があるのか、そういう表記もあるのかと考えたのですが、
どうも単純にミスだったぽいですね(^^;
などなど、おもにメンタルモデルが心を持ち始めたことについて語ってみましたが、
この他にも「アドミラリティ・コード」や、日本政府・陸軍内の政治状況、
霧とゾルダンの関係、タカオさんについても、気になることだらけだった第5巻。
次は硫黄島を舞台に、401クルーと陸軍の戦いが描かれるわけですが、
連載では大変なことになっていて、これからどうなるのか楽しみで仕方ありません!
・以下、ヤングキングアワーズ連載時感想。