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◆ 『ソルティ・ロード』1巻・感想 “霧”と人類の交流は希望となるか

2015年08月10日 | ◆マンガ 感想

『ソルティ・ロード』1巻 (TALI 先生)

 

 「使命を忘れた(?)重巡タカオのハチャメチャ学園ギャグ漫画!」(オビ文)

 「ヤングキングアワーズGH」にて連載中の本作品は、
 『蒼き鋼のアルペジオ』(Ark Performance 先生)のスピンオフ作品!

 その登場人物の1人、タカオを主役にした学院コメディ風の物語。
 メンタルモデルと呼ばれる人間ではない存在のタカオが、いかに人類と交流し、
 馴染みながら暮らしているかが、面白おかしく、かつ青春チックに描かれています。

 なので、元の作品を知らずとも、何となく青春っぽい物語として読んでゆければ、
 アルペジオを知らずとも(基本知識は必要かもしれませんが)、楽しめると思います。 
 
 
 

【主人公:青樹タカオ】
●人間ではない存在=“霧”のメンタルモデル

 

 青樹タカオは「重巡洋艦」である・・・?

 学院生活をおくる少女・タカオさん。
 何やら、モテモテの美少女といった感じでありますが、
 実は彼女、人間ではないというから驚き。

 タカオさんの正体は「重巡洋艦」。
 などと言われても「?」となってしまうわけですが、
 彼女は、この近未来世界における人類の敵=霧の艦隊の一員だったのです。

 
 霧の艦隊は、突如として現れ、世界中の海を席巻し、人類を陸に押し込めた仇敵。
 これにより、人類は海を渡ることが不可能となり、世界中の人々が困窮することに・・・

 そんな中、霧の艦隊に戦いを挑むのが、千早群像という少年で、
 その戦いを描いた物語が、『蒼き鋼のアルペジオ』となっています。

 本作の主人公である青樹タカオは、もとは霧の艦隊の一員。
 “霧”は、なぜか大戦時の軍艦・艦船を模した姿をしていて、
 中でもタカオさんは「重巡洋艦」という艦種であったわけですね。

 なので本来の姿は、重巡「高雄」を模した軍艦風なのですが、
 “霧”はメンタルモデルという人間型の体を所有することで、人間を知ろうとしており、
 今の姿も、このメンタルモデルということになっているのです。

 ちなみにタカオさんは、千早群像にホレこんでおり、
 やたらと恋する乙女になってしまうあたり、愛嬌あって楽しいキャラクターです。
 このことは、アルペジオ本編でご確認いただければと思います。 可愛いですよ(ぇ

 
 

●人との交流

 

 人間と交流するタカオさん。

 積極的に、人と関わっているわけではなかったタカオさんでしたが、
 それでも興味をひかれた対象には、何だかんだと自らアプローチしていきます。

 学院では、屋上でギターを弾いていたキドケイに接触。
 単純に「楽器を弾く」という行為について興味を持ち、話しかけたものの、
 そこから仲良くなってゆくのだから、面白いものです。

 このケイさんをはじめ、タカオさんと様々な人との交流が、
 青春物語っぽく楽しめる所が、本作の大きな魅力となっていますね。

 
 

 

 クジラを見たい少年。

 本作で最初にタカオさんと関わる人間は、キジマトキオくん。
 彼は学院の生徒ではない(学院はエリート層の子弟が主)ものの、
 タカオさんとは、本作を通じて長い付き合いになっています。

 クジラを見たいという彼ですが、この世界の海は「霧の艦隊」のもので、
 海に出てクジラを拝むことなど不可能なわけです。

 なので、単に「クジラが見たい」といっても、その夢の重さは計り知れない。
 そんなことを感じられる世界観というのも、ひとつの魅力かもしれません。

 また、彼の存在は、タカオさんに人間への興味を思い出させるもので、
 そうした点で、キジマトキオというキャラクターが、タカオさんにとっての
 “ファーストコンタクト”であったことは、意味深いものだったと言えるでしょう。

 
 

 

 そのほかにも・・・

 生徒会長のサメジマリンコさんや、あやしい子連れ男性などなど、
 タカオさんと関わる人間は、様々に登場しつつ、物語を紡いでゆきます。

 そして、その交流の輪が思わぬ所でつながったり、広がったりする様子が、
 何とも楽しい気分にさせてくれる青春模様となっていて、素敵でしたね~。

 
 
 

【霧サイド】
●タカオさんの“家族”たち

 

 イ402とズイカク。

 “霧”において、総旗艦の命により学院へ潜入しているのはタカオさん。
 ですが、他にも2名ほど、“霧”のメンバーが存在します。

 イ402は、アルペジオ本編の主人公・群像の乗る艦「イ401」の同型艦。
 そのメンタルモデルに名前はありませんが、タカオさんたちの面倒をみるにあたり、
 「お母さん」と呼ばれていて、何とも可笑しなことに(^^;

 もう1人のズイカクは、小柄な海洋生物好きの少女ですが、
 「海域強襲制圧艦」(空母)という強力な艦艇であり、かなりの力を秘めています。
 しかしメンタルモデルは、明るく快活な少女で、タコのパウルくんをお供に、
 日々、海産物の収集に精を出しているのだから愉快ですね。
 
 
 

●人類の敵

 

 タカオさんは、人類の敵・・・

 人間と交流しつつ、そこに居心地の良さを感じるタカオさんでしたが、
 これにくぎを刺すのは、お母さんこと402。

 “霧”は人類の敵であり、決してお友達にはなれない。
 そんなことをタカオさんに告げているわけですけども、これは大きなテーマでしょうね。

 アルペジオ本編においては、群像が「霧と人類の未来」を見据えたビジョンを
 持っていて、その実現のために尽力してることが描かれます。

 それでも、“霧”は人類に災厄をもたらしたものであり、
 本作でもキドケイなどは、“霧”を憎んでいると明言するほどで、
 この感情は多くの人類が共通して有していて、当然だと思われます。

 けれど、タカオさんは己の素性を隠しつつとはいえ、
 人間と交流し、何かを感じ、得てゆく様子は、ある種の希望を抱かせるに
 充分な物語となっているのではないでしょうか。

 この“霧”と人間との交流が、コメディ調であるとはいえ、しっかり描かれる本作は、
 アルペジオ本編をテーマ的にも補完する、見事なスピンオフだと、私は考えています。
 
 
 
●いつも通りなタカオさん

 

 群像LOVE!

 などなど、真面目に語ってきましたが、本作でもタカオさんは、
 群像LOVEにまっしぐらで、可愛らしく(?)楽しませてくれます。

 はじめ、キジマトキオくんが登場したときは、すわ浮気か!?
 などという考えも頭をよぎりましたが、そんなことはなかったぜ。

 彼女にとって、一途に想う人間は、千早群像ただ1人。
 むしろ恋愛がらみの話であれば、タカオさん周辺の人間関係で描かれますので、
 そのあたりも面白味になっていますね~。

 そして、群像という人間に対して、タカオさんが抱いているのは、
 「あきらめない・絶望しない人」という確信で、そのことが、
 キジマトキオやキドケイといった人々に対する励ましの原動力になっているのも、
 微笑ましいポイントだったりしました。

 
 正直、アルペジオのスピンオフということで、不安まじりでもあった本作ですが、
 ふたを開けてみれば、本編とはまた違った魅力で読ませてくれる見事な物語!

 タカオさんの学院生活は、時間制限がありますけれど、
 それまではじっくりと楽しみたい! ということで、もちろん今後も注目です!
 
 
 


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