ヤングキングアワーズ 2014年2月号より
以下、ネタばれあります。 (未読の方はご注意ください)
●ナポレオン -覇道進撃- (長谷川哲也 先生)
アウステルリッツも、いよいよ佳境!
ロシア近衛部隊を蹴散らすのは、ジャン・ラップ将軍。
これにより、一時劣勢だったフランス軍も、盛り返しはじめます。
この戦いは、アウステルリッツのクライマックス場面として有名らしいですね。
次々とロシア軍を追いつめはじめるフランス軍。
ダヴーがブクスホーデンを押し込み、
そこを背後から狙うのは、プラッツェン高地を占拠したスルトというように、
各軍の連携が芸術的に作用してゆく様子に、心躍ってしまいますねえ。
さすがのバグラチオンも分断を恐れていますが、
ランヌの相手をしているときに、ミュラの突撃を受けたため、ついに退却を決意。
もはや戦況はフランス軍の思いのまま、これにて大勢は決したようで・・・
ナポレオンが認める将帥・クトゥーゾフ。
「お前だけは俺の作戦を見破っていたはず」と、
敵将を評価するナポレオンからは、すでに勝者の余裕を感じられますね~。
そのクトゥーゾフは、自分たちの敗北を悟っていますが、
ナポレオンが最大の賛辞を贈った後だけに、「歴史に残る大敗」という言葉が
いっそう印象付けられてしまいます。 たしかに、その通りですから(^^;
また、慌てふためく主君・アレクサンドル1世陛下に、
自分こそが忠臣であると心に誓っているシーンは、真の忠誠を感じさせました。
そして、ダヴーによる捕虜もとらない過酷な攻撃。
獅子の時代1巻と重なるシーンもあったりしながら、戦いの決着が近づきます。
歴史的な勝利を得たナポレオン。
ここで印象的だったのは、アウステルリッツの勝利は、
トラファルガーを補うものであると、ナポレオンが考えていたこと。
これはすなわち、それだけトラファルガーの英雄・ネルソンの存在が、
巨大であることを示しているに他なりません。
心の中でネルソンの名前を思い浮かべていることからも、
ナポレオンが彼のことを、かなり意識していることがうかがえます。
アウステルリッツの戦いは、別名「三帝会戦」。
私は、この「三帝」に「海の英雄」が匹敵すると表現しているように
感じられたのですが、さすがに考えすぎですかね・・・
そして、敵兵へも勇者の手向けを贈るナポレオン。
憧れのナポレオンに勇者と認められた男は喜びつつも、
それ以上の“歓び”へと、己の魂が導かれることを確信していることに、
私は、なんとも言えない寂しさと、救いを感じざるを得ませんでした。
などなど、ついに決着したアウステルリッツの戦い。
これにて「獅子の時代」で描かれた原点へと舞い戻り、
これからは、新しい道が切り拓かれてゆくことになるわけですね。
ここを栄光の頂点とするならば、あとは静かに凋落が描かれてゆくのでしょうか?
はたして「覇道進撃」、どこまで向かうのか・・・ 今後も楽しみです!