観・環・感

野鳥観察や旅行、映画などの趣味と日常生活や世の中の状況について、
感じる事を書いています。

砂浜のハマシギ 3

2012年05月25日 | 野鳥

木製の観音像の手の部分のように見える。これも漂流物だ。


大きく打ち寄せる波 3羽のハマシギは何を思う。


ここでこれだけの数のハマシギも見るのも今期は最後かな。


ピントが甘いが、実際は迫力がある。(まさに迫ってくる力)

ところで、今年の2月7日に「干潟の泥表面の微生物がシギの渡りを支える」という記事を書いたが、2週間ほどハマシギを
ずっ観察していて、その事実を改めて認識した。

「NPO法人バードリサーチ」のニュースレター3月号の概要版から
◆論文紹介「トウネンもハマシギもバイオフィルムを食する」

○トウネンもハマシギもバイオフィルムを食べている
 これまで,シギ類はゴカイやカニなどの小動物を食べていると考えられていました。今回,日本やカナダの干潟での
採餌行動調査や,フンや餌の化学分析などにより,毎年日本に多数飛来するトウネンやハマシギについても,餌を
バイオフィルムから賄っていることを突き止めました。

○小型種であるほど,泥干潟であるほど,バイオフィルムは多く利用されている。
 トウネンのように,シギ類の中でも小型の種ほど一日に必要な熱量が少ないため,泥と一緒に飲みこむため摂食効率
はよくないバイオフィルムに、餌のより多くを依存できる可能性があることがわかりました。また,波や流れの穏やかな
泥干潟の方が,泥表面にバイオフィルムが発達しやすく,シギにより多く利用されている可能性があることもわかりました。

○バイオフィルムを食べる鳥は,舌先に特徴がある
 小型のシギ類は舌先にブラシのような棘毛(きょくもう)があるという特徴を持ち,その棘毛にバイオフィルムを巧みに
絡めて食べていることも今回解明しました。驚いたことに,この棘毛は,体が小型な種ほど発達しているという関係が
みられました。つまり,小型種ほど,バイオフィルムを食べるのに適合した形態を持っていたのです。さらに驚いたこと
には,チドリ類やクサシギ類にも,棘毛が存在していたことです。もしかすると,チドリ類やクサシギ類もバイオフィルム
を食べることがあるのかもしれません(にわかに信じがたいのですが)。

○バイオフィルムをシギが食べることで,干潟生物群集の安定性が保たれている
 干潟生態系の食物網に目を向けると,今回の結果は,上位捕食者と基底者との間の「ミッシング・リンク」を,特定した
ことになります。
 食物網の理論によると,鳥類がバイオフィルムと小動物の両方を食べること,つまり,雑食性の上位捕食者の存在は,鳥・
小動物・バイオフィルムの三者の安定的な共存を高めると予測されるようです.そのため,シギ・チドリ類の個体数が減少
すると,食物網の構造が変化し,干潟生態系の安定性に影響を与えることが懸念されます。

 国内や世界中でシギ・チドリ類の個体数が,過去20年間で約半減するなど,現在その減少が深刻となっています。今回の
研究成果は,鳥類の個体数減少の理由の解明,干潟生態系の環境や生物多様性保全に役立つことを願っています。

【港湾空港技術研究所 桑江 朝比呂】

 バイオフィルム(微生物膜):微細藻類,バクテリア,およびそれらが細胞外に放出する多糖類粘液で構成された薄い層の総称
であり,静穏な干潟泥の表面によく発達する。



ここで、改めてバイオフィルムをウィキペディアで検索すると
“バイオフィルム、菌膜(きんまく、Biofilm)とは、微生物により形成される構造体
身近な例としては、歯垢や台所のヌメリなどがある。自然界にも広く存在し、基質と水があれば、あらゆる場所に存在する。
たとえば、水中の石の表面についている膜状のものなどが当てはまる。バイオフィルム内では嫌気性菌から好気性菌まで様々な
種類の微生物が存在し、その中で様々な情報伝達を行いながらコミュニティを形成していると考えられている。異種微生物間の
情報伝達物質としてクオルモンが注目されている。
石や植物の表面など、あらゆる場所に存在している。バイオフィルムの内部と外部では、微生物の生息密度が異なる。たとえば
水中では、生息密度に数百~数千倍の差があるという。バイオフィルム内には、細菌はもちろん、原生動物、藻類など、多種多様な
生物が生息している。自然界における物質の転換、浄化作用などにも深く関与していると考えられている。”

この最新の研究結果からも干潟がいかに自然界において大切なものであるかということがよく分かる。