お向かいさんからいただいたスウィーティー。近隣のマーケットにも売っているが、これは親戚の方がイスラエルから直接仕入れたもの。
ということで、早速食べみた。美味しかったので、いつもようにネットで検索。
このスウィーティー (sweetie) は、1950年代に、アメリカのカリフォルニア大学で4倍体のマーシュというグレープフルーツと2倍体
の無酸シャムスイートというブンタン(文旦)の交配種としてできたオロブランコ (oroblanco)と同品種。
イスラエルで育てると、イスラエルは冬が暖かいので、果実の葉緑素が分解されずに緑色が残るのため、熟しても緑色が抜けない独特のフルーツ
に変貌。しかも染色体が4倍体のグレープフルーツと、普通の2倍体のブンタンを交配したので、本種は3倍体となるために種子ができにくい。
青い皮は文旦のように厚いが、手で簡単に剥くことができ、中身もミカンのように一房ずつきれいに剥いて食べられる。味は、フレッシュで
清涼感のある甘さで、なかなか美味い。
グレープフルーツは一年中入手可能だが、食べるのに一手間いる。その点、スィーティーは11月~2月の季節物だが、冬なのに「夏」という
感じがする果物で、しかも食べやすい。日本へ入って来るようになり20年になるこのスウィーティー、日本でも温州ミカンが売れなくなって
いると同様、剥くという作業があるので、やはり美味しさの割には損をしていると思う。
この写真のスウィーティー に貼られているシールの上の方にJaffaあるが、Jaffa(ジャファ)とは、イスラエルにある都市の名前で、そこの港
から輸出されてることから、イスラエルのスウィーティーは、Jaffa Sweetie(ジャファ スウィーティー)と呼ばれている。
イスラエルは、国土の60%が乾燥地で、雨季は11月から2月までの間しかない。降雨量は北部で平均700ミリ、南部では50ミリ以下。
アラブ人が農業ができないと捨てた土地に建国されたのが、イスラエルである。一方日本の農業県の新潟、高知、鹿児島の降雨量は1800ミリ
から2500mm。
しかし、イスラエルはこの過酷な条件の中でも食料自給率は93%以上(日本は、39%)しかも日本の農業人口400万人に対し、イスラエルの
農業人口はわずか8万人。現在の農業輸出高は、20億ドル程度でほぼ同じ。イスラエルが日本の50倍の生産効率を持っているといえる。
降水量の乏しい乾燥地帯でこの事を可能にしているのが、施設園芸である。施設園芸の最大の敵は病害。しかし、イスラエルの農業は病害や薬害を
克服し、残留農薬で世界一厳しいドイツの基準を全てクリアしている。日本の農産物は、安全性高いと思っている人が多いが、世界一の安全基準を
誇るEUの基準をクリアできないものが多い。中でもドイツの基準をクリアできるものはわずかしかない。
イスラエルは、水の使用量はほとんど増えていないにもかかわらず、農業生産は過去30年で約5倍に成長している。これを可能にしているのが点滴
灌漑という技術。この技術、乾燥地で覆われている中東をはじめ中国からブラジルまで世界中に輸出されている。
イスラエルの農業技術の根本は、節水の技術であり、作物の生育をコントロールする技術でもある。中国は大量の農業技術者を労働者としてイスラエル
本国の農場に派遣し、この技術を吸収中らしい。水資源不足に悩む中国は、節水技術と農産物高品質化を習得中である。欧米には鬼っ子扱いのイスラエル
だが、中国から熱い視線とともに投資も注がれている。
イスラエルというと、中東で年中小競り合いをしているハイテク軍事産業大国の面ばかりが強調されるが、孫の三輪車のことで
このブログ記事にも書いたように
何もかも進んでいるハイテク大国である。しかし、降水量に乏しい乾燥地帯にもかかわらず、農業でも凄いことは以外と知られていない。TPPのネックになって
いるのが農業。日本の工業技術は一流だが、農業技術はイスラエルに比べるそれほどでもないという事を思い知らされた。
イスラエルのように原爆まで持てということは決して言わないが、見習うこともある。
ところで、このスウィーティーは、グレープフルーツ同様に、成分に薬の血中濃度を上げる作用を持つものがある。この結果、薬の効き目や副作用が通常
よりも強く現れてしまうことがあるので、特に、血圧を下げる薬を常飲されている方は注意が必要とのこと。