朝顔

日々の見聞からトンガったことを探して、できるだけ丸く書いてみたいと思います。

ボストン美術館 「華麗なるジャポニスム展」

2014-12-04 | 京都の文化(秋)
11月30日で終了した京都市美術館で開催された展覧会のことを、備忘のために書いておきます。紅葉の写真を次々に載せているうちにすっかり時期を外してしまいました。


(引用:展覧会公式フライヤー)

ボストン美術館は、明治時代、お雇い外国人として来日した米国マサチューセッツ州生まれの哲学者アーネスト・フェノロサと深いつながりがあります。フェノロサは帝国大学(現東京大学)で講義をする傍ら、失われつつあった伝統的日本美術や工芸品の価値をいち早く認識しました。

彼の教え受けて岡倉天心らが日本画の価値に目覚め、その復興に努力しました。

一方、フェノロサは米国に帰国後ボストン美術館の東洋部長に就任し、岡倉天心を呼び寄せて日本美術品の紹介と収集にあたらせました。

もしフェノロサや岡倉天心がいなかったら、浮世絵版画(日本製の陶磁器を輸出する際クッションとして大量に使用され欧米に偶然わたっていたが、日本ではゴミ同然のあつかいだった)や、廃仏毀釈により困窮した仏教寺院から仏像、経典、掛け軸、襖絵などが買い取られて、さらに多くの仏教美術品が外国に流出したことでしょう。


(引用:展覧会図録表紙)

この左側写真は、歌川広重の「名所江戸百景 亀戸梅屋敷」ですが、フィンセント・ファン・ゴッホの「花咲く梅の木」にそのままの構図で取り入れられています。おまけに、奇妙な「漢字」を両側に配して。

紙クッションとして欧州に流出して浮世絵は、パリの画家たちに衝撃を与えたようです。



(引用:展覧会公式フライヤー)

マネ、ドガ、ロートレック、ルノワール、カサット、ゴーギャン、モネ、ゴッホ・・・

版画の平面的色使い、斬新で大胆な構図。半ば抽象化されたデザイン、例えば、雨を線画で表現したり、海面の波頭を巧みに図形化することなど。

上記の梅の木では、正面に大きくくらい幹をどんと置き、花見客や梅の林は極端に遠近法で小さく書き込んでいます。


(引用:展覧会公式フライヤー)

西洋絵画での「デフォルメ」技法が、すでに江戸時代の日本で発明されていました。

さらに絵画だけでなく、和服の柄、七宝鐔(しっぽうつば)、紙箱の細工など。それらは欧米の陶磁器におおきな影響を与えています。

モネの傑作「ラ・ジャポネーズ」は、モネの妻をモデルにして着物を着せてポーズをとった絵画です。今回の展示会に合わせて1年間をかけて修復をおこないました。その結果、当初の鮮やかな色彩が再現出来ています。とても大きな絵です。

修復作業のビデオも紹介されていました。

この女性が来ている着物の裾模様の武者絵は、モネの想像による合成だと推定されています。まるで武士が刀を抜いて飛び出してくるような躍動感がありました。

明治維新以降、急速に欧米の科学、軍事技術、政治経済学、美術が日本に流れ込んできました。その後、第二次世界大戦の敗戦を経験した日本人に、美術工芸の分野で、先人たちはこんなにも素晴らしい作品を仕上げていた。それを欧米一流の芸術家が手本としてさらに発展させていったことに感激をおぼえました。

アジア隣国の人々も、日本文化の根底にあるこのような文化的活動と作品群をもっと知ってほしいと思います。この展覧会が、北京やソウルでも開催されたら良いのにと。

作品鑑賞を終えて出てくると、平安神宮の大鳥居に三ヶ月がかかっていました。




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