福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

仁王護國般若波羅蜜多經・・8

2022-03-08 | 諸経

仁王護國般若波羅蜜多經 奉持品第七(十地の菩薩の行相、護国の五大菩薩と陀羅尼を説く.
この部分の句をもとにした「仁王護国般若波羅蜜多経陀羅尼品念誦儀軌」という不空訳の護国の修法がある。)、

爾時、波斯匿王は佛の神變をみたてまつり、千の花臺上の遍照如來、千の華葉上の千化身佛、千の花葉中の無量諸佛がおのおの般若波羅蜜多を説くを見て、佛に白して言さく「世尊、如是の無量の般若波羅蜜多は、不可識識不可智知なり、云何が諸善男子は此經中に於いて明了に覺解して人の爲に演説すや」と。佛
、大王に言はく「汝、今諦聽せよ。初の習忍より金剛定に至って、如法に十三觀門(十地と、それ以前の十住・十行・十回向(三賢)のこと)を修行し、皆法師となり、依持し建立す。汝等大衆、應當に佛の如く之を供養し、百千萬億の天の妙香花を以って奉上すべし。
善男子よ、其の法師は習種性の菩薩なり。若し比丘比丘尼・優婆塞・優婆夷、十住行を修せば、佛法僧を見て菩提心を発し、諸衆生に於いて利樂悲愍す。自ら己身の六界諸根を一切無常苦空無我なりと観じて、業行・生死・涅槃を了知す。能く自他を利して饒益し安樂す。讃佛・毀佛を聞きても心定んで不動なり。有佛・無佛を聞きても心定んで不退なり。三業失なく、六和敬(修行者が、六つの点について互いに敬いあうこと。身和敬・口和敬・意和敬・戒和敬・見和敬・利和敬)
を起こし。方便善巧して衆生を調伏し、十智(一世俗智。二法智。三類智。四苦智。五集智。六滅智。七道智。八他心智。九尽智。十無生智。)を勤學して神通化利す。
下品、八萬四千の波羅蜜多を修習す。善男子よ、習忍
以前に十千劫を經て十善行を行ずるに退あり進あり。譬ば輕毛の風に随って東西するが如し。若し忍位に至り正定聚に入れば、五逆を作さず、正法を謗らず。我法の相は悉く皆な空なりと知るが故に。解脱位に住し、
一阿僧祇劫において、此の忍を修習し能く勝行を起こす。
復た次に性種性(六種性は習種性(十住)・性種性(十行)・道種性(十廻向)・聖種性(十地)・等覚性(等覚)・妙覚性(妙覚))の菩薩は無分別に住して、十慧觀を修す。財命を捨てるが故に、淨戒を持するが故に、心謙下するが故に、自他を利するが故に生死亂無きが故に、無相甚深なるが故に、有は如幻なりと達するが故に、果報を求めざるが故に、無礙解を得るが故に、念念に佛の神力を示現するが故に、四倒(無常を常、苦を楽、無我を我、不浄を浄と思う凡夫のまちがった考え)・三不善根(三毒)・
三世惑業(三世のわたる迷いの苦悩)・十顛倒(四顛倒に貪・瞋・癡・過去因・未來果・現在因果の六顛倒を加えたもの)
を対治するが故に、我人・知見・念念虚僞なり。名假・受假・法假は皆不可得なりと了達し自他の相無く、眞實觀に住し、中品に八萬四千波羅蜜多を修習す。二阿僧祇劫(十信・十住・十行・十回向を第1阿僧祇劫、十地のうちの初地から七地までを第2阿僧祇劫、八地から十地を第3阿僧祇劫とする)において、諸勝行を行じ、堅忍位を得る。
復た次に道種性の菩薩(六種性は習種性(十住に対応)・性種性(十行)・道種性(十廻向)・聖種性(十地)・等覚性(等覚)・妙覚性(妙覚))は堅忍中に住し諸法性を観じて無生滅を得、四無量心を以て能く諸闇を破し、常に諸佛を見て廣く供養をおこす。
常に諸佛を学び迴向心に住し、所修の善根は皆な實際の如し。能く三昧において廣く佛事を作す。種種の身行を現じ四攝法を行じ、無分別に住して衆生を化利す。智慧明了にして甚深觀察す。一切の行願は普く皆な修習す。能く法師となりて有情を調御す。善く五蘊三界二諦は自他相無しと観じ、如實の性を得、常に勝義を修すといえども而も三界に受生す。何以故に、業習果報、未だ壞盡せざるが故なり。人天中に於いて道に順じて生ずるが故なり。上品は八萬四千の諸波羅蜜多を修習す。三阿僧祇劫において二利を修し、広大に饒
益す。善く調伏し、諸三摩地を得、勝觀察に住して出離行を修す。能く平等の聖人地を証するが故なり。
復た次に歡喜地の菩薩摩訶薩は愚夫地を超え如來
家に生じ平等忍(『大集経』巻五十では十平等処(大菩薩のもつ十種の徳)として、衆生平等・法平等・清浄平等・戒平等・忍平等・精進平等・禅平等・智平等・一切法平等を挙げる)に住す。初無相智、勝義諦を照らして一相平等なり。相に非ず、無相に非ず。諸無明を断じ三界貪を滅し、未來無量の生死、永く生ぜざるが故なり。大悲を首となし、諸大願を起こす。方便智に於いて念念に無量の勝行を修習す。證に非ず、不證に非ず、一切遍く學ぶが故なり。住に非ず、不住に非ず、一切智に向うが故なり。生死に行じて魔に動ぜられざるが故に、我・我所を離れて怖畏無きが故に、自他の相なし。常に衆生を化すが故に。自在願力あり。諸淨土に生ずるが故に。善男子よ此の初覺智は如に非ず、智に非ず、有に非ず、無に非ず、有に非ず、二相あることなし。方便妙用。倒に非ず、住に非ず、動に非ず、靜に非ず。二利自在にして水と波が一に非ず異に非ざるが如し。智、諸波羅蜜多を起こす。亦一に非ず、異に非らず。四阿僧祇劫において滿足して百萬行願を修習す。此地の菩薩、三界の業習なし。更に新を造らず。智力に随って願を以て生ずるによるが故に。念念、常に檀波羅蜜多・布施・愛語・利行・同事を行じ、廣大清淨にして善能く安住し衆生を饒益す。
復次に離垢地の菩薩摩訶薩は四無量心最勝寂滅にして瞋等の習を断じ、一切行を修す。所謂、殺害を遠離し、與へざるは取らず、心に染欲なく、眞實語を得、和合語を得、柔軟語を得、調伏語を得、常に捨心を行じ、常に慈心を起こし、正直心に住し、寂靜純善にして破戒の垢を離れ、大慈觀を行じて念念現前す。
五阿僧祇劫において。清淨戒波羅蜜多を具足し、志意勇猛にして永く諸染を離る。
復次に發光地(十地は上から、法雲・善想・不動・遠行・現前・難勝・焔光・発光・離垢・歓喜)の菩薩摩訶薩は、無分別に住して無明闇を滅し、無相忍に於いて三明を得、悉く三世を知り、無來無去なり。
四靜慮(四禅)・四無色定(空無辺処定 · 識無辺処定 · 無所有処定 · 悲想非非想処定.)に依りて、無分別智、次第に隨順す。勝定を具足し五神通を得、身を現ずること大小隱顯自在なり。天眼清淨にして悉く諸趣を見、天耳清淨にして悉く衆聲を聞き、他心智を以て衆生の
心を知り、宿住能く無量の差別の知をりて、六阿僧
祇劫において一切の忍波羅蜜多を行じ、大總持を得、利益安樂す。
復次に炎慧地(十地の下から四番目)の菩薩摩訶薩は順忍(十地の位のうちの四・五・六地)を修行し攝受する所なし。永く微細の身邊見を断ずるが故に。無邊の菩提分法を修習す。念處・正勤・神足・根・力・覺・道(四念住・四正断・四神足・五根・五力・七覚支・八正道の三十七菩提分法のこと)を具足す。力・無所畏・不共(十力と四無所畏と十八不共法)の佛法を成就せんと欲するが為に。七阿僧祇劫に於いて、無量の精進波羅蜜多を修習し、懈怠を遠離して普利衆生す。
復次に難勝地の菩薩摩訶薩は四無畏(菩薩の四無畏は①能持無所畏(教えを記憶して忘れることがなく、それを説くことにおける自信)、②知根無所畏(教えを説く相手の機根を把握し、適切な説法をすることに対する自信)、③決疑無所畏(衆生が持つ疑問を解くことにおけるゆるぎない自信)、④答報無所畏(どのような質問に対しても自在に答えることにおける自信)の四)を以て眞如清淨平等無差別相に隨順し、小乘に隨いて涅槃を樂求することを断ず。諸功徳を集め、具に諸諦を觀じ、此の苦聖諦・集滅道諦・世俗の勝義無量諦を観ず。衆生を利せんが為に諸技藝を習い、文字
・醫方・讃詠・戲笑・工巧・呪術・外道異論・吉凶占
相、一に錯謬無く、但だ衆生において損惱をなさず。利益のための故に咸な悉く開示して漸く無上菩提に安住せしむ。諸地の中に出道・障道(覚りの道・煩悩の道)を知り、八阿僧祇劫に於いて常に三昧を修し諸行を開發す。
復次に現前地(十地は上から、法雲・善想・不動・遠行・現前・難勝・焔光・発光・離垢・歓喜)の菩薩摩訶薩は上の順忍を得て三脱門に住し、能く三界の集因・集業の麤現行の相を尽くし大悲増上す。諸生死の無明闇覆・業・集識種・名色・六處・觸・受・愛・取有・生・老死等(十二因縁は、無明、行、識、名色、六処、触、受、愛、取、有、生、老死)皆な著我による。無明の業果は有に非ず、無に非ず、一相無相にして不二なりと観ずるが故に。九阿僧祇劫に於いて、百萬の空・無相・無願三昧を行じ、一切般若波羅蜜多、無邊光照を得る。
復次に遠行地の菩薩摩訶薩は、無生忍を修し法無別を証し、諸業果の細現行相を断ず。滅定に住して殊勝行を起こし、常に寂滅すといえども廣く衆生を化す。聲聞に示入して常に佛智に随ひ、外道に示同し、魔王に示作し、世間に隨順して而も常に出世す。十
阿僧祇劫に於いて百萬の三昧を行じ、善巧方便して廣く法藏を宣べ、一切莊嚴を皆な圓滿することを得る。
復次に不動地の菩薩摩訶薩は、無生忍に住して體増
減なし。諸功用を断じ、心心寂滅にして、身心の相なし。猶虚空の如し。此の菩薩は佛心・菩提心・涅槃心、悉く皆な起さず。本願に由るが故に。諸佛加持す。能く一念の頃にして、智業を起こす。雙照平等にして十力智を以て不可説の大千世界に遍じ、諸衆生に随って
普く皆な利樂す。千阿僧祇劫に於いて百萬の大願を満足し、心心は一切種・一切智智に趣入す。
復次に善慧地の菩薩摩訶薩は上無生忍に住し、心心の相を滅し、證智自在にして無礙障を断ず。大神通を具し力無畏を修し、善能く諸佛の法藏を守護す。無礙解を得、法・義・詞・辯で正法を演説し無斷無盡なり。一刹那の頃に不可説諸世界中に於いて、諸衆生所有の問難に随って、一音を以て解釋し、普く歡喜せしむ。萬阿僧祇劫に於いて、能く百萬恒河沙等の諸佛の神力無盡の法藏を現じて利益圓滿す。
復次に法雲地の菩薩摩訶薩は無量智慧を以て思惟觀
察し信心を発してより百萬阿僧祇劫を経て、廣く無量の助道の法を集め、無邊大福智を増長し、業自在を証し、神通障を断じ、一念の頃において能く十方百萬億阿僧祇世界微塵數の國土に遍じて、悉く一切衆生の心行の上中下根を知り、爲に三乘を説き、普く波羅蜜多を修習せしむ。佛の行處力・無所畏に入り、如來の寂滅轉依に隨順す。善男子よ、初の習忍より金剛定に至って、皆名けて一切煩惱を伏すとなす。無相の信忍、勝義諦を照らして諸煩惱を滅し、解脱智を生じて漸漸に伏滅し、生滅心を以て無生滅を得る。此の心、若し滅すれば即ち無明滅す。金剛定前の所有の知見は皆な見と名けず。唯だ佛のみ頓に解して一切智を具し、所
有の知見にして見と名くることを得る。善男子よ、金剛三昧現在前の時、而も亦未だ無等等に等しきこと能わず。譬へば人ありて大高臺に登りて普く一切を観るに斯く了ぜざることなきが如し。若し解脱位は一相無相にして無生無滅、眞際に同じく法性に等しく、功徳藏を満ちて如來位に住す。善男子よ、如是に諸菩薩摩訶薩は受持解説して皆な十方諸佛刹土に往き、有情を利安し実相にす。我れ今日の如く等くして異あること無し。善男子よ、十方法界の一切如來は、皆な此門に依って而も成佛を得る。若し此れを超えて成佛すると言はば、是れ魔の所説にして是れ佛説に非ず。是の故に汝等、應に如是に知り、如是に見、如是に信解せよ。」爾時世尊、重ねて此の義を宣べんと欲して偈を説きて言く、
彼の伏忍の菩薩(仁王経では五忍として一伏忍、二信忍、三順忍、四無生法忍、五寂滅忍をあげる)は 佛法において堅固三十心を長養す。名けて不退轉と為す。 
初、平等性を証して 而も諸佛の家に生ず。 初に覺悟を得るに由りて 名けて歡喜地と為す。 
染汚、瞋等の種種垢を遠離し、具戒、徳清淨なるを 名て離垢地(十地の上位から法雲・善想・不動・遠行・現前・難勝・焔光・発光・離垢・歓喜)と為す。
無明闇を滅壞して諸禪定を得。
照曜の慧光に依るを名て發光地と為す。
清淨の菩提分は身邊見を遠離し
智慧焔熾然なるを 名て焔慧地(焔光地)と為す
實の如く諸諦を知り 世間諸伎藝をもて
種種に群生を利するを名て難勝地と為す。
縁生法を觀察し 無明から老死に至り
能く彼の甚深を証するを 名て現前地と為す。
方便の三摩地 無量身を示現し
善巧に群生に応ずるを 名けて遠行地と為す
無相海に住し 一切佛の加持を以て
自在に魔軍を破すを 名けて不動地と為す
四無礙解を得 一音に一切を演じ
聞者は悉く歡喜するを 名けて善慧地と為す
智慧は密雲の如く 法海に遍滿し
普く甘露法を灑ぐを 名けて法雲地と為す
無漏界を満足し 常淨解脱身
寂滅不思議なるを 名けて一切智と為す
佛、波斯匿王につげたまわく「我滅度の後、法滅んと欲する時、一切有情は惡業を造るが故に、諸國土をして種種の災を起らしむ。諸國王等は、自身・太子・王子・后妃・眷屬・百官・百姓・一切國土を護せんがためには、即ち當に此の般若波羅蜜多を受持すべし、皆安樂を得ん。我是の經を以て国王に付囑し、比丘・比丘尼・優婆塞・優婆夷に付せず。所以いかん。王の威力なければ建立不能なるがゆえなり。是の故に汝等、常に當に受持讀誦解説せよ。大王よ、吾今、所化するところの大千世界に百億の須彌、百億の日月あり。一一の須彌に四天下あり。此贍部洲に十六の大國、五百の中國、十萬の小國あり。是の諸國中に若し七難起れば、一切國王は除難のためのゆえに、此般若波羅蜜多を受持解説せよ。七難即滅し國士安樂ならん。
波斯匿王言さく「云何七難」。佛言はく
「一は日月失度。日色改變し白色赤色黄色黒色なると。或は二三四五の日が並照し、月色改變して赤色黄色なると。日月薄蝕、或は重輪ありて一二三四五の重輪現わるとなり。
二は星辰失度。彗星木星火星金星水星土等諸星各各が變を為し、或時は晝出ずるとなり。
三は龍火・鬼火・人火・樹火・大火と四もに起きて
万物を焚燒するとなり。
四は時節改變して寒暑恒ならず。冬雨ふり雷
電し、夏に霜ふり氷雪すと。土石・山及以び砂礫を雨ふらすと。時にあらずして雹を降らすと。赤黒水を雨ふらすと。江河汎漲して石を流し、山を浮すとなり。五は暴風數ば起り、日月を昏蔽す。屋をあばき樹を抜き沙を飛ばし石を走らす。
六は天地亢陽し陂池竭涸すと。草木枯死し百穀成らず。七は四方の賊來りて國の内外を侵し、兵戈競い起って百姓喪亡す。
大王よ、我今如是の諸難を略説す。有のあるひは、日が晝に現ぜず、月の夜に現ぜざることあり。天の種種の災なり。雲なくして雨雪す。地に種種の災あり、崩裂震動す。或は復た血流鬼神出現し、鳥獸怪異。如是の災難無量無邊なり。一一の災起らんに皆な須からく此般若波羅蜜多を受持讀誦解説すべし。」
爾時十六國王は、佛の所説を聞き皆な悉く驚怖す。波斯匿王は佛に白して言さく「世尊。何故に天地に是の災難あるや」。佛言はく「大王よ、贍部洲の大小國邑一切の人民、父母に考ならず、師長・沙門・婆羅門に敬ならず、國王・大臣が正法を行わざるによる。
此の諸惡によりて是の難興る。大王よ、般若波羅蜜多は能く一切諸佛の法・一切菩薩の解脱法・一切國
王の無上法・一切有情の出離法を出生す。摩尼寶の體が衆徳を具して能く毒龍・諸惡鬼神を鎮め、能く人心所求を遂げて滿足せしめ、能く輪王に応ずれば如意珠と名け、能く、難陀・跋難陀等の諸大龍王をして甘雨を降霔し、草木を潤澤せしめ、若し闇夜において
高幢上に置けば天地を光照して明なること日の出るが如くなるが如し。此の般若波羅蜜多も亦復た如是なり。汝等諸王よ、應に寶幢及び幡蓋を以て、燒香散花し廣大供養せよ。寶函に經を盛り、寶案に置き、若し
行かんと欲する時は常に其前に導き、所在住處に、七寶帳を作り、衆寶を座となし上に経を置き、種種供養し父母につかふるが如く、亦た諸天の帝釋に奉事するが如くせよ。大王よ、我れ諸國一切の人王を見るに、皆な過去に五百の佛に侍し、恭敬供養するに由りて帝王たるを得る。一切の聖人、道果を得る者、其國に來生して大利益を作す。若し王の福が盡きて無道の時は、聖人は捨去りて災難競い起る。大王よ若し未來世に諸の國王ありて、正法を建立し三寶を護する者あらば、我五方の菩薩摩訶薩衆をして其國を往護せしめん。
東方の金剛手菩薩摩訶薩は手に金剛杵を持ち青色光を放ち四倶胝の菩薩とともに其國を往護す。
南方の金剛寶菩薩摩訶薩は手に金剛摩尼を持ち、日色光を放ち、四倶胝の菩薩とともに其国を往護す。
西方の金剛利菩薩摩訶薩は手に金剛劍を持ち、金色光を放ち四倶胝の菩薩とともに其國を往護す。
北方の金剛藥叉菩薩摩訶薩は手に金剛鈴を持ち、
瑠璃色光を放ち、四倶胝の藥叉とともに其国を往護す。
中方の金剛波羅蜜多菩薩摩訶薩は手に金剛輪を持ち、五色光を放ち、四倶胝の菩薩とともに其国を往護す。是の五菩薩摩訶薩は各の如是の無量大衆とともに、汝が國中において大利益を作さん。當に形像を立て、之を供養すべし。

爾時、金剛手菩薩摩訶薩等は即ち座より起ち佛足を頂禮し、却って一面に住して佛に白して言さく「世尊よ、我等は本願に佛の神力を承けて十方世界一切國土に若し此經を受持讀誦解説の處あらば、我當におのおの如是の眷屬と興に、一念の頃に於いて即ち其所に至って正法を守護し正法を建立し、其國界をして諸災難無く刀兵疾疫一切皆除かしむべし。世尊よ我に陀羅尼あり、能く加持擁護す。是れ一切佛のもと修行する所の速疾の門なり。若し人、一經を耳に聞くことを得ば、所有の罪障は悉く皆な消滅す。況んや復た誦習して通利せしめんをや。法の威力を以て當に國界をして永く衆難なからしむべし。
即ち佛前において異口同音に陀羅尼を説いて曰く、
のうぼうあらたんのう、たらやあやあ、なおうまくありや、ばいろしゃなうや、たたぎゃたや、あらかていさんみゃくさんぼだや、のうまくありや、さんまんだばらだや、ぼうじさとばや、まかさとばや、まかきゃろにきゃや、たにゃた、じなのうはらじべい、あきしゃや、くせい、はらちばぼうばち、さらばぼだ、ばろきてい、ゆぎゃはり、じしゅちてい、げんびら、どらばぎゃけい、ちりやだははり、じしゃはねい、ぼうじしったさんじゃのうに、さらばびせいきゃ、びしっきてい、だらまさぎゃらさんぼでい、あぼぎゃしらばちねい、まかさんまんだばら、ぼびにりやてい、びやきゃらだ、はりはらはに、さらばしっだ、のうまそきりてい、さらばぼうじさとば、さんじゃのうに、ばぎゃばち、ほだまてい、あらだい、きゃらだい、あらだきゃらだい、まかはらじにやはらみてい、そわか。

爾時、世尊は是の説を聞き已りて、金剛手等諸菩薩を讃じて言く「善哉善哉。若し此の陀羅尼を誦持する者あらば、我及び十方諸佛悉く常に加護し諸惡神鬼は之を敬うこと佛の如く、久しからずして當に阿耨多羅三藐三菩提を得ん。大王よ、吾此經を以て汝等に付囑す。毘舍離國・憍薩羅國・室羅筏國・摩伽陀國・波羅痆斯國・迦毘羅國・拘尸那國・憍睒彌國・般遮羅國・波吒羅國・末土羅國・烏尸尼國・奔吒多國・提婆多國・迦尸國瞻波國、如是の一切の諸國王等は皆應に般若波羅蜜多を受持すべし。」
時に諸大衆阿修羅等は、佛所説の諸災難事を聞きて身
毛皆竪ち、高聲に唱えて言く「願はくは我、未來、彼の國に生ぜじ」と。
時に十六王は即ち王位を捨て出家道を修し、八勝處・十一切處(「八勝処」は、欲界の見る対象である色と形を観察してこれを克服し、貪心を除くための八種類の禅定をいう。「十一切処」は、地・水・火・風・青・黄・赤・白・空・識が、あらゆる場所に遍ねく行き渡って隙間がないと観じる十種類の観想で、八背捨・八勝処を修めて、その次に修める禅定をいう。)

を具して、伏忍・言忍・無生法忍(五忍は「伏忍、信忍、順忍、無生忍、寂滅忍」)を得る。
爾時一切の天人・大衆・阿修羅等は曼陀羅花・
曼殊沙花・婆師迦花(ばしかけ・雨季に咲く香気の高い花)・蘇曼那花を散じ、以って仏を供養し、其の種性に随いて三脱門・生空・法空・菩提分法を得、無量
無數の菩薩摩訶薩は拘勿頭花(くもずげ・睡蓮の一種)・波頭摩花(はずまげ・赤蓮華)を散じて仏を
供養す。無量の三昧は悉く皆な現前し順忍・無生法忍に住することを得て、無量無數の菩薩摩訶薩は恒河沙の諸三昧門を得て、眞俗平等にして無礙解を具し、常に大悲を起こし、百萬億阿僧祇佛刹微塵數世界に於いて衆生を廣利し現身に成佛す。



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 密宗安心教示章(明治十七年... | トップ | 密宗安心教示章(明治十七年... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

諸経」カテゴリの最新記事