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福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

地藏菩薩本願經(全巻書き下し)

2020-06-24 | 諸経
地藏菩薩本願經卷上(このお経はお釈迦様が忉利天宮に居られる御母堂に、お地蔵様のご利益を説法されるもの、不幸なものをこそお地蔵様はお救いくださるというもの)
唐于闐國三藏沙門實叉難陀譯
忉利天宮神通品第一(お釈迦様が諸仏諸天諸鬼等の集会する中で対告衆としての文殊菩薩に地蔵菩薩の過去世は一切衆生済度の願を立てた長者の子や婆羅門女だったと伝える
如是我聞。一時佛忉利天に在して母の為に説法したまう。爾時十方無量の世界不可説不可説一切諸佛及び大菩薩摩訶薩、皆な來りて集會し、釋迦牟尼佛の能く五濁惡世において、不可思議大智慧神通の力を現じ、剛彊の衆生を調伏し、知苦樂の法を知らしめたまうことを讃嘆し、各の侍者を遣わして世尊を問訊したまう。是時、如來笑を含み、百千萬億の大光明雲を放ちたまう。所謂、大圓滿光明雲・大慈悲光明雲・大智慧光明雲・大般若光明雲・大三昧光明雲・大吉祥光明雲・大福徳光明雲・大功徳光明雲・大歸依光明雲・大讃歎光明雲なり。如是等の不可説の光明雲を放ち已りて又種種微妙之の音を出したまう。所謂檀波羅蜜音・尸波羅蜜音・羼提波羅蜜音・毘離耶波羅蜜音・禪波羅蜜音・般若波羅蜜音・慈悲音・喜捨音・解脱音・無漏音・智慧音・大智慧音・師子吼音・大師子吼音・雲雷音・大雲雷音なり。如是等の不可説不可説音を出し已りて、娑婆世界および他方國土に。無量億天龍鬼神ありて、亦た 忉利天宮に集到せり。所謂、四天王天忉利天・須焔摩天・兜率陀天・化樂天・他化自在天・梵衆天・梵輔天・大梵天・少光天・無量光天・光音天・少淨天・無量淨天・遍淨天・福生天・福愛天・廣果天・無想天・無煩天・無熱天・善見天・善現天・色究竟天・摩醯首羅天乃至非想非非想處天。一切の天衆・龍衆・鬼神等の衆、悉く來りて集會せり。復た他方の國土及び娑婆世界の、海神・江神・河神・樹神・山神・地神・川澤神・苗稼神・晝神・夜神・空神・天神・飮食神・草木神あり。如是等の神、皆な來りて集會せり。復た有他方國土及び娑婆世界の諸大鬼王あり。所謂、惡目鬼王・噉血鬼王・噉精氣鬼王・噉胎卵鬼王・行病鬼王・攝毒鬼王・慈心鬼王・福利鬼王・大愛敬鬼王あり。如是等の鬼王、皆な來りて集會せり。爾時、釋迦牟尼佛、文殊師利法王子菩薩摩訶薩に告げたまわく、「汝、是の一切諸佛菩薩及び天龍鬼神、此世界他世界此國土他國土より如是に今來りて集會して忉利天に至る者を観て、汝、數を知るや不や。」文殊師利白佛言。「世尊、我が神力を以て千劫に測度するとも知ることを得ること能わず」。佛文殊師利に告げたまわく、「吾、佛眼をもって觀るに猶ほ數を尽くさず。此れ皆な是れ地藏菩薩、久遠劫來、已度・當度・未度・已成就・當成就・未成就なり。」文殊師利、佛に言してもうさく、「世尊、我過去より久しく善根を修して無礙智を證し、佛の言いたまうところを聞いて即ち當に信受すべし。小果の聲聞・天龍八部及び未來世の諸衆生等、如來の誠實之語を聞くと雖も必ず疑惑を懷かん。設使(たとひ)頂受するとも未だ謗を興すとこを免れず。唯だ願くは世尊廣、地藏菩薩摩訶薩は因地に何の行を作し、何の願を立て、而も能く不思議事を成就すということを説きたまえ」
佛、文殊師利に告げたまわく、「譬えば三千大千世界の所有(あらゆる)草木・叢林・稻麻・竹葦・山石微塵の如き一物ごとの一數を一恒河と作し、一恒河沙の一沙ごとを一界とし、一界の内の一塵ごとを一劫とし、一劫の内の積むところの塵數を盡尽くすを劫と為さんに、地藏菩薩は十地の果位を証して已來、千倍して上の喩より多し。何に況んや地藏菩薩、聲聞辟支佛地に在せしをや。文殊師利よ、此菩薩の威神誓願は不可思議なり。もし未来世に有善男子善女人有て是の菩薩の名字を聞いて或は讃歎し或は瞻禮し或は稱名し或は供養し、乃至形像を彩畫・刻鏤・塑漆せんに、是人當に百返生を三十三天に生ずることを得て、永く惡道に墮せず。文殊師利よ是の地藏菩薩摩訶薩は過去久遠不可説不可説劫の前において身は大長者の子となる。時に世に佛ましましき、號して師子奮迅具足萬行如來という。時に長者の子、佛の相好の千福莊嚴なるを見る。因って彼の佛に問い奉る。『何なる行願をなしてか而も此の相を得たまえるや』。時に師子奮迅具足萬行如來、長者、子に告げたまわく『此身を證せんと欲せば當に須く久遠に一切受苦の衆生を度脱せしむべし』、文殊師利よ、時に長者の子、因って發願して言く、『我今より盡未來際不可計劫に。是の罪苦六道の衆生の為に廣く方便を設けて盡く解脱せしめて而して我自身方に佛道を成ぜん。以是を以て彼の佛の前に斯の大願を立て、今に百千萬億那由他不可説劫尚ほ菩薩なり。又過去不可思議阿僧祇劫において時に世に佛有り、號して覺華定自在王如來という。彼の佛の壽命は四百千萬億阿僧祇劫なり。像法の中に一の婆羅門女あり。宿福深厚にして衆の欽敬するところなり。行住坐臥に諸天衞護す。其母は邪を信じて常に三寶を軽んず。是時、聖女廣く方便を設け其母を勸誘して正見を生ぜしむ。
而かも此の女むすめの母は未だ全ったく信を生ぜず。久しからずして命終して魂神は無間地獄に墮在す。時に婆羅門の女むすめ、母の在世に因果を信ぜざれば、計るに當に業に隨って必ず惡趣に生ずべしと。遂に家宅を売って廣く香華および諸供具を求めて先佛の塔寺において大いに供養を興し、覺華定自在王如來の其形像、一寺の中において威容を塑畫して端
嚴畢く備わるを見たてまつる。時に婆羅門の女むすめ、尊容を瞻禮して倍す敬仰を生じ
私に自ずから念言すらく、「佛を大覺と名ずく、一切智を具したまへり。若し在世の時ならば我母死して後、儻し來りて佛に問いたてまつらば必ず處所を知らしめたまう」。時に婆羅門の女むすめ、涙を垂るること良や久しゅうして如來を瞻戀するに忽ちに空中に聲を聞く、曰く「泣者聖女よ悲哀に至ること勿れ。我今汝の母の去る處を示さん。」婆羅門の女むすめ、合掌して空に向かって白して曰さく、「是れ何の神徳ぞ、我が憂慮を宥めたもう。我れ母をうしなってよりこのかた晝夜に憶戀すれども、母の生界を問い知るべき所なし。」時に空中に聲あり、再び女に報じて曰く、「我は是れ汝の瞻禮する所の者、過去の覺華定自在王如來なり。汝が母を憶うこと常情の衆生之分に倍するを見て、ことさらに來りて告げ示すなり。」婆羅門の女、此の聲を聞き已りて擧身自ら撲ちて支節皆な損ず。左右扶侍して良や久しゅうして方に蘇える。而して空に白して曰わく「願はくは佛、慈愍して速く我母の生界を説き給え。我今身心將に久しからずして死なんとす。」時に覺華定自在王如來、聖女に告げて曰く。「汝供養畢りて但し早く舍に還り、端坐して吾之名號を思惟すべし。即ち當に母の生じさる處をしるべし」と。時に婆羅門女、尋いで佛を礼しおわりて即ち其舍に帰る。母を憶うが故に端坐して覺華定自在王如來を念じて一日一夜を経て忽ち自身を見るに、一海邊に至る。其の水涌沸して多くの諸の惡獸多し。盡く復た鐵身なり。
海上を飛走りて東西に馳逐す。諸の男子女人百千萬數海中に出沒して諸惡獸のために爭い取られ食噉さるを見る。又夜叉を見るに其の形各の異なり、或は多手多眼多足多頭、口牙外に出て刃の利ときこと劍の如し。諸の罪人を驅って惡獸に近つ゛かしむ。復た自ら搏り攫んで頭足相い就く。其形萬類にして敢て久しく視ず。時に婆羅門女、念佛力を以ての故に自然に無懼なり。一鬼王あり、名ずけて無毒という、稽首して來迎して聖女に曰してもうさく、「善哉菩薩、何に縁りてか此に来たれるや」。時に婆羅門女、鬼王に問うてもうさく、「此是何處」。無毒答えて曰く「此は是れ大鐵圍山西面第一重海なり」。聖女問曰。「我れ聞く、鐵圍之内、地獄在中すと、是れ事實なりや不や」。無毒答曰「實に地獄あり」。聖女問曰。「我今云何が獄所に到ることを得るや」。無毒答曰。「若じ威神にあらずば即ち須らく業力なるべし、此の二事にあらざれば終に到ること能わず」。聖女又問「此の水は何縁によりてこのごとく涌沸し諸の罪人及び惡獸多しや」。無毒答曰、「此は是れ閻浮提の造惡の衆生、新死之者四十九日を経て後、人の繼嗣に功徳を為し苦難を救拔するもの無きもの、生時に又た善因無き者、當に本業に據って感ずる所の地獄なり。自然に先ず此海を渡り海東十萬由旬に又た一海あり、其の苦は此の倍なり。彼の海の東に又た一海あり、其の苦は復た倍なり。三業惡因の招き感ずる所なり。共に業海と号す、其の處、是也」。聖女鬼王、無毒に問うて曰く「地獄何在」。無毒答曰「三海の内に是れ大地獄あり。其數百千各各差別あり。所謂、大は具に十八あり、次に五百あり、苦毒無量なり。次に千百あり、亦た無量苦あり」。聖女又大鬼王に問うて曰く、「我母死より來た未だ久しからず。知らず魂神、當に何の趣にか至る。」鬼王聖女に問うて曰く、「菩薩の母は在生に何の行業を習うや」。聖女答えて曰く「我母邪見にして三寶を譏毀す。或は暫く信ずれども旋や又た敬ず。死して日淺しといえども未だ生
處を知らず」。無毒問うて曰く「菩薩の母の姓氏は何等」。聖女答曰。「我父我母倶に婆羅門種なり。父は尸羅善現と號し、母は悦帝利と號す」。無毒合掌して菩薩に啓して曰く「願はくば聖者本處に却返えり、憂憶悲戀に至る事なかれ。悦帝利罪女は天に生じて以來今三日を經る。孝順の子の母の為に供を設け福を修し、覺華定自在王如來の塔寺に布施しを承く。唯だ
菩薩の母の地獄を脱することを得るのみに非ず、應に是の無間の罪人、此の日に悉く
樂を受くることを得て倶に同じく生じ訖るべし、という。鬼王言い畢りて合掌して退く。婆羅門女、尋いで夢の如く歸りて此事を悟り已って、便ち覺華定自在王如來塔像之前に立ちて弘く誓願を立つ。「願はくは我れ盡未來劫において、應に罪苦ある衆生に廣く方便を設けて解脱せしむべし」。佛文殊師利に告げたまわく。「時に鬼王無毒は當今の財首菩薩是なり。婆羅門女は即ち地藏菩薩是なり。」

地藏菩薩本願經卷上 分身集會品第二(衆生済度の為に不可説無量阿僧祇世界のあらゆる地獄に分身している無数の地蔵菩薩が集まり、お釈迦様が「弥勒菩薩出現までの間、我が衆生済度で漏れた衆生を助よ」と説諭すると、地蔵菩薩達がお釈迦様に「ご心配なく」と誓う。
爾時、百千萬億不可思不可議不可量不可説無量阿僧祇世界のあらゆる地獄處の分身の地藏菩薩、倶に來りて集りて忉利天宮に在り。如來神力を以ての故に、各の方面を以て與に諸の解脱を得て業道より出る者となり、亦た各の千萬億那由他數あり、共に香華を持ち來りて佛を供養し奉る。彼の諸の同じく來る等の輩は、皆な地藏菩薩の教化によりて、永く阿耨多羅三藐三菩提退轉せず。是の諸の衆等は久遠劫來、生死を流浪し、六道に受苦すること暫くも休息なし。地藏菩薩の廣大慈悲深誓願を以ての故に、各の果證を獲て既に忉利に至り、心に踊躍を抱き如來を瞻仰して目暫くも捨てず。爾時、世尊、金色の臂をのべて、百千萬億不可思不可議不可量不可説無量阿僧祇世界の諸分身地藏菩薩摩訶薩の頂をなでて、而も是言を作さく。「吾れ五濁惡世において、如是の剛彊の衆生を教化して心をして調伏せしめ邪を捨て正に帰せしむ。十に一二ありて尚ほ惡習在り。吾亦身を千百億に分かちて廣く方便を設く。或は利根なるありて聞いて即ち信受し或は善果有れば勤めて成就し、或は暗鈍なる有りて久しく化して方に歸す。或は業重有りて敬仰を生ぜず。如是等の輩の衆生、各各差別なれば分身して度脱す。或は男子の身を現じ、或は女人身を現じ或は天龍身を現じ或は神鬼身を現じ、或は山林川原河池泉井を現じ利して人に及ぼして悉く皆な度脱す。或は天帝身を現じ或は梵王身を現じ或は轉輪王身を現じ或は居士身を現じ或は國王身を現じ或は宰輔身を現じ或は官屬身を現じ或は比丘・比丘尼・優婆塞・優婆夷身乃至聲聞・羅漢・辟支佛・菩薩等身を現ず。而して以て化度す。但し佛身獨り其前に現ずるにあらず。汝じ吾が累劫勤苦して如是等の難化剛強罪苦の衆生を度脱するを観よ。其の未だ調伏せざる者有りて業報の應に随いて若し惡趣に堕して大苦を受ける時は、汝當に吾忉利天宮にありて殷勤に付囑せしことを憶念して、娑婆世界に彌勒出世に至る已來の衆生を悉く解脱せしめ永く諸苦を離れ佛の授記に遇わしむべし」。爾時、諸世界分身の地藏菩薩は共に一形に復して涕涙哀戀して其佛にもうして言さく。我れ久遠劫より來た 佛の接引して不可思議の神力を獲て大智慧を具せしむを蒙る。我れ分つところの身は百千萬億恒河沙世界に遍滿し、一世界毎に百千萬億の身を化し、一身毎に百千萬億人を度して三寶に歸敬せしめ永く生死を離れ涅槃の樂に至らしむ。但だ佛法中において所爲の善事、一毛一渧一沙一塵、或は毫髮許りであろうとも、我れ漸に度脱して大利を獲せしめん。唯だ願くは世尊、後世惡業の衆生を以て慮をなしたまわざれ。」是の如く三たび佛にもうして言さく。「唯だ願くは世尊、後世惡業の衆生を以て慮をなしたまわざれ。」爾時、佛、地藏菩薩を讃じて言はく「善哉善哉、吾れ汝が喜びを助く。汝能く久遠劫來に發せる弘誓願を成就して廣く度し、將に畢らんとして即ち菩提を証せよ」

地藏菩薩本願經卷上 觀衆生業縁品第三(地蔵菩薩が無間罪と無間地獄を説く
爾時、佛母摩耶夫人、恭敬合掌して地藏菩薩に問うて言はく「聖者。閻浮の衆生は造業は差別あり、受くるところの報應其事云何」。地藏答言。「千萬世界ないし國土に、或は地獄有り或は地獄無し。或は女人有り或は女人無し。或は佛法有り或は佛法無し。乃至聲聞辟支佛も亦た復た如是。但だ地獄の罪報一等(ひとしな)のみにあらず。」摩耶夫人重ねて菩薩にもうす「且願はくは閻浮において罪報所感の惡趣を聞かん」。地藏答言、「聖母よ、唯願はくは聽受したまへ、我ほぼ之を説かん」。聖母白して言さく。「願はくは聖者説きたまへ」。爾時、地藏菩薩聖母にもうして言さく、「南閻浮提の罪報の名號は是の如し。若し衆生有りて父母に不孝或は殺害に至らば、當に無間地獄に堕して、千萬億劫に求出ることを求むれども期なかるべし。若し衆生ありて佛身より血を出し、三寶を毀謗り、尊經を敬はずんば亦た當に無間地獄に堕し千萬億劫に出ることをもとむれども期なかるべし。若し衆生ありて常住を侵損し僧尼を點汚し或は伽藍内において恣に淫欲を行じ、或は殺し或は害せん、如是等の輩は當に無間地獄に堕して千萬億劫に出ることを求むれども期なからん。若し衆生ありて僞りて沙門となりて心は沙門に非ず常住を破り用いて白衣(在家の者)を欺誑し戒律に違背し種種の惡を造る、如是等の輩は當に無間地獄に堕して千萬億劫に求出ることを求むれども期なからん。若し衆生有りて常住の財物・穀米・飮食・衣服を偸竊み乃至一物も與えざるに取る者は當に無間地獄に堕して千萬億劫に出るを求むれども期なからん。」

地藏菩薩白して言さく、「聖母よ、若し衆生有りて如是の罪を作らば當に五無間地獄に堕して。暫く苦を停めんことを求むれども一念も得ざるべし」。摩耶夫人重ねて地藏菩薩に白して言さく、「云何が、名ずけて無間地獄と為すや」。地藏菩薩白して言さく、「聖母よ。諸有(あらゆる)地獄は大鐵圍山の内にあり。其の大なるものは一十八所有り。次に五百有り、名號各別なり。次に千百あり、名字亦た別なり。無間獄とは其の獄城の周匝八萬餘里、其の城は純鐵にして高さ一萬里、城上に火聚あり空缺あることまれなり。其の獄城中に諸獄相連なりて名號各別なり。獨り一獄あり名ずけて無間という。其の獄の周匝は萬八千里、獄の墻高は一千里、悉く是れ鐵をもってつくれり。上火は下に徹し下火は上に徹す。鐵蛇・鐵狗は吐火して獄墻の上を馳逐し東西に走る。獄中に床有り、萬里に遍滿す。一人罪を受くるに自ら其身を見るに遍く臥して床に滿てり。千萬人罪を受けるも亦た各の自ら身の床上に満ことを見る。衆業の感ずる所にして獲報如是なり。又諸の罪人備さに衆苦を受く。千百の夜叉及以び惡鬼は口牙劍の如く眼は電光の如し。手には復た銅爪ありて罪人を拖く。復た夜叉有りて 大鐵戟を執りて 罪人の身に中て、或は口鼻に中て、或は腹背に中て空に抛げて翻りて接し或は床上に置く。復た鐵鷹有りて 罪人の目を啗う。復た鐵蛇有りて 罪人の頸を繳う。百肢節内に悉く長釘を下す。舌を拔いて耕し腸を抽いてきざみきる。洋銅を口に灌ぎ熱鐵を身に纒う。萬死千生業感如是。動やもすれば億劫を經て出ることを求むれども期無し。此界壞する時は他界に寄生し他界の次に壞すれば他方に轉寄す。他方壞する時は展轉して相い寄す。此界成じて後、還りて復而た來る。無間罪報其事如是。又た五事の業感あり故に無間と称す。

何等をか五と為す。

一は日夜罪を受けて以って劫數に至る。時として間絶することなし、故に無間と称す。

二は一人亦た滿ち、多人亦た滿つ、故に無間と称す。

三は罪器叉棒・鷹蛇狼犬・碓磨鋸鑿・剉斫鑊湯(ざしゃくかんとう)・鐵網鐵繩・鐵驢鐵馬、生革首に絡い、熱鐵身に澆ぐ。飢えては鐵丸を呑み、渇しては鐵汁を飲み、年より劫を竟るまで數那由他。苦楚相い連なりて更に無間斷なり。故に無間と称す。

四には、男子女人・羌胡夷狄老幼貴賤、或いは龍、或は神、或は天、或は鬼を問わず罪行業感悉く同にして之を受く。故に無間と称す。

五には若し此獄に墮すれば初め入る時より百千劫に至るまで、一日一夜に萬死萬
生す。一念の間を求むれども暫くもとどまることを得ず。業盡きて方に受生を得るを除非す 。此の連綿を以ての故に無間と称す。地藏菩薩、聖母にもうして言さく、「無間地獄の麁説如是。若し廣く地獄罪器等名及び諸苦事を説かば一劫の中に説くことを求むれども不盡」。

摩耶夫人聞き已りて愁憂し、合掌頂禮して退く。


地藏菩薩本願經卷上 地獄名號品第五(無数の地獄の解説
爾時、普賢菩薩摩訶薩は地藏菩薩に白して言さく、「仁者、願はくは天龍四衆及び未來現在一切衆生の為に娑婆世界及び閻浮提の罪苦衆生受報の處・地獄名號・及び惡報の事等を説いて、未來世の末法衆生をして是の果報を知らしめ給へ」。地藏答へて言はく「仁者、我れ今ま、佛の威神及び大士の力を承けて、略して地獄名號及び罪報惡報の事を説かん。仁者、閻
浮提の東方に山あり、號して鐵圍という。其山黒邃にして日月光なし。大地獄有り、極無間と号す。又た地獄有り、大阿鼻と名ずく。復た地獄有り、名ずけて四角という。復た地獄あり、名ずけて飛刀という。復た地獄あり、名ずけて火箭という。復た地獄あり、名ずけて夾山という。復た地獄あり、名ずけて通槍という。復た地獄あり、名ずけて鐵車という。。復た地獄あり、名ずけて鐵床という。復た地獄あり、名ずけて鐵牛という。復た地獄あり、名ずけて、鐵衣という。復た地獄あり、名ずけて千刃という。復た地獄あり、名ずけて鐵驢という。復た地獄あり、名ずけて洋銅という。復た地獄あり、名ずけて抱柱という。復た地獄あり、名ずけて流火という。復た地獄あり、名ずけて耕舌という。復た地獄あり、名ずけて剉首となす。復た地獄あり、名ずけて燒脚という。復た地獄あり、名ずけて啗眼という。復た地獄あり、名ずけて鐵丸という。復た地獄あり、名ずけて諍論という。復た地獄あり、名ずけて鐵鈇という。復た地獄あり、名ずけて多瞋という」。地藏白言。「仁者、鐵圍の内、如是等の地獄有りて其數無限なり。更に叫喚地獄・拔舌地獄・糞尿地獄・銅鎖地獄・火象地獄・火狗地獄・火馬地獄・火牛地獄・火山地獄・火石地獄・火床地獄・火梁地獄・火鷹地獄・鋸牙地獄・剥皮地獄・飮血地獄・燒手地獄・燒脚地獄・倒刺地獄・火屋地獄・鐵屋地獄・火狼地獄、如是等の
地獄あり。其中に各各復た諸小地獄あり、或一、或二、或三、或四乃至百千なり。其中の名號各各不同なり」。地藏菩薩は普賢菩薩にもうして言さく、「仁者、此者皆是れ南閻浮提行惡の衆生の業感は是の如く業力甚大にして能く須彌に敵し、能く巨海より深く、能く聖道を障す。是の故に衆生、小惡を軽んじて以って罪無しとなすこと莫れ。死後報有り、纖毫も之を受く。父子至って親しけれども岐路各別なり。縱然ひ相い逢うとも肯えて代り受くることなし。我今佛の威力を承けて、略して地獄罪報之事を説かん。唯だ願はくは仁者よ暫く是の言を聽け」。普賢答言「吾以って三惡道報を知る事久し。望むらくは仁者よ、後世末法一切惡行の衆生に仁者の説を聞かしめて佛に帰せしめたまえ」。地藏白言「仁者。地獄の罪報、其事是の如し。或は地獄有り、罪人の舌を取りて牛をして之を耕さしむ。或は地獄有り、罪人の心を取りて夜叉に之を食さしむ。或は地獄有り、鑊湯(かんとう)盛に沸いて罪人の身を煮る。或は地獄有り、赤燒銅柱を罪人をして抱かしむ。或は地獄有り、諸の火を燒いて罪人に及ばしむ。或は地獄有り、一向に寒氷なり。或は地獄有り、糞尿無限なり。
或は地獄有り、もっぱら鏫を飛ばす。或は地獄有り、多く火槍をあつむ。
或は地獄有り、唯だ胸背を撞く。或は地獄有り、但だ手足を焼く。或は地獄有り、鐵蛇に盤繳(まとわる)。或は地獄有り、鐵狗に驅逐さる。或は地獄有り、盡く鐵騾(鉄のらば)に駕す。仁者よ如是等の報、各各獄中に有りて百千種の業道の器あり。是れ銅、是れ鐵、是れ石、是れ火にあらざる事無し。此の四種の物は衆の業行の感見なり。若し廣く地獄の罪報等の事を説かば、一一の獄中に更らに百千種の苦楚あり。何に況んや多獄をや。我今、佛の威神及び仁者の問をうけて略ぼ説くこと如是なり。若し廣く解説せば  劫を窮くすとも不盡なり。

地藏菩薩本願經卷上 如來讃歎品第六(地蔵菩薩を拝めば様々にご利益がある。・・・月の十齋日において、佛菩薩諸賢聖像前に対して是經を読むこと一遍せば、東西南北百由旬内諸災難なし。當に此の居家の若は長、若しは幼、現在未來百千歳の中、永く惡趣を離る。能く十齋日において毎(つね)に一遍を転ぜば、現世に此居家をして諸横病無く、衣食豐溢ならしめん・・)
爾時、世尊擧身より大光明を放ち、遍く百千萬億恒河沙等の諸佛世界を照らし、大音聲を出して普く諸佛世界の一切の諸菩薩摩訶薩及び天龍鬼神人等に告げたまはく、
「吾れ今日、地藏菩薩摩訶薩の十方世界において大不可思議威神慈悲の力を現じて一切罪苦之事を救護するを稱揚讃歎するを聴け。吾滅度の後、汝等諸菩薩大士及び天龍鬼神等、廣く方便を作して是經を衞護し、一切衆生をして涅槃の樂を証せしめよ」。是の語を説き已りしとき會中に一菩薩あり。名ずけて普廣と曰う、合掌恭敬して佛に白して言さく、「今、世尊の地藏菩薩を讃歎したまふを見るに、如是の不可思議の大威神徳あり、唯だ願はくは世尊よ、未來世末法衆生の為に、地藏菩薩利益人天因果等の事を宣説して、諸の天龍八部
及び未來世の衆生をして佛語を頂受せしめたまえ」。爾時、世尊は普廣菩薩及び四衆等につげたまはく「諦聽諦聽、吾れ當に汝の為に地藏菩薩利益人天福徳の事を略説せん。普廣白して言さく、「唯然り、世尊よ願樂して聞かんと欲す」。佛、普廣菩薩に告げたまはく「未來世中に若し善男子善女人有て是の地藏菩薩摩訶薩の名を聞く者、或は合掌せん者、讃歎せん者、作禮の者、戀慕の者、是人は三十劫罪を超越せん。普廣よ、若し善男子善女人有て或は形像を彩畫し、或は土石膠漆金銀銅鐵をもって此の菩薩を作り一瞻一禮せん者、是人は百返三十三天に生じ永く惡道に堕せず。假如ひ天福盡くるが故に人間に下生するも猶ほ國王となりて大利を失せず。若し女人有りて女人身を厭ひ、盡心に地藏菩薩畫像及び土石膠漆銅鐵等の像を供養し、如是に日日不退にして常に華香飮食衣服繒綵幢旛錢寶物等をもって供養せば、是の善女人は此の一報女身を尽くして、百千萬劫更に女人世界に生あることなし。何に況んや復た受けんをや。悲願力の故に女身を受けて衆生を度脱せんと要するを除非す。斯の地藏菩薩を供養する力を承けるが故に及び功徳力を以て、百千萬劫に女身を受けず。復次に普廣よ、若し女人有りて是の醜陋多疾病を厭はん者但だ地藏像前において志心に瞻禮すること食頃之間もせば、是人は千萬劫中に受生する所の身は相貌圓滿ならん。是の醜陋の女人如し女身を厭はずんば、即ち百千萬億生中に常に王女乃及王妃宰輔大姓大長者の女となりて。端正に受生して諸相圓滿ならん。志心に由るが故に地藏菩薩を瞻禮して獲る福は如是なり。復次に普廣よ、若し善男子善女人有りて能く菩薩像前に対して諸伎樂及歌詠讃歎香華供
養を作し、乃至一人多人を勧めん、如是等の輩は現在世中及び未來世に常に百千鬼神日夜衞護を得て惡事をして輒やすく其耳に聞かしめず。何に況んや親しく諸横を受けんや。復た次に普廣よ、未來世中に若し惡人及惡神惡鬼有りて、善男子善女人、地藏菩薩形像を歸敬供養讃歎瞻禮するを見て、或は妄りに譏毀(そしり)を生じ、功徳及利益事無しと謗り、或は
齒を露にして笑ひ、或は背面にして非(そしり)、或は人に勧めて共にそしり、或は一人そしり、或は多人そしり、乃至一念も譏毀(そしり)を生ぜん者、如是の人は賢劫千佛滅度せんも、譏毀の報は尚ほ阿鼻地獄に在りて極重罪を受けん。是の劫を過ぎ已りて方に餓鬼を受け又た千劫を経て復た畜生を受け、又た千劫を経て方に人身を受く。縱ひ人身を受くも貧
窮下賤諸根不具ならん。多く惡業來りて其心を結ばれて久しからざる之の間に復た惡道に堕す。是故に普廣よ、他人の供養を譏毀りても尚ほ此報を獲る。何に況んや別に惡見を生じて毀滅せんをや。復次に普廣よ、若し未來世に男子女人有りて久しく床枕に處して生を求め
死を求めるに了に可からず、或夜惡鬼乃び家親を夢み、或は險道に遊すび或は魘床多く、鬼神と共に遊び、日月歳深にして轉た復た身尫し、眠中に叫苦慘悽して樂しみ無き者は此皆是業道の論對、未だ輕重を定めず、或は壽を捨て難く、或は愈ゆるを得ず。男女の俗眼は是事を弁ぜず、但し當に諸佛菩薩の像前に対して高聲に此經を轉讀すること一遍なるべし。或は病人可愛の物、或は衣服・寶貝・莊園・舍宅を取り、病人前に対して高聲に唱えて言うべし、我某甲等、是病人の為に經像前に対して諸等物を捨て、或は經像を供養し、或は佛菩薩形像を造り、或は塔寺を造り、或は油燈を然し、或は常住を施すこと、如是に三たび病人に白して聞き知らしめよ。假令ひ諸識分散して氣盡るに至る者にも、乃至一日二日三日四日七日に至る、已來た、但だ高聲に白し、高聲に讀經すべし。是人命終の後、宿殃重罪五無間罪に至るまで永く解脱することを得る。受生する所の處、常に宿命を知らん。何に況んや善男子善女人自ら此經を書して或は人に教えて書せし、或は自ら菩薩の形像を塑畫し、乃至人に教えて塑畫せしめんに所受の果報必ず大利を獲ん。是故に普廣よ、若し人の是經を讀誦し、乃至一念も是經を讃歎或は恭敬せん者あるを見ては、汝須らく百千の方便をもって是等人を勸めて勤心して退することなからしめ能く未來現在千萬億不可思議功徳を得せしむべし。復次に普廣よ、若し未來世、諸衆生等、或は夢に或は寐に諸鬼神乃及諸形を見るに、或は悲み、或は啼き、或は愁ひ、或は歎き、或は恐れ、或は怖る、此は皆な是れ一生十生百生千生、過去父母男女弟妹夫妻眷屬惡趣にありて未だ出離を得ず、福力の救拔を希望するに所なし、當に宿世の骨肉に告げて方便を作さしめ惡道を離れんと願うべし。普廣よ、汝神力を以て是眷屬を遣して諸佛菩薩像前に対さしめ志心に自ら此經を読み或は人を請じて讀ましむること其數三遍或七遍せば、如是の惡道眷屬、經の聲、是遍數おわらば當に解脱を得べし。乃至夢寐の中、永く復た見ず。復次に普廣よ、若し未來世に諸の下賤等の人、或は奴、或は婢、乃至諸の不自由之人ありて宿業を覺知し、懺悔せんと欲せば、志心に地藏菩薩形像を瞻禮せよ。乃至一七日中菩薩名を念じて萬遍に満べし。如是等の人は此報盡きて後、千萬生中常に尊貴に生じ更に三惡道苦を経ず。復次に普廣よ、若し未來世中閻浮提内に刹利・婆羅門・長者・居士・一切人等及び異姓の種族新産者等有らんに、或男或女七日之中。早く與に此不思議經典を讀誦し、更に爲に菩薩名を念じて萬遍に満べし、是の新生子、或男、或女、宿(むかし)の殃報あるも便ち解脱を得、安樂にして養いやすく壽命増長ならん。若し是れ福を承けて生ずる者は轉た安樂及び壽命を増さん。復次に普廣よ、若し未來世衆生、月の一日・八日・十四日・十五日・十八日・二十三日・二十四・二十八日・二十九日乃至三十日、是諸日等において諸罪結集して其の輕重を定む。南閻浮提衆生の擧止動念は是れ業ならずということなく、是れ罪ならずということ無し。何ぞ況んや情を恣しいままにして殺害・竊盜・邪婬・妄語せん、百千の罪状、能く是十齋日において、佛菩薩諸賢聖像前に対して是經を読むこと一遍せば、東西南北百由旬内諸災難なし。當に此の居家の若は長、若しは幼、現在未來百千歳の中、永く惡趣を離る。能く十齋日において毎(つね)に一遍を転ぜば、現世に此居家をして諸横病無く、衣食豐溢ならしめん。是故に普廣よまさに知れ、地藏菩薩に如是等の不可説百千萬億大威神力利益之事あり。閻浮の衆生は此大士において大因縁あり。是の諸の衆生菩薩の名を聞き、菩薩像を見、乃至是經の三字五字或は一偈一句を聞かん者、現在殊妙安樂にして未來之世百千萬生、常に端正を得て尊貴の家に生ぜん。爾時、普廣
菩薩は佛如來の地藏菩薩を稱揚讃歎したまうを聞き已りて胡跪合掌して復た佛に白して言く、「世尊よ、我久しく是の大士に此の如き不可思議神力及大誓願力あるを知れり。未來の衆生に利益を知らしめんがための故に如來に問いたてまつる、唯然り頂受せん。世尊よ當に何んが此經を名くべき。我をして云何んが流布せしめん。」佛普廣に告げたまはく「此經に
三名あり。一を地藏本願と名く。亦地藏本行と名く。亦地藏本誓力經と名く。此菩薩は久遠劫より來た、大重願を発して衆生を利益するによる。是故に汝等、願に依って流布せよ」。普廣聞已りて合掌恭敬して作禮して退く。
(已上地藏菩薩本願經卷上)

地藏菩薩本願經卷下 利益存亡品第七(臨命終時には父母眷屬宜しく為に福を設けて以って死後の道をたすけ、或は旛蓋を懸け及び油燈を然やし、或は尊經を轉讀し或は佛像及諸聖像を供養し、乃至佛菩薩及辟支佛の名字を念じ、一名一號臨終の人の耳根にふれさせ、或は意識に届かせれば是の諸衆生所造の惡業は皆な銷滅す。若し能く更に爲に身死之後七七日内に廣く衆善を造らば、能く是の諸衆生の死後永く地獄等を離れしめ人天に生ずることを得、勝妙樂を受けしめ、残された眷屬も利益無量なるべし)

爾時地藏菩薩摩訶薩佛に白して言く、「世尊よ、我れ是の閻浮衆生を観ずるに擧心動念是れ罪にあらずということなし。もし善利を獲るも多く初心を退く。若し惡縁に遇えば念念増益す。是等の輩の人は泥塗を履んで重石を負うに漸く困しみ漸く重くして足歩深邃なるが如し。若し知識に遇うことを得ば替ってために負を減じ或は全く與(ため)に負う。是知識
大力あるが故に、復た相扶助し勸めて脚を牢かたからしむ。若し平地に達らば須く惡路を省みて再び經歴することなかるべし。世尊よ習惡の衆生は纖毫間よりすなわち無量に到る。是の諸衆生此の如く習あり。臨命終時には父母眷屬宜しく為に福を設けて以って前路をたすけ、或は旛蓋を懸け及び油燈を然やし、或は尊經を轉讀し或は佛像及諸聖像を供養し、乃至佛菩薩及辟支佛の名字を念じ、一名一號臨終の人の耳根にふれ、或は本識に聞在すれば是の諸衆生所造の惡業、其の感果を計るに必ず惡趣に墮すべきを、是の眷屬、臨終の人の為に此聖因を修するによりて、如是の衆罪悉く皆な銷滅す。若し能く更に爲に身死之後七七日内に廣く衆善を造らば、能く是の諸衆生をして永く惡趣を離れしめ人天に生ずることを得、勝妙樂を受けしめん。現在の眷屬も利益無量なるべし。是故に我れ今佛世尊及天龍八部人等に対して閻浮提の衆生に勸む、臨終之日に愼んで殺害及び惡縁を造り鬼神を拜祭し諸魍魎を求めることなかれ。何以故。そこばくの殺害乃至拜祭纖毫の力も亡人を利益することなく、但だ罪縁を結すること轉たまた深重なり。假使、來世或は現在の生、聖分を得て人天中に生ずるも、是の臨終に諸の眷屬、是の惡因を造ることを被むるによって亦た是の命終の人をして殃累對辯しておそく善處に生ぜしむ。何況んや臨命終の人在生に未だ曾って少善根もあらず各本業に據りて自ら惡趣を受くべし。何ぞ思わん眷屬更に爲に業を増さんとは。譬えば人有て遠地より來りて絶糧三日、負擔する所の物、おもきこと百斤に過ぎん、忽ち隣人に遇いて更に少物を付せられ是を以ての故に轉復た困重するが如し。世尊よ、我閻浮衆生を觀ずるに、但だ能く諸佛教中において乃至、善事一毛一渧一沙一塵もあらば如是の利益、悉く皆自得せん」。是の語を説く時、會中に一長者あり、名を大辯という。是長者、久しく無生を証して十方を化度するに長者の身を現ず。合掌恭敬して地藏菩薩に問うて言はく、「大士是南閻浮提衆生命終の後、小大の眷屬、爲に功徳を修し乃至齋を設けて衆善因を造るに、是命終の人大利益を得及び解脱するやいなや」地藏答言。「長者よ、我れ今未來現在一切衆生の為に佛の威力を承て略して是事を説かん。長者よ、未來現在諸衆生等、臨命終の日に、一佛名一菩薩名一辟支佛名を聞かんことを得ば、有罪無罪を問わず悉く解脱を得るべし。若し男子女人有りて、在生に善因を修せず多く衆罪を造らんに、命終之後、眷屬、小大爲めに福利一切の聖事を造らば七分之中而も乃ち一を獲ん。六分の功徳は生者自ら利せん。是を以ての故に未來現在善男女等よ聞け、健なるとき自ら修せば、分分に已に獲ん。無常大鬼は期せずして到る、冥冥たる遊神は未だ罪福を知らず。七七日の内は癡の如く聾の如し、或は諸司にありて業果を辯論し、 審かに之を定めて後、業に拠りて受生す。未だ測らざるの間は千萬の愁苦あり。何況んや諸惡趣等に墮せんんをや。是の命終の人は未だ受生を得ざる七七日
の内、念念之間に諸の骨肉の眷屬が與に福力を造りて救拔せんことを望む。是日を過ぎて後、業に随って報を受く。若し是れ罪人ならば動もすれば千百歳を経る中、解脱の日無し。若是れ五無間罪ならば大地獄に堕して千劫萬劫永く衆苦を受くべし。復次に長者よ、如是の罪
業衆生命終之後、眷屬骨肉爲に齋を修營し業道を資助せんに、未だ齋食竟らざるとき及び營齋の次に、米泔菜葉地に捨てず乃至諸食未だ佛僧い献ぜざるに先に食することなかれ。如
し違して食及び不精勤あれば、是の命終の人は了に不得力なり。如し精勤護淨して佛僧に奉獻せば、是の命終の人、七分獲一せん。是故に長者よ、閻浮の衆生若し能く其父母乃至眷屬の為に命終之後齋を設け、供養せよ、志心に勤懇すべし。如是の人は存亡獲利せん」。是語を説き給うとき、忉利天宮に有千萬億那由他閻浮鬼神ありて悉く無量菩提の心を発す。大辯長者作禮して退く。
地藏菩薩本願經卷下閻羅王衆讃歎品第八(人の生死を司る主命鬼王が「・・・世尊よ、一切衆生臨命終時に若し一佛名一菩薩名或は大乘經典一句一偈を聞くことを得ば、我れ如是の輩の人を観じて五無間殺害之罪を除いて、小小の惡業や惡趣に堕すべき者も尋いで即ち解脱せしめん。・・・」という)。爾時、鐵圍山内に無量の鬼王あり。閻羅天子と倶に忉利天に詣して佛所に到る。所謂惡毒鬼王・多惡鬼王・大諍鬼王・白虎鬼王・血虎鬼王・赤虎鬼王散殃鬼王・飛身鬼王・電光鬼王・狼牙鬼王・千眼鬼王・噉獸鬼王・負石鬼王・主耗鬼王・主禍鬼王・主食鬼王・主財鬼王・主畜鬼王・主禽鬼王・主獸鬼王・主魅鬼王・主産鬼王・主命鬼王・主疾鬼王・主險鬼王・三目鬼王・四目鬼王・五目鬼王・祁利失王・大祁利失王・祁利叉王・大祁利叉王・阿那吒王・大阿那吒王・如是等の大鬼王なり。各各百千の諸小鬼王と盡く閻浮提に居して、各々所執あり、各々所主あり。是の諸鬼王、閻羅天子とともに佛の威神及び地藏菩薩摩訶薩の力を承けてまさにこの忉利の大会に詣することを得て一面に在りて立つ。爾時、閻羅天子胡跪合掌して佛にもうして言さく、「世尊よ、我等今、諸鬼王と佛の威神及び地藏菩薩摩訶薩の力を承けて方に此の忉
利の大會に詣することを得たり。亦是我等善利を獲るが故なり。我今小疑の事あり。敢て世尊に問いたてまつる。唯願はくは世尊よ、慈悲宣説したまえ」。佛、閻羅天子に告げたまわく、「汝が所問を恣にせよ、吾れ汝が為に説かん」。是時閻羅天子、世尊を瞻禮し、及び地藏菩薩を迴視して佛にもうして言さく、「世尊よ、我れ地藏菩薩を観ずるに、六道中にいまして、百千の方便を以て而も罪苦衆生を度して疲倦を辭せず。是大菩薩に如是の不可思議神通之事あり。然るに諸の衆生、罪報を脱しうるも、久しからざる間又惡道に堕す。世尊よ。是地藏菩薩既は如是の不可思議神力あり。云何ぞ衆生をして不善道に依止して永く解脱をとらしめる。唯だ願はくは世尊よ我為に解説したまえ」。佛、閻羅天子に告げたまわく「南閻浮提衆生は其性剛彊難調難伏なり。是の大菩薩は百千劫において頭燃のごとく如是の衆生を救拔して早く解脱せしむ。是の罪報の人、乃至大惡趣に墮すれば菩薩方便力を以て根本業縁を拔出して而も宿世の事を悟らしめ、自から是の閻浮の衆生、結惡習重にして旋(やや)出ずれば旋(やや)入る。斯の菩薩の勞して久しく劫數を経て而も度脱を作す。譬えば人ありて本家を迷失して誤って險道に入り、其險道中に多くの諸夜叉及び虎狼師子蚖蛇蝮蠍多し。如是く迷人、險道中に在りて、須臾之間に即ち諸毒に遭う。一の知識多解大術なるありて善く是の毒乃び夜叉諸惡毒等を禁ず。忽ち迷人の險道に進まんと欲するに逢いて、而もこの道に入る、なんの異術ありてかよく諸毒を制せん。この道に迷う人、忽ち之の言を聞いて、まさに険道なることを知り即便ち退歩して此路を出んことを求む。是の善知識、提携接手して險道を引出して諸惡毒を免れ好道にいたり安樂を得せしむ。而も之に語いて言はく、『咄哉迷人、自今已後、是道を履むこと莫れ。此路に入る者は卒に出ずることを得がたく復た性命を損ず』と。是の路に迷える人、亦た感重を生ず。臨別之時、知識又言はく、『若し親知及び諸路の人、若しは男、若しは女を見ては、此路において諸の毒惡多く性命を喪失すと言うて、是の衆をして自ら其の死を取らしむること無かれ。是の故に地藏菩薩よ大慈悲を具して罪苦の衆生を救拔して天人の中に生じて妙樂を受けしめよ。是の諸の罪衆は業道の苦を知りて、脱得し出離して永く再歴せず。迷路の人、誤って險道に入り善知識に遇い、引接して出さしめ永く復た入らず、また他の人をあい見ても復た入ること莫れと勸む。自ら是によって迷の故を言って、解脱を得る。竟って更に復た入らざるが如し。若し再び履踐して猶尚ほ迷誤してむかし落る所の險道を覚らず、或は失命を致すは墮惡趣の如し。地藏菩薩方便力の故に解脱せしめて人天中に生じしむれども旋や又た再び入る。若し業結重ければ永く地獄に処して解脱の時なし。』爾時、惡毒鬼王合掌恭敬して佛に白して言さく、「世尊よ。我等諸鬼王は其數無量なり。閻浮提に在りて或は人を利益し或は人を損害し、各各不同なり。然れども是れ業報なり。我眷屬をして世界に遊行せしむるに惡多く善少なし。人の家庭、或は城邑・聚落・莊園・房舍を過ぐるに、或は男子女人ありて毛髮の善事を修し、乃至一旛
一蓋を懸け、少香少華をもって佛像及菩薩像を供養し、或は尊經を轉讀し、燒香して一句一偈を供養せんに、我等鬼王是人を敬禮すること過去現在未來諸佛の如し。諸の小鬼および各各大力及び土地分、有るに勅して便ち衞護せしめ、惡事・横事・惡病・横病乃至不如意事をして此の舍等の處に近ずかしめず、何に況んや門に入らしめんをや」。佛、鬼王を讃じていはく、「善哉善哉、汝等及び閻羅、能く如是に善男女等を擁護す、吾亦、梵王帝釋に告げて汝を衞護せしめん。」是の語を説く時、會中に一の鬼王あり、名ずけて主命という、佛に白して言さく、「世尊よ。我本業縁、閻浮の人命をつかさどる。生ずる時、死する時、我皆な之をつかさどる。我が本願にありては甚だ利益せんと欲すれども、自ら是の衆生は、我意を会せずして、生死をして倶に安きことを得ざらしめることを致す。何を以っての故に是の閻浮提の人、初生の時、男女を問わず、或は生ぜんと欲する時、但だ善事を作せば舍宅を増益して自ら土地をして無量に歡喜し子母を擁護して大安樂を得、眷属を利益せしむ。或は已に生下せば愼みて諸の鮮味を取りて産母に供え及び廣く眷屬を聚めて飮酒食肉歌樂絃管することなかれ。能く子母をして安樂を得ざらしむ。何以故。是の産難の時、無數の惡鬼及び魍魎・精魅ありて腥血を食と欲す。是れ我れ早く舍宅・土地の靈祇をして子母を荷護せしめ、安樂にして而も利益を得さしむ。如是の人、安樂を見るが故に、便ち福を設けて諸の土地に答うべきに、翻って殺害を為して眷屬を集聚す。是を以ての故に、犯殃(とが)自ら受
子母倶に損す。又た閻浮提の臨命終の人、善惡を問わず、我れ是の命終の人をして惡道に落ちざらしめんと欲す。何に況んや自ら善根を修せば我力を増すが故に。是の閻浮提行善の人すら臨命終時に、亦た百千惡道鬼神あり。或は變じて父母乃至諸眷屬となりて亡人を引接して惡道に落さしめんとす。何況んや、本と造惡の者をや。世尊よ、如是の閻浮提の男子女人臨命終時に神識惛昧して善惡を弁ぜず。乃至眼耳更に見聞なし。是の諸眷屬、當に須らく大供養を設て、尊經を轉讀し、佛菩薩名號を念ずべし。如是の善縁は能く亡者をして諸惡道を離れ、諸魔鬼神を悉く皆な退散せしむ。世尊よ、一切衆生臨命終時に若し一佛名一菩薩名或は大乘經典一句一偈を聞くことを得ば、我れ如是の輩の人を観じて五無間殺害之罪を除いて小小の惡業、惡趣に堕すべき者も尋いで即ち解脱せしめん。」佛、主命鬼王に告げたまはく、「汝大慈の故に能く如是の大願を発して生死の中において諸衆生を護る。若し未來世中に男子女人ありて生死に到る時、汝じ是の願を退することなかれ。總て解脱して永く安樂を得さしめよ。」鬼王佛に白して言さく、「願はくは慮なしたまうことなかれ。我れ  是の形を畢るまで念念に閻浮の衆生を擁護して生時死時倶に安樂を得さしめん。但だ願はくは諸衆生、生死の時において我語を信受せば解脱して大利益を獲ずということなからん。」爾時佛は地藏菩薩に告げたまはく、「是の大鬼王・主命は、曾って百千生を經おわって大鬼王と作り、生死の中において衆生を擁護す。是の大士、慈悲願の故に大鬼身を現ずといえども實は鬼に非ざる也。却後一百七十劫を過ぎて當に成佛することを得て號して無相如來という。劫を安樂と名け、世界を淨住と名く。佛の壽命、不可計劫なるべし。地藏よ、是大鬼王其事如是に不可思議なり。所度の天人亦た不可限量なり。

地藏菩薩本願經卷下 稱佛名號品第九(仏の名前を聞き念じると無量の功徳を生じる。臨命終時に他人が佛名稱念するだけでも無量の罪が消える。自ら称名し念ぜば獲福無量にして無量の罪を滅す。)爾時、地藏菩薩摩訶薩佛に白して言さく、「世尊よ。我今、未來衆生の為に利益の事を演べて、生死中に大利益を得さしめん。唯だ願はくは世尊、我れ之を説くことを聽したまえ。」佛、地藏菩薩に告げたまはく「汝今慈悲を興して一切罪苦六道衆生を救拔して不思議の事を演べんと欲す。今正に是時なり。唯だ當に速やかに説くべし。吾即ち涅槃して汝をして早く是願を畢らしめん。吾亦た現在未來一切衆生を憂うことなし。」地藏菩薩、佛に白して言さく、「世尊よ、過去無量阿僧祇劫に佛ありて出世したまう。無邊身如來と号す。若し男子女人ありて是の佛名を聞きて暫も恭敬を生ずれば即四十劫生死重罪を超越することを得。何況んや形像を塑畫・供養・讃歎せんをや。其人は福を獲ること無量無邊なり。又過去恒河沙劫において佛有て出世したまう、寶性如來と號す。若し男子女人有りて是の佛名を聞きて一彈指の頃も發心歸依すれば、是人無上道において永く退轉せず。又過去において佛有て出世したまう。波頭摩勝如來と号す。若し男子女人有りて是の佛名を聞いて耳根に歴れなば、是
人は當に千返六欲天中に生ずることを得べし。何に況んや志心稱念せんをや。又た過去不可説不可説阿僧祇劫において佛有て出世したまう。師子吼如來と号す。若し男子女人有りて是の佛名を聞きて一念も歸依せば、是の人は無量の諸佛に遇いて摩頂授記せらるることを得ん。又た過去において佛有て出世したまう。拘留孫佛と号す。若し男子女人有りて是の佛名を聞きて志心瞻禮し、或は復た讃歎せば是人は賢劫千佛會中に於いて大梵王となり上記を授けられることを得ん。又た過去において佛有て出世したまう。毘婆尸と号す。若し男
子女人有りて、是の佛名を聞けば永く悪道に墮せず。常に人天に生じて勝妙樂を受く。又た過去無量無數恒河沙劫において佛ありて出世したまう。寶勝如來と号す。若し男子女人有りて、是の佛名を聞けば畢竟悪道に堕せず常に天上にありて勝妙樂を受けん。又た過去において佛有り出世したまう。寶相如來と號す。若し男子女人有りて是の佛名を聞きて恭敬心を生ぜば是の人、久しからずして阿羅漢果を得る。又た過去無量阿僧祇劫において佛有りて出
世したまう。袈裟幢如來と号す。若し男子女人有りて是の佛名を聞く者は一百大劫生死之罪を超えん。又た過去において佛ありて出世したまう。大通山王如來と号す。若し男子女人有りて是の佛の名を聞く者は是人恒河沙佛の廣く爲に説法し給うに遇い必ず菩提を成ずることを得ん。又た過去において淨月佛・山王佛・智勝佛・淨名王佛・智成就佛・無上佛・妙聲佛・
滿月佛・月面佛あり。如是等の不可説の佛あり。世尊よ、現在未來一切の衆生、若しは天、若しは人、若しは男若女、但だ一佛の名號を念じ得るも功徳無量なり。何況んや多名をや。是の衆生等は生時・死時に自ら大利を得て終に惡道に堕せず。若し臨命終の人有らんに、家中眷屬乃至一人是の病人の為に高聲に一佛名を念ぜば、是の命終の人は五無間罪を除いて餘の業報等は悉く銷滅することを得ん。是の五無間罪は至って極重にして動もすれば億
劫を経て了に出ることを得ずといえども、斯の臨命終時に他人、其が為に佛名稱念するをうけて是の罪中においても亦漸く銷滅す。何に況んや衆生自ら稱し自ら念ぜば獲福無量にして無量の罪を滅す。

地藏菩薩本願經卷下 校量布施功徳縁品第十(善行の種類に随って福の受け方も千差万別であるが、その功徳を他者に廻向することで何倍にもなる)爾時、地藏菩薩摩訶薩は、佛の威神をうけて座より起って胡跪合掌して佛に白して言さく、「世尊よ、我れ業道の衆生を観じて布施を校量するに輕あり重あり。一生に福を得るあり、十生に福を得るあり、百生千生に大福利を得る者あり。是事云何。唯願はくは世尊よ、我為に之を説け。」爾時、佛、地藏菩薩に告げたまはく「吾れ今忉利天宮一切衆會において、閻浮提の布施を説いて功徳の輕重を校量せん。汝當に諦聽すべし。吾汝が為に説かん」。地藏
佛に白して言さく、「我是事を疑う、願樂して聞かんと欲す」。佛、地藏菩薩に告げたまわく「南閻浮提に諸國王・宰輔・大臣・大長者・大刹利・大婆羅門等あり。若しは、最下貧窮乃至癃殘・瘖瘂・聾癡・無目、如是の種種の不完具者に遇えば是大國王等布施せんと欲する時。若し能く大慈悲を具して心をくだして含笑し、手ずから遍く布施し、或は人をして施さしめ軟言をもって慰喩せば、是國王等の所獲福利は百恒河沙の佛に布施せる功徳の利なるが如し。何以故。是の國王等、是の最貧賤輩及び不完具者において大慈心を発するによる。是故に福利此の如くの報あり。百千生中に常に七寶具足することを得る。何況んや衣食受用をや。復た次に地藏よ、若し未來世に諸國王より婆羅門にいたる等ありて佛の塔寺、或は佛の形像乃至菩薩・聲聞・辟支佛像に遇いて、自ら營辦・供養・布施せば、是の國王等は當に三劫に帝釋身となって勝妙樂を受けん。若し能く此の布施の福利を以て法界に迴向せば是の大國王等は十劫中において常に大梵天王と為らん。復次に地藏よ、若し未來世に諸國王乃至婆羅
門等有りて先佛の塔廟より或は經像にいたるまで毀壞破落せるに遇いて、乃ち
能く發心修補し、是の國王等或は自ら或は他人に勧めて營辦し乃至百千人等をすすめて布施結縁せしむれば、是の國王等は百千生中に常に轉輪王身とならん。如是の他人の同じく布施者の百千生中に常に小國王身とならん。更に能く塔廟前において迴向心を発せば如是の國王乃及諸人盡く佛道を成ぜん。此の果報は無量無邊なるを以ての故也。復次に地藏よ、未來世中に諸國王及婆羅門等有りて、諸老病及び生産の婦女を見て若し一念の間も大慈心を具し醫藥飮食臥具を布施して安樂ならしめん。如是の福利は最も不思議なり。一百劫中に常に淨居天主となり、二百劫中に常に六欲天主となり、畢竟して成佛し永く惡道に堕せず。乃至百千生中に耳に苦聲を聞かざらん。復た次に地藏よ、若し未來世中に諸國王及婆羅門等有りて能く如是に布施をなせば獲福無量ならん。多少を問わず更に能く迴向せば畢竟成佛せん。何に況んや釋梵轉輪の報をや。是の故に地藏よ、普く衆生を勧めて當に如是に學ばしむべし。復次に地藏よ、未來世中に若し善男子善女人佛法中いおいて少善根毛髮沙塵等許を植んに所受の福利は喩をなすべからず。復次に地藏よ、未來世中に若し善男子善女人有りて佛形像・菩薩形像・辟支佛形像・轉輪王形像に遇いて、布施供養せば無量の福を得、常に人天にありて勝妙樂を受けん。若し能く法界に迴向せば是人の福利は喩をなすべからず。復次に地藏よ、未來世中に若し善男子善女人有りて大乘經典に遇いて或は一偈一句を聽聞して殷重心を発して讃歎恭敬布施供養せば、是人、大果報を獲ること無量無邊ならん。若し能く法界に迴向せば其福喩うべからず。復次に地藏よ、若し未來世中に善男子善女人有りて佛塔寺大乘經典新者に遇い布施供養瞻禮讃歎恭敬合掌し、若しくは故者(ふるきもの)或は毀壞の者に遇い修補營理し、或は獨り發心し、或は多人に勧めて同共に發心せん、如是等の輩は三十生中に常に諸小國王檀越の人となり常に輪王となりて還って善法を以て諸小國王を教化せん。復次に地藏よ、未來世中に若し善男子善女人有て、佛法中において種える所の善根、或は布施供養、或は塔寺修補、或は裝理経典、乃至一毛一塵一沙一渧、如是の善事但だ能く法界に迴向せば、是の人の功徳、百千生中に上妙樂を受けん。如但し自家眷屬或は自身の利益に廻向せば如是の果は即ち三生に樂を受けん。一を捨て萬報を得べし。是故に地藏よ、布施の因縁其事如是なり。

地藏菩薩本願經卷下地神護法品第十一(土地の守護神たる堅牢地神が衆生を見て「地藏形像を作し、燒香供養する人は、一、土地豐壤。二、家宅永安。三、先亡生天。四、現存益壽。五、所求遂意。六無水火災。七虚耗辟除。八杜絶惡夢。九出入神護。十多遇聖因。の功徳を受けている」という)爾時、堅牢地神は佛に白して言さく、「世尊よ、我昔より來た、無量の菩薩摩訶薩を瞻視頂禮するに皆是大不可思議神通智慧ありて廣く衆生を度す。是の地藏菩薩摩訶薩は諸の菩薩よりも誓願深重なり。世尊よ、是の地藏菩薩は閻浮提において大因縁あり。文殊・普賢・觀音・彌勒の如きも亦た百千の身形を化して六道を度すれども、其願尚ほ畢竟あり。是の地藏菩薩は六道衆生を教化し發する所の誓願は劫數千百億恒河沙の如し。世尊よ、我れ未來及現在の衆生を観ずるに所住の處において南方清潔の地に於いて土石竹木を以て其の龕室を作し、是中に能く塑畫乃至金銀銅鐵をもって地藏形像を作し、燒香供養瞻禮讃歎せん。是人の居處即ち十種の利益を得ん。何等をか十となす。一は土地豐壤。二は家宅永安。三は先亡生天。四は現存益壽。五は所求遂意。六は無水火災。七は虚耗辟除。八者杜絶惡夢。九は出入神護。十は多遇聖因。世尊よ、未來世中。若し善男子善女人有りて所住の處において此經典及菩薩像ありて、是人更に能く經典を轉讀し菩薩を供養せば、我常に日夜に本神
力を以てこの人を衞護し乃至水火盜賊大横小横一切惡事悉皆銷滅せしめん」。佛、堅牢地神に告げたまはく、「汝の大神力は諸神の及ぶこと少なり。何以故。閻浮の土地は悉く汝の護を蒙るり、乃至草木沙石稻麻竹葦穀米寶貝、地より有るは皆汝の力による。又當に地藏菩薩利益の事を稱揚すべし。汝の功徳及び神通は常分の地神に百千倍ならん。若し未來世中に善男子善女人有りて供養菩薩及び轉讀是經し、但し地藏本願經の一事によりて修行せん者、
汝、本神力を以て之を擁護し一切災害及び不如意事をたやすく耳に聞かしむることなかれ。何にいわんや受けしむるをや。但し汝じ獨り是の人を護るにあらず。亦た釋梵眷屬諸天眷屬もこの人を擁護す。何故に如是に聖賢の擁護をうるや。皆地藏形像を瞻禮し及び是本願經を轉讀するが故に自然に畢竟じて苦海を出離して涅槃楽を證す、是を以ての故に大擁護を得る。
地藏菩薩本願經卷下 見聞利益品第十二(地藏菩薩の名字を聞き 瞻禮せん者、香華衣服飮食を奉り、 供養する者は百千の妙樂を受ける。例えば21日間一心に地藏形像を瞻禮し、其の名字を念じて萬遍に満てば、地蔵菩薩が是人に眷屬の来世を告げてくださる。・・・地蔵菩薩供養の功徳を他者に廻向すれば生死を超える)爾時、世尊は頂門上より百千萬億大毫相光を放ちたまう。所謂白毫相光・大白毫相光・瑞毫相光・大瑞毫相光・玉毫相光・大玉毫相光・紫毫相光・大紫毫相光・青毫相光・大青毫相光・碧毫相光・大碧毫相光・紅毫相光・大紅毫相光・縁毫相光・大縁毫相光・金毫相光・大金毫相光・慶雲
毫相光・大慶雲毫相光・千輪毫光・大千輪毫光・寶輪毫光・大寶輪毫光・日輪毫光・大日輪毫光・月輪毫光・大月輪毫光・宮殿毫光・大宮殿毫光・海雲毫光・大海雲毫光なり。頂門上において如是等の毫相光を放ち已って、微妙音を出して諸大衆・天龍八部・人等に告げつたまわく、「吾れ今日、忉利天宮において、地藏菩薩の人天中において利益等事・不思議事・聖因を超える事・十地を証する事・畢竟阿耨多羅三藐三菩提を退せざる事を稱揚讃歎するを聴け」。是の語を説きたまう時、會中に一菩薩摩訶薩あり。觀世音と名く。從座而起、胡跪合掌して佛に白して言さく、「世尊よ、是の地藏菩薩摩訶薩は、大慈悲を具して罪苦の衆生を憐愍し、千萬億世界において千萬億身に化す、所有功徳及び不思議威神之力は、世尊與十方無量諸佛が異口同音に地藏菩薩を讃歎して云い、たとえ、過去現在未來諸佛、其の功徳を説くとも猶お盡すことあたわず、というを聞けり。向者、又世尊あまねく大衆に告げたまわく、地藏利益等事を稱揚せんと欲す。唯願はくは世尊、現在未來一切衆生の為に、地藏不思議事を稱揚して天龍八部をして瞻禮獲福せしまたまえ」。佛、觀世音菩薩に告げたまはく、「汝於娑婆世界に大因縁有り、若しは天、若しは龍、若しは男、若しは女、若しは神、若しは鬼
乃至六道罪苦の衆生、汝の名を聞かん者・汝の形を見ん者・汝を戀慕する者・汝を讃歎する者、是の諸衆生は無上道において必ず退轉せず、常に人天に生じて具さに妙樂を受けん。因果將に熟せんとして佛の授記に遇ん。汝今大慈悲を具して衆生及び天龍八部を憐愍す。吾れ地藏菩薩、不思議利益之事を宣説するを聽んとす。汝當に諦聽せよ、吾今之を説かん。觀世音いはく、「唯然り世尊よ、願樂して聞かんと欲す」。佛、觀世音菩薩に告げたまはく、「未來現在諸世界中に、あらゆる天人、天福を受けること盡きて、五衰相現ずるあり。或は惡道に堕する者あり、如是の天人若しくは男若女、當に現相の時に或は地藏菩薩形像の形相を見、或は地藏菩薩名を聞き、一瞻一禮せんに是の諸の天人は轉た天福を増して大快楽を受け永く三惡道の報に堕せず。何況んや菩薩を見聞して諸の香華衣服飮食寶貝瓔珞を以て布施供養せば獲る所の功徳福利は無量無邊ならん。復次に觀世音よ、若し未來現在諸世界中に六道衆生が臨命終時に地藏菩薩名を聞くことを得て一聲が耳根に歴れば、是の諸衆生は永く不三惡道苦を歴ず。何況んや臨命終時に父母眷屬が將に是の命終人の舍宅財物寶貝衣服をもって地藏の形像を塑畫し、或は病人未だ終らざる時に眼耳に見聞せしめ、眷屬將に舍宅寶貝等を以て其自身の為に地藏菩薩形像を塑畫すということを知らしめれば、是の人、若し是れ業報にして重病を受くべき者も、斯の功徳をうけて尋即で除愈し、壽命増益ならん。是人若是れ業報にして命盡せば應に一切罪障業障ありて墮惡趣の者も、斯の功徳を承けて命終之後即ち人天に生じ勝妙樂を受け一切罪障悉く皆な銷滅せん。復次に觀世音菩薩よ、若し未來世に男子女人有りて、或は乳哺の時、或は三歳五歳十歳已下に、父母を亡失し乃及、兄弟姊妹を亡失せんに、是人年既に長大にして父母及諸眷屬を思憶せんに何趣に落在せしや、何世界に生じ何天中に生じたるかを知らず。是人、若し能く地藏菩薩形像塑畫し、乃至聞名して一瞻一禮すること一日より七日に至り初心を退することなく、聞名し、形を見、瞻禮供養せば、是人の眷屬は假に因業の故に墮惡趣の者を計に當に劫數なるも、この男女兄弟姊妹、地藏形像を塑畫して瞻禮する功徳をもって尋で即ち解脱し人天中に生じて勝妙樂を受ける者も即ち斯の功徳を承けて轉た聖因を増し、無量の樂を受けん。是人更に能く三七日中一心に地藏形像を瞻禮し、其の名字を念じて萬遍に満てば、當に菩薩が無邊身を現じて具に是人に眷屬の生界を告げん。或は夢中において、菩薩が大神力を現じて親しく是人を領して諸の世界において諸の眷屬を見せん。更に能く毎日菩薩名を千遍ずつ念じて千日に到らば、是人にたいし當に菩薩は所在土地の鬼神を遣わして終身衞護し、現世に衣食豐溢無諸疾苦乃至其門に横事不入あらしめん。何況んや身に及ばんをや。是人畢竟じて菩薩の摩頂授記を得ん。復次に觀世音菩薩よ、若し未來世に善男子善女人有りて、廣大慈心を発して一切衆生を救護せんと欲せん者、無上菩提を修せんと欲せん者、三界を出離せんと欲せん者、是の諸人
等、地藏形像を見、及び聞名する者、至心に歸依し或は香華衣服寶貝飮食を以て供養瞻禮せば、是善男女等は所願速成し永無障礙ならん。復次に觀世音よ、若し未來世に善男子善女人有りて現在未來に百千萬億等の願、百千萬億等の事を求めんと欲せば但し當に地藏菩薩形像を歸依瞻禮供養讃歎すべし。如是所願所求悉く皆成就せん。復た地藏菩薩に大慈悲を具して永く我を擁護せんことを願はば、是人の睡夢中において即ち菩薩の摩頂授記を得ん。復次に觀世音菩薩よ、若し未來世善男子善女人、大乘經典において深く珍重を生じ不思議の心を発し、讀んと欲し、誦んと欲し、縱ひ明師の教視して熟せしむるに遇えども旋もすれば旋や忘れ動もすれば年月を経て讀誦すること能わず。是の善男子等宿業障有りて未だ銷除するを得ざるが故に大乘經典において讀誦の性なし。如是の人、地藏菩薩名を聞き、見地藏菩薩像を見、具さに本心を以て恭敬陳白し、更に香華衣服飮食一切玩具を以て菩薩を供養し、
淨水一盞を以て一日一夜を経て菩薩の前におき、然る後に合掌請服し、首を廻らして南に向き口に入れる時に臨んで至心鄭重なるべし。服水既に畢りて、五辛酒肉邪婬妄語及諸殺害を慎むこと一七日或三七日、是善男子善女人は睡夢中に具さに地藏菩薩が無邊の身を現じて是人において灌頂水を授けたまうを見ん。其人夢覺めて即ち聰明を獲ん。應に是の經典を、一たび耳根に歴れば即ち當に永く記して更に一句一偈をも亡失せざるべし。復次に觀世音菩薩よ、若し未來世に諸人等有りて衣食足らず求者は願いに乖き、或は病疾多く、或は凶衰多くして、家宅安からず眷屬分散し、或は諸横事多く來りて身に忤(さか)え、睡夢の間に多く驚怖有り、如是の人等、地藏名を聞き、地藏形見、至心に恭敬し念すること萬遍に満てば、是の諸の不如意事は漸漸に消滅し、即ち安樂を得、衣食豐溢乃至睡夢中においても悉く皆な安樂ならん。復次に觀世音菩薩よ、若し未來世に善男子善女人有りて、或は治生により、或は公私により、或は生死により、或は急事により、山林中に入り、河海乃及び大水を過渡し、或は險道を経んに、是人先ず當に地藏菩薩名を念ずること萬遍すべし。所過の土地の鬼神は衞護して行住坐臥永く安樂を保たん。乃至虎狼師子一切毒害に逢うも之を損ずること能わず。佛、觀世音菩薩に告げたまはく、「是の地藏菩薩は閻浮提において大因縁あり、若し諸衆生、見聞利益等の事を説けども、百千劫中に説き尽くすこと能わず。是の故に觀世音よ、汝、神力を以てこの経を流布し、娑婆世界の衆生をして百千萬劫永く安樂を受けしめよ。
爾時、世尊偈を説いて言はく、
吾地藏威神力を観ずるに 恒河沙劫も説き尽くすこと難し。
見聞瞻禮すること一念の間も人天を利益する無量の事あり。
若しは男、若しは女、若しは龍神、 報盡きて應當に惡道に堕すべきも
至心に大士身に歸依せば 壽命轉増して罪障を除く。
少(わかく)して父母の恩愛を失う者の 未だ魂神の何趣に在るやを知らず
兄弟姊妹及諸親 生長以來皆な識らざるも
大士身を或は塑、或は畫し、悲戀瞻禮して暫くも捨てず、
三七日中其名を念ぜば 菩薩當に無邊の體を現じて
其の眷屬所生界を示すべし、 縱ひ惡趣に堕するも尋で出離せん。
若し能く是の初心を退せずんば 即ちを聖記を摩頂受するを獲ん。
無上菩提を修せんと欲する者 乃至、三界苦を出離せんとならば
是人、既に大悲心を発し 先ず當に大士像を瞻禮すべし
一切の諸願速に成就し、 永く業障の能く遮止するなからん
人有り、發心して經典を念じ 欲群迷を度して彼岸に超えしめんと欲す
是の不思議願を立つといえども 旋やや讀めば旋やや忘れて廢失多し、
斯の人、業障の惑あるが故に大乘經において記すること能わず。
地藏菩薩を供養するに香華衣服飮食諸玩具を以てし、
  淨水を以て大士の前に安おくこと 一日一夜にして、
  之を求めて服し、 殷重心を発して五辛酒肉邪淫及妄語を慎み
三七日の内殺害するいことなく 至心に大士の名を思念せば
即ち夢中において無邊を見ん。 覺め來りて便ち利根の耳を得て
應に是の經教が耳聞に歴れば 千萬生中に永く不忘なり
是の大士の不思議を以て 能く斯の人をして此の慧を獲せしむ。
貧窮衆生及び疾病 家宅凶衰して眷屬に離れ、
睡夢之中悉く不安 求むる者は乖違そむいて稱ひ遂ぐること無きにも
至心に地藏像せば瞻禮 一切の惡事皆消滅して
夢中に至るまで盡く安きを得ん、 衣食豐饒神にして神鬼に護らる
山林に入り及び渡海せんと欲して 毒惡の禽獸及び惡人惡神惡鬼并惡
  一切諸難諸苦惱あらんに、但し當に地藏菩薩大士像を瞻禮及供養すべし。
如是の山林大海中 應に是の諸惡皆消滅すべし
觀音よ至心に吾れ地藏無盡不思議を百千萬劫に説くとも周ねからず。 廣く大士の如是の  力を宣べん。 
  地藏菩薩の名字を人若しは聞き 乃至像を見て瞻禮せん者、
香華衣服飮食を奉り、 供養せば百千の妙樂を受けん。
若し能く此を以て法界に迴法せば 畢竟して成佛し生死を超えん。
是故に觀世音よ汝じ當に知るべし 普く恒沙諸國土に告げんことを。

地藏菩薩本願經卷下 囑累人天品第十三(地蔵菩薩の二十八種の利益は、一者天龍護念。二者善果日増。三者聖上の因を集め。四者菩提不退。五者衣食豐足。六者疾疫不臨。七者離水火災。八者無盜賊厄。九者人見欽敬。十者神鬼助持。十一者女轉男身。十二者爲王臣女。十三者端正相好。十四者多く天上に生まれる。十五者或は帝王となる。十六者宿命通を得。十七者有求皆從。十八者眷屬歡樂。十九者諸横銷滅。二十者業道永除。二十一者去處盡通(いかなるところもことごとくつうじ)。二十二者夜夢安樂。二十三者先亡離苦。二十四者宿福受生。二十五者諸聖讃歎。二十六者聰明利根。二十七者慈愍心饒(ゆたか)。二十八者畢竟成佛

爾時、世尊、金色の臂を挙げ、又地藏菩薩摩訶薩の頂を摩して是言を作したまはく、「地藏、地藏、汝の神力は不可思議なり。汝の慈悲は不可思議なり。汝の智慧は不可思議なり。
汝の辯才は不可思議なり。たとへ十方諸佛にして汝の不思議事を讃歎宣説せんに千萬劫中においてもよく尽くすことあたわず。地藏、地藏、記せよ、吾れ今日、忉利天中にいまして、百千萬億不可説不可説の一切諸佛菩薩天龍八部大會の中において、再び人・天・諸の衆生等の未だ三界を出ずして火宅中に在る者を、汝に付囑す。是の諸衆生をして一日一夜なりとも惡趣中に堕さしむること莫れ。何に況んや更に五無間及び阿鼻地獄に落ちややもすれば千萬億劫を経も出期あることなけんをや。地藏、是の南閻浮提の衆生は志性定まることなく悪を習う者のみ多し、縱へ善心を発しぬるとも須臾にして即ち退す。若し惡縁に遇ひなば念念に増長す。是の故に吾、是の形を分つこと百千億にして化度し、其根性に随って度脱せん。地藏、吾今、殷勤に天人衆を汝に付囑す。未來之世、若し天人及善男子善女人有りて、佛法中に少しも善根を植んに、一毛一塵一沙一渧ならんも、汝は道力を以て是人を擁護し、漸く無上道を修して退失せしむる勿れ。復次に地藏よ、未來世中に若しは天、若しは人、業に隨って報に応じて惡趣に落ち、悪趣の中におもむき、或は門首(かど)に至らん時に、是の諸衆生のために、若し能く一佛名・一菩薩名・一句一偈の大乘經典をも念じ得ば、是の諸衆生、汝の神力を以て方便救拔し、是人の所にして無邊の身を現じ地獄を砕き、生天せしめ、勝妙の樂を受けしめん。爾時、世尊、偈を説きて言はく、
現在未來の天人衆を 吾今殷勤に汝に付囑す。
大神通を以て方便して度せよ。 諸惡趣に墮在せしむることなかれ。
爾時、地藏菩薩摩訶薩、胡跪合掌して佛に白して言さく、「世尊よ、唯願はくは世尊、慮を為したまはざれ。未來世中に若し善男子善女人有りて、佛法中に一念をも恭敬せば、我も亦た百千の方便をもて是人を度脱し、生死中において速に解脱することを得しめん。何況んや、諸善事を聞き念念修行せんをや。自然にして無上道より永く退転せざらん。是語を説きたまう時、會中に一菩薩有り、虚空藏と名く。佛に白して言さく、「世尊。我自ら忉利に至り如來の地藏菩薩威神勢力不可思議を讃歎したまふを聞ぬ。未來世中、若し善男子善女人のみならず一切天龍に及ぶまで、此經典及び地藏の名字を聞き、或は形像を瞻禮せんに、幾種の福利を得るや。唯願はくは世尊、未來現在一切衆等の為に略而して之を説きたまへ」。佛、虚空藏菩薩に告げたまはく、「諦聽諦聽、吾汝が為に分別して之を説かん。若し未來世に善男子善女人有りて、地藏の形像を見、及び此經を聞き乃至、讀誦香華飮食衣服珍寶布施供養讃歎瞻禮せんに、二十八種の利益を得ん。一者天龍護念。二者善果日増。三者聖上の因を集め。四者菩提不退。五者衣食豐足。六者疾疫不臨。七者離水火災。八者無盜賊厄。九者人見欽敬。十者神鬼助持。十一者女轉男身。十二者爲王臣女。十三者端正相好。十四者多く天上に生まれる。十五者或は帝王となる。十六者宿命通を得。十七者有求皆從。十八者眷屬歡樂。十九者諸横銷滅。二十者業道永除。二十一者去處盡通(いかなるところもことごとくつうじ)。二十二者夜夢安樂。二十三者先亡離苦。二十四者宿福受生。二十五者諸聖讃歎。二十六者聰明利根。二十七者慈愍心饒(ゆたか)。二十八者畢竟成佛。復次に虚空藏菩薩、若現在未來天龍鬼神、地藏名を聞き地藏の形を礼し、或は地藏の本願事行を聞き、讃歎瞻禮せんに、七種利益を得るべし。一者速超聖地。二者惡業銷滅。三者諸佛護臨。四者菩提不退。五者本力を増長。六者宿命皆通。七者畢竟成佛。
爾時十方一切の諸方より來れる、不可説不可説諸佛如來及び大菩薩天龍八部は、釋迦牟尼佛の地藏菩薩大威神力不可思議を稱揚讃歎したまうを聞き、未曾有なりと歎へり。是時、忉利天は無量の香華天衣珠瓔を雨ふらし、釋迦牟尼佛及地藏菩薩を供養したてまつり、一切衆會は倶に復、瞻禮合掌して退しき。

地藏菩薩本願經卷下終り
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