福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

真言宗義章・第十四 発心識体章

2022-02-05 | 諸経

第十四 発心識体章

(菩提心を心のどの部分で起こすかというと,密教の行者は心の最も深い第八阿頼耶識で菩提心を起こすのである)

次に発菩提心の識体を知第十三 発菩提心章

(覚りを求めるならば先ず菩提心を起こさなければならない。つまり、凡聖不二と信じ自分も必ず三密行を修行して無上菩提を得よう、と願う心がなければならない。)

凡そ無上菩提を成ぜんと思はば先ず菩提心を発すべし。菩提心とは万行の根本、成仏の正因なり。大日経には「菩提心以因」(大毘盧遮那成佛神變加持經卷第一入眞言門住心品第一「佛言菩提心爲因悲爲根本方便爲究竟祕密主云何菩提謂如實知自心」)と説き、金剛頂経には「成仏の正因、智慧の根本」(金剛頂瑜伽中略出念誦經巻三に「菩提心者。從大悲起。爲成佛正因智慧根本。能破無明業報。能摧破魔怨。」)と説き、疏主三蔵(大日経疏の著者善無畏三蔵)は「この心は猶し憧旗の如し,是衆行の導首なり、猶し種子の如し、是万行の根本なり」(大毘盧遮那成仏神変経疏巻三「次明阿闍梨衆徳。經云應發菩提心者。謂生決定誓願。一向志求一切智智。必當普度法界衆生。此心猶如幢旗。是衆行導首。猶如種子。是萬徳根本。若不發此心」)と釈し給うへり。若し能くこの心をおこす者は修行成じやすく、成仏遠からず。若しこの心を発せざる者は修行成ぜず、成仏はなほ遥かまり。大事の因縁これに過ぎたるはまし。

菩提心といふは白浄信心なり。又は決定誓願と名つ゛く。法身如来の凡聖不二の理を信ずといふはこれ信心なり。次に偏に無上菩提を成ぜんと願ふといふは是誓願なり。信ずるが故に誓願し、信ぜざれば誓願せず。故に信心は体(本質)にして誓願は用(作用)なりと知るべし。

信心とはこれに三重あり。

一には一切衆生色心の実相は常にこれ毘盧遮那如来の体性にして衆生と佛は平等平等なりと諦信決定するなり。

二には吾等衆生本来成仏すれども無始以来無明煩悩に依りて覆はるるがゆえに自ら覚悟する能わず、種々の業をつくりて生死の苦を受く。若し如来の教法に依りて説の如く精通して修すれば頓悟涅槃すべし、と諦信決定する是なり。是即ち法身如来の所説に隋順して迷悟の因果を信ずるなり。

三には三密の妙行は法身内証の境界にして当覚十地も見聞すること能わず。如来加持力を以て衆生の為に開示したまふ。是を名つ゛けて頓悟成仏神通乗といふ。究竟成仏の妙道これを措きて他を求むるべからず。我等宿殖善根力に依るがゆえに今、幸いにこの妙道に逢うことを得たり。若し如説に修行する時は、如来の三密に加持せらるるがゆえに無明忽ちに明となり、一念の頃に無上覚を成ずることを得べしと諦信決定するこれなり。是即ち法身如来の所説に隋順して三密の妙行を信ずるなり。是を三重とす。義相は三重なれども総じてこれをいはば凡聖不二の理を信ずるほかなし。この如く諦信決定するとき自ら誓願の心を生じて我れ必ず三密の妙行を修行して色心の実相を証悟し無上菩提を成ぜんと願ふ。之を三摩地の菩提心といふなり。一切の行者必ずこの心を発すべし。是成仏の因なり。

 

るべし。顕教の行者は第六識(第一眼識・第二耳識・第三鼻識・第四舌識・第五身識・第六意識・第七末那識・第八阿頼耶識のうちの第六意識)によりて発心修行するものなり。真言の教法は甚深微細なるがゆえに第六識の智解の及ぶところに非ず。必ず第八識微細分別の力に依る。この故に苟も真言の教法に値遇し深細の教理を縁じて発心する者は其の正機と結縁とを問わず皆悉く第八識(阿頼耶識)に依るなり。故に不空三蔵の曰はく「夫れ修行者の初発の信心は以て菩提心即ち大円鏡智紇哩娜野心(ちりだやしん)と表す。(不空の金剛頂瑜伽略述三十七尊心要に「爾時毘盧遮那如來。於須彌盧金剛摩尼寶峯樓閣。至已。金剛界如來。以一切如來加持。於一切如來獅子座。一切面安立。時大菩提心不動如來。大福徳聚寶生如來。三摩地妙法藏觀自在王如來。毘首羯磨成就一切事業不空成就如來。一切如來加持自身。婆伽梵釋迦牟尼如來。一切平等善通達故。一切方平等。觀察四方而坐夫修行者初發信心。以表菩提心。即大圓鏡智紇哩娜野心。」とあり)。また龍猛菩薩の菩提心論には真言行者の菩提心を無時暫忘(金剛頂瑜伽中發阿耨多羅三藐三菩提心論に「諸仏菩薩昔因地にいましてこの心を発しおわって勝儀行願三摩地を戒と為す、乃し成仏に至るまで時として暫くも忘るること無し」とあり)と釈したまへる等、みな是第八識発心の誠証なり。等しく第八識によると雖も正機の発心は深く、結縁の発心は浅し。これその成仏に一生・隔生の不同ある所以なり。但し結縁機浅略の発心(真言行者にはすぐれた機根の「正機」の行者と、劣った機根の「結縁」の行者あり)も彼の顕教第六発心(顕教の行者は第六意識で発心する)の人に望むるときは機根甚だ深くして功徳はるかに勝ること同日の談に非ず。況や正機の発心をや。

 

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