初めてのお客さんと飲みに行った。
若い女性だ。
いきなり
彼女と意気投合した。
かなり変わった女(ひと)らしい。
でなければ
そんなことにはまずならない。
「久しぶり
いい男と出会えたわ」
と
お世辞とも本気とも取れる言葉をさらりとはく。
まんざらでもない。
例え嘘でも
気分はイイ。
男をいい気にさせる術(すべ)を
よく心得ている女(ひと)だ。
ボクにとって
初めて会った日に
女と寝ることは
そんなに
珍しいことではない。
カラオケになると
彼女はボクにまとわりついてきた。
「こんなにいちゃついて
いいのかしら」
とタバコをくゆらせながら
時折
ボクの顔に煙をフーッと吹き付ける。
そんな仕草が
ボクの気を高ぶらせる。
他の客の目も気にしない
よくある素振りに、
どことなく
計算された意図が感じられる。
だが
歌いながら
ミニスカートの奥に手を滑らせようとすると
さすがに
身をよじった。
キスすらさせてくれない。
彼女に
紹介されたお客と同席していたこともあろう。
ナント
同席の客は
今日の一人営業会議で
ターゲットにしようと思った
会社の社員だった。
そして
愛人と同伴の
韓国の某フィクサー。
二人とも
流暢な日本語を話した。
そして
日本の演歌を
上手に歌った。
メーカーの接待を受ける
怪しげな韓国人。
双方とも
昼間
思い浮かべていた人物だった。
何という偶然だろう。
そして
何という
妖艶な雰囲気だろう。
またもや
夜に人脈を得ることになろうとは。
しかも
彼女を抱きながら。
どんなに酔っても
頭は冴えている。
営業マンという
自分の立場を忘れたことは
ほとんどない。
根っからの
商社マンとしては
至極当然ことだ。
「帰ろ」
という彼女の一言で
ボクは
席を立った。
瞬時に
つぎの展開をどうすべきか
期待と
懐疑の思考が錯綜した。
だが
寸前のところで
彼女は
踵を返し
ボクについて来なかった。
トコトンその気にさせて
あっさりと期待を裏切る。
変わり者の女としては
当然の帰結かもしれない。
こうしたパターンには
慣れていたつもりだったが
がっかりする気持ちと同時に
正直
ホッとした。
このまま
寄り添われては
行きつく先は
分かっている。
その点
彼女も賢明な判断をしたのだろう。
知人のお客の手前もあったのかもしれない。
ボクは
中途半端に熱くなった身を持て余しながら
夜の街に出た。
だからといって
そのまま
キャバクラや
ソープに行く余裕はなかった。
体力的にも
金銭的にも。
途中
思いついて
一軒のバーに入った。
アメリカ人の経営するバーだ。
がらんとした空間に
他に誰も客はいない。
カウンターで
バドワイザーのボトルを
ゆっくりと口に運びながら
アメリカ人のマスターに
さっきまでのいきさつを話した。
彼は
いかつい顔に似合わず
甲高い声でケラケラと笑った。
そこでも
営業活動は怠らなかった。
「ランチしに行くよ」
と彼は言ってくれた。
併せて
外国人のスタッフを探していることも告げる。
「心当たりがある」
といって、
すぐにメールを送ってくれた。
商魂たくましいのは
性(さが)なのかもしれない。
いつだって
「夢は夜開く」
昨夜の成果は大きかった。
【追記】
官能小説っぽい
田中慎弥の
「共食い」 でも
芥川賞をとれるのだから、
ボクだって
十分狙えるかも、ネ。
慎太郎が
激怒して
さじを投げるのも頷ける。
若い女性だ。
いきなり
彼女と意気投合した。
かなり変わった女(ひと)らしい。
でなければ
そんなことにはまずならない。
「久しぶり
いい男と出会えたわ」
と
お世辞とも本気とも取れる言葉をさらりとはく。
まんざらでもない。
例え嘘でも
気分はイイ。
男をいい気にさせる術(すべ)を
よく心得ている女(ひと)だ。
ボクにとって
初めて会った日に
女と寝ることは
そんなに
珍しいことではない。
カラオケになると
彼女はボクにまとわりついてきた。
「こんなにいちゃついて
いいのかしら」
とタバコをくゆらせながら
時折
ボクの顔に煙をフーッと吹き付ける。
そんな仕草が
ボクの気を高ぶらせる。
他の客の目も気にしない
よくある素振りに、
どことなく
計算された意図が感じられる。
だが
歌いながら
ミニスカートの奥に手を滑らせようとすると
さすがに
身をよじった。
キスすらさせてくれない。
彼女に
紹介されたお客と同席していたこともあろう。
ナント
同席の客は
今日の一人営業会議で
ターゲットにしようと思った
会社の社員だった。
そして
愛人と同伴の
韓国の某フィクサー。
二人とも
流暢な日本語を話した。
そして
日本の演歌を
上手に歌った。
メーカーの接待を受ける
怪しげな韓国人。
双方とも
昼間
思い浮かべていた人物だった。
何という偶然だろう。
そして
何という
妖艶な雰囲気だろう。
またもや
夜に人脈を得ることになろうとは。
しかも
彼女を抱きながら。
どんなに酔っても
頭は冴えている。
営業マンという
自分の立場を忘れたことは
ほとんどない。
根っからの
商社マンとしては
至極当然ことだ。
「帰ろ」
という彼女の一言で
ボクは
席を立った。
瞬時に
つぎの展開をどうすべきか
期待と
懐疑の思考が錯綜した。
だが
寸前のところで
彼女は
踵を返し
ボクについて来なかった。
トコトンその気にさせて
あっさりと期待を裏切る。
変わり者の女としては
当然の帰結かもしれない。
こうしたパターンには
慣れていたつもりだったが
がっかりする気持ちと同時に
正直
ホッとした。
このまま
寄り添われては
行きつく先は
分かっている。
その点
彼女も賢明な判断をしたのだろう。
知人のお客の手前もあったのかもしれない。
ボクは
中途半端に熱くなった身を持て余しながら
夜の街に出た。
だからといって
そのまま
キャバクラや
ソープに行く余裕はなかった。
体力的にも
金銭的にも。
途中
思いついて
一軒のバーに入った。
アメリカ人の経営するバーだ。
がらんとした空間に
他に誰も客はいない。
カウンターで
バドワイザーのボトルを
ゆっくりと口に運びながら
アメリカ人のマスターに
さっきまでのいきさつを話した。
彼は
いかつい顔に似合わず
甲高い声でケラケラと笑った。
そこでも
営業活動は怠らなかった。
「ランチしに行くよ」
と彼は言ってくれた。
併せて
外国人のスタッフを探していることも告げる。
「心当たりがある」
といって、
すぐにメールを送ってくれた。
商魂たくましいのは
性(さが)なのかもしれない。
いつだって
「夢は夜開く」
昨夜の成果は大きかった。
【追記】
官能小説っぽい
田中慎弥の
「共食い」 でも
芥川賞をとれるのだから、
ボクだって
十分狙えるかも、ネ。
慎太郎が
激怒して
さじを投げるのも頷ける。