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井上章一の音声データで分かったこと(その2)

2022-04-03 | 『鈴木ズッキーニ師かく語りき』
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2022年 4月 3日(日)16時16分3秒

呉座氏の停職処分の場合、「人間文化研究機構職員就業規則第23条及び第26条第2号に違反し、同規則第36条第1項各号に該当」とあるので、第23条を見ると、これは職務専念義務です。

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第23条 職員は、この規則又は関係法令の定める場合を除いては、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、機構がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。

https://www.nihu.jp/sites/default/files/regulation/kh-1.pdf

第26条第2号は、

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二 職務の内外を問わず、機構の信用を傷つけ、その利益を害し、又は職員全体の不名誉となるような行為をしてはならない。
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というものですが、勤務時間中にSNSに投稿するのが職務専念義務違反と言われると、まあ、形式的にはそうだとしても、それで停職一か月はあまりに重すぎますから、実質的に重視されたのは第26条第2号の方でしょうね。
ただ、こちらもずいぶん漠然とした規定です。
さて、第36条第3項に言う「職員懲戒規程」を見ると、第6条(懲戒の手続)には、

-------
第6条 職員のうち、機関の長及び研究教育職員(以下「研究教育職員等」という。)の懲戒処分は、機構が設置する大学共同利用機関(以下「機関」という。)の運営会議が設置する審査委員会の審査に基づき、教育研究評議会に設置する研究教育職員等懲戒委員会(以下「懲戒委員会」という。)において審議し、役員会の議を経て機構長が行う。
2 職員のうち、研究教育職員等を除く者の懲戒処分は、機構本部又は機関に置かれる調査委員会の調査に基づき、役員会の議を経て機構長が行う。

https://www.nihu.jp/sites/default/files/regulation/kh-38.pdf

とあります。
呉座氏はもちろん「研究教育職員」なので、第1項が適用されますが、その判断過程は四段階に分かれていて、

 1、「機構が設置する大学共同利用機関(以下「機関」という。)の運営会議が設置する審査委員会の審査」
 2、「教育研究評議会に設置する研究教育職員等懲戒委員会(以下「懲戒委員会」という。)において審議」
 3、「役員会の議」
 4、「機構長」

となっています。
「人間文化研究機構組織規程」も見て、本件に即してもう少し具体化すると、

 1、日文研の「運営会議」(組織規程第14条)が設置する「審査委員会」の「審査」
 2、「本部」の「教育研究評議会」(組織規程第11条)に設置する「研究教育職員等懲戒委員会」において「審議」
 3、「本部」の「役員会」(第9条)の「議」
 4、「機構長」

ということですね。
四段階のうち、第一段階だけ日文研の手続きで、第二~第四段階は「本部」での手続きではありますが、事実関係を詳細に調べて「審査」するのは日文研の「運営会議」が設置する「審査委員会」の役割ですから、実際上はここでの「審査」の結論が極めて重用なのでしょうね。
日文研の「審査委員会」の判断を、「本部」が他の機関で行われた同種の処分の関係を考慮して軽くすることはあっても、重くする方向で覆すといった事態は実際上考えにくいですね。
機構が2004年に設立された経緯を考えても、機構は以前から相当の独立性をもって運営されていた「機関」の寄せ集めであって、諸規程の形式的な文言はともかく、実際には各「機関」の判断が尊重される仕組みとなっていて、それが「職員懲戒規程」にも反映されているようですね。
この点、私はかなり誤解していました。
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