第52回配信です。
藤原聖子編著『日本人無宗教説─その歴史から見えるもの』(筑摩書房、2023)
https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480017734/
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「第2章 無宗教だと国力低下?―大正〜昭和初期」の担当は坪井俊樹氏。
天皇のために祈る群衆は宗教的か
日本人無宗教説の"国力"化
無神論的ドイツの敗戦の衝撃
震災後に宗教家は役割を果たしたか
震災一周年追弔式と「無宗教葬」
米国での排日運動と日系人に関する無宗教説
昭和初期の無宗教をめぐる議論
家庭教育で無宗教に対抗
「反宗教運動」の発足
言論界・宗教界からの反論
壊滅する反宗教運動
社会不安の拡大と「宗教復興」
日本人無宗教説の中断
この章のまとめ
東京大学宗教学研究室
https://www.l.u-tokyo.ac.jp/religion/students.html
「第3章 無宗教だと残虐に?―終戦直後〜一九五〇年代」の担当は藤原聖子氏。
宗教は「平和」を作るものに
ということは戦争中の残虐行為は「無宗教」のしわざ
調査では若者は「無宗教」
神頼みする余裕もない人々?
寺院も弱体化
新宗教教団は増えたが……
キリスト教も伸び悩む
マスメディア上の宗教と無宗教
「逆コース」の中での「宗教」の位置づけ
三笠宮と一緒に「日本人の宗教」座談会
「日本人の宗教はとにかくキリスト教と違う」から「キリストはアジア人」へ
一九五〇年代後半の無宗教性
この章のまとめ
キリスト教も伸び悩む(p110以下)
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キリスト教については、戦後一〇年も経たないうちに、当初の見込みに反して信者は増えていないという記事が出るようになる。日本キリスト教団総会議長を務めた小崎道雄による寄稿だが、なぜ日本では教勢が振るわないのかについて原因を三点挙げている。第一に、キリスト教の神のような父なる人格神を信じる伝統が日本にはないこと。第二に、キリスト教の中心にある、「道徳生活と信仰生活の一致」も日本の伝統宗教には存在せず、「罪悪感と贖罪(十字架)信仰が国民の間に不人気」であること。具体的には、
目下国際基督教大学に教授として働いておられるスイスの学者エミル・ブルンナー博士は、筆者に日本の伝道の困難な理由の一つは国民間に罪悪感が少ないためではないかと質問されたが、私は全く同感である。博士は大切なカバンを自動車の窓ガラスを破壊されて盗まれた経験があるが、このようなことはスイスではほとんど絶無の経験である。日本人の国民道義心の低いのは全く天地万有を支配する神を信じないためである。(読売 一九五四・一一・一〇 小崎道雄「日本キリスト教の自己反省」)
そして第三の原因は、教会や信者の力不足だと言う。「信者が聖書の伝えるような伝道者としての信仰に燃えて他の人々のために犠牲的な生活をなし」「教会は精霊に満たされて国家社会の良心的役割を予言者の如く果たす」ならばキリスト教は日本に普及すると述べている。
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小崎道雄(1888‐1973)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E5%B4%8E%E9%81%93%E9%9B%84