学問空間

『承久記』『五代帝王物語』『とはずがたり』『増鏡』『太平記』『梅松論』等を素材として中世史と中世文学を研究しています。

酒田の本間家VS鶴岡の風間家

2013-03-08 | 東北にて
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2013年 3月 8日(金)21時34分29秒

ツイッターに書いたことですが、この前の対馬の仏像の問題と比較すると面白いので、こちらにも載せておきます。
まずは山形新聞の2013年3月7日付記事、念のため全文を転載しておきます。

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雛人形返還求め、本間美術館を提訴 鶴岡・風間家財団法人

 酒田市の本間美術館(田中章夫館長)で展示されている江戸時代の雛人形をめぐり、「鶴岡一の豪商」として知られた風間家の財産管理などを行う財団法人克念社(鶴岡市、長岡正樹理事長)が所有権を主張し、返還を求める訴訟を地裁酒田支部に起こしていたことが、6日分かった。
 訴えられたのは、同美術館を運営する財団法人本間美術館(酒田市、本間謙三理事長)。同美術館は、江戸時代に「日本一の地主」と呼ばれた本間家に伝わる品々を中心に、全国からの寄贈品や収集品などを展示している。
 訴状によると、同美術館で開催中の「雛祭古典人形展」で展示されている雛人形のうち、古今雛や五人囃子などの一式56点は、江戸時代から風間家に伝わり、1950(昭和25)年、貸し出す約束で風間家から本間家に持ち出された。その後、本間家から風間家に10万円が渡されたが、売買に伴う対価ではなく、賃貸料か貸し出しに対する謝礼であり、雛人形の所有権は風間家側にあるとしている。
 本間美術館はこの雛人形一式を「風間家のお雛さま」として、毎年この時期に展示公開してきた。
 克念社の長岡理事長は、山形新聞の取材に「長年にわたり、本間美術館との話し合いの場で(雛人形を)返してほしいと伝えてきた。鶴岡に返してもらい、観光振興につなげたい」と語った。一方、本間美術館の代理人は「数十年所蔵してきて、なぜ今訴えられたのか分からない。10万円は売買代金で、所有権は本間美術館にある」とし、争う考え。
http://yamagata-np.jp/news/201303/07/kj_2013030700206.php

これは対馬で盗まれて韓国に渡った仏像と異なり結構微妙な問題ですね。
何十年経とうと「自主占有」でなければ時効取得はできません。
1950年の契約が賃貸借なら「他主占有」で本間家側の負けですね。
明確な契約書はないだろうから、諸事情から契約当時の当事者間の約束の法的性格を決めるしかありません。
1950年で10万円という金額もなかなか微妙ですね。
争いが顕在化して以降、相当長期であれば「他主占有から自主占有への転換」という論点も出てきます。
仮に当初は賃貸借=「他主占有」だったとしても、紛争が顕在化して以降のある時点で本間家が、うちは借りたのではなく買ったのです、と明確に主張したとすれば、その時点から「自主占有」となり、時効取得の可能性も出てきますね。


※続報があります。
「酒田の本間家VS鶴岡の風間家(その2)」
http://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/5c38f38fb4b3aa5a3cc13f2a56b6293f
「酒田の本間家VS鶴岡の風間家(その3)」
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/bd7d1d8b7738f8d87bbfec1a17280586
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pope emeritus とヘリコプター

2013-03-08 | その他
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2013年 3月 8日(金)10時21分8秒

>筆綾丸さん
>やめました。
無理からぬことと思います。
新たな読者を開拓するためにコミカルな方向へ向かうこと自体は悪くないアイディアだと思いますが、京都生まれだったらもう少し洗練された表現にしてほしいですね。

高野山真言宗では宗会が庄野光昭宗務総長の不信任決議を可決した後、逆に宗務総長が宗会を解散して総選挙ですか。
ただ、ご紹介の読売新聞記事によれば、

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宗会解散後、50日以内に全国10地区から選出される定数27人の選挙を行うことが定められている。議員定数37人中、残る定数10人は宗務総長が改めて選任する。一方、宗務総長は議員ではなく、解散しても失職しない。1期4年で、2期目の庄野宗務総長は14年7月4日まで任期がある。
http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20130227-OHT1T00182.htm

という随分面倒な仕組みらしいので、選挙結果が出ても内紛は長引きそうですね。

華やかさを欠いた高野山の内紛と異なり、新教皇の選出をめぐる混沌とした情勢は映画の『天使と悪魔』以上に華やかで、関係者の衣装を見ているだけでも楽しいですね。
『天使と悪魔』では次期教皇を狙う野心家の若い聖職者が軍隊でヘリコプターの操縦訓練を受けた経歴を持ち、最後の場面でヘリコプターが重要な役割を果たしていましたが、名誉教皇のベネディクト16世はヘリコプターを操縦できるそうですね。
名誉教皇は軍歴もないのにずいぶん若いときにヘリ免許を取っていて、避暑用の別荘であるCastel Gandolfo にも自らヘリを操縦して行ったことがあるそうですが、それほどメカに強い人なのに自動車免許は持っていないというギャップが愉快です。
まだ在位中の記事ですが、

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According to a list of "interesting facts" compiled by the Catholic News Agency (via New York Magazine), the Pope has a pilot's license for the papal helicopter, and enjoys flying between Castel Gandolfo, his summer residence, and the Vatican.
We're not sure if he'll still have access to that chopper, but someone would probably be happy to give him his own.
In any case, he'll need a ride to the helicopter pad: The Holy Father does not have a driver's license.

http://www.businessinsider.com/pope-benedict-xvi-can-fly-a-helicopter-2013-2?0=transportation

とのことで、名誉教皇は余生をヘリ操縦三昧で過ごすことは可能であっても、ヘリの離発着場までは誰かに車に乗せてもらわねばならない訳ですね。

※筆綾丸さんの投稿、「空海と空巣」へのレスです。
http://6925.teacup.com/kabura/bbs/6754
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