Mr.コンティのRising JAPAN

マスコミの書かない&書きそうもない!スポーツ界の雑学・裏話を、サッカーを中心にコメントを掲載していきます。

6.4. 日豪戦観戦記その2 

2013-07-20 | FIFA World Cup

5月下旬。我が家にある簡易書留が届いた。そして我が家の住所は英文で書かれていた。

“よ~し。作戦成功。”思わず拳を握りしめた。封筒の中は6月4日のさいたまスタジアムで開催されるワールドカップ予選、オーストラリア戦の入場チケット。これで1年間楽しみにしていた試合を観戦する事が出来る。そう思ってのガッツポーズだった。

あとは試合当日までどんな邪魔が入るかわからない。その妨害をいかに排除するかを考えるだけだった。

平成24年6月にスタートしたワールドカップアジア地区最終予選。幸先よくホームでの2連戦、オマーン、ヨルダン戦はチケットが手に入った。 しかし9月のイラク戦からはワールドカップ予選のチケットは抽選制となり入手が困難になった。“幸い”9月のイラク戦は商用で日本を離れなければならなかったのでこの試合は海外でウェブサイトを通じて生中継で見た。そういう時代になった事にも感謝をしなければならない。

昨年6月 Brisbane で行われたワールドカップ予選のオーストラリア戦は豪州遠征を計画していた。何十回も訪れる豪州大陸で顧客や親しい人たちと日本戦を観戦する事を楽しみにしていた。しかしながら直前になり家内の承認が貰えず計画は頓挫してしまった。 

それから1年が経ち日本代表は今年3月のヨルダン戦に引き分ければワールドカップ出場が決まるところまで勝ち点を伸ばしたが本音を言えばそのヨルダン戦でワールドカップ出場を決めてほしかった。そうすれば6月4日のオーストラリア戦はチケット入手が少しは容易になり、予選を1試合残してもワールドカップ出場の掛かったオーストラリア相手となる。だけど本気のオーストラリア相手とはこれほど素晴らしい対戦相手は無い、まずザッケローニ監督もベストメンバーで臨むはずだ。それにたとえ負けても失うものは無い。これは素晴らしい状況と思ったからだ。 
しかしながらヨルダン戦は勝ち点を上げられずワールドカップ出場決定はお預けとなってしまった。遠藤のPKがヨルダンGKに止められた時は“これはまずいことになったなぁ~。”と心の底で思った。

このオーストラリア戦は引き分け以上でワールドカップ出場が決まる試合となった。それは史上初めての事でその史実が余計に抽選の倍率を煽っていた。 日本サッカー協会を含めたいくつかのチケット抽選にエントリーをすると共に、兼ねてから“期待”をしていたオーストラリア協会のウェブサイトを通じての販売にも期待した。 4月に発表されたチケット販売要綱を見るとアウェー側での観戦チケットがこのサイトから4月末頃から販売されることとなり、発送は世界中にいる“Socceroos サポーター達”に向けて行われる事となっていた。 さっそく購入の手続きを行い、発送先を日本の自宅住所にした。 オーストラリアにいる親しい顧客に依頼しても良かったけど、購入者と発送先、そして支払決済をするクレジットカードの名前が一致しないとまずいのではと思い、日本の住所を入れた。

問題はそのチケットが本当に試合開始日前までに手元に郵送されるか、だった。何しろオーストラリア大陸を仕事で担当して16年になるけど仕事に対する責任感というのは日本とは比較にならないほど、いや比較すること自体が失礼なほど欠如している。 決済だけはきちんと差し引かれ、試合が終わってチケットが手元に届くなんて事は十二分に予想できる。 そうなったときの事を考えると……..

5月中頃、“案の定” エントリーしていた“日本側”の購入先の抽選にはすべて外れた。後に判明したけど50万人の人達がこの試合の観戦チケットにエントリーしたらしい。 でも反対に言えば10倍程度で俺が外されたのか、これほど長き間にオーストラリアサッカーをフォローしていた俺が…もう40年近く、日本代表を見続けていた俺が・・・・とがっかりした。

それだけにオーストラリア協会を通じて購入したチケットが手元に届くことを心底願った。 私こそ“ジャーナリスト”を含めてもこの試合を観戦する“権利”がある数少ない日本人の1人である、と勝手に決めつけて祈り続けていた。

チケットが試合日の約1週間前に手元に届いた時は心から安堵の嘆息を漏らした。そして本当に嬉しかった。

試合当日、天気は非常によく気温も高くなっていた。 オーストラリア代表は1週間以上も前から来日し大宮や駒場競技場で調整を行っていた。仕事さえ忙しくなかったら追っ掛けようかと思っていたけど、10日前に出張から帰ったばかりだったのでかなり多忙な毎日を過ごさねばならず残念ながら“観戦”のみだった。

ベテラン社員の特権、仕事は午前中で切り上げ一旦帰宅しさいたまスタジアムに向かった。 自宅がさいたまスタジアムから自転車で行ける範囲にある幸運に感謝しながら。しかし、先のこの地域に居を構えたのはこちらで、後にワールドカップが誘致されスタジアム建設に至ったのだった。

キックオフ時間まであと6時間以上もあるのにさいたまこう高速鉄道には多くの青色のレプリカを来た人達が乗り込んでいた。

ワールドカップの日本対ベルギー戦の時もそうだった。あの時は赤いユニフォームのベルギー人達の姿も見かけた。その試合はチケットが入手できずちょっと悔しい思いでその光景を見ていたのを思い出した。だけど今回はチケットが入手できたのだ。

観戦する座席はアウェー側なので日本代表のレプリカを着て入れない。 何を着ていこうか?持っていこうか?と考え、結局昨日洗濯をした赤いTシャツを着て行き、日本代表とオーストラリア代表の尊敬する Johnny Warren のレプリカを持参することにした。 それが思わぬ“好結果”を招く事となるとはこの時思わなかった。
自転車で浦和美園の駅前まで行きそこから競技場までの通路を自転車を押して歩く事にした。

さすがワールドカップ予選。 多くの模擬店や代表グッズを販売する屋台ばかりでなく代表選手達の写真の前にも多くの人達が集っていた。そして選手の前では女性や子供達そして男性も、一緒に“記念撮影”を行っていた。 一番列が長かったのは予想通り内田だった。そこには多くの女性達が列をなしていた。

そこから数十メートル歩くと黄色のレプリカを着たオージー達のグループが。中の一人が私のTシャツを指さして声を掛けてきた。 私が着ていたのは4月にシドニーで購入した Western Sydney Wanderers の シーズン優勝記念のTシャツだった。それはこの時に気が付いた。 この集団は家族、親戚で試合観戦の為に来日したらしいが滞在期間は“48時間”の弾丸ツァーらしい。声を掛けてきた男性は Wanderer のファンで隣のオージーの集団にも私のTシャツを指さしながら声を掛け、何人かはこちらにやって来た。 4月の Grand Final を観戦したことや Wanderers の中心選手 Shinji Ono はこれから試合が行われるさいたまスタジアムを本拠地とする浦和レッズで長年プレーし、 Socceroos の Osieck 監督もレッズの指揮を執っていた事等を話したらみな熱心に聞いてくれた。 この試合の展望に就いて尋ねると、“申し訳ないけどオーストラリアに勝たせて貰う。オーストラリアは勝利が必要だ。それに私達はここに時間を掛けてやって来た….と答えた。おそらく最後の行が本音だろう。
私は “ 1-1 で終わろう。そうすればみんなハッピーだ。“というと、皆”オーストラリアは勝利が必要だ。日本は次に勝ってくれ。“と言った。そして少し話をしてお互いに Good Luck と声を掛けあい握手をしてその場を離れた。 まさか試合結果が私の”望んでいた通り“になるとは….

それから競技場に向かう途中、チケットを売って欲しい旨を書いたプラカードを持つ人達を数人見た。 中には“子供の分と2枚売ってください”と書いている人も。 2002年のワールドカップの時も浦和美園の駅で多くの子供達が“チケットを売ってくださぁ~い。”と販売を乞うていた。 あの時のチケット騒動の原因は明快でサーバーのキャパシティーが少なすぎたのでチケットサイトに一斉にアクセスが集まりなかなかつながらなかったのが原因だった。 私もチケットを入手するのにほぼ半日PCの前に座りっぱなしだった。

自転車置き場から入場門に向かったけどものすごい長蛇の列になっていた。開門は午後五時。自由席の人達は少しでも良い席と席数を確保しようと開門のずっと前から並んでいた。 “運動公園”の周囲はタータンが敷かれており小さな起伏もあり走るには絶好の場所になっている。2日前の日曜日にこの競技場周辺までジョギングをしに来た時には既に順番を取る札が地面に貼られていた。 そしてこの日、サブ競技場で練習に来ていた日本代表を一目見ようと子供を含めた数十人の人達が来ていた。 練習場はブルーのシートで保護され更にジョギングコースの一部を“通行止め”にして、練習を見られないようにしていた。 私はどちらかと言えば Socceroos の練習を見たかったんだけどなぁ~

この席取の様子は後に英国紙のコラムにも紹介されていた。日本人は早くから準備をする。何日か前からテープやプラスティックバッグを使って順番を取り、キックオフの4時間前に都心からBlue Shirts を来てKEIHIN TOHOKU LINE で北上し、3時間前から列に並び2時間前には競技場入りをして1時間半前にはほぼ半分の席が埋まった….と書かれていた。

 

私の座席が入り口となる南門に到着した時は既に開門時間が過ぎたばかりであった事もあるが人の流れは非常にスムースだった。これが日本人の良い所だろう。 海外ではこうはいかない。 朝の通勤ラッシュ時に綺麗に列をなして乗車をまっている人々の風景をみたドイツ人が“欧州では有り得ない。”と非常に驚いていた。

Category 5 のアウェー側一帯はすぐ隣の“ホーム側”とは全く異なり空席というよりもキックオフ2時間も前にやってくる人など皆無に等しかった。 中段からやや上のフィールド全体が見渡せる席にどっかりと余裕をもって腰掛けた。 時間が経つにつれて空席はどんどん埋まってきた。そして周囲のオージー達とサッカー談義に花を咲かせた。 なかには仕事でカタールに駐在しているが観戦の為に来日したという女性も。 カタールでの生活は暑いけど苦にならない。日本も暑いと話していた。 そして私の T シャツを指し Wanderers の話や小野の話をした。 更にこれが私の宝物だと Johnny Warren のレプリカを見せると驚いて写真を撮らせて欲しいと依頼され、レプリカを前にポーズを取った。おそらく私の顔は写さなかっただろう?

赤い Wanderers と黄色い Warren のシャツをネタに何十人ものオージー達と話が出来た。あぁ、横に息子がいればなぁ~。と思った。 彼らの話を総合すると、とにかく日本は強すぎる。勝点1が手に入れば万々歳だ、との事であった。
みなでスタメン予想をしたけど、 Kennedy のスタメンは間違いないと殆どが言っていた。 私もそう思ったけど。

キックオフの1時間半程度前になった時に Sccceroos 達がピッチに現れた。ま移動着のままだったけど。ピッチのコンディションを確かめている様であった。周囲のまだ多くは居なかったけど周囲のオージー達から歓声があがり数人の選手達がこちらに手を振った。 遠目から長身の Kennedy がよく解った。 この時点でもまだ彼のスタメンを疑わなかったのは私だけではなかっただろう….



するとスクリーンに日本代表選手を乗せたバスが到着したところが映し出された。そして選手達が下りて来る度に大歓声があがり、予想通りに最後に本田が降りて来た時には更に大きな歓声が上がった。 後ろにいたオージーたちに4日前のブルガリア戦で日本は本田抜きで完敗したので我々は彼の登場を待っていたと説明した。彼らもよく解っていて香川や長友の話をしてきた。

キックオフの1時間程度前になり更に大歓声が上がり両チームの選手がアップの為にピッチに出て来た。 先の出て来たのは Socceroos だった。 練習のグループ分けからその日のスタメンがわかるのだけど、悲しいかな私はなかなか遠くが見えにくくなっていて選手の区別がつかなくなっていた。 だけどオーストラリアの方は全員が同じアップをしているみたいだった。それはスタメン予想をかく乱する為だったのだろうか?

時間が経つにつれて隣の Category 5 のホーム側の人達のが増えて来てもう押すな押すなの大混雑。 席数が足らないはずなんだけどなぁ。 警備員は空席の“緩衝地帯”を狭めたり、中にはこちらの“アウェー側”の空席を指してそこに座らせろという観客も。 だけどこちらもキックオフ時間が近づくに連れて席が埋まってきて、スタメン発表前にはほぼ黄色のレプリカを着たオージー達で満席となってきた。

そして注目のスタメン。GK Schwarzer から順にメンバーが発表される。 最初の驚きは Mark Milligan がスタメン発表された時だった。 JEF でプレーした“実績”がかわれたのだろうか? そして故障続きだった Mark Bresciano のスタメンも予想外だった。 そいて2列目に Tommy Oar, Robbie Kruse がスタメンに起用され Cahill がワントップに。 スタメンを予想した Kennedy そして Mile Jedinak , Brett Holman はベンチスタートだった。 

 

GK Schwarzer , DF Neil, Milligan, MF Cahill, Wilkshire, Bresciano, FW Kennnedy が2006年ワールドカップのメンバー。

日本は当時出場機会の無かった遠藤のみ。その遠藤がその後2回のワールドカップで主力となるところが私が彼を最も好きなところだ。

日本のメンバーは本田がスタメンの誰もが予想できるメンバーだった。 でも一般の人でも予想することが出来ていいのかな?と思った。

 

両国国歌演奏に続いてオーストラリアのキックオフで試合が始まった。 前半はこちらの方に日本が攻めてくるエンドになっていたので開始早々香川がPA内に入って来たのを皮切りに試合は何度もこちら側で展開された。 特に目立ったのはやはり本田圭祐。 彼にボールが渡ると見ていてこちらもボールが取られないというオーラが感じ取れた。 Milligan をスタメンに起用したのはこういう展開を予想してか? 18分には決定的なチャンスを掴むも最後の香川のショットは Schwarzer に弾き出されてしまった。 そしてオージー達から歓声が上がる。 23分頃からオーストラリアの2列目、 Kruse, Oar がワイドに開き出したので日本のボール支配率が減少したせいか、試合も落ちつきつつある様に見えた。 それでも主導権を握るのは日本。 前節は累積警告により出場停止だった Lukas Neil が最終ラインでよく効いていた。

33分、オージー達が一気に湧き上がる。 Holman から縦パスが中央を突破した Kruse に渡り中央でGK川島と1対1になるのがこちらからもよく解った。 しかしここは川島が前に出て来てストップ。さらにそのリバウンドをダイレクトで蹴りこんだ Cahill のミドルはクロスバーを越えてくれた。 私と隣のブロックの日本人サポーター達から安堵の溜息が漏れた。 

後ろの4人組のオージー達はみな両手で頭を抱えていた。彼らとは試合中日本のサポーター達が歌い続けるチャントの意味を何度も訊かれた。 特に多かったのは香川真司だった。 カ~ガワシンジィィ~、ラララララァァ~というチャントは今でも頭の中に残っている。

 

その後日本も両サイドからの攻撃を中心にこちら側に攻め上がってくるがオーストラリアゴールネットを揺らすことは出来ず、スコアレスのまま前半終了のホイッスルが鳴った。

やっぱりタフに守ってくるなぁというのが印象。だけどホームでこの日のオーストラリア相手でゴールを挙げられないのでは実際にワールドカップになると…と少し不安なるのは自分一人ではないだろう。



 

ハーフタイムに入ると周囲のオージー達は一斉に消えてしまった。どこに行ったかはすぐに解った。ビールを買いに行ったのだ。

オージーに限らず欧州のサポーター達もこの試合の様な高温多湿のビール日和でなくてても、どんなに寒くてもビール売り場の前は長蛇の列だ。 体の構造が違うのかな? 周囲のオージー達にビールはおいしいか?と聞くとみな親指を立てていた。

XXXX ( エックスフォー ) は? Victoria は? Crown は?と聞くけどみな親指を今度は下に下げる。

“日本ではサッカーの試合で売られているビールはたいてい KIRIN ビールだ。 36年前にまだ日本でサッカーが人気の無い時から KIRIN はずっと日本代表のスポンサーだ。 だから競技場で飲めるのは KIRIN だ。”と話すとみな頷いていた。

そしてみな日本は food も drink も安くておいしいと言っていた。だからそれは今の交換レートによるものだと話した。 今でこそ AS$ は90円以上するけど、5~6年前は60円台で、オーストラリアに機械を売り込むのに苦労した、と話したけどそれだけでなくここ数年のオーストラリアの物価上昇はやはり彼らにとっても大変らしい。 サッカーの話よりもこういった話の方が興味を持ったようだった。

 

後半は両チームとも選手交代ないしで始まった。 今度は日本が向こう正面に攻めてオーストラリアがこちらに攻めてくる。

なるべくこちらで試合が進んでほしくないなぁと思った。 

オーストラリアは Kruse , Oar がサイドを上がってくる回数が増えた。こうなると長友、内田からのサイド攻撃がなかなか出来ない。しかし怖い Cahill は今野と吉田がしっかりとマークしている。 日本は長友が上がってこられない分香川がサイド攻撃の起点になっていた。 

なかなか見せ場が訪れないオーストラリアに業を煮やしたか何人かのアルコールを充填したオージー達が今度は日本のサポーター席に向かって何か叫びだす。 だけど何を言っているかさっぱり聞こえないので誰も反応しない。そうすると今度は緩衝地帯に入ってきて何かを叫ぶ。 ここは警備員が飛んでくる。 日本人は誰も相手にしていないから何も起こるはずもなくオージー達も酔っているせいか?へらへら笑っている。 

63分、67分、FKを得て本田が狙うがゴール枠をとらえられない。まぁGKが Schwarzer だからかなり隅を狙わないと難しいだろうなぁ~と隣のオージーと話した。 反対に64分には Kruse からボールを受けた Cahill がしぶとくシュートに持ち込むがここはゴールには至らない。やはり Cahill にはボールを入れたくないなぁとも話した。

71分。最初の交代選手が告げられる。それはオーストラリアで投入されたのは Kennedy でなく Vidsich だった。

79分、今度は日本ベンチが動く。 前田を下げて栗原を投入した。 これはどういう意図なんだろう?と思い最終ラインはどうかわるのかな?と思っていると左サイドから Tommy Oar がドリブルで上がって来た。 おいおい早くだれかマークに行けよと思うと Oar はそのまま前線にボールを上げゆっくりと弧を描いてなんと日本ゴールに吸い込まれてしまったのだ。選手交替でポジションチェンジが落ち着かないその虚を突かれた気がした。周囲のオージー達は狂喜乱舞する。 ビール入りのコップがいくつも宙を舞う。 中には上半身裸になって抱き合うオージー達や感涙を流す女性のオージーも。そのなかで私が頭を抱える。 

あと10分かぁ。 まだまだ勝ち点は日本が断然有利でこの試合を負けたくらいではワールドカップが遠のくわけではないが….
あと10分で Schwarzer の守るゴールネットを揺らせるかなぁ….. という思いが一番強かった。
そして“それ見た事か!!”と何人かのオージー達が日本サポーター席に迫り警備員達が飛んでくる。別に摘み出される訳では無かったけど。

85分にはまたも Oar にシュートに持ち込まれるが今度はGK川島の正面に。 そしてオージー達から歓声があがる。

日本ベンチは内田を下げてハーフナーを入れワントップに入れ今野を右SBに入れCBを吉田と栗原が組む。 87分には岡崎が下がり清武が入る。 スピード不足のオーストラリアDFを切り裂くためにドリブル得意の乾でも良いと思ったんだけどなぁ。

時計が刻一刻と過ぎる。ボールが外に出るたびにオージー達から歓声が上がる。 89分、本田のFKから繋いでシュートに持ち込みCKを得る。 ハーフナーを狙うかそれともオーストラリアの嫌がるショートコーナーか…と思うと本田はショートコーナーを選び遠藤にいったん預け再び中に入れると遠目から見ても明らかにボールが不規則にバウンドするのが分かった。 ゴール裏から大歓声が上がりオーストラリア選手が主審を取り囲む。主審の手の位置から見てPKを与えられたことが分かった。

それまで狂喜していたオージー達は一斉に静まり返り何が起こったかわからないという表情。 中には日本サポーター席に何やら叫びだしたり、更に怒りを露わにし、中指を突き立てる輩も。 こういう行為は欧州だと警備員にすぐにつまみ出される行為らしいが、その“重大さ”をあまり解らない私はやんわりと彼に人差し指を左右に振り、自分の肘に反対の手を当ててハンドがあったことを説明する。 スクリーンには本田のクロスが McKay の手に当たるのが映し出される。 もし微妙な判定でなければ映し出されなかったかな?

後ろの方にいた数人の日本人達にもPKだったことを説明する。彼ら(彼女達)も表情を崩してその判定を受け入れる。  
しかしまだ同点となったわけではない。 GKはワールドクラスの Schwarzer だ。 PKとはいえ容易には決まらないかもしれない。キッカーは誰だろう?遠藤じゃないだろうな。と思うと本田がボールを抱えてスポットにセットする。
本田なら大丈夫だろうと自分に言い聞かせるも何故か脳裏には本田の蹴ったボールがゴールネットに届かないシーンが浮かんでは必死に消し去った。しかし本田は堂々としかも真ん中にそのボールを蹴り込み試合を振り出しに戻した。

73分に発表があった 62,127人の公式入場者から約6万1千人分の大歓声があがる。 私は歓声というよりも天に向かって安堵の溜息を大きく一つついた。そして散々酔っぱらったオージー達に煽られていた日本人サポーター席の数十人が今度はそれ見た事かとこちらに向かって歓喜の雄たけびをぶつけてきた。

試合はロスタイムに入る。 あきらかに Socceroos もオージーサポーター達も明らかに意気消沈している。 これはチャンスだ。このまま一気に逆転だ…と思うとオーストラリアベンチは Kruse を下げて Archie Thompson を投入する。 周囲のオージー達は Sydney FC や Wanderers のファンばかり。彼らと思わず顔を見合わせる。私から Archie Thompson ティッッ ティッティッ ティ ティッッ ~~!というと受けたけど、あまり今では言わないみたいだ。

しかし1分もしないうちに主審の試合終了のホイッスルが吹かれた。 その瞬間、体中の力が一気に抜けた気がした…

 
試合終了後、3大会連続でワールドカップ予選突破1番乗りを決めたそのフィエスタがピッチ上で始まった。

オージー達はこちらに来た Socceroos 達に声援を送る。 この試合結果 1-1 というスコアーが最も平和的な結果だったんだなぁ~と痛感した。 2007年ここで行われたあの ACL での浦和レッズ対シドニーFC戦の様に…..

そして周りにいたオージー達と握手と抱擁を交わす。 残りの2試合も Good Luck そしてオーストラリアまで Have a nice trip と言葉を掛けがら…そして中指を立てたオージーにも。 彼とはひしと抱き合った。 あの“行為”を誤りたかったみたいだった。 日本は強かった、いやオーストラリアは残り2試合ホームだ。それにこの日の Socceroos はこれまでと違う…



この試合のMan of the Match に先制ゴールを決めた Tommy Oar が選ばれたことがスクリーンで紹介されたけど、私から言わせれば Schwarzer こそ Man of the Matchだと思う。それは周囲にいたオージー達も賛同していた。
そして Schwarzer は予選終了後なんと Chelsea と契約を交わした。



場内インタビューで同点のPKを決めた本田の表情が。決して満足していないのが手に取る様にわかる。 ホームで満身創痍のオーストラリア相手にやっとPKで引き分けたのだからそれも当然だろう。



その後オーストラリアは Jordan, Iraq と同じスタメンで臨み連勝を飾りワールドカップ出場を決めた。 イラク戦はちょっと危なくて最後は遂に登場した Kennedy の一発で決まったけど…..

オーストラリアとはこれから熱戦が続くだろう。だけどこの日のさいたまスタジアムでの試合は忘れ得ぬ試合となるだろう…





そして今考えている。次は東アジア杯に行きたい。



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