Mr.コンティのRising JAPAN

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日豪戦観戦記 1 引き分けは最高の結果だったか?  Japan 1-1 Australia 4th June 2013

2013-06-09 | FIFA World Cup

 時計は79分になっていた。 ここで日本ベンチが動く。栗原がピッチに投入される。そして前田がベンチに下がった。この試合、あまり前線でボールを受けられなかったなぁ~と思うと同時に残り時間はあと10分少々。どういうフォーメーションで押すのだろう? 3バックにはしないだろうしとピッチ上に目を凝らす。吉田、栗原がCBに入り今野が左サイドに入り、右サイドには内田が。まだ4バックだろう。だけど内田の位置は、そして前線は、と思っているとオーストラリア側の左サイド、 Bresiano からボールを受けた Tommy Oar がサイドを突破して来る。岡崎のタックルは届かず、内田が慌ててマークに入るがその前に Oar は日本ゴールをめがけてボールを上げてくる。そこに途中出場の Vidosic と今野がもつれこむように突進して来るが Oar の蹴った弾道は目いっぱい伸ばしたGK川島の指先の上を越えてなんとそのまま日本ゴールの内側のサイドネットに吸い込まれてしまった。 目の前でオージー達が狂喜乱舞している。上半身裸になってレプリカを振り回すオージー、そして泣き出している女性のオージー達も。ここはアウェー席のまん真ん中とはいえ現実を突きつけられているみたいでちょっと言葉が出なかった。選手交代でフォーメーションの事等が落ち着かない間を突かれた失点だと思った。 後半に入って Oar , Kruse の2列目の両サイドがよかったけど、失点を許すとはなぁ~。  Oar の代表初ゴールが日本戦かぁ~と思った。








ピッチ上では Green and Gold の Soceroos 達が歓喜の輪を作っている。あと10分程度、同点に追いつけるというよりも Schwarzer の守るゴールを破れるかなぁ~と不安が募った。そしてこの試合を落としてもワールドカップ予選で敗退するわけではないし、まだ勝ち点では断然他の4か国よりも有利だし悲観することはと自分に言い聞かせた。 だけど、ここでオーストラリアに負けるのはなぁ~と思ったのが本音だった。

試合が再開される、85分に再び Oar がエリア外からグラウンダーのミドルを放つがここは川島の正面に。 まだメンバー交代によるマークの受け渡しに混乱があるのか? 
85分には内田が下がってハーフナーが投入される。そして長友が左SBに戻り、今野が右SBに入った。そして最前線にハーフなーが入り本田がトップ下に入った。 ちょっとこの交替ドタバタ感が否めないなぁ~と思う。
その直後に中盤から前線にスルーパスが入るがハーフナーと長友がお見合いをする感じでボールはそのままGK Schwarzer に。 87分、岡崎に替わって清武が入る。前日にドイツから戻ったばかりの岡崎はよくここまでプレーしたと思う。だけど清武の投入はもう少し早くても、先制を許す前でも、と思った。
そして本田が Bresciano に倒されてFKを得る。 Bresciano にはイエローが出る。 この位置は直接狙うには少し遠い。逆サイドに誰か走りこんで…と思うとファーポストに香川が飛び込むがここは弾道は高すぎて合わない。  Schwarzer の範囲外になるとゴールが遠くなる。 

88分46秒、本田が強引にミドルを放つのオーストラリアDFの足に当たり日本がCKを得る。 昨年のBrisbane でのゲームではショートコーナーを何度も使ったがこの日は1度も使わなかったのではないか?しかしここは遠藤が本田にショートコーナーを出す。そして本田がゴール前にライナーで送るとその弾道は不規則なバウンドをしたのが遠目からもよく解った。するとすぐに Socceroos 達がバーレーン人の Nafa shukralla 主審を取り囲むシーンが私の目に飛び込んできた。 主審は手を水平に上げてペナルティースポットを指している…..そしてイエローカードを出した。 ハンドを犯した Mckay に出されたものだった。ゴール裏のサポーター席から大歓声が沸きあがっている事からPKを宣誓しているのが確認できた….そして本田がボールを抱えてペナルティースポットへ歩みを進めているのを見てPKを得たことをやっと確信できた。

隣のゾーンの日本サポーター席からも大歓声が、そしてアウェーゾーンにいる私の周囲の10人程度の日本人達からも歓声が上がった。 しかし GK Schwarzer からは例えPKでも容易には…と悲観的な近未来が瞼の裏をよぎる。願う気持ちで遠くオーストラリアゴール前を凝視する。本田が助走を取って蹴りこんだボールは見事にオーストラリアゴールネットに突き刺さった。







まさに起死回生。あと数分凌げば日本の5大会連続のワールドカップ出場が決まる。 ロスタイムが3分と表示されていた。そして時計は91分になっていた。 このまま行くのか、勝ち点3を目指すのか…オーストラリアベンチは Kruse を下げて Melbourne Victory のFW Archie Thompson が投入される。 彼にドリブルをされると厄介だなぁ~と思うがそれから30秒足らずで主審の試合終了を告げるホイッスルが鳴り響いた。 

やったぁ~、よかったぁ~   天を仰ぎながら叫んだ。 だけどよかったぁ~の方が本音だった。 

幸運にも、というよりも作戦通り手に入れたチケット。 そこはアウェー側だけど私はこの試合を見られればそれで良いと思っていた。 そしてこの私こそ日本人のなかでこの試合をみる資格のある人間の数少ない一人と勝手に信じて疑わなかった。
だけど実際にここのスタジアムに着席した時はこの幸運に感謝をした。

今度こそ勝ってくれよと期待しつつも、試合展開によっては勝ち点1を死守してもいいだろうとも試合の始まる何日も前からそう思い続けていた。 しかし今回は試合の1週間以上も前から日本というよりもさいたま市に入って調整をする選手も多かった。これまで、昨年の Brisbane の試合でも、その前までの欧州組が中心の時でも日本選手よりもコンディションが整わない中でもしぶとく引き分けたり、4年前のMCGでのワールドカップ予選最終試合の様に日本から逆転勝利を収めたりとその強さを見せ続けていただけに調整期間の十分にあったこの試合は、岡崎、酒井高徳そして本田が試合前日に合流することを考えれば日本もそんなにイージーにいかないと思った。

思えばワールドカップドイツ大会で惨敗してからこの試合の前まで Asian Cup 2007 ( 1-1 ) ワールドカップ南ア大会予選 ( 0-0, 1-2 ) Asian Cup 2011 ( 1-0 ) そして昨年のワールドカップ予選 ( 1-1 ) と5試合戦い、日本の1勝1敗3分。PK 勝ちは公式記録は引き分け。 日本は90分でオーストラリアに勝ったのは2001年あの豪雨の横浜で中田英寿が豪快に決めたFKで勝利を収めて以来ないのである。この時のGKは今でも Socceroos の守護神 Mark Schwarzer 。そして Archie Thompson も後半途中からプレーをしている。



それと毎度、オーストラリア戦の前には自分と専門家、ジャーナリスト諸氏とのスタメン予想の違いが楽しみであった。 これまで、ワールドカップドイツ大会以降のスタメン予想では常に私の圧勝であった。この試合はどうなるか….

その Socceroos のスタメン発表。 最初の驚きは Mark Bresciano, Mark Milligan のスタメンが発表されたとき。後で知ったけど ボランチの有力候補Mile Jediniak は故障が完治しなかったらしい。 Bresciano は反対に故障が試合が出来る程度に治ったからだったらしい。 3月のオマーン戦で先発出場したJames Holland に替わって、昨年の日本戦に続いてのMliigan の起用は日本でプレーした経験を買ったのかそれとも守備力を優先させたのか? 
Tm Cahill ワントップ の後ろには左から Tommy Oar , Brett Holman, Robbie Kruse が並んだ。 名古屋グランパスのJoshua Kennedy はベンチスタート。コンディションを考えても Kennedy は使ってくると思ったけどなぁ~。21歳の Tommy Oar の起用が後で“大抜擢”となることはこの時想像にも出来なかった。 ワールドカップ南ア大会は最後にメンバーから漏れ、翌年の Asian Cup では負傷した Richard Garcia に替わってメンバー入り。その年の FIFA U-20 大会ではエクアドル戦で50m のロングFKを決めた将来有望選手だ。
GKは大ベテランの Mark Schwarzer 。 DFは Lukas Neil とSasa Ognenovski のCBに右SBがLuke Wilkshire, 左SBに Matthew McKay が起用された。オマーン戦からはCBとボランチの2人ずつ、MFは怪我の Alex Broque に替わって Oar が。合計5人が入れ替わった。 昨年の日本戦とは4選手が入れ替わった。

一方の Samurai Blue は昨年のオーストラリア戦では怪我でスタメンを外れた吉田麻也が栗原に替わってスタメンに。 3月のヨルダン戦では香川がトップ下で岡崎が二列目右、左に清武であったがこの試合では懸念された本田がトップ下に香川が2列目左、右に前日ドイツから帰国したばかりの岡崎が起用された。ブルガリア戦は後半から投入された長友もスタメンに名を連ねた。

                                           1 川島
                                 ( Standard de Liege )

      6 内田                 22 吉田           15 今野                5 長友
( Schalke 04 )  ( Southampton ) ( ガンバ大阪 ) ( Internazionale  Milano )

                 17 長谷部                                    7 遠藤
              ( Wolfsburg )                             ( ガンバ大阪 )

           9 岡崎                    4 本田                       10 香川
      ( Stuttgart )         ( CSKA Moscow )      ( Manchester united )

                                         18 前田
                                         ( 磐田 )

 

                                            4 Cahill
                                ( New York Red Bull )

        11 Tommy Oar          14 Brett Holman      10 Robbie Kruse
          ( Utrecht FC )             ( Aston Villa )    ( Fortuna Dusseldorf )

                    23 Bresciano                              5 Milligan
                    ( Al Galafa )                        ( Melbourne Victory )

    17 Matthew McKay  6 Sasa Ognenovski    2 Lukas Neil   8 Luke Wilkshire
          ( 長春亜泰 )                ( 全南 )                                   ( Dynamo Moscow )

                                             1 Schwarzer
                                             ( Fullham )



オーストラリアのキックオフで始まった大一番は、キックオフ直後のパスを受けた Neil が大きくまっすぐにゴール正面に放り込むと Cahill がヘッドで落とし、 Oar が拾うがここは今野が落ち着いてクリアー。 53秒にも Milligan がゴール前にロングボールを入れ今度は Cahill が拾うがここも吉田がクリアー。立ち上がりから連続してロングボール攻撃を見せれば、日本も特徴のある攻撃を続ける。1分52秒、香川が二列目から飛び出しボールを受けるがここはオーストラリアDFがシュートを撃たせななかった。4分32秒には本田からボールを受けた岡崎を Ognenovski が倒して絶好の位置でFKを得る。本田がゴール前に入り遠藤が直接狙うが惜しくもポストのわずか左に外れる。6分33秒には本田から受けた香川が左サイドを上がった長友に送るがここはマークに入った Kruse をファールで倒してしまう。 相手DF,MFのあいたスペースに日本選手が入り込んだり、本田のゴールキープからスペースが出来たりと日本が良いリズムで攻めている様に思えた。そして改めて本田の存在感を認識した。
12分19秒には香川から本田に送られ一端は後方の長谷部にもどされるが再び前線の岡崎に。そして本田とのパス交換から抜け出し更に右サイドに走りこんだ内田に送られそこから中に入れられたがここは Neil がなんとかCKに逃れる。このシーン、オーストラリアのDF,MF 陣は完全にこのパス交換を“鑑賞”するだけだった。
13分19秒、CKから吉田がフリーでヘッドを放つが当たりが弱くてファーサイドに飛ぶだけであったがこのCKも内田がサイドを突破して得たチャンスから。 16分12秒には遠藤がスライディングに入った Bresciano をうまく外してミドルを放つがクロスバーを僅かに越える。 ここも本田と香川のパス交換から遠藤にシュートを撃つスペースが生まれたのがチャンスにつながったもの。やはり本田がいると違う。ピッチ上のすべてを好転させると感じた。



18分には本田が起点になり香川から岡崎に縦パスが入り本田に繋いでダイレクトでシュートに持ち込むがSchwarzer が素晴らしい反応でストップ。こぼれ球に香川が詰めたが一瞬早く Wilkshre がクリアーした。 惜しいチャンスだったけどさすが Schwarzer と思わせられた。

オーストラリアも劣勢の中、何度か日本ゴールに迫る。ロングボールをもっと多用して来るかとおもったけど開始早々に Neil から Cahill に送られたくらいで16分12秒には右サイド Kruse がボールを受けると香川、長谷部、長友、内田に囲まれながら Cahill に送り更に中の Holman に渡ると吉田がマークに入る前に放ったショットはファーポストの左に外れて行ったが、ロングボールだけでなく前線でボールキープからこういう攻撃が出来るのか?と思った。
22分今度は左サイド Oar にボールが入ると一気にタッチライン沿いを駆け上がられそうになるがここは長谷部がファールでストップ。このプレーにイエローカードが出され、次の試合に出られなくなったが、長谷部はこの試合の事しか考えていなかっただろう。

しかしこのプレーを境に劣勢続きだったオーストラリアが徐々に挽回を始める。Kruse と Oar がワイドに開きボールが左右に散る様になった。 日本のボール回しにも“慣れて”来たのか、ラストパスが通らなくなる。 CB の二人と Milligan でマークの受け渡しもうまく回る様になってきた。30分25秒には Oar から Kruse にスルーパスが入るがここは長友がマーク。
33分には中盤の Holman から正面に走りこんだ Kruse にスルーパスが入る。Kruse はマークに入った遠藤を振り切りフリーでシュートに持ち込むがそこは川島がブロック。そのリバウンドを Cahill が無人のゴールに放つがここはクロスバーを上回ってくれた。 Kruse のシュートよりも Cahill のシュートの方が危ないと思った瞬間だった。 






こうして前半は日豪ともに1回ずつ決定機を迎えスコアレスで終わった。そして最も印象に残ったのは Schwarzer と本田の存在だった。
前半のシュート数は日本8、オーストラリア6。枠内シュートは日本が4、オーストラリア2だった。 以外にオーストラリアもシュートに持ち込んでいたんだなぁという印象をもった。
そして最も危険な選手、 Tim Cahill は吉田と今野がしっかりとマークをしていると想った。

 

両チームとも選手交代なしで後半が始まった。 開始直後こそ長谷部から受けた香川が Ognenovski, Milligan のマークを受けながらシュートに持ち込むが前半とは異なり日本が圧倒的に攻め込むという展開ではならなかった。そして2列目の両サイド Oar と Kruse の動きがよくなってきて相対する、特に右サイドの岡崎があまり上がれなくなって来た。それだけ Oar がよかったという事だろう。





55分、こちらから見えるオーストラリアベンチの横で行われるアップのテンポが早くなって来る。 先にどちらが交代カードを切るのだろう?そしてオーストラリアベンチはいつ Kennedy を投入するのだろう、と思った。
63分、67分とPAのすぐ外の右サイドでFKを得る。共に大歓声を受けて本田が直接狙うがゴールネットは揺らせない。
香川が何度も左サイドを崩しにかかるけど、もっと中央でボールを受けてシュートに持ち込んでほしいと願う。
オーストラリアも70分過ぎから Bresciano が前の方に出て来て効果的なボールを送る。 Bresciano がこれだけ動けるとは思わなかった。



75分47秒には Bresciano から受けた Wilkshire が3人に囲まれながら Cahill に送る。そこからのロングシュートは大きく外れたけど、日本DF,MFに囲まれても粘り強くキープ出来る様になって来た。 
その前の71分最初に動いたのはオーストラリアベンチ。  Holman が下がって投入されたのは A-League Adelaide United でプレーするDario Vidosich だった。 185cm の Vidosich がトップに入り、 Cahill がやや下がり目の位置に入った。
日本も78分には長谷部がミドルを放ち、79分には長友がドリブルシュートを見せるが得点には至らない。

残り時間が減ってきてそろそろ勝ち点1を守るのか、勝ち点3を奪いに行くのかを考えねばならない時間になって来た。そういう意味では日本に余裕があったはずだった。 
そして左サイドで Bresciano から受けた Oar がサイドを突破する。早く止めろよ、と思うとシュートを撃たれる。その弾道がこちらに飛んできて日本ゴールに吸い込まれるのが見えた………..

試合後はワールドカップ出場を決めたその報道が、本田のPKのシーンが何度も繰り返し映し出された。
しかし試合直後のさいたまスタジアムに映し出された本田の表情を見ると決して満足できる試合内容ではなかったはずだ。
オーストラリアは守備的な選手、布陣を敷いてきた。しかし先制ゴールを決めたのはオーストラリアだった。



最後は明らかに McKay の手にボールが当たっていたがもしそれをNafa shukralla 主審が見逃していたら…..

オーストラリア紙でさえ劣勢を予想していた試合でここまで苦戦したのだ。 ワールドカップではオーストラリアよりも強い国ばかりが相手だ。 このままのレベルでは….これは全選手が思っている事だろう。
翌日以降のオーストラリア地元紙を見ると終了間際のPKで勝点2を失ったと書いている一方で日本相手にアウェーの地でここまでよく戦えた、特に Oar, Kruse の台頭を評価していた。
そして他の4カ国の中では最後の2連戦がホームのオーストラリアが予選通過の一番の射程距離内と想うんだけどなぁ~



私は試合後何人ものオージー達と握手を交わし、そしてお互いにこう云い合った。

“ See You in Brasil !! “







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