Mr.コンティのRising JAPAN

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国立最蹴章  “ピンチGKの意地”   富山第一 2-2 四日市中央 11th January 2014

2014-01-22 | 五輪 U-20, U-17

12月初旬。ニュージーランドの Christchurch に在住される I さんから連絡があった。年末から約1ヶ月に亘って休暇で帰省するので一緒に会いましょうとのお誘い。 Iさんとはお互いにサッカー狂で10年近くお付き合いをさせて頂いている。
丁度高校サッカーが行われているので改装前に国立競技場で準決勝戦を観戦する事となった。
私は関東地区に越してきてはや26年近くが経つが全国高校サッカーはまだ観戦した事がなかった。その理由は簡単。
寒いのが苦手だからと言うこと。サッカー好きが寒い時期がシーズンなのに寒さが苦手とは道理が合わないけど….
前売り券を購入し、当日は雨が降らないことを心から願った。
しかしそんな心配をよそに当日は快晴に恵まれた。試合開始約半時間前に千駄ヶ谷駅に到着したけど観戦に来られたのであろう多くの人が競技場に向かっていた。駅前のコンビには店外にまでレジを待つ人が並んでいた。 商品の補充はどうするのだろう?とも思ったけど。
競技場の前で I さんと約4ヶ月ぶりの再会。 南半球から来られて寒いでしょうってな話をしながら入り口に向かった。
チケット窓口は結構な人。前売り券を購入しておいて良かったなぁ~と….
プログラムを購入しゴール裏の席に陣取る。反対側は日陰になっているけどこちら側は冬日を一杯に浴びて暖かな観戦。
スタジアムの入りは半分程度。準決勝戦の方が2試合観戦できるし御得だと考えるのは私だけだろうか….
“国立は良いですね~。” Iさんが言う。国立観戦は初めてらしい。 私も関西から上京してからここに住み着くことを決めた理由の一つが東京の方が色々なスポーツイベントが楽しめると思ったからだ。
首都圏開催となった昭和51年度から選手権の決勝は国立競技場開催となったけど、Jリーグが始まるまでサッカーで国立が満員にまるのはトヨタカップと高校サッカーくらいだった。あの満員の国立はどんな雰囲気だろうと学生時代までテレビを見ながらよく思ったものだった。

ピッチで練習をしていた両校選手達が控え室に戻りいよいよピッチに入場してきた。両校応援団を始め歓声が上がる。
一昨年の覇者四日市中央工は準々決勝で大阪の履正社をロスタイムにCB後藤君の起死回生のゴールで追いつきその勢いのままPK戦を制して6回目の国立進出を果たした。そして、まずは2年振り4回目の決勝進出をそして今年こそ単独優勝を狙う。同点ゴールの後藤君は背番号25番。今回の三重県大会でようやくレギュラーを掴んだ苦労人だ。
四中工のスタメンを見ると右MFには準々決勝でスタメンだったMF木下君ではなく、その木下君に替わって投入された服部君がそのままスタメンに。 昨年は桐光学園に 2-4 で敗れまさかの初戦敗退となった。CB坂君がその試合のスタメンでトップの井出川君がベンチメンバーだった。



本音は大阪代表をここで見たかったんだけど….
そして78回大会以来の国立進出を果たした富山第一高校は2回戦、3回戦と 0-0 でPK戦の末に勝利を掴んだ後の準々決勝の日章学園戦は 4-0 の快勝。MF斎君に替わり出場停止中だった川縁君がスタメンに。 
昨年は1回戦で作陽高校にPK戦で敗れたが今年は既に2回PK勝を果たしている。 トップ下の大塚君は昨年もレギュラー。トップの渡辺君、ボランチの川縁君そしてGK高橋君が昨年はベンチ入りメンバー。

 

四中工のキックオフで始まった試合。開始51秒に富山ボランチ細木君が左サイドを上がり竹澤君に戻し中に入れるがオフサイドに。そして7分45秒、四中工MF小林君がミドルを放つとGK高橋君がナイスセーブで防ぐ。 その後のCKにCB坂君が飛び込むがここもGK高橋君がキャッチ。
立ち上がり四中工が主導権を握るかな?と思うが以降は向こう側の四中工ゴール近くで試合が展開されたが16分6秒にはまたも小林君がドリブルで持ち込み、城山君、西村君をかわして川縁君がマークに入る前にミドルを放つ。小林君はG大阪の出身で今大会は準々決勝まで2ゴールを決めていた。
開始から富山が攻め込めば四中工DFが上手くラインを上げてオフサイドを取っており開始18分で3回もオフサイドがあった。
富山の応援席がこちらから見ると手前に陣取っているので彼らの声援が良く聞こえる。
“とや~まだいいちっっ !! “ という声援が”うらぁ~われっず!!“に聞こえた。
四中工は男子校なのでセットプレーになると男子生徒独特の声量でのコールが聞こえる。
しかしオフサイドを取られても富山の方が攻める時間が続いた。 
そして21分11秒、川縁君からのスルーに抜け出した西村君がシュートに持ち込むが再びGK高田君がナイスセーブでCKに逃れる。そのCKを細木君がショートコーナーで西村君に送り、中央の野沢君にクロスが上がるが野沢君の頭に当たらずマークに入った坂君に当たりこぼれた所を拾ったCB藤井君が四中工ゴールに蹴りこみ優勢だった富山が先制した。
ゴールを決めた藤井君はそれまで守備面でしっかりと四中工の攻撃を抑えており、セットプレーで上がって来て今度は得点を決めた。

先制した富山は更に攻勢に出る。28分52秒には中盤からのスルーパスにFW渡辺君が完全にフリーで抜け出しGK高田君と1対1になるがエリア外で高田君と交錯した渡辺君が転倒。主審はすかさずカードを出すがそれはイエローカードだった。
“一発レッドでもおかしくなかったですねぇ~。”Iさんと意見は一致していた。 “プロならレッドじゃないですか….”
PKではなかったが危ない位置でのFKを献上した。このFKを富山はトリックプレーを使い野沢君が強烈なショットを放つ。しかしここはGK高田君が左に倒れこむナイスセーブでストップ。2年生の高田君はこれで大会2枚目のイエローで勝っても決勝戦は出場できない。だけど今はこの試合の事しか考えていなかっただろう。 
32分には四中工に次のトラブルが起こる。空中戦で大塚君と競ったCB後藤君が倒れて起き上がれない。 大塚君の後頭部に眼底部を激しく打ち付けた様だ。後藤君がピッチ外に運び出される。四中工ベンチ前にアップをしていた栗田君が呼ばれる。CBを欠いた四中工はMF服部君を暫定的にDFラインに入れる。34分には左からのクロスに大塚君が飛び込むがGK高田君が競り合いながらストップし追加点を許さない。そして拍手に向かえられて後藤君がピッチに戻ってきた。
人数が揃ったせいか今度は徐々に四中工が押し返す。両サイドからワンタッチパスでボールを繋ぐシーンが目立ち始めた。
そして42分右サイドの良い位置でFKのチャンスを掴む。さっきは富山がトリックプレーを見せたけど今度はどうなるか…と注目する。
大辻君と中田君の両サイドバックがボールの後ろに立つ。そして中田君が蹴った弾道はゴール右上隅に突き刺さり四中工が試合を振り出しに戻した。 
GK高橋君は最初にフェイクに入った大辻君の動きに一瞬右側に動き反対方向に飛んでくる弾道に反応できなかった。しかしそれを差し引いても素晴らしいFKだった。





“すごいFKでしたね。” “準々決勝までなら今はハーフタイムでしたね。45分ハーフの明暗ですか…”
同点になり四中工ベンチは後藤君をベンチに下げ栗田君を投入した。
“やっぱり、あの25番やれないですか….” ベンチに下がった後藤君が悔し泣きに暮れるのがこちらからも解った。

ロスタイムの2分間も過ぎ 1-1 のまま前半が終わった。両軍控え室に戻るときに主将同士が言葉を交わしていた。
どんな話をしたのかな……



両チームメンバー変更無しに後半が始まった。 まだ日は高く、日向で暖かかったけど直射日光がこちらを照らし向こう側のゴール前にボールが運ばれると手のひらで日よけを作らねばならなかった。 後半はどちらがより多く相手ゴール前にボールを運ぶだろう。開始直後は両チーム右サイドからの攻撃が目立った。
52分9秒、渡辺君が坂君のマークを振り切り中田君がマークに入る前に放ったシュートはGK高田君がキャッチ。53分25秒には西村君が坂君をかわしてシュートに持ち込むがまたも高田君がナイスセーブでストップ。ベンチには一昨年の準優勝時には1年生ながら控えGKでベンチ入りし昨年は2年生で選手権に出場した3年生の中村君がいた。決勝戦では高田君が出場停止になるが何とか先輩の中村君に出場機会をと思っていたのではないかな。
だが富山が追加点を決める。 56分25秒、今度は左サイドを野沢君がドリブルで上がりCBをひきつけながら中央に送る。そのこぼれダマを正面で拾った細木君が四中工ゴールに押し込み再びリードを奪った。 マークに入った大辻君が一瞬逆の方に体重がかかり細木君にシュートチャンスを与えてしまった。



再び四中工はリードを許したとはいえまだまだ時間は残っている。選手交替も含めてどのようにして同点ゴールを模索するのだろうと思っていると次に選手交替を行ったのはリードしていた富山だった。68分 163cmの左SB竹澤君を下げて176cm の菅田君を投入した。 まだ少し早いけど相手のロングボール対策かな…ってな話をIさんと交わした。
72分四中工は攻め込まれながらもシュートは撃たせず一本のライナーの縦パスが前線に送られる。そこに走りこんだ井出川君がドリブルで富山ゴールに迫ると富山DF,MF陣は全く彼を捉えられない。井出川君がそのまま放ったドリブルシュートが富山ゴールネットを揺らし四中工があっさりと同点に追いついた。







見事な一本のパスそして見事な高速ドリブルだった。
“ビルドアップや構築の方策なんていらないですね。1本の縦パスとドリブル突破だっていうお手本ですね。” I さんはこう振り返った。 今、日本代表と言うか日本人の指導者に必要なのはこの発想も持つことだろうなぁと思わせられた。
同点に追いついた四中工ベンチは2年生MF加藤君を下げて2年生の舘君を入れる。舘君は昨年1年生ながら60分から途中出場をした実績がある。
そして同点に追いつかれた富山ベンチは74分2人目の交替選手。3年生の高浪君を2年生の西村君に替わって投入する。3年生が入ってよかったなぁ~と思う一方で高浪君のドリブルに思わずおっと思わされる。
だが終盤に来て攻勢に出るのは追いついた四中工。 81分、坂君からボランチの森島君に渡り細木君のマークを受けながらも舘君に送ると村上君のマークをうまくかわしてシュートに持ち込むがポストの右に外れる。 82分25秒にはまたも坂君から森島君に渡りマークに入った野沢君のチャージがファールとなりFKとなる。そして前半同様大辻君がダミーとなり中田君の直接狙ったFKが僅かにクロスバーを越える。 85分にはクリアーボールを拾った森島君がオーバーラップした大辻君に送り入れたクロスに井出川君が藤井君と競りながら飛び込むがここはGK高橋君がキャッチ。 
四中工は森島君と小林君のドリブルが冴える。ボランチから後ろの押し上げも早いせいかこぼれダマをことごとく拾い続ける。
PK戦になっても準々決勝の履正社戦でPK戦を経験したばかりの四中工の方が有利かなと思った。時計は90分を迎えようとするとIさんが “ アップしていたGKが呼ばれましたね。””準決勝は延長戦無しですか?” “そうだと思いますよ。PK戦要員のGKですかねぇ”
そして90分42秒、何ともいえない歓声の中3年生GKの田子君がピッチに入った。公式戦は初めての起用らしい。



“PK戦の前に1回ボールを触った方が良いんですけど。” “それが強烈なシュートだったら可愛そうですね。”
92分13秒、富山ゴールマウスに入れられたロブを田子君は無難にキャッチしたけどその1分後のゴールキックはそのまま中田君に渡ってしまいロングシュートを撃たれた。ゴール枠は捉えられなかったけど中田君は当たっていたからなぁ….
そしてホイッスルが鳴り国立競技場では20回目の、準決勝としては16回目のPK戦に突入となった。
思えば初めてPK戦という言葉を覚えたのは小学校の時の全国高校サッカーのこの四中工の試合だった。相手は当時の競合校、神戸高校だった。 そして四中工がPK勝ちを収めた。
“昔はPK戦じゃなくて抽選が行われたんですよ。主将同士がじゃんけんして勝った方が2通ある封筒のどちからを選んで..”
公式では引き分けとなるサッカーのPK戦だけど、いつみてもどきどきすますねぇ~….

先行の富山も後攻の四中工も最初の2人ずつは無難に決めた。そして富山第一3人目の野沢君も左下隅に決める。
“富一のGKは2人とも蹴る方向の読みが当たっていますね。”とIさんが言う。そして3人目中田君のPKを見事に左下に飛んで弾き出した。



 “良いFK蹴っていたんですけどねぇ~。それがあだになりましたか….” さすがI さん、言われるまで気付かなかった。 富山は4人目渡辺君が決め、外せば終わりの四中工4人目村澤君は右上に決めた。 そして富山5人目の細木君は中央に蹴りこみ激戦に終止符を打った。




“GK、ちょっと動くのが早すぎましたか….” おもわずこう言ってしまった。だけど蹴ってから飛べというのは妥当なアドヴァイスではないだろう….
富山第一が富山県というよりも北信越勢では初めて決勝進出を決めた。 あの柳澤を擁しても出来なかったのだけど。
GK田子君はこのPK戦で一躍ヒーローに。 結局決勝戦は出場機会が無かったので国立というよりも公式戦に出場時間は数分だったけど人々の記憶に残る数分だった。卒業後はサッカーを続けるのかな….
敗れた四日市中央工はまたも単独優勝に手が届かなかった。しかしこの試合のスタメン5人が1,2年生。新チームも楽しみではないかな。
両チームの選手が挨拶を兼ねて場内を一周する。勝者と敗者。明暗は痛いくらいに対照的だ。
“富一のGKだけこちらのバックスタンドの前で一礼しましたね。” I さんが教えてくれた。あれだけ喜びを爆発させながらもう次の試合に向けて冷静になってるんじゃないですか….と口にした。

まだ両チームの選手が残っているのだけど次の試合の選手達がピッチに入ってきた。
“おいおいもう入ってくるのか?”“放送時間が押しているからでしょうね。” 
そして四中工の3位の表彰は第二試合終了後に行いますとの場内アナウンスが。
“すぐに帰してもらえないの?ちょっとかわいそうだねぇ~。” 
まだ暖かい陽射しが残っている。この陽射しは両チームの選手に何年かしたら違った思いでよみがえるんだろうなぁ~と思いながら次の試合開始を待つことにした…..


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