Mr.コンティのRising JAPAN

マスコミの書かない&書きそうもない!スポーツ界の雑学・裏話を、サッカーを中心にコメントを掲載していきます。

Asian Cup それから 中国球迷達の苦悩は続く….

2011-02-12 | Football Asia

Asian Cup が開幕して間もない1月11日。中国政府はステラ戦闘機のテスト飛行を認めた。これは“丁度” Robert Gates 米国防長官が中国を訪問していた時だった。
勿論中国側は長官の訪問とテスト飛行の容認は“無関係”と話している。
その翌日今度は中国人民銀行がポルトガルに次いでスペインの国債を買い取る事に“前向きな”姿勢を見せている事を発表した。中国が購入したポルトガル国債は総額約5億9,900万ユーロになったらしい。スペインはいくらになるのだろう。
そして1月14日、ついに中国のGDPは日本を抜いてアメリカに次いで世界第二位になったとの発表があった。 中国の青天井の発展。日本経済の底の無い衰退を引き合いに出し比較する人がいるが、勿論私を含めそうは思わない人も多い。
これでもう “ ODA “ という名目でたかられることも無いだろう…. それに国民1人の頭割だと世界ではまだ94位だ…

だが中国経済が世界で影響を与えている事は間違い無い。欧州で“国債”を買い続けるのも米ドルと並んで回復の兆しの無いユーロの下落を防ぎ、中国製品の販売促進を考えての事だ。手法はどうであれ、円高対策に無策を続ける日本政府とは対照的だ…

経済では世界に存在感をしっかりと示しているが今回の Asian Cup でも存在感は全く示せないまま2大会連続1次リーグで消えた。
ワールドカップ予選は2大会連続で最終予選にすら進めず五輪も地区予選を勝ち抜いての出場はソウル五輪が最後(あの時最後に負かされたのは日本だったど)。

今やアジアでも Second Class に沈んでしまった中国サッカー。この Asian Cup では私の目論見では準々決勝で日本と当たって我が Samurai Blue に粉砕される事だったけど、日本とはもう同じ土俵に立てないレベルになってしまった。
昨年の東アジア選手権では“中国サッカー復活”の兆しを見た気がしたんだけどな……

中国 0-2 カタール 

中国は初戦Gulf Cup of Nations と西アジア選手権を共に制し“二冠”に輝いたクウェートを破る幸先の良いスタートを切り、第二戦地元のカタール戦に臨んだ。
カタールは開幕戦となった初戦、ウズベキスタンに 0-2 の完敗を喫しておりこの中国戦はまさに剣が峰。ホスト国としてそして決まったばかりの11年後のワールドカップへのスタートに向けて引き分けも許されない状況だった。
Metsu 監督はウズベキスタン戦で途中でベンチに下げた3人、 FW Yaser M. Abdukrahman, Jaralla Ali Al-Marri そして MF Fabio Montesin に替えてMohamed M. Sayed, Yusef Ahmed Ali そして DF Kasola Mohammed らがスタメン起用された。
この起用に Abdulrahman が不満を唱えチームから追放される事に。
一方中国代表もスタメンを3人入れ替えた。何故かGK楊智が曽城に、FWは楊旭に替って郜林。そしてMFが張琳芃に替って干涛が起用された。同じポジション同士の選手の入れ替えの様な気がした。昨年優勝を勝ち取った東アジア選手権の日本戦のメンバー9人が含まれていた。そしてGK曽城もそうだった…楊智は東アジア選手権では背番号22番だったがこの Asian Cup は1番だった。GK楊智はハートがやや弱いらしいが。

試合は両チームともなかなかシュートシーンに持ち込めない。開始25分に中国は最初のCKのチャンスを掴むが得点に至らずその2分後日本戦でも右サイドからの突破で苦しめた Yusef Ahmed Ali が鮮やかなボレーシュートを決めて先制ゴールを挙げた。カタールが欲しくてたまらなかった先制ゴールがこんな早い時間で決まりこれで試合の主導権を握る事に。
その後も Sebastian Quintana を中心に中国の左サイドをどんどん突いて来る。
そして前半終了間際、中国ゴール前でこぼれたところをまたも Ahmed Ali に押し込まれ前半で2点のビハインドを追う事となったがこの時点で中国の勝利は霧散していたのかもしれない。
この日スタメンに起用された楊昊はどちからと云うと守備の面で期待されたらしいが後半から蒿俊閔と替ってベンチに下がって行った。そして追加点を喫する前の前半42分でFW郜林がベンチに下げられたがこれはそれまでの韓国人のキムドンジン主審の判定に激高してイエローカードそしてレッドカードを貰わない為。前半で楊昊と曲波が警告を受け曲波は次のウズベキスタン戦は出場停止となった。 

後半に入ってもスコアーは動かず 2-0 でカタールが勝利を収めた。 中国は開始60分で交代枠3人を使いきる等選手起用にも疑問が残った。
試合後高共波監督は “この日は組織的な攻撃が出来なかった。2失点を喫したが我々は相手にプレッシャーを与える事は出来た。だから彼らの攻撃は外へ展開していた。 だがこの日の我々は攻撃力が乏しかった。 その一方でこの試合の雰囲気は大変経験になったと思う。そしてプレーの質をアップさせる手助けとなるだろう。 この試合には敗れたが次の試合は大変重要だ。我々はすぐに準備にかからねばならない。” この様に語った。
この試合は絶対に勝点3が欲しかったカタールの方が難しかったはずだ。中国は引き分けでも充分だった。高共波監督はそこを理解していただろうか…。 そしてこうも語ったカタールはシュート4本中2本が決まった。中国の枠内シュートは3本だけだった。 幸運も必要だ…

 

対カタール戦 Asian Cup 初黒星
中国の対カタール戦はこれで6勝4分3敗となったがこれまで5回対戦した Asian Cup では5連勝中だった。 1984年広州での Asian Cup 予選 ( 1-0 ) そしてバンコックでの Asian Cup 本戦 ( 3-0 ) 1992年広島大会1次リーグ ( 1-0 ) 2000年レバノン大会1次リーグ ( 3-1 ) そして2004年中国大会1次リーグ ( 1-0 ) 。
しかしワールドカップ予選ではカタールを苦手にしていた。1997年フランス大会最終予選。 大連でのホームは 1-1 で引分けドーハでのアウェー戦は 2-3 で敗れ、南アフリカ大会アジア地区3次予選でも両者は対決しておりドーハでは 0-0 の引分けに終わったが中国のホームゲームでは Sebastian Quintana のPKでカタールが中国を破っている。
2001年ワールドカップ予選、ドーハでのゲームは終了直前、李偉峰の起死回生のゴールで追い付き最後はホームで 3-0 で降して初のワールドカップ出場を決めた。 だが中国は対カタール戦では苦い思い出がある。1989年シンガポールとマレーシアで開催された最終予選のカタールとの最終戦。 1-0 でリードしていた中国は試合終盤に3分間で連続ゴールを許し逆転負けを喫し、手中にしていたワールドカップ出場権を逃してしまった。これを 黒色3分钟 と中国で言われている。

カタール戦の中国代表メンバーは下記の通り

GK 22-曾城 DF ;20-栄昊、4-趙鵬、5-杜威、17-張琳芃 MF ;15-于涛 ( 58分,6-周海浜 )、19-楊昊;21-于海( 46分,8-蒿俊閔 )、10-卓翔、11-曲波;18-郜林( 41分,9-楊旭 )


中国 2-2 ウズベキスタン
中国の1次リーグ最終戦は前大会と同じウズベキスタン戦となった。
4年前はウズべキスタンが1勝1敗( 5-0 マレーシア, 0-1 イラン ) 中国が1勝1分 ( 3-0 マレーシア, 2-2 イラン ) の1次リーグ第3戦で対戦。中国が引き分けても良かった試合だったが試合終盤に Shatskikh, Kapadze, Geynrikh に連続ゴールを決められウズベキスタンが逆転で1次リーグを突破し中国は本大会で初めて1次リーグ敗退となった。
今大会はウズベキスタンが既に2連勝しており1点差負けでも1次リーグ突破。中国は2点差で勝たねばなかった。
中国は李学鵬が怪我から復帰し今大会初登場。累積警告で出場停止の曲波に替って Bundesliga Schalke 04 で内田と共にプレーする今大会中国代表唯一欧州でプレーする高俊閔が起用され、卓翔に替って汪嵩がスタメン起用され郜林のワントップに。
ウズベキスタンは FW Novkarov が Tursonov に替って起用された以外はクウェート戦と同じスタメンだった。中国は杜威だけが、ウズベキスタンは Haydrov, Djeparov, Shatskikh そして Kapadze が4年前の直接対決での出場経験者。

開始1分53秒左サイドを Geynrikh のスルーパスを受けた Kapadze がファーサイドに折り返し Shatskikh が完全にフリーで放ったシュートはクロスバーを大きく越えてしまう。ウズベキスタンに先制されたら中国の1次リーグ突破はほぼ霧散してしまう。だがすぐに中国が先制ゴールを決める。5分9秒PA付近で得たFKを汪嵩が入れ李学鵬がヘッドを放つがGK Nestov が右に倒れ込んでナイスセーブで防がそこで得たCKを楊昊がショートコーナーで蒿俊閔とのパス交換から入れたライナーのクロスにネアーに飛び込んだ干海が頭で合わせてウズベキスタンゴールに捻じ込み中国が先制点を挙げた。
しかしウズベキスタンはまだ1次リーグ突破圏内で中国はもう1ゴール必要だった。 そして1点を失ったウズベキスタンが失点後のキックオフから攻勢に出てくる。16分にはPAエリアのすぐ外で得たFKを Djeparov が直接狙うがGK楊智がファインセーブでクリアー。しかし中国もカウンターで対抗。この試合はワントップの郜林のみならず干海と蒿俊閔が前線に飛び出してくる。20分にはCB趙旭日のミドルがクロスバーを叩いた。中国としては早く2点差にしたいところだった。しかし30分 Djeparov のスルーパスからAhmedov が抜け出してGKと1対1になり放ったシュートが中国ゴールに突き刺さり試合を振り出しに戻した。これで中国は再びあと2点は取らねばならなくなった。
そして更にウズベキスタンが試合を優位に進める。 Djeparov, Geynrikh そして Kapadze , Shatskikhらが空いたスペースに飛びだし、またポジションチェンジを繰り返すので中国DF陣は完全に後手に回っていた。それでも中国はカウンター攻撃から何度かシュートに持ち込む。 中央の汪嵩から右サイドを上がった蒿俊閔にボールが出てそこから上げられたクロスを郜林がフリーでヘッドを放ったが再び Nestrov が右手1本で掻き出した。前半だけで 中国はNestrov に2度決定機を阻まれた。Nestrov は44分にも張琳芃が放った強烈なドリブルシュートもしっかりと抑えた。
前半終了間際には Geynrikh が右サイドを上がった Novkarov からのマイナスのパスを受け出したスルーに Djeparov が抜け出し李学鵬と競りながらシュート体勢に入るがボールがヒットせずGK楊智に転がった。 前半はウズベキスタンが攻める時間が長かったが決定機は中国が多く思えた。実際に枠内シュートは中国7、ウズベキスタン4だった。そして両者1ゴールずつで前半を終えたが中国には不充分だった。 同時刻に始まっていたカタール対クウェート戦では前半終了で既にカタールが 2-0 でリードしていた。



後半中国はMF趙旭日が下がってDF劉建並が投入された。フォーメーションはどうするのだろう。ウズベキスタンのキックオフで始まった後半は31秒Geynrikh が放ったミドルが中国ゴール左上隅に突き刺さり逆転ゴールを決めた。 Geynrikh は4年前の Asian Cup中国戦でゴールを決めている。
これでウズベキスタンは一気に楽な展開に。中国はあと3ゴールを挙げねばならなくなった。それでも中国は同点ゴールを目指して攻撃に転ずる。そして55分郜林に肘を入れた Ismairov にイエローカードが出されて得たFKを高俊閔が右足で鋭いカーブを掛けて直接ゴール左上隅に捻じ込み試合を振り出しに戻した。 これで中国は今大会4連続でセットプレーからの得点となった。本田、遠藤、中村俊輔顔負けのFKだった。
同点ゴールから3分後中国は決定機を逃す。 中盤高俊閔からのスルーパスが左サイドを上がった汪嵩に通り入れたクロスに郜林が完全にフリーで叩きつけたヘッドは大きく弾んでウズベキスタンゴールを外れて行った。完全に1点もののシーンだった。 これが入っていたらこの試合は解らなかった。

 

60分中国ベンチは先制ゴールの干海をベンチに下げ楊旭を入れ郜林と2トップを組ませ汪嵩を干海のいた2列目左に回った。 188cm 楊旭、185cm郜林の長身選手を入れたが干海を何故下げたのだろう…
73分には楊昊に替えて卓翔を入れ次のゴールを狙うがなかなかゴールが決まらない。そして86分楊智のゴールキックを Geynrich が劉建並に覆いかぶさるようにが競り合いにオマーン人の Mohamed Masoud 主審のホイッスルが鳴り劉建並のファールとされると高共波監督がライン際まで出て行きイラン人の Faghani Alireza 第4審判に “ why why “ と連呼ししつこく抗議。 すると Masoudo 主審が高共波監督を退席処分にしてしまい、残り時間を高共波監督はスタンドで観戦する羽目になった。結局スコアーはそのまま動かず 2-2 で試合が終わり中国の2大会連続1次リーグ敗退が決まってしまった。
大会前の FIFA ランクで中国は87位。クウェート 102位、ウズベキスタン 109位、カタール114位。一応中国が一番上のランクだったのだが…

ウズベキスタン戦のメンバーは下記の通り。
GK 1-楊智;DF ;20-栄昊、2-李学鵬、5-杜威、17-張琳芃 20-荣昊、MF ;7-趙旭日 ( 46分 13-劉建並 ) 19-楊昊 ( 73分 10-卓翔 ) 21-于海 ( 60分 9-楊旭 ) 14-汪嵩 8-蒿俊閔;FW 18-郜林

対ウズベキスタン戦 公式戦3敗1分
今回のウズベキスタンで通算成績5勝3敗1分となった中国だが、その3敗全てがアジア大会、 Asian Cup での敗戦。1994年広島でのアジア大会決勝戦 ( 2-4 ) 、1996年 Asian Cup UAE 大会の1次リーグ ( 0-2 ) 2007年 マレーシアで行われたAsian Cup 1次リーグ ( 0-3 ) そして今回の引分。5勝は全て親善試合等のAマッチ。ワールドカップ予選での対戦はまだないが次の予選で対戦するとどうなるだろう…

中国の抱える勝負弱さの原因は…
今や五輪でも最高の金メダル獲得数を誇る中国ではあるがサッカーとは無縁の話だ。それはかつてのソ連邦もそうだった。 旧東側が“誇る”科学的トレーニング(それともドーピング)では個人の筋力や運動能力を高め水泳や個人種目では好成績に繋げられるがサッカーや球技の様な駆け引きやチーム戦力も必要とされる種目では成果を挙げられない。もっとも全ての球技で日本が中国を上回っている訳ではないが。

韓国のスポーツ朝鮮紙(中国では朝鮮体育)は中国男子サッカーが低迷する原因を下記の通りに表していた。

選手の個人能力の衰退
日本、韓国ともに欧州のクラブチームと契約出来る選手が特に若い世代で増えて来ている。中国は今大会蒿俊閔以外は全て中国超級でプレーする選手。 前回は登録選手の中では李鉄や孫継海ら4人の選手が欧州組だった。ただ李鉄は出番が無かった。それに代表では欧州組はあまり重宝されていない。個人プレーに頼り過ぎると言う印象がある。問題なのは中国超級のレベル。 ACL でも上位に残るどころか1次リーグを突破出来ないクラブが殆どだ。 まぁそういう意味では今シーズンの ACL での J-League 勢の躍進を期待したいのだけど…… 
80年代末から90年代初旬にかけて活躍した馬林、賈秀全、柳海光、謝育新、段挙らソウル五輪予選で日本を破った選手達が懐かしいという中国球迷もいる。
私も違う意味でその時代の選手が懐かしい….

一人っ子政策の弊害
1973年から中国で“施行されている”一人っ子政策の弊害がここにも表れているとの事。年代別にグループ分けして行う強化が欠けており、今中国協会でもこの強化に着手し始めているらしい。
韓国がどれだけ年代別の強化をしているかは不明だけど日本は年代を細かく分けての強化がなされている。(その強化方法はまだまだ途上段階と言われていが。)

少子化の影響でサッカーを初め人材の激減が懸念されている。 
ただ少子化における諸問題は日本も韓国も一緒と思われる。
アジア大会での女子サッカーの不振を見て負傷で大会に参加出来なかった美人ストライカー韓端は自分達の時代と比較して “サッカー少女”の激減を将来の女子サッカーの衰退になると懸念していた。
人材の枯渇もそうだけど、一人っ子政策の弊害は“子供”の性格。 スポーツの様に根性の必要な事をしようとする子供が激減する事の方が問題。 まぁ貧富の差がまだまだ激しいからその辺の“人材”はまだ無尽蔵か…

  

協会の体質
韓国紙で見られたある書き込みで “韓国協会も混乱しているが中国より強い。そして勝っている。少なくとも自分のポケットだけを満たそうとおもっている役人はいない。”
一昨年、選手、審判団そして協会役員まで連座したという八百長事件がおこった。 韓国や日本では考えられない事だ。東アジア選手権ではそれを乗り越えて日本と引分け史上初めて韓国を破り優勝を果たしのだけど…この大会は韓国、中国よりも調整が上手く行っていただけと言う事か…
高共波監督は就任後国内組を中心にチーム編成を行っている。今は途上段階。目指すは次のワールドカップ予選突破という地元専門家もいれば今回の Asian Cup の不振を “漫漫長夜才剛剛開始” 長い夜がたった今始まったばかり。と表現する地元紙も。 

2年後次のワールドカップ予選が終わって日本と中国の立場が替っていない事を望む。

そして最後に云わせてくれ。 日本のマスコミ媒体は中国選手名を“日本読み”で“発音”する。杜威 ( Du Wei ) は“とい” 曲波( Qu Bo ) を“きょくは“ 卓翔 ( Deng Zhuo Xiang ) は”とうたくしょう” GK 楊智 ( Yang Zhi ) は”ようじ”。
テレビで見ていても誰か解らない時がある。中国語促進も兼ねて普通話の発音で行ってくれないかなぁ…. 韓国人選手だと韓国読みだろう…朴智星をだれも“ぼくちせい”とは云わない。まぁ70年代は金大中氏を“きんだいちゅう”と呼んでいたけど…